騎士の名誉


暗雲天に満ち、白雪石畳を覆う
群衆皆静まり返り、括目して対峙する戦士をその目に留めん

一方の名はステイシス、敵する全ての者の時を凍てつかせる勇者
他方の名はファイゼル、誉れ高き群青の騎士
凍てつく風の唸り、舞い散る雪
いずれも戦の気配に猛るなり

戦士は何れの為に戦うや?
求むるは名誉か?
掌中にせんと望むは富か?
−否、彼の者たちの戦うは、只愛の為なり

白刃の閃き刹那ごとに入れ替わり
立ち代りては得物を打ち鳴らし
しぶく紅の血潮、白雪を汚さん

呪を紡ぐ声、天に挑むかの如く朗々と響き
風を打ち破りて放たれし力
炎を招き、光を放ち、死毒を生じ、傷を癒さん

いずれ劣らぬ力と力、技と技とのぶつかり合い

ステイシスは彼の者の時を止めんとし
天をも焦がす炎を放ち、岩をも穿つ光刃を呼び
風すら切り裂いて戦斧を振るわん

されどファイゼルも騎士の名を持つもの
邪なる魔を払う術を使い、癒しの力をその身に呼び
匠なる槍技は葦の如く敵の一撃を受け流さん

天地もともに固唾を飲み、兵達の戦いを見守るなり

汝ら見よ−
その名にそぐわぬ嵐の如き猛々しさをもって
敵を討たんとする者を!

彼の者の力には悪魔も跳散し
竜も躯を地に横たえん

汝ら見よ−
その名に違わず荒荒しき力をその身に受けながら
なお戦いを挑む者を!

彼の者の不屈さには死者の王も魔力を尽きさせ
竜の炎も枯れるだろう

いずれも真の勇者なれど、天に二日の無きように
最後に立ちうるもまた一人

そして時は至れり

爆炎と光、時を置かずして騎士の身をつつみ
彼の者、終にその身を白雪の中に横たえん

天よ、地よ、照覧あれ!
勇者たちの死力を尽くした戦いを!

汝ら称えよ
その手に勝利を掴みし者の名−ステイシスを!
されど汝らよ
忘るることなかれ、全霊を持って戦った勇壮なる騎士−ファイゼルを!

子よ、若人よ、老いたるものよ
今宵妾の語りしは、いずれ汝らも忘れよう
されど忘るなかれ、汝らよ
彼の者たちの気高き魂を

彼らの姿が広漠たる地に消えようと
唄い継がれる唱歌の如く
その心こそが時を越えて受け継がれるべきものなれば……