神々(2004/05/05)
ファルカス[男騎士]、ダーム[男間者]、セリーナ・クレセント[女魔導師]


 風の峰を越え、大陸南東部へ降りるべく進み出した一行は、山頂近くから眺めた中央平原南部に何らかの軍勢を発見した。
 セリーナの遠見の術で調べると、それはどうやら八俣の軍勢のようだった。何故、八俣の軍勢がこんな所まで出てきているのか判らなかったが、魔法による警戒態勢を感じ取ったセリーナは、 それが演習などではないことを確信する。
 下山までの間、彼女は数度に渡り八俣の軍勢を魔術によって観察したが、それによって判ったのは、彼らが魔王の悪魔の軍勢と交戦していたことだけで、彼らの真意や目的は依然掴めなかった。

 山を下りたセリーナの元に、今度は『無名の闇』の学長からの通達が入る。
 セリーナの同僚であるノーラ・センテリスが、黒蓮騎士であるフレア・ブロワートを無断で連れ去り、消息が掴めないらしい。『無名の闇』のメンバーは、彼女らを見つけ次第連絡を入れるように、との 指示であった。
 セリーナは胸騒ぎを覚えたが、任務遂行中に別の捜索に力を入れるつもりもなく、ただ事実をファルカスらに伝えるのみに止めた。
 師であるフレアの報に、ファルカスも彼の身を案じるが、国を遠く離れた今、何をできるわけもなく、ただ先を目指すことにした。

 一行は立ち寄ったラスと言う名の集落で、この先の情報を求めたが、大した収穫は得られなかった。
 ここより北に、セスカナンという町がある事を聞いた一行は、北を目指す。
 しかし、辿り着いたそのセスカナンは戦争の真っ最中であった。
 セスカナンには悪の神である《悪意》のスラング神の旗が翻り、人間の兵だけではなく、魔界の生き物らしき深紅の化け物とが並んで、町を攻め滅ぼそうと押し寄せてくる悪魔の軍勢と戦っていた。
 それを見た一行は、セスカナンへ入ることを躊躇った。
 ファルカスとダームの虚無の徴に気付かれれば、面倒な事になるのは必至だからだ。
 かと言って、このまま放置すれば、補給路の整っていないセスカナンが敗れるのは時間の問題に見える。
 今は魔王軍と戦っている勢力が数多くあるに越したことはない。そう判断した一行は、この一件を本国へ連絡する。
 セリーナは『無名の闇』の学長にこの一件を報告する。学長はセリーナの判断を聞き、即座に手を打つことを約束した。
 一行はセスカナン近郊で待機をし、結果を待った。
 翌日、諜報組織『ハデス』の一員が彼らの元を訪れる。彼によると、ブラックサンドの街にあるスラング神殿経由でセスカナンへの援助を行おうとしたのだが、何故か全ての悪神教の神殿は 空になっていて、その手段を取ることができなくなったらしい。その為、彼がブラックサンドの使者として送り込まれたのだと言う。
 一行は、彼の護衛として共にセスカナンへ赴いた。

 セスカナンの指揮官アラストールに会うことができた一行は、アラストールがおよそ指揮官に向かない短絡思考の持ち主である事を知り、落胆する。しかし、セリーナはその男の影に潜む 人外の何かに気が付いた。
 交渉が平行線を辿り、解決の糸口さえ見えなくなったころ、影に潜んでいた何かは姿を現した。
 それは絶世の美女であったが、その美しさは逆におぞましさを伝えてくるような感じがした。押し寄せてくる不気味な気配は、彼女が魔族である事を明らかにしていた。
 彼女は神話の時代、《死》の神クルシュに仕えた四天王の一人、《血界の女王》シェヴァリナージャであった。
 シェヴァリナージャは魔王軍の勢力の拡大を快く思わず、アラストールに力を貸してセスカナンの防衛に当たっていたのである。
 シェヴァリナージャは、一行の持つ虚無の気配に薄々勘付いているようだった。セリーナの魔術によって、その虚無の徴は隠されていたが、魔界の主の力量は何かを感じ取っていた。
 女王は使者の言葉を無造作に遮り、使者をここへ使わした魔王ハニュールを呼び付けた。
 使者に預けた使い魔で、会談の様子を見ていたハニュールはやむなく姿を現し、会見に応じる。
 長い時間を掛けて話は辛うじてまとまり、ポートブラックサンドとセスカナンの間で協定が結ばれた。ポートブラックサンドはセスカナンに物資の供給を行うこととなった。

