赤神龍探索行〜スカル河流域〜(2003/05/05)
ファルカス[男騎士]、ディーン・エッジ[男騎士]、ダーム[男間者]、セリーナ・クレセント[女魔導師]
ファルカスらは、ウォーラのシモンに旧カルバーン領へ向かう事を告げ、誰かを同行させることもできると申し出たが、シモンはこれを断った。残念ながら、行かせる事のできる人材を欠いているのだと言う。
一行はこれまで通り5名で先を進む事にした。
定期的にファルカスは、騎士団長宛の報告書をしたため、セリーナがそれをブラックサンドへ届けた。
スカル河を辿って遡る途中、クラウ・ソナスという寒村で、セリーナは不思議な体験をする。
宿屋で偶然であった旅人に、昔出会った記憶があったのだ。しかし、その人物にいつ出会ったのか、記憶がない。
それは、相手も同じ様子だった。男は狂気めいた仕草でセリーナを詰問するが、セリーナに応えられる筈がなかった。
会話する内に興奮してきた様子の男の顔に、うっすらと風の主神のルーンが浮かび上がり、セリーナはその男が風の主神スークの加護者である事を見抜く。
セリーナは、その男との会話の最中、不意に奇妙な感覚に囚われる。
『我が花嫁よ』
誰かにそう言われた事があるような、そんな気がしてきたのだった。
男は、セリーナの正体に気付いたようだったが、まるで精神異常者のような様子に誰もが問い掛ける事を躊躇った。
やがて、その男の連れが現れ、非礼を詫び、その場は辛うじて収まったが、謎は解けず仕舞いであった。
自室の窓から、二人連れのその旅人が旅立っていくのを密かに見送っていたセリーナは、件の男が敵意も露わに振り返り彼女を見据えた事に戦いてカーテンを閉める。
何故、自分が見ていた事に男が気付いたのか。
何故、先程までは見られなかった敵意が急に露わになったのか。
何一つ判らないまま、彼らは去って行った。
彼らの正体が、ウーモンの元を去った騎士ヴォルフィンと魔導師ケリスである事が判ったのは、この後暫くしてからであった。
旅を続ける一行は、ウィルバ村の手前で豪雨に遭い、彼らに雨宿りの為に滞在を勧める人物に出会った。
都合のよい現れ方に、一行は警戒を強めるが、目的を探る為にその招待を受ける事にする。
案内を受けながら、セリーナは魔術によって様々に探知を試みた。すると、この先にある館は本物だが、その中には誰一人として生きている者の気配が無い事が判ったのである。
しかし、その結果が出ても、ダームはその館の中に何者かの気配がある事を感じ取っていた。
一行は、この先に待ち受けるのが、生きていない者――即ち、死者の類である事を確信し、用心に用心を重ねて館に招き入れられる。
館は小さいながらも手入れの良く行き届いたもので、一行はこの館の主であるマーガレット夫人に対面する。
一通りの挨拶と礼を済ませた後、ファルカスは、言葉を飾ったりはせず単刀直入に、彼らを館へ招き入れた理由を訊く。雨の中、わざわざ街道まで出て人を捜していたのには理由があるに違いない、と。
しかし、夫人は笑っただけで、人の訪れる事が滅多にない館ゆえに、話し相手が欲しかったのだ、と応えるだけだった。
夫人は彼らをよくもてなした。
出された食事も幻ではなく、怪しげな所は何もなかった。
食事をしながら(或いは食べるふりをしながら)、夫人から聞き出した所によれば、この屋敷はウィルバ村の顔役であるジャマル医師のものであるらしい。ジャマル医師は、不意に行方を眩ましてしまったらしく、
屋敷には不在で、夫人は夫である医師の帰りをただ待ち続けているのだと言う。
ジャマル医師は、川の女神にして医術の神とも敬われるアクアリス神の生まれ変わりとさえ言われた名医であるらしく、村人の面倒をよく見、村人達も医師の事を頼りにしていたと言う。しかし、ある時に
原因不明の疫病が村で起こり、ジャマル医師ですらそれを癒す事が叶わなかったようで、それを切っ掛けに村人達から疎遠にされ、やがて行方を眩ましてしまったのだと夫人は語った。
食事をおえ、部屋を割り当てられた後、ダームは盗賊である本性に逆らわずに屋敷の中を見物して周り、セリーナは事の真相に興味を覚えてジャマル医師の書斎を探す事にした。
最初に一行を呼び止めた執事は、ジャマル医師の私室には薬品類が多く保管してあり、中には手を触れるだけで危険なものもある、と警告した。執事には薬学の心得が無く、どれが危険で
どれが危険で無いかを見極める事が出来ず、お客人がたの安全を保証しかねる、と白状したのである。
幸いにも、ダームにもセリーナにも、薬学の心得があり、二人は執事の立ち会いの元で私室を調べる事にした。
保管されている薬品の傷み具合からすると、この私室が使われなくなってから既に十年余りが経過しているように見えた。セリーナが見付けだした医師の日記も、その年代を裏付けた。
日記には、彼が独自に研究を重ねてきた療法の書き付けが大量に書き込まれていて、セリーナは深く感心した。そして、夫人の言っていた『疫病』についての項目に、神代歴による日付を
見出して、年代を特定する事に成功する。
セリーナとダームの二人は、日記に書かれている疫病の症状から、それが疫病などではなく、精神疾患である事を知る。そして、その直前に医師を訪問した謎の黒騎士の存在を知った。
その《黒騎士》が、以前セリーナが間接的に関わった《異界の騎士》と同一であるのかは不明である。医師は、村人の症状が精神病の現れである事に気付かなかったようで、
様々な処方を試みてはいたが、当然ながら効果を上げられずにいた。日記によれば、今までどんな難病もたちどころに治してきた医師が、急に何一つ出来なくなってしまった事に対して、
村人の不信が募り、徐々に憎まれるようになったようだった。また、村人の期待に応えられない自分の無力さを嘆く気持ちも綴られていた。
二人は、この医師や、帰らぬ夫を待ち続ける夫人に同情を寄せ、何とか良い解決方法が無いかと考えたが、赤神龍探索の任務に就いている以上、余計な時間を割く事はできなかった。
ダームは、夜半になって、盗賊の本領を発揮し、屋敷の中の金目のものをいくつか盗み出したが、その過程で、裏手の庭が荒れ放題になっていることを見る。おそらく、医師が薬草類の
栽培に使っていただろう菜園だったが、今では荒れ果てていた。
翌朝、庭についてダームが夫人に尋ねると、庭にはアクアリス神の礼拝所があるだけで、他には今は何もないとのことだった。
セリーナとダームがアクアリスの礼拝所を見に行ってみると、そこもまた放置されたままの状態であった。セリーナは、祭壇を片付け、アクアリス信仰の礼法に則って祭具を配置し直した。
すると、不思議な事に、アクアリス女神を象った石像が涙を流し始めたのである。セリーナは、これがアクアリス神の訴えであると直感して、魔術を使って神が何を言おうとしているのかを
知ろうとした。伝わってきたのは、強烈な哀しみだけだった。
二人は改めて女神に祈りを捧げ、いずれ何かの手がかりを掴んだ時に戻ってこようと心を決め、一行と共に館を後にした。
館を後にして暫くすると、降り出した時と同じような唐突さで雨は止み、やがてウィルバ村に到着する。
村で、館の話を聞いてみると、村人達は一様に顔を顰めてみせた。どうやら、彼らは幽霊で、時折出るのだと言う。
疫病の話も本当であった。しかし、村人達が信じているのは、館で聞いた事とは全く違っていた。
ジャマル医師は、悪魔に魂を売った挙げ句、この村を実験に使ったのだと言う。疫病はその実験のひとつだったと言うのだ。
その後も調査を重ねていくと、いくつかつじつまの合わない事柄が浮かび上がってきた。
ジャマル医師もマーガレット夫人も、既に死去していて、共に館の裏に墓を掘って埋めた、と言う話さえあるのである。しかし、ダームが庭の様子を思い出してみても、墓らしきものは
何もなかった。その事を告げても、墓を掘ったと主張する老人の言は変わる事はなかった。
何かの齟齬が生じている事を確信しつつ、一行は村を後にし、赤神龍の探索を続けるのだった。
一行は、スカル河流域でポートブラックサンド勢力圏最東端のハーパノースに辿り着く。
ハーパノースは治安が乱れ、街を預かる騎士は頭を悩ませている最中だった。
この街は、ウォーラが奇襲を成功させて領主を討ち取った後、そのままブラックサンド軍に譲り渡された形になっていた。騎士は、自分たちの軍勢が、華々しい手柄だけを横取りされ、
面倒な戦後処理を押し付けられる形になっている事に不満を持っていた。
一方、ダームは、ハーパノースの暗部に接触し、今この街が稼ぎ時である事を聞く。旧領主が抱えていた隠密組織が壊滅し、裏稼業の流儀を知り尽くした人材が体制側に居ないため、
彼らの取り締まりはもはや無いも同然だと言うのである。
ダームはハーパノース中を巡って、あらゆる組織に顔を出し、後の仕事に備える事にした。この間、ファルカスらは食糧などの補給に務める事にした。
必要な仕事を終えた一行がハーパノースを発って即日、驚くべき報せがもたらされた。
一行のリーダーであり、ファルカスとディーンの師でもあるフレアの叔父、ガスキン卿が戦死したと言うのである。しかも、敵は《異界の騎士》だと言う。
ガスキン卿は、一行が任務に就いた後、新しい任務を受けて戦線へ赴いていた。そして戦線の拡大に伴って、スタンディングストーンを要塞化して足掛かりとしていた《魔王》
の軍勢がブラックサンド軍と接触し、交戦を開始したのである。
ガスキン卿は《魔王軍》の奇襲を受け、《異界の騎士》に本陣を強襲され、戦死したらしい。唯一の朗報は、その際、ガスキン卿の警護にあたっていた『無名の闇』の導師が、《異界の騎士》を
異世界に放逐する事に成功したということであった。
しかし、セリーナは、その導師に疑いを持つ。それだけの実力のある導師が、何故、《異界の騎士》の強襲を許したのだろうか?
彼女は慎重にその疑念を心に秘めておくことにした。
ガスキン卿の甥であるフレア・ブロワートは、赤神龍探索の任を外され、ガスキン卿の後を継いで指揮を執るよう命じられる。フレアは、この措置に納得が行かなかったが、
最終的には騎士団長の命令に従って、任務を外れる事になった。
セリーナの同期であり、ガスキン卿警護の任に当たっていたノーラ・センテリスは、セリーナと同じ疑念を持っている事をセリーナに密かに明かし、今後、調査を続けると告げた。
セリーナは、彼女の身に及ぶであろう危険を指摘して、警戒するように言い、二人は別れた。
フレアを除いた四名は、更にスカル河を遡る旅を続ける。
ブラックサンド軍の勢力圏を出て暫くすると、危険なモンスターが一行を襲う事もしばしばだった。
そして、彼らは野山の危険をかいくぐりながら(途中、ゴブリンの傭兵団『ハシャクの牙』との遭遇戦があったりもしたが)、スカル河上流の交易都市ミドへ辿り着いたのだった。
to be continue
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