Fly Away From Here(2002/??/??)
ファルカス[男戦士]、ディーン・エッジ[男戦士]、ダーム[男盗賊]、ローエン[男魔術師]
cuz no one here can ever stop us (ここにいる誰にも俺達を止めることはできない)
they can try but we won't let them (たとえ誰かがそうしようとしても、好きなようにはさせない)
no way (絶対に)
――『Fly Away From Here』 (Frederiksen,Chapman) [aerosmith]
『決して近付いてはいけない扉』を静かにくぐり抜けた一行は、待ち受けている『災難』に用心しつつ、足早に進んでいった。
荒削りの道はやがて、古びた石畳に代わり、整えられた石の壁には松明をかける輪などの細工が見られるようになっていった。
一行の進む道は、巨大な鋼の扉で行き止まりになり、どうやっても人の力では開けられそうにないその巨大な扉は、一行が近付くと共に軋みを上げて開き始めたのである。
真っ暗な中に足を踏み入れると、そこは円形の大きな広間だった。広間の壁に燐光が灯り、大広間の中央に巨大な影を浮かび上がらせた。
青白い光に照らし出されたその影は、巨大な黒龍のものであった。
黒龍は、一行を出迎え、『災厄の子』と呼んだ。
『災厄の子』は一度地上に放たれれば、この世を覆う災厄となるか、既にこの世を覆う災禍を祓う剣となるか、の、ふたつの運命を持つのだと言う。
黒龍はそれ故に、『災厄の子』が地上へ出る事を阻もうとしているのだと言う。
おとなしく引き返せば命までは取らぬと言う龍に対し、一行は不退転の決意で挑む意志を明らかにした。
その意志を認めた黒龍は咆吼を上げ、その咆吼によってこの大広間全てを吹き飛ばした。
気が付いた時、一行は星々を散りばめた不可思議な空間に立っていた。果ての無いその世界で、黒龍は一行に向かって牙を剥いた。
巨大な龍との交戦は熾烈を極めた。
しかし、今までの幾多の苦難によって鍛えられてきた一行にとって、それは克服不可能な壁では無かった。
ファルカスとディーンの猛攻によって、厚い鱗は易々と貫かれ、苦悶の叫びを上げた龍の放つ強大な魔法は、すかさずローエンが打ち消しに入った。ダームの放った石礫は、
龍の目を正確に打ち据えてこれを苦しめ、怒りに駆られた黒龍の一撃は彼らを押し止めるには不十分だった。
激戦の果てに、黒い龍は遂に敗れ、巨体を横たえて息絶えた。息絶えると同時に龍の身体は実体を失って空に溶けるように消え失せ、気が付くと一行は元の大広間に立っていた。
先程まで龍の巨体で隠されていた広間の向こう側には、小さな潜り戸があり、彼らはそこが地上へ出る道だと信じて進んでいった。
潜り戸の向こうは相変わらず暗闇に閉ざされていたが、やがて鼻孔に懐かしい匂いが届き始めた。
それは、開かれた屋外の空気の匂いであり、彼らが渇望して止まない元の世界の匂いであった。
通路はやがて、光の漏れる両開きの鋼の扉で終わりになった。しかし、その扉の向こう側からは、異様な気配が伝わって来ていた。
隙間から外の様子を伺ってみると、そこには何処かの軍勢が隊列を組んで待ちかまえており、その表情はみな一様に険しく、そして不安めいていた。
軍勢が待ちかまえているのが、この扉から出てくる『何か』であることは明らかだった。彼らとの遭遇が避け得ぬものであると知った一行は、覚悟を決めて扉を開け放った。
待ちかまえていた軍勢は、一斉に警戒を強めたが、それを抑えさせたのはその軍勢を率いていた一人の騎正だった。
騎正は軍勢の緊張をまるで知らぬかのような気さくな物言いで、一行に向かって何人が死んだかを問い掛けた。まるで、中で起きた事を知っているかのような口振りに、彼らが
問い返すと、騎正もまた彼らと同じように、この地下の苦難を乗り越えてこの扉から脱出した経験がある事を答えた。
そして、この扉が『災厄の扉』と呼ばれ、そこから出てきた者はこの国にとって諸刃の剣となると言う言い伝えがあることと、国の守護龍がこの扉が開く事を警告した事を明かし、
こうして警戒をしていた事を詫びた。
そして、彼は自分がこの国の軍勢を預かる騎正であることと、彼らがこの国、ポートブラックサンドに災いを為すつもりであるならば、容赦なく斬る旨を告げる。
しかし、今はまだ状況の飲み込めない一行は、その事を告げ、用心深く即答を避けた。
その時、怪しげな鋼の仮面と黄色いマントを身に着けた魔導師然とした男が現れ、一行に休息を勧めた。
そして、彼らは実に半年ぶりになる、まともな食事と睡眠を堪能し、自分達が帰ってきた事を噛みしめるのであった。
騎正は彼らの境遇を身を持って知っているせいか、彼らには親身に接した。彼らの故郷の事に触れ、帰りたいのではないかと尋ねたのも騎正であった。
騎正は先の魔導師に頼んで、彼らの故郷について調べてもらったが、得られた事実は非情な現実だった。
彼らの故郷オスビッグ村は、半年ほど前に、近隣を荒らし回っている凶悪な盗賊団『クリムゾン・ヘルカイト』に襲われて滅びてしまっていたのである。
魔導師に導かれ、廃村となったオスビッグを訪ねた彼らは、無人となった自分たちの故郷をその目で見詰め、そして再びポートブラックサンドへ引き返した。
そして彼らは、改めて魔導師から今後の身の振り方を尋ねられた。魔導師は、『災厄の扉』から現れた『災厄の子』を、この世の災禍と為さぬ為にポートブラッサンドに迎え入れ、
『災禍を祓う剣』とする用意がある事をほのめかした。
ファルカスとディーンの二人は、故郷を滅ぼした『クリムゾン・ヘルカイト』への復讐の為もあって、ポートブラックサンドの騎士となることを選んだ。
しかし、ダームは体制側につくことを良しとせず、そしてローエンはもっと他の可能性を求めて、市井へ下る道を選んだのだった。
この後、彼らがいかなる道を辿るのか、そして、この地に迫る脅威に如何に関わるのか、それはこの地を統べる神ですら知らない。
the end
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