戦乱(2003/09/21)
マリーナ・フラジャイル[女戦士]、アービン・ファロット[男魔術師]、アーシア[女神官]、ウーモン・カンダール[男騎士]


 山賊退治の間にも、世の中は動き続けている。
 中央平原で起きているポートブラックサンド軍と魔王軍の戦争の影響で、数多くの流民が発生し、庇護を求めてあちこちの街へ辿り着き始めていた。
 また、ウーモンが触れ回らせた商業支援の政策や、アービンが発した人材登用とそれにまつわる数々の政策に応じた者たちが、ぽつりぽつりと現れ始めていた。

 カランダには、以前、赤龍探索の一行がその途上で出会ったゴブリンの傭兵団《ハシャクの牙》が訪れる。
 ファルカスらにハーパノースに駐留しているブラックサンド軍への紹介状を貰った《ハシャクの牙》であったが、ハーパノースにあったハシャク神の祠がブラックサンド軍に破壊され、 その祠を守護していた者達も殺された事を聞いて、ブラックサンド軍に助力することをやめたと言うのである。
 尤も、資金に余裕のないカランダにとって、彼ら傭兵団へ支払わねばならない給金は大きな出費であったが、ハーパノースの動きに警戒心を抱いているヴァンは、彼らを雇い入れることを 決断した。
 ヴァンからのその報告と、その維持費用の一部援助を求める書状に対し、ウーモンはカランダの行政はヴァンに一任している事を理由に資金の拠出を突っぱね、その才覚を試すのだった。

 また、アッパーホースには、一年ほど前に訪れたことのある放浪の騎士シュリークが再び訪れていた。
 シュリークは、ポートブラックサンドの密偵としてウーモンとの密談を行い、ハーパノースが欲しいか否かを尋ねた。ウーモンは、ハーパノースが現在のブラックサンド軍の勢力図からすると 突出し過ぎていることを見てとり、彼らがその拠点を持て余していることを推察する。その他にも、恐らく様々な問題が起きているのだろうと見当をつけながら、彼はその持ち掛けを受け入れる。
 シュリークはその返答を受け取り、再び街を去っていった。

 見聞の旅を続けるアーシアは、ハーパノースに辿り着き、路頭に迷う難民の姿を目撃する。彼らは中央平原で起きている戦乱から逃れてここまで辿り着いたのだった。 しかし、ブラックサンド軍の軍事拠点であるハーパノースが、彼らを受け入れるはずもない。
 今までと同じように、彼らの救済にあたるアーシアの元に、故郷を捨てて逃げてきた難民達は自然、集まっていく。
 ひとつに集まり始めた難民の集団を見たハーパノースの守将はこれを危ぶみ、翌朝までに退去するよう勧告を出す。
 その勧告を受けたアーシアは、一週間の猶予を願い出たが、使者として訪れた騎士はそれを聞き入れず、翌朝までにここを引き払わない場合には武力を以て殲滅すると言い渡した。そして、 妙な行動を起こせば、刻限が来る前でも武力行使をすると警告した。
 アーシアは渋々それを了承し、集う難民達を説得する。
 元々、ブラックサンド軍の進軍に伴って焼け出された難民達は、ブラックサンドの兵への憎悪を募らせるが、アーシアの説得を聞き入れ、大事には至らずに済む。
 アーシアは彼らに、ウォーラかカランダへ向かえば、受け入れて貰えるだろうと告げるが、難民達はアーシアの起こす奇跡(魔術)を目の当たりにしているため、彼女から離れようと言う者は皆無だった。
 彼女は、難民達の受け入れの準備をしてもらおうと、ウォーラのアービンに魔術を使った連絡を取ろうとするが、それは彼女らを監視していたブラックサンド兵に見咎められ、断念せざるを得なかった。
 やむなく彼女は、彼女に長く付き従っているハナに、一足先にカランダへ行き、この件を伝えるように指示を下す。弱者の救済という、ハナがアーシアに惹かれ心酔する元となった行動に、 最近のアーシアの(その基本方針とは異なる放浪という)行動に疑念を抱いていたハナは、再び感激し、また、故郷カランダへ戻れると言うことも相まって、喜んでその指示を受け入れ、 独りカランダへ先発した。
 だが、この行動が彼女らを監視していたブラックサンド軍の目に止まらぬ訳はなかった。なにがしかの工策や下準備を危惧したブラックサンドの手によって、ハナはハーパノースを出て間もなく 捕らえられ、人知れずその生涯を終えた。
 そうとは知らぬアーシアは難民達を引き連れ、カランダへ向かって出発する。400人を越える集団を一人で率いるのは並大抵の事ではなく、途中数多くの脱落者を出しながらも、彼女は脱落した者のために 幾人かを残しつつ、二ヶ月程の時間をかけてカランダへ辿り着いた。
 カランダに戻っていたマリーナは、それを見て、難民の数の多さに、自分の手には負えないと判断し、アッパーホースのウーモンに判断を仰ぐ。
 ウーモンは取り急ぎカランダへ急行し、アーシアとの会見に臨む。
 難民の受け入れを求めるアーシアに、ウーモンはそれを許可しなかった。アーシアが連れてきた難民の数は、カランダの人口を上回る数だったのである。まして、未だ完全に再建のなっていない カランダに、一切の余力は残っていないのである。
 それを判らずに難民を連れてきたアーシアに、ウーモンは手厳しい非難を浴びせる。アーシアは、カランダの復興が既に為っているものと判断しての行動だと、自らの行動の理由を述べたが、 逆にウーモンはそれを、勝手な思いこみの無責任な行動だと断言した。そして彼は、アーシアを相手にしていても埒が開かないと判断し、今度は難民達に向かって語りかける。
 それは、彼がこれまでに取ってきた政策のひとつである、開拓民の募集告知であった。難民達は、自らの土地を持てる希望と目の前に提示された資金の額に惹かれ、次々に賛同を示した。
 そして、難民達はカランダから、方々へと向かってそれぞれ旅立って行ったのだった。