 ファルカスは、アラストールにブラックウッド平原のカルバーン王都がどうなっているのかを尋ねた。アラストールは、魔王軍の進軍速度を考えるに、既に平原は魔王の手に落ちているだろうとの 考えを示した。
 ファルカスは、赤神龍の探索の道が断たれたことを感じ、魔王ハニュールに探索の断念を報告した。
 それを聞いたハニュールには特別な反応は見られなかった。この後は、前線に復帰して戦に加わるだけだと魔王は言ったが、ふと思い付いたように彼はひとつの任務をファルカスの前に提示した。
 大陸北東部の活火山、火吹山に赴き、一振りの魔剣を回収してくる、と言うものである。
 魔剣はかつてハニュールが自らその地に隠したものなのだが、魔王ザラダンの魔導実験によって火吹山が噴火し、今はどうなっているか判らないのだと言う。
 ファルカスがこれを引き受けなければ、魔剣はハニュール自身が回収に赴くつもりらしい。
 魔王はファルカスの返答を待たず、返答はあとで言いに来るようにとだけ言い残して本国へ帰還した。
 一行は、ひとまずブラックサンドへ帰還することにした。

 ポートブラックサンドへ帰還し、しばらく考えた末、ファルカスはこの任務を引き受けることにした。
 そして、かねてより誘い続けていたダームを自らの従士として正式に取り立て、この任務に共に赴くことをハニュールに返答する。
 ハニュールは、一度市井に降りたダームを抱えることに良い顔をしなかったが、ファルカスがその責を全て負うことを条件にそれを認めた。
 ファルカスは、ハニュールを通じ、セリーナにも協力を要請する。
 セリーナは学長からその話を聞き、任務に就くことを了承した。

 魔剣の回収は、難しいものではなかった。
 ハニュールの案内によって火吹山まで飛んだ一行は、セリーナの探知の魔術と使い魔の力によって、その日の内に魔剣を発掘する事に成功する。
 その魔剣は、武器としてではなく何らかの呪具としての性質を帯びていることにセリーナは気付く。
 恐らく、この魔剣によって何らかの効果が発動するようになっているのだろう。
 魔剣と関わりの深い何かが収められていた場所として、一度案内された亡霊都市ヘルハンの地下の様子を思い浮かべ、そこに収められていた何らかの魔導具がこの魔剣によって 起動するモノであったのだろう。
 それが一体どんなものなのか、ハニュールが語ることは無かった。

 帰還したファルカスは戦線の状況を聞き、騎士団長アンベリッグに上申を試みる。
 ウォーラに居を構えるフォーロス・カルバーン、カランダを治めるザマダール王国、この二つの勢力と共同戦線を張るべきだ、と彼は主張したのである。
 ファルカスの説得力のある弁舌は、アンベリッグを納得させるに充分だった。アンベリッグはその意見を軍団長であるシャー・イェンに伝えることを約束した。

 その頃セリーナは、行方を眩ませたノーラとフレアの件について、捜索の指揮を執るトッツの元を訪れていた。
 クランロガールの聖職者セラフィナ・ノートンが探していた《獅子王の御子》フレア・リオ・ブロワートのこと、そして騎士フレアにあった"火"の気配のこと。
 トッツはさしたる驚きもなくその報告を聞き、クランロガール方面に二人が向かっている可能性を示唆するセリーナの意見を聞き入れた。
 トッツの元から自らの研究室に帰ったセリーナは、ノーラの生死だけでも突き止めるべく、探知の術を行使する。
 しかし、彼女が放った魔術はまるで途中で燃え尽きたかのように消散してしまう。
 セリーナは『無名の闇』の導師らの間を聞いて回り、二人の行方を探知しようとした術がどうなったのかを調べた。すると、皆同じような現象で術が失敗に終わっていることが判明する。
 しかも、正規メンバーに取り立てられて間もない一人が、術の失敗と共に焼死していると言うのである。
 死んだその魔導師がフレアの居場所を探知しようとしていたことを聞いたセリーナは、探知術を極めた使い魔を召喚し、同じ術を行使させる。
 すると使い魔は、探知の術を放った直後、唐突に業火に包まれて燃え尽きたのである。
 セリーナは、その業火に、昔感じた似たような気配を感じ取った。

 それは、風の峰、あのクレバスで感じた神界の気配だった。

to be continue

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