| 2003/04/04 リピュア以降果てしなく萌えっぷりが向上している鈴凛は、ゲームでもその性格を踏襲している。万年二軍だの三軍だのと言われつづけた彼女にとうとう日の光が当たるときが来た模様。よかったね。
夏休み初日、鈴凛は僕に抱負を語ってくれた。学校に行かなくていい分発明にうちこむぞ、と。なんでもビックリするようなプランを立てているらしいが、具体的な内容は教えてくれなかった。わかっているのはただ一つ、先立つものがなければならないということのみだ。資金援助か……。鈴凛だったら、資金をひねり出すために援助交際まがいのことまでやりかねないので、ここは従容として金を出すことにしよう。もとより、僕が妹に逆らうなんてことができるはずないのだ。
アイスクリームを作る機械を発明した、という鈴凛の言葉に、ぼくはほいほいと鈴凛のラボへ向かった。学研の学習と科学についてくるようなやつじゃろかー、とか勝手に考えていたのだが、僕を待っていたのは、第二次大戦中に発明されたばかりのコンピューターもかくやと思えるような、すさまじく巨大な機械だった。ちょいと度肝を抜かれたが、すくなくとも用意されている材料は普通の生クリームやら牛乳やらなので、多分本当にアイスを作る機械なのだろう。鈴凛はビーカーやフラスコを駆使してアイス作成を開始した。実験道具を無頓着に使うあたりがいかにも理系人間らしいや、と思ったが、さすがにドライバーで卵をかき混ぜるのには引いた。それはどうかと思うヨ。
材料をセットしてスイッチを入れると、排出口から甘くて冷たいソフトクリームがメリメリと流れ落ちてきた。成功だ――一点、凄まじい量のソフトクリームが生成されたという事実を除けば。量の調整に失敗した、と鈴凛はしょんぼりした。あまりにもすごい落ち込みようだったので、僕は必死にフォローした。いやあ今日は暑いからこのくらいの量のソフトクリームくらい余裕で平らげられるさ、と宣言してすべてを食らい尽くした。
当然、その日の晩から凄まじい下痢に襲われた。
追い討ちをかけるかのごとく、翌日エアコンが大爆発を起こしやがった。こ……このままでは脱水症状を起こしてしまう……。死にかけているところに、鈴凛がやってきた。事情を話すと、「エアコンを直すくらい簡単よ」といってくれた。持つべきはメカに強い家族だね! とこのときは神に感謝した。
鈴凛に修理してもらい、改めてスイッチオン。はじめは通常稼動した。これで直ったか、と思ったのもつかの間、不穏な音を立て始めたと思ったら、何故か冷却水が逆流して僕たちの体に振りかかった。ギャー! その時は冷たくて気持ち良かったが、おかげで風邪まで引いてしまった。しぬる……。勝手に中身をいじってしまったから、修理業者を呼んだら金を取られるんじゃないだろうか? 踏んだり蹴ったりとはこのことか……
僕を酷い目に合わせたことを後悔してか、翌朝鈴凛は発明品を持参してきた。その名もハイパー扇風機風神ちゃんスペシャル、風速100キロを叩き出す優れものだという。えーと、鈴凛、君の気持ちを無下にするつもりはないけれど、でも風速100キロというのは強すぎると思うんだ。ヤフーの天気情報には「13m/s以上 かなり強い
(樹木全体がゆれる)」って書いてあるよ? それはステカセキングの100万ホーン攻撃なみに危険なんじゃ、とか言っている間に鈴凛は扇風機のスイッチをオンにした。
……昔、主人公が超能力者のドラマで、赤ん坊のころに能力を制御できず部屋中のあらゆる物をテレキネシスでぶっ飛ばす、という映像を見たことがあるが、今僕の部屋に起きたのはまさしくそれだった。扇風機は電源スイッチ以外になにもないというまことに男らしい発明品だったので、ブレーカーを落とすより他に対処のしようがなかった。殺される……このままでは殺される……!
