Pale Bloomers Coming

Part7 衛 最も危険なブルマ

2003/05/08

 困ったことに、今回衛君ブルマはいてないんですよ。妹たちにはそれぞれを端的に言い表す言葉があるわけだが(例を挙げるなら、白雪は「料理」とか鈴凛は「発明」とか)、前作の衛の場合はそれは間違いなく「ブルマ」だった。衛からブルマを取り上げると何も残らない、ということはないが、やりにくいな。他にちょうどいい言葉も思いつかないので、章タイトルはこのままでいく。このタイトル自体、ハンター「もっとも危険な場所」の原題がPale Horse Comingであるのをクリスティ「蒼ざめた馬」The Pale Horseにかけたかなり胡乱な駄洒落なんだがね。

 今回彼女が着用しているのはスパッツとTシャツ、そして34という番号のついたタンクトップだ。34とはまた謎めいた数字である。検索してみたところ、34番を背番号とする有名どころとしては巨人金田、中日小松と出た。小松とはなかなか微妙なところをついてくるな。その地味さが衛らしいといえば衛らしい。

 衛に公園に連れてこられた。なんでもこの時間帯、スプリンクラーが自動で芝生に水をまくらしい。水しぶきの中にかかった小さな虹をくぐろうと、衛は芝生に歩み寄った。その虹に触るんじゃあないッ! 悪魔の虹に触れるとカタツムリになってしまうぞ、となにやらまたしても失われた記憶がよみがえった。イヤ、別になりませんでしたけどね。

 ラジオ体操に参加しよう、と衛に誘われた。早朝起きるのはかったりいなあ、とは思ったものの、衛がラジオ体操第二で少々卑猥なポーズをとるのは見てみたいので誘いを受けた。
 翌日、早朝の公園に行ってみると思いのほか人がいた。指導を行う監督の先生もいたりして結構本格的だ。と、その監督の先生ってどっかで見たことがあるぞ、とふと思った。記憶を掘り返してみると――そうだ今年の春マンツーマンの補修を受けた女教師じゃねえか! なにしてんスか先生! 体操中先生は僕にウィンクまで投げてよこした。おかげで体操後、衛は意気消沈風味である。イヤだから違うんだって! あの先生と僕とはこれっぽちも関係ないって! ……と必死に言い訳するのがアカンのだろうな。衛は後ろめたそうな目線で僕を見つめていた。ううう。

 問題は、ラジオ体操に毎朝来なければならないということだ。8月20日まで一日足りと欠かすことなく参加すれば、お菓子詰め合わせがもらえるという。衛はそれを目標にがんばっているのだ。20日までとは中途半端だな。宮城以北の公立高校じゃあるまいし。だが、どういうわけか例の巨乳女教師はやたらと僕のことを気にかけて視線を投げてくるし、僕としてはその視線が気になってしかたがないし、衛からは「あにぃ、先生のほうばっか見てない?」と責められるし。バレてる。いや先生が前方で体操の手本を見せているのだから目が行くのは当然じゃないかハッハッハッと言い訳をしてみたが、あの目つきは納得した風ではなかったな。なんでラジオ体操ごときで針のむしろに座らせられるような思いをしなければならんのだ。

2003/05/11

 ベティーズにて食い入るようにショーウィンドウに見入る衛を発見。視線の先にはワンピースが展示されていた。これはいわゆる「坊主、あのトランペットがほしいのか?」状態? しかし、他の妹であれば「今すぐ買えやオラ」となかば恐喝然に要求してくるところだが、衛は決してそのようなことはしない。十二人中もっとも常識とか人としての奥ゆかしさといったものを持ち合わせている妹なのだ。となるとこっちとしても、より寛容な気持ちになれるもの。買ってあげようか、と申し出てみたのだが、とたん衛は「きっとボクには……似合うわけないよっ!」と走って逃げ去ってしまった。衛の足の速さにはどうあがいても勝てないので、後姿を見送らざるを得なかった。人がたまに仏心を起こしたらこの仕打ちかよ。

 今日も今日とてラジオ体操。この日は例の巨乳女教師はいなかった。こりゃ残念だ、と思っていたら、ふと気づくと衛が怪訝そうな目で僕の顔を覗き込んでいる。俺をそんな目で見るなァーッ! ものの見事に見透かされてるな。やむをえないので「今日はボクが朝食をおごるよ」と持ちかけることによりツッコミをかわすのに成功した。あぶないあぶない。

 何とはなしに雛子の家に行ってみた。すると雛子さん、僕が来るのを前もって知っていたという。その根拠は昨晩僕の夢を見たからだと主張する。なんでも、雛子と二人で高い塔のてっぺんにいる夢でそうで。雛子があまりの高さにビビっていると、僕が二人ともども小さくする魔法をかけ、さらに口笛を吹いて鳥を呼び、鳥の背に乗りどっかへ飛び出した、らしい。夢判断的には、多分現実から逃避したいという潜在意識が夢という形を取って出たのだと思う。こんなに小さいのに、すでに現実逃避の兆しがあるとは泣けてくる。
 あと、「夢の中でやった口笛の吹き方と魔法のかけ