神槍の勇士


天地創生より幾星霜
世界に数多の変わらざる理あり
世に生を受けしもの
生き 老い 死を迎え
再び塵へと返るもまた必定なり

されどここに 森羅万象の理を超越せしものあり
その姿 肉も皮も腐り落ち
残るは骨ばかりなり
されど彼の者 なおその巨躯と
在りし日に宿せし英知を留め
生死の境目確かならぬともがらを引き連れ
多くの生者に恐怖をもたらさん
骸骨竜−それがこの世にありしは
勇者に討たれし 畏怖すべきものの無念か
それとも 闇の眷属の戯れか

しかし よに猛き存在ものが在るならば
そに挑めるものもまた在るなり
死者に安寧をもたらす 大地を現す緑でその身を包み
金色に輝ける竜殺しの槍を携えた
八徳の恵みを受けしもの
汝ら 覚えよその名を
ブリューナク−いと気高き 神槍の化身の名を!

最早その眼窩に瞳はなけれども
それでもその目に 忌まわしき勇者の影を映したるか
骸骨竜は丸太のごとき巨腕を
大鉈の如き鉄爪を振るい
煉獄の炎すら凍てつかせる息吹をもって
ブリューナクの魂の鼓動 止めんとするなり
されどブリューナクもまた勇士
匠なる槍技はいと容易く
骸骨竜の一撃を受け流し
内に宿せしくろがねの意志を以って
竜の息吹を突き破らん

これこそが−骸骨竜こそが
今 勇士が討つべき唯一の敵なればと
その一意を持って突き出されし槍撃
その速きこと まさしく神速
神槍の名に違わぬものなり
最早痛みを感じることすらあたわぬ身が
苦悶の叫びを上げるは何故か
生者で在りし頃の記憶か?
矮小なるものが己を傷つけしことへの怒りか?
それとも−眼前の者が己を討ち滅ぼすことへの畏れか

何れの故なれか知らねども
骸骨竜は狂乱の如き様で勇士を襲う
地の底より紅蓮の業火を
天空より流星と雷を
己が腐敗より腐毒を招来し
巨躯と冷気の吐息を以って
運命さだめに抗わんとするなり

運命さだめ
そう 運命さだめ
如何様に骸骨竜が死力を尽くそうとも
勇士が彼の者の前に立ちはだかるならば
竜の滅びは 既に必定
炎を 流星を 雷を 毒を 凍れる息吹を 純然たる力を
勇士は その全てを打ち破った
陽光の輝きを宿す 竜殺しの槍は
勇士が苦難に打ち勝つたび
闇に沈みし竜に 痛撃を与える
かくて打合うは幾十合
大地を鳴動させ 骸骨竜 遂に動かざる骸へと返らん
偉業を果たせし勇士よ
今は汝に 栄光と賞賛と そして休息を
千里の彼方を目指す汝の道程は
未だ道 半ばなのだから……