夏休み冒頭に語っていたすごいプランとは、ロボコンに参加するロボットを製作することだという。ラボに行った僕は、鈴凛に設計図面を見せてもらった。僕は工学にはまったく知識がないのだが、とにかくすごいメカであることはよくわかった。特に、ところどころに自転車のパーツや洗濯機のパーツらしいものが使われているあたりが。まるで子供向け雑誌のスーパロボット改造図のようだな。きっとスーパーロボットのように強いメカになると思うよ。
聞いてみると、このクマ型ロボットには名前がまだついていないのだという。よーしではこの僕がゴッドファーザーになってやろう……「江戸時代に設計されたサムライ型カラクリ人形」という意味の「殺す毛」というのはどうかな! と提案してみたが鈴凛にものすごい勢いで否定され、最終的にはクマポンと名付けられた。チェッ。僕は心の中であいつは殺す毛と呼びつづけてやるぞ。なあ鈴凛、サンバイザーと四角い眼鏡をプレゼントするから両方装着してみてくれないか?
SFコメディ映画を見に行こうと誘われた。これは……レッドドワーフ劇場版! 嫌も応もなく、相伴させていただいた。何年も待たせただけあって期待に違わないデキだった。のだが困ったことが一つ。ものすごく気に入ってしまったのか、映画館を出た鈴凛がその後所構わずリマーソングを歌いつづけ、決してやめようとしなかったのである。とても気持ち良さそうに歌う鈴凛を止めることもかなわず、僕はただSmeg! Smeggin'
Hell! と心の中で叫ぶことしかできなかった。恥ずかしいったらありゃしない。
2003/04/06
同じクラスの女の子達からラブレターをもらって途方に暮れている、との鈴凛の相談を受ける。女の子「達」ってまた大人気だな。ここは一発、「鈴凛は深刻なブラコンだ」という噂を流してみるのはどうかな! 向こうの方から自発的に諦めてくれるように仕向けるのが一番いいであろ、と助言して僕はその場を去った。うまくいけばいいんだけど。相手が山岸由花子みたいなヤツで、気がついたら海岸のとある別荘に誘拐されてました、などということがありませんように。祈るしかない。
喫茶店にでも行ってくるっぺれ、とばかり家から一歩外に出た途端、黒い群れのようなものが突然僕に襲いかかってきた。環境汚染の深刻化でとうとう芝生モンスターが空まで飛べるようになったのか!? と一瞬思ったが、実はその正体は鳩だった。でもなんで僕が「鳥」みたいに襲われるんだーッ。頭上の鳩とバトルを繰り広げていると四葉が登場、すごい勢いで謝り始めた。なんでも鈴凛に開発してもらった「兄チャマ尾行マシーン一号」をこっそり僕のズボンにとりつけていたのだという。おのれいつの間に!? このマシーンは、一定時間を置いて内部に備蓄されたパンくずを少量排出する、という単純なもので、つまり僕の歩いた跡にパンくずが落ちるからそれを辿れば僕の足跡を簡単に追うことができる、というわけだ。四葉はパンくずのかわりに昨日のおやつのドーナツを全部粉砕してマシーンにセットしたが、ドーナツくずを食らうものの存在を失念していた、ということのようだ。アニキ探知機といいわけのわからないものを作ってくれるな鈴凛よ。
本屋にて鈴凛を発見。工学関係の資料でも漁りに来たのかい、と聞くと鈴凛は首を横に振った。なんでもいいから少年マンガを買いにきた、とのこと。特にコレという目的のマンガはないが、とにかく気晴らしに読みたいらしい。と言いつつ、鈴凛は手に「野望の王国完全版」を持っていた。な、なんという大胆なことをっ! えーと、野望の王国が激烈に面白い漫画であることに異論はないけれど、これは少年マンガとはいえないんじゃないかな。と抗弁してみたものの、鈴凛は嬉々として全九巻をレジに持っていった。そして「アニキも一緒に読もう」とのお言葉をいただいた。ひょっとして、赤寺と柿崎の濡れ場とか立馬先生の全裸プレイとかを鈴凛と一緒に読まねばならないのだろうか。こいつはまずいことになる公算が大になってきたぞ……
ふと鈴凛のラボに寄ってみる。鈴凛は、マッサージマシン作成に没頭していた。長時間端末に向き合っているため、鈴凛は肩こりに困っているらしい。