 その頃、中央平原で、魔王軍によりブラックサンド軍の拠点が強襲され、ブラックサンド軍が敗退したとの報が入った。
 ブラックサンド軍が前線基地としていたハルーダは壊滅し、ブラックサンド軍は撤退を余儀なくされたと言うのである。しかも、ハルーダを攻め滅ぼしたのは、竜の一団だと言うのである。 竜族は神の眷属であって、今まで俗世の戦いに兵団として助力したことは無い。竜騎兵を所持していると言われているポートブラックサンドも、その実体は下位種の亜竜ワイバーンを使役 しているに過ぎない。
 この一報は、世の中を震撼させるに充分であった。

 一方、フォーロス・カルバーンと名前を改めたシモンたちは、中央平原でのブラックサンド軍の敗退の報を聞き、この機に乗じて軍事行動に移るべきか否かの決断に迫られる。
 ブラックサンド軍の前線が弱まった今、自分たちの力を世に示す絶好の機会なのである。それに、ブラックサンドの勢力圏内に孤立する形となっているフォーロス・カルバーンにとって、 ブラックサンドに対する交渉の余地を僅かなりとも作っていかねば、カルバーン王国の復興はおろか、そのまま押し潰され兼ねない。
 混乱に乗じて軍を動かし領土拡張を唱えるクリムゾンと、この機会を材料にブラックサンドとの交渉を有利に進めようと考えるロアーの間で、意見が割れる。考えを求められたシモンは、 もうそろそろ軍事行動を起こし、ポートブラックサンドや周辺諸国に対してアピールを行わねばならない時期だとの見方を示す。ロアーは、軍事行動を先に起こす事が、ポートブラックサンドの 機嫌を損ねることを危惧する。中央平原へ出るためには、イスタ河を越えねばならず、どうしても迅速な行動が難しくなる。有事の際の対応が遅れがちになる、と言うのがロアーの見解であった。
 アービンは、もしもいくつかの拠点を手に入れたことをポートブラックサンドに咎められたならば、自分たちはブラックサンド軍に代わってその都市を鎮圧したのだと言って、 交渉材料としてさっさと引き渡してしまえばいいとの考えを示す。
 やがて意見はまとまり、フォーロス・カルバーンは中央平原へ出兵するとの方針で結論を出した。

 この結論を出すために、幾度も行われた会議の間のある日、アービンは少し気に掛かることを立ち聞きする。
 その日、彼は定例よりも早くシモンの元を訪れてしまったのだが、その時、シモンと何者かとの会話を耳に挟んだのだった。
 聞き覚えのない男の声はシモンに向かって「私としては、貴方に中央平原に出て貰いたい」と言い、シモンはそれに応えて「それが本当だと言う証拠は?」と尋ね返した。アービンが聞き留めた のはそこまでで、それきり部屋の中の気配がひとつ消えたのを彼は感じ取る。
 アービンがその部屋に入ると、そこにはシモン以外誰一人の姿もなく、何かの考えに耽るシモンの姿だけがあった。
 アービンはシモンに事情を問い質すが、シモンはそれをはぐらかす。尚も追求するアービンに対しシモンは、それは自分一人の問題であって、フォーロス・カルバーンには関係のないことだと 応えた。アービンは逆に、シモンは既にシモン自身一人のものではなく、フォーロス・カルバーン全体のものでもあることを指摘して、その態度を戒めた。
 それを聞いたシモンは苦笑し、その問題がもしも自分一人の手に負えないものだったなら、その時は力を貸してくれるよう、アービンに頼み、アービンは冗談混じりに、手遅れにならないうちに 言ってくださいと釘を刺して話題を切り上げた。
 後日、アービンはロアーとクリムゾンそれぞれに、この件を明かす。クリムゾンにはシモンがなにがしかの悩みを抱いていることだけを、ロアーには正体不明の訪問者があったことを含め、彼は 説明した。
 ロアーは、誰にも悟られずに領主であるシモンの元を訪れたその訪問者の存在を危惧する。影でそういった連中に対して警戒しているウィンドさえも出し抜いたと言うのであれば、相当の手練れの 間者に違いない。
 ロアーはウィンドに話を聞いてみることを約束した。

to be continue

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