光影
秋の嵐 突如として静寂に帰し
鳥の
何時の間にか途絶えん
無辺の天も
相共になりて静まりかえるは
その狭間に生を受けし 類い希なる戦士たちの対峙を
英雄譚とも成り得べき 異数の戦いの予感を
感じ取りたる故なるか
対峙するは
真 相反したる二人の戦士
片や 漆黒の装束に
手に携えたるは宵闇の黒剣
茫洋たる面からは
凄烈たる様は感じられねども
瞳が放つ意志は
さながら闇夜に輝く昴の如し
人 彼の者の真の名は知らざれど
畏敬をこめてこの名を呼ばわらん
シャドウ・ファング
光も闇も等しく咬み破る影なる牙 と
彼の影なる牙と相対せしは
艶やかな色にて装う少女
その
そを喩えるなら 咲きこぼれる花
天照らす陽光の下にこそ
その姿は真に映えんと見ゆる
されどその少女が携えし獲物は
己が身の丈よりも長大なる
されどそを構えて立つ様は
正しく歴戦の勇士のそれなり
背にも双刃の偃月斧を背負い
腰に差したる三日月刀もまた
彼女が異数の戦士たる証左ならん
その リンという名の少女
言うなればそは
野にて咲き誇りたる薔薇か
如何に遠目には麗しく映ろうと
邪心持て掴まんとせば
即ち鋭利なる棘が邪なる者を傷つけん
対峙せる二人の間を 一陣の風と共に舞い行く木の葉
そは天がもたらした戯れか
それとも地が振りし戦旗か
いずれかは余人には与り知らぬことなれど
そを期として二人の戦士は地を駆けた
風斬る音と共に リンの振るう槍斧は
天から地へ落とされる
されど 真の影が捉え所なきように
影牙はその一撃を容易く受け流す
転じて影牙は黒剣を振るう
虚を突いて放たれたその一撃
見えざりしこと さながら闇の中の影
されど リンが
闇を払い 影を浮き上がらせるかの如く
その一撃を 槍斧で容易く受け止めた
剣戟の音 鳴り響くは幾十合
いずれも天下に名の知られし戦士なれば
容易に闘いの
影牙の凶刃 リンを捉え
かの少女に不治の傷を負わせる
少女が怯みしを好機とばかり
影牙は爆炎と雷光を天地に呼ばわらん
地よりの爆炎 天よりの雷光
共に少女を打ち据えん
されど 茫洋たる黒衣の男の面に
初めて浮かびし表情 そは 驚愕
常人なれば致命たるその連撃に
少女は泰然不動として耐え抜いた
嵐に翻弄されようと
大地に固く根付いて抗う花の如く
少女もまた 巧みなる剣技で
影牙を討たんとする
槍斧で岩を断ち 大地を穿つ一撃を
偃月斧で 容易には治らざる 深き傷を
三日月刀で 脚を奪う連撃を
小刀で 死に至る毒撃を
少女は己が学んだ全てを使い
影を討ち倒さんと欲した
されど かの黒衣の者
その異名 即ち影なれば
受け 流し かわし 癒し
その悉くを 凌いで見せた
少女と影が戦う様
そは言うなれば 幻想舞踏
常より切り立たれし
互いの終わりを求めて 少女と影は足を踏みならす
華やかな舞踏会も
時至れば終わるように
少女と影の闘いも
ここに終演を迎えたり
凶刃の一撃をその身に受け 少女は苦悶する
影牙は躊躇わず 神秘の力を
少女は二度まで そに抗って見せた
されど 三度目の奇跡には 遂に至らず
少女が倒れたその時に
天空を吹き渡った一陣の風
そは少女に向かってあげた嘆きの声か
影に向かってあげた賞賛なのか
知るはただ 天地ばかりなり……