このページは、異能使いオンラインセッションを円滑に進めるためにATM@GMが試行錯誤してつくったページなのです。みぃ☆
異能使い Online Session ver.ATM
【竜の呼び声】
cast:風間慧,風間勇一,武田円造,御影信,レイチェル=沙門
Opening Phase:虎穴に入らずんば虎子を得ず [悪魔の囁き]
トルグット氏の書斎では、気が気でなかった。博士は全く気づいていなかったが、書斎の中にいたのは二人ではなく三人だったからだ。
三人目は、博士の書斎にあるウラド・ツェペシュ公の肖像画の脇に、黒い影のように静かに佇んでいた。
その黒衣の魔人が、この一件に関わっていることは、とうの昔に判っていたが、その魔人の目的が何なのかはさっぱり判らなかった。
ただ、そいつのことは、気に食わなかった。
それは、一番最初に会った時から変わらなかった。まぁ、そいつと初めて顔を合わせた時、ちょっと勝ち目のない争いをするハメになったからかもしれないが。
(万策尽きた直後に、あいつらが還ってきてくれてなかったら、どうなっていたことか)
とにかく、その男がいたお陰で、トルグット氏に訊こうとしたことは訊けず、トルグット氏が話そうとした話もろくすっぽ耳に入らなかった。
魔人は、神経を逆撫でするような、不愉快な、穏やかな、微笑みを静かに浮かべ、微かに首を傾げて囁いた。
「どうぞ、私のことはお気になさらず。そちらの用事が済んだら、少し貴方と話したいことがあるので、待たせて頂きますよ」
"お気になさらず"?
んなの出来るわけがないだろう。そもそも、こいつが関わってマシなオチがついた話を俺は知らない。
だから、話が本題に入るその前に、俺は自分が嫌になるほど下手な言い訳をして博士の家を退去せざるを得なかった。
強い日差しが真上から照りつけるその路地に、魔人の招きに応じて踏み込むと、急に街の喧騒が遠のき、陽が沈んだかのように空気の温度が下がった。
こういう現象には商売柄慣れているが、楽な気分で臨めたことは一度も無い。大体、こういった場所に一人で乗り込むハメになったときは、力及ばずくたばることは覚悟の上だが、今はそんなつまらないオチを付けるわけには絶対にいかない。
その俺の過度の緊張を嗅ぎ取ったせいか、魔人の姿が視界に入るや否や、問答無用で飛び掛ったのはユアだった。
「――やめろ!」
叫んだ時には、岩をも切り裂く彼女の爪が魔人めがけて振り下ろされていた。
魔人はちょっとだけ不愉快な表情を浮かべ、それに応えるように更に空気が冷え込んだ。凍てついた空気が彼の姿を霞ませ、ユアの目測を誤らせる。ユアの爪が地面をえぐり、魔人はいつの間にか手にしていた漆黒の刀を彼女の頭を狙って無造作に振り上げた。ユアは、人狼ならではの鋭さで、振り返りもせずに地面を蹴って壁を足場に宙へ舞い上がり、振り下ろされた刃を難なくかわして見せた。標的を失った魔人の刀が太陽の匂いのする古い土壁を浅く斬り、土ぼこりを散らす。不機嫌そうな表情を更に強めた彼は、荒っぽい仕草でユアを斬り殺そうと再び刀を振り上げ、再び土の飛沫が飛び散った。
振り下ろそうとしたその刃が不意に返され、小さく煌く何かを跳ね返す。澄んだ音を立てて、その輝きはあらぬ方向へ吸い込まれるように消えた。
そのちっぽけな武器を投げ放ったのが自分であることに気づいたのは、投げ放った形のまま伸ばされた自分の手を見てからだった。
自分がユアを守ろうとしたことに気づいたのは、更にその後だった。意外そうな金色の目をしたユアが俺を振り返る。
その目に浮かぶ感情を読み取る前に、殊更不機嫌な声と表情を取り繕って、俺は視線を魔人に移して言った。
「用はなんだ。俺はお前みたいな魔人と気安く喋る趣味はない」
「かつてのお仲間から逃げ回る今でも、ですか。面白いことを言いますね」
黒衣の魔人はおどけたように微笑んだ。
「人であることをやめても、彼らに義理立てするとはね」
「無駄話をしに来たわけじゃない。つまらないことを聞かせるために呼んだんなら、俺は帰らせて――」
「人であることをやめたのは、別に貴方だけではない。気にすることはない」
そう言って、魔人は涼しげに笑った。胸の奥で、嫌な予感が蠢いたのを感じた。空気が冷えてきたのは、結界のせいか。あたりが暗くなってきたのは、陽が翳ったせいか。
「貴方がお探しの方から、貴方をご案内差し上げるように言い付かりましてね」
そして彼は、急に嘲るような笑みを見せた。
「私の言葉を信じるも信じないも貴方次第ですが、紫さんに会いたければ、連れて行ってあげましょう」
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