ピキーン、とここでニュータイプの直感が働いた。「アニキ、このマッサージマシンの試運転をするから座ってみてよ!」→当然マッサージマシンはうまく動かず酷い目に、という未来予想図が見えた。風速100キロを叩き出す扇風機という悪魔の機械を作り出す鈴凛のことだ、10トン相当の指圧を行うことができる機能とかとんでもない能力を持っているに違いない。揉み殺されたくなかったので、「じゃあ僕が鈴凛の肩を揉んであげるよ」と大きな声で話題を転換した。僕のフィンガーテクニックでメロメロにしてやったので、結局最後まで鈴凛の試作機に座らずにすんだ。久しぶりに大勝利を収めたぜ、と思った。ものすごくネガティブな勝利だが。
クマポンが形になってきたので見に来て頂戴、とメールをもらった。ほう……殺す毛も完成間近なのか。行ってみると、たしかにクマの形をした灰色のロボットができあがっていた。これにクマらしい茶色の毛皮をかぶせてやるつもりらしい。たしかに、見た目というヤツも重要だろう。僕は殺す毛に髷を日本刀を用意してあげよう、と提案したが鈴凛にすごい勢いで却下された。なんでさ! ロボコンではロボットに相撲を取らせるんだから髷は必要不可欠だろ! 土俵の上で日本刀は使わないから、刀装備は100歩ほど譲ってもいいけど。
2003/04/08
PCショップにクマポン用パーツを買いに行く鈴凛にお供させていただいた。当然鈴凛は資金援助を乞うてきたわけだが、立場上「お金のことならこの僕にまかせておきたまえハッハッハッ」と答えねばならないのが兄としてつらいところだ。もちろん鈴凛はその言葉を額面通り受け取り、次から次へとがしがしパーツを買っていった。嬉々としてパーツを買いあさる様子を僕は笑みを浮かべて見守っていたものの、実のところ「そんな見るからに高そうなのに手を出さないでー!」とか「ゼ、ゼロがいっぱい、なの……」と心の中で悲鳴を上げていたのだった。結果、懐は「寒い」とか「軽い」とかいう言葉では言い表せないような状態になった。「クマポンには、私と……アニキの力が込められているんだもんね!」と鈴凛は言ったが、正確には「アニキの怨念」と言いかえるべきだろう。今ならばクマポンを通して出る力でシロッコを殺すことができると思う。
クマポン――いや、殺す毛がほぼ完成したというので鈴凛のラボへ向かった。なんとこのロボット、しゃべることもできるのだという。やっぱり髷と日本刀用意しようよ。悪いことは言わないからさ?
ロボットの第一声は「おこづかいちょーだい」というなんとも世知辛いセリフだった。一瞬絞め殺してやろうと思ったが鈴凛のことだ、自衛機能として目からビームを放つとかいった隠し技を仕込んでいるであろうことが予想されたのでなにもできなかった。
その後色々と殺す毛の機能を見せてもらい、昼過ぎにラボを辞した。それにしても――鈴凛の口と殺す毛の口が同時に動いたことがないような気がするぞ? と帰り道に気がついた。腹話術……なんてことはないよな?
夏祭りの日。鈴凛さんは射的にいたく興味をもたれたご様子。というわけで二人でゼンマイじかけの人形を的に交互に撃ちあってみた。先に撃ち落して年長者らしいところを見せようと思ったのだが、お互い一発ずつ外した後、鈴凛が先に人形にヒットさせた。キー! くやちー! 兄より優秀な妹がいるわけねえだろォがァーッ、と内心叫ばずにはいられなかった。増長してか、鈴凛はその日のメールに「射的の思わぬ才能を開花させてしまった鈴凛ちゃん」などと書いてきおった。射撃の才能なんてえのはベトナムで東側の兵士を300人ほど射殺してから言え。
夏休みの宿題はいかがなものカネ、と聞いてみたところ、理数系はともかく国語とかの文系方面が苦手でちょっと苦戦中、とのお言葉。ちょうど僕と逆だな。ならば取引をしよう、と持ちかけてみた。僕が鈴凛の文系の宿題をやり、鈴凛が僕の理数系の宿題をやる。お互い得をする取引じゃあないかな、と提案してみたところ承諾を得たので鈴凛宅へ。よく考えてみると、妹に自分の宿題をやらせるというのは兄として、というか人としてかなり問題があるような気もするが、知ったことか。なにしろ僕達は、一緒に住んでいた頃はずっとそうしてたからな。お互いがお互いのために働き、お互いが幸せになる。なにが問題だ?
……苦手科目がいつまでたっても克服できないのは問題かな……
2003/04/13
鈴凛が僕の為に、と発明品を持ってきてくれた。それは一見すると豚の形をした蚊取り線香立てのようだったが、実のところ「蚊取り線香立て形虫除け機」であるという。何故そのような見た目をしているのは謎だが、少なくとも蚊取り線香の煙で虫を追い払うマシーンではないようだ。いったいどんな機構をもって虫を追い払うのか……。半径数メートル以内でなにか動きがあったら、そのつぶらな瞳から殺人光線を発射する、とかいう仕組みではなかろうな。いつぞや、メカ鈴凛の放つ視線のレーザービームで殺されかけて以来、お目目のついた発明品には本能的に警戒してしまうのだ。億千万の胸騒ぎってヤツですよ。
河原にて、よたりよたりと歩くクマポン――もとい殺す毛を発見。聞けば鈴凛、殺す毛に長距離歩行訓練を課しているのだという。バランスを重視した設計の割にはよく転ぶので、悩んでいるようだ。頭を抱えながら一言。
「うーん。この子……誰に似たのかな」
花穂か! 花穂のことかァァ――ッ!! そのような言い方をして何を主張したいんだ鈴凛。実は君も花穂がコケまくるのをうっとおしく思っているのか?
あと、殺す毛のセリフをいくつか増やしたというので聞かせていただいた。以下はその一例である。
「この安田講堂は東大のシムボルだ!」
「うおおおっ! はめられたあっ!」
「三五七マグナム……おまえだけだ頼りになるやつは……」
「電気紙芝居屋ふぜいがっ!!」
「ギ・ギャアア――ッ! キャアッ! ギャアッ!」
……この間本屋であったとき、無理やりにでも鈴凛の手から野望の王国を取り上げるべきだったのだろうか。しかも柿崎さんのセリフばっかりじゃん……。まああのマンガは柿崎さんが主人公なのだから、ある意味当然の反応だとは思うけど。
ロボコン大会当日。鈴凛は緊張しながらもやる気十分、という風だった。が、アクシデントが起こったのは会場へ向かう途上だった。殺す毛が「おなかいたい」と言い出したのだ。どうやら内部異常を告げるアラーム音のようである。人形に自分の意思をしゃべらせるかのごときその発想は悪くない。だが、じゃあ故障を直そうか、という段になって鈴凛が「工具持ってない」と言い出した。なんで持ってないの? ロボコン途中のアクシデントで故障が起きるであろうことは容易に予想できるだろうに。なんにせよ処置なしであり、ロボコンは不参加と相成った。殺す毛はスノードンのように「いたいよ」と言い続けていた。きっと緊張に弱くてすぐ胃にくる性質なのだろう。
二人で海に旅行にいこう、ということでを買出しにでかけた。基本的に、買い込むものに関しては鈴凛まかせということで、僕は荷物もちに徹していた。鈴凛は次々に売り物をつかんではカゴにおさめていった。
ヘルメット。
懐中電灯。
ロープ50メートル。
えーと、鈴凛の買い物の選び方に文句をつける気なんて少しもないんだけれど、でもこれらの品物って海への旅行で本当に必要なものかな? 当惑しまくっていると、鈴凛は僕の不思議そうな視線に気づいて言った。
「アニキ……ご、ゴメン……。私さ……なんか一人ではしゃいじゃって……」
いやそうじゃねえ。君が説明すべきはそっちじゃねえ! と思った。しかし結局のところ何が目的でサバイバル用品を購入するのか聞くことはできなかった。正直、購入物一覧を改めて見直してみると、川口浩探検隊のような冒険の旅に出るとしか思えないのだが……
旅行の日。僕たちは海のそばの別荘に到着した。高級感溢れる落ちついた別荘だった。例のサバイバルグッズは鈴凛一流のジョークだったのだろう、と思い始めた頃に、鈴凛はそのサバイバルグッズを床に並べ始めた。どうするつもりだと聞いたら、「それは目的地についてからのお楽しみ」とはぐらかされた。ってここが目的地じゃないんですか!?
目的地とは、別荘からはるか向こう側に見える無人島だった。ここにベースキャンプをはって、海底に沈む人魚の宝物を捜すのだという。あーそういや海水浴行った時もんなこと言ってたねえ。あの時は沈没船の積荷とか言ってたけど。どうやら、ここはもう開き直って探検隊隊長を務めるしかないようだ。ボートをひっくり返した鈴凛に「バッケロウ!」と藤岡弘ばりに怒鳴ってみるのもたまにはいいだろ……。幸い食料等々不備はなかったので、魚を布で包んで絞って生ジュースにする、などというマネはせずにすんだ。やれやれ。
義妹エンド。「発明家」という設定のためか、前作の不条理さが適度に保たれていてよい感じのお話だった。さほど書くネタに困らぬ。
次は可憐。
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