黒の軍勢(2002/12/22)
ファルカス[男戦士]、ディーン・エッジ[男戦士]、ダーム[男盗賊]、ローエン[男魔術師]、セリーナ・クレセント[女魔導師]


『盗賊都市』と異名を取る、アランサ大陸北西部最大の都市ポートブラックサンド。
 幾多の苦難を乗り越え、この街に辿り着いた四人の若者は、それぞれの道を選び、この街に暮らす事となった。
 街を統べる《盗賊王》アズールに仕える《黒龍の騎正》シャー・イェンは、ポートブラックサンドの騎士となることを希望した二人の戦士(ファルカス、ディーン)を快く迎え入れ、 正騎士団である《黒蓮騎士団》へと入団させた。
 一方、市井へ下ったダームは街の暗部を取り仕切る盗賊組合《黒真珠》の女暗殺者に命を狙われるはめになった。ダームがよそ者であったからである。ダームを付け狙う暗殺者に 組織の一員となる方法を訊いたダームは、挨拶料を支払うこととなったが、肝心の組織の本拠地の場所は知らされなかった。独力で資金を稼ぎ、根城を探し出すことがダームに求められて いるようだった。
 また、ローエンはスラム街の一区画を牛耳る《女教授》ドー・ドーに招かれ、歓待を受ける。ドー・ドーはローエンに何らかの関心を持っているようだったが、彼の師となる事には余り気が進まない 様子だった。

《黒蓮騎士団》の一員となったファルカスとディーンは、若い騎士である《緋燕》フレア・ブロワートの従士として訓練を受ける事となった。フレアは、その叔父ヴィドウィック・ガスキンと共に 使命を帯びている最中であったが、二人に訓練を施し、一人前の騎士として育てる事を引き受けた。
 ガスキンが帯びている使命と言うのは、この大陸最強の魔王であるザラダン・マーに仕えていると推測される《異界の騎士》を倒すことで、《異界の騎士》もまたガスキンの事を 付け狙っているのだと言う。また、この《異界の騎士》はガスキンの血縁に当たる者らしく、この使命はごく少数の者だけしか知らされていないのだと言う。
 ポートブラックサンドの参謀である魔王ハニュールは、ガスキンの探索の助けとするべく、この年に初めて魔術師団《無名の闇》の一員となったばかりのセリーナ・クレセントを 同行させることにした。セリーナは、このポートブラックサンド出身の女性で、その才を見出されて引き取られた魔術師である。
《異界の騎士》は幾たび殺したとしても蘇り、再び姿を現すと言われている恐るべき騎士で、常に漆黒の鎧に身を包み、魔王ザラダンの為に働いていると見られている。セリーナは、 《異界の騎士》についての文献を調べ、騎士ガスキンの使命の困難さを知ったのだった。

 組織の暗殺者に狙われたダームだったが、その巧みな身のこなしに、彼を捉えられる者は皆無だった。彼は瞬く間に必要な金をかき集め、盗品を売り捌くための幾つかの店と馴染みに なり、そして組織と繋がりを持っていると噂されている老女の助けを得て、《黒真珠》が経営している宿屋へと辿り着いた。こうしてダームは無事に《黒真珠》の一員となり、 新たな技量を身に着けるための修行へと取りかかったのである。

 偏屈な《女教授》ドー・ドーの元に滞在したローエンは、彼女の教授を受ける事となったが、その代わりにドー・ドーの害となる事は決してできなくなるという魔法による呪縛を受けてしまった。 また、今まで見ることのできなかったドー・ドーの姿を見る事となったのだが、そこに居たのは人間では有り得ないほどに肥満した怪女であり、情欲の快楽を求める色女であった。この《女教授》 の元で、彼は新たな魔術の領域へ踏み込む為の勉学に励むことになったのだった。

 一方、ポートブラックサンドの正騎士団では、出兵の為の準備が着々と進められていた。
 近隣の領土をポートブラックサンドの支配下へ置き、領土と勢力を拡張する為のその行動は、近隣領主にこの地方最強のポートブラックサンドへの恭順を求めるものだったが、 実際には、一年ほど前に突如挙兵し、全くの気まぐれのように時折、街や村を襲い始めた《魔王》ザラダンの軍勢に対抗すべく、立ち上がろうと言うのが真意だった。
 従士として《黒蓮騎士団》に籍を置くファルカス、ディーンもまた、フレアに付き従って戦場へと赴く事になった。また、騎士ガスキンの元へ派遣されていたセリーナも共に赴いた。
 進軍は大した抵抗も受ける事無く、ポートブラックサンド軍は次々と近隣を平定して行った。
 しかし、そんな中、ウォーラと言う都市を攻める段になって、些細な異変が起きたのである。
 ウォーラは、近隣の中でもポートブラックサンドの政策を真似てあらゆる物事に許可制を取り入れた街であったが、その政策は人民に受け入れられず、また不正と裏切りの横行する 悪徳の街となっていた。ポートブラックサンドも、その不正の温床となっているウォーラの非を正すと言う大義名分を掲げて、この街を攻め滅ぼすつもりであった。
 そのウォーラが、何者かの軍勢によって既に陥落しているというのである。
 ポートブラックサンド軍を預かる軍将は全軍の停止を命じ、状況を把握する為の斥候を放った。
 また、時を同じくしてセリーナもまた、状況を知るために単身ウォーラへ赴き、魔術を持って内部の様子を探りだした。
 ウォーラを落とした軍勢は、街での略奪や破壊行為などを一切行っておらず、城門も無傷のままであった。兵達は不揃いの武具に身を固めた不正規兵のようで、訓練が行き届いていない風に見えた。 領主の館の入り口には、何者かの首が晒されている。セリーナは敵の魔術師に感知される危険を冒して更に内部を調べるための“目”を奥へ飛ばした。
 館の内部では、深紅の鎧に身を固めた一人のゴブリンが見回りを行っており、書斎では指揮官らしい私服の男が領主の書類に目を通していた。そこへ、派手な装いの深紅の甲冑の男が現れ、 表の兵らの教練についての報告を行った。また、彼らは停滞しているポートブラックサンドの軍勢に気付いており、最初の使節の来訪を最初で最後の機会として何かを企んでいる節があるようだった。
 セリーナの持ち帰った情報と、斥候の持ち帰った情報を統合させるに、ウォーラを落としたのは、悪名高き盗賊団『クリムゾン・ヘルカイト』であることが判明した。軍将は、ウォーラの出方を窺うために 使者としてフレア・ブロワートを選び、送り出した。
 
『クリムゾン・ヘルカイト』の首魁は、フレアとその従士を館へ招き入れた。フレアが携えてきたポートブラックサンドの書状は、『クリムゾン・ヘルカイト』がウォーラを陥落させた事を 承認し、それゆえに恭順せよという意の含まれた、過分に挑発的な内容であった。
『クリムゾン・ヘルカイト』の首魁は恭順を拒絶し、今回のウォーラの戦闘は、ウォーラの領民を解放するためであったことを述べた。フレアは、盗賊団の言う事に耳を貸すつもりはなかったが、 首魁はかつての行為を過ちであったと認め、自分たちがもはや滅びた王国の騎士であることを明かした。その上で、彼はその証拠があると言い、既に忘れかけられている古いお伽噺を持ち出して 彼らとポートブラックサンドを対等の立場に置こうとした。
 遥かな昔、このアランサ大陸を支配していた一人の偉大な王を補佐した黒龍の騎士と赤龍の騎士。それぞれの末裔が建国した国こそが、西のポートブラックサンドであり、そして既に《魔王》に滅ぼされた 東のカルバーン王国である、と。そして、共に魔王ザラダンを討ち滅ぼそうと持ち掛けたのだった。
 ディーンは、もはや滅び去った国の生き残りが、今やこの大陸で有数の勢力を誇るポートブラックサンドと肩を並べるつもりであることを嘲った。『クリムゾン・ヘルカイト』の首魁は、それには 何も応えなかったが、彼に従っている騎士はこの嘲笑を快くは思わなかった。緊張の張りつめるなか、フレアは『クリムゾン・ヘルカイト』の返答を本陣に持ち帰る為にこの場を退出した。
 彼らが本隊へ帰還してみると、驚いた事に魔王ハニュールが陣幕を訪れていた。ハニュールはまるでこの行軍が遊びの一端であるかのようにこの状況を楽しんでいる節があった。ハニュールは、 使者の持ち帰った返答を聞いて、確かにそう言った伝承が残っていることを認めた。そして、彼らの言う証拠を見せて貰うために、そのままウォーラへと出立したのだった。
 フレアとその叔父は、参謀であるハニュールの身を護るために付き従い、ファルカス、ディーン、セリーナも同行した。
『クリムゾン・ヘルカイト』は、参謀である魔王自らが検分に来るとは予期していなかった。たじろぎながらも首魁は彼の言う証拠、即ち、カルバーン王国近衛兵団に代々伝わっている神剣レイヴァーティンを ハニュールに見せた。レイヴァーティンはカルバーン王国を守護する神龍が王家を護るために近衛兵団に託した魔剣である。ハニュールは魔剣を検分し、それが本物であると結論を出した。そして、『クリムゾン・ヘルカイト』 の首魁が《魔王》ザラダンの呪いを受けていることをも見抜いたのだった。彼は『クリムゾン・ヘルカイト』の首魁が、《異界の騎士》に出会ったかどうかを尋ね、呪いを祓う為にハニュールの仕える 神の力を受けるように勧めたが、彼はその言葉に含まれている言外の意を感じ取ってそれを断った。
 ハニュールはそれきり興味を無くし、ウォーラを彼らに預ける旨を述べて退出した。ザラダンの呪いを受けた者がそう長く生き長らえることはなく、また、ウォーラは特に重要な拠点でもなかった為だった。 そして、神剣レイヴァーティンの後ろに居る、赤神龍の存在を警戒した為でもあった。

 ポートブラックサンドは、この後も近隣の平定を続けたが、ファルカスとディーンの二人は、この戦いの中での戦功を認められ、正騎士への昇進が認められた。
 フレアに連れられてファルカスとディーンはポートブラックサンドへ帰還し、異例の早さで騎士叙勲を受け、晴れて《黒蓮騎士団》の騎士の一員となったのであった。

to be continue

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