加州ベイエリアの公共交通が瀕している、破綻の危機
さて、アメリカの景気が一向に上向かず、商業活動が沈滞する中で、多くの公共交通機関が、いま危機的状況に置かれています。なぜなら、財政的に依存している売上税などの「税収」が急激に減少したからなのです。
おまけに、最近の好景気の中で「全く必要に迫られていなかった投資」を行なったおかげで、本来のバス運営が出来なくなりつつあります。
たとえば、加州ベイエリアのサウスベイ地域(サンタクララ郡・・・・公共交通の運営は、Valley Transportation Authority (VTA)が行なっています)を見てみましょう。現在、イーストベイのフリーモント−サンノゼ間にはVTAの高速バスが終日運行されており、30分に1本の頻度で乗客を運んでいます。もちろん、立ち席が出るようなことはほとんどありません。
近年、賢明な選挙民の直接投票によって、現在サンフランシスコからフリーモントまで来ているBARTをサンノゼを経由してサンタクララまで延伸することが承認されました。これには、38億ドル(要するに、5千億円前後)がかかります。
さて、サウスベイが絡んでいるのはBARTだけではありません。ライトレールです。
VTAのライトレールは現在3路線。最初に完成したガダループ線は高速道路の中央分離帯をうまく生かし、バスでは決して出来ない高速大量輸送を行なっています。
ただ、問題なのはそのあと出来た路線・・・マウンテンビューまで伸びるタスマン線(1999年一部完成・残りは2004年開業にむけて建設中)は、元々バス路線「#20」をほぼそのまま置き換えたもので、路線もまさしくバス路線のようにあちこちで左折/右折を繰り返すようなものです(緑がタスマン線。特にマウンテンビュー近辺の、くねくねした線形をご覧ください)。よって、ライトレールが本来発揮すべき「高速運行」は、この路線では根本的に出来ず、所要時間的にも、バスとほとんど変わらない印象です。
もともと#20のバスは、比較的混んでいた路線ですが、それでもバスでは捌ききれないほどの乗客は、端から存在しなかったのです。この路線を建設する時、「沿線」にあるハイテク企業に配慮した結果、このような「あっち行ってこっち行って・・・」の路線が出来たと思われますが、今ではそのハイテク企業が不況に見舞われているわけです。予定が狂っちゃった、というところでしょう。
さて、後述するサービスカットで、この路線は週末、30分に1本の運行にすることを提案されています。おそらくそれでも車内はがらがらでしょう。この程度の乗客は、普通のバスを20分に1本走らせればそれで事足りるものなのです。
まだそれだけではありません。サンノゼダウンタウンからキャンベル市に向けて現在建設中の 「バソナ線」(2005年完成予定)にいたっては、現在バス路線すら存在していないところに線路を敷いています。キャンベル市に在住している小生ですからこれは実感として良く分かるのですが、今でもキャンベルからサンノゼには乗り換えを1回するだけで行くことが出来ます。それらのルートが特別に乗客数が多くて困っているということは、全く無いのです。
そもそもこの路線が作られた背景には、既存のユニオンパシフィック鉄道の路線敷をちょっと譲ってもらえれば、簡単に用地が取得できる、という安易な側面が見て取れます。政治家が人気取りのためにぶち上げたアドバルーンみたいなもので、完成した暁にいったいどれだけの利用者があるかというのは、VTAの担当者にとっても「????」なのです(オープンハウスで質問してみましたよ。「まずはサンノゼへの直通バス路線を作って、どれだけの需要があるか見極めてからでも、良かったんじゃないの?」、と。そしたら、担当者も、結構苦笑いしてました。「あなたも良くお分かりですねぇ・・・」みたいな顔をして^^)。
これらの建設費がVTAの財政そのものを危機的状況に追い込みました。追加の財源が見つからない場合、2003年6月末をもって交通局の運営が出来なくなる(すなわち、破綻する)とさえ、公式にアナウンスされました。今まで無かったライトレールやBARTは、完成してからも大量の財源を必要とします。客が居ても居なくても、金がかかる代物なのです。今まで無かった新しい「ハコモノ」が増えるのですから、恒久的な財源を追加で用意しないと交通局が破綻するのは当たり前。これも我々利用者の間では1年以上も前から認識されていたことです。
この危機を乗り切るために、VTAは2003年4月から大幅なサービスカットをすることを提案しています。減便、運行時間帯の縮小、一部路線では路線そのものの短縮や廃止、週末運行の停止など、利用者が受ける影響は計り知れません。サービスが不便になって、場合によっては運賃が再び値上げされれば、利用者が減るのは日を見るよりも明らか。それがまた次のサービスカットにつながっていくという「悪循環」が既に生まれています(運賃値上げ+サービスカットは、2002年7月に行なったばかり)。
ここまで危機的な状況に陥ったのは、公共交通を支えるコミュニティに大きな責任があったのは事実でしょう。
現実として大多数の人が自動車で移動しているこのエリアでは、ほとんどの公共交通はバスで充分捌き切れるものです。バスであれば、変化する乗客の需要に応じて路線を作り変えるのも簡単にすぐに出来ます(バスと運転手、それにバス停があれば良い)。ところが、社会には論理的な意味などまったく無しに「バスアレルギー」を持っている人たちが沢山います。バスは貧しい人たちが乗るもので、汚く、危ないものであるという固定観念が、多くの人たちに未だに根強く残っているようなのです(複数の人から、似たようなコメントを聞きました)。そんな人たちが、現状も知らずに安易に鉄道の延伸に賛成してきたのです。
実際にバス利用者である小生や、同じ職場の先輩バス利用者は、それはそれは快適にバスを利用しているのですが、景気が良かった頃にさえ、BARTもライトレールも全く不要だという認識をもっていました。
ただ悲しいかな、選挙権を持つ人たちの大多数は、結局公共交通なぞ使う気がさらさらないのです。そういう人は詳しいことを知りもせずに安易にBART延伸に賛成し、そういう認識の浅さを知った先輩バス利用者が、怒っていたこともあります。小生も、「お金があるうちにそういう鉄道は作っちゃったらいいんだよ」というお気楽な意見を、好景気の頃聞いたことがあります。
もう一つ、2002年11月の選挙で、交通財源のうち道路整備に使われる部分をしっかり確保するという提案が、難なく承認されました。これによって、交通予算のうち道路に使われる分が決まるので、公共交通に振り向けられる分が減ることになり、交通局にとってはえらいことです。それと同時に、普段からやれ「環境」だとか声を荒げて自分の周りに新しい住宅やオフィスが出来るのを阻止している皆様がいかに利己的で偽善的であるかということも図らずも明らかになってしまいました(本当に環境のことを気にするなら、いまさら道路拡充に賛成するはずが無い!)。
こんな現状の中、エリアにいくつも存在する「公共交通を考える市民グループ」が、それぞれ活動を続けています。小生はしがない「外国人」の身、税金はガッポリ払っていますが選挙権なんて無い(日本の皆さーん、国籍無ければ選挙権無いのは、世界の常識ですよ!!)ので、あまりそういう活動には首を突っ込まないようにしています。ただ、VTAの緊急ミーティングの議事録メモを見たりしていますと、このような時に「カルトレインを電化するプロジェクト(数年前にオーバーホールした綺麗なディーゼル機関車総取替えで、費用は6億ドル・・・約750億円!)だけは、トッププライオリティに置くべし」などと戯けた事をのたまっている人が居るのを見ると、市民グループの側にも、危機感が欠如した方々がいると認識せざるを得ません。
さてこれからどうするか・・・いままでどおり「外国人」の小生は、ヘタな市民グループには合流せずに一利用者として言うべきこと、言えることをVTAやメディアに発信していこうと思います。
ここまで財政が悪化してしまったのですから、ある程度のサービスダウンは止むを得ませんが、それと同時に、民間企業では当たり前の「Customer First」の姿勢、これを持って欲しいです。
狭いバスの中であたかも「お山の大将」気取りで、有りもしないでっち上げの「規則ですから」を連発し融通も利かず(こんな輩のおかげで、30分に1本のバスへの乗り換えを目の前で阻まれたことが幾度と無くあります)、
かと言ってまともに仕事している訳でもなく、一部の客を手なずけて最前列に侍らせ、片手でハンドルもって高速道路を時速65マイルで飛ばして、よそ見しながら客と大騒ぎ・・・
乗客には「飲食禁止!!」と喚くくせに自分は紙コップのソーダをちゅうちゅう吸いながらお気楽運転、その上突然スタバの前にバスを路駐してパンやらコーヒーやら買い込んだり・・・
ターミナルでは車外(寒いときも、暑いときも、暗いときも、雨降るときもありますよね)に乗客を待たせながら「出発5分前まで、乗客は乗せないことになっている」などとまことしやかに嘯きながら自分だけ空調を効かせたバスをアイドリングし続けて長いシートにゴロンと寝転んでスポーツ新聞読み耽り・・・・
こんな運転手も、まだまだ居ます(大多数の運転手は、大変素晴らしい人たちなのですが、ほんの一部のこういう輩のために、全体の印象が下がるのです)。
こういう職員には早晩退場していただき、コストをかけずに顧客の満足度を引き上げて欲しいです。
予算が削減されるのは大変辛いでしょうが、その逆境に負けず、サービスの「量」を落としても、逆に「質」、そして「顧客満足度」を上げる努力をして欲しいです。
以前、アリゾナのフィーニックスのバスに乗って驚いたのですが、かの地のバスって、交差点で違う路線のバスが出会うときに、乗り換え客がいるかどうかを、バスの屋根のフラッシュライトを点滅させて相手の運転手に知らせるんだそうです。こうしてくれればあとちょっとのところで連絡を逃して、30分なり1時間なり待たされることも無くて、便利ですよね。ここVTAでは、お互いのバスが見えているのに、お互いが停車して乗客が流れるのをあえて待たずに見切り発車する運転手が、少なからずいるのです。そりゃぁ、アリゾナのバスにはもともとフラッシュライトが付いており、通常大きな交差点なら前後にバス停があってVTAとは事情も違いますが、もうちょっと乗客の立場にたって考えて欲しいです。乗客が自分の安全に責任を持つ限り、交差点の反対側でも気持ち良く降ろして欲しいです(乗せてとは言いませんから^^)。
それに、普通30分おきのバスを、閑散路線では40分なり、45分間隔にするというプランが出されましたが、こんなことしたら、路線間の乗り換えがメチャクチャになります。運転間隔に差をつける位なら、混んでいる路線も含めて一律40分間隔!とかにした方が、余程利用者にとっては便利です。たとえそれによって、たまに混雑したバスで立たされることになったとしても・・・。
メディアやコミュニティーに胸を張れるような素晴らしい仕事をして、財政危機を乗り切って欲しいです。もしうまく根回し出来るなら、建設中のライトレールやBARTなど、すべて凍結しても良いのではないでしょうか。約束の期日に、BARTやライトレールの形をした特別バス(かぶりモノ^^)をその区間に走らせて、住民にバスの利便性を知ってもらうのと同時に、「必要充分な質と量」の公共交通も確保する、みたいな^^
直接投票で決まったから、と杓子定規なことばかり言わずに、考え得るすべてのオプションを行使して欲しいです。なんなら利用者としては、オフィスでファンドレージングのためにチョコでも売りましょうか??
地域の人たちのサポートが得られなければ、公共交通など存在し得ないということを、VTAには肝に銘じて欲しい。公共交通を趣味にまでしてしまった一利用者として、心からそう思います。
ご覧いただき、有難うございました。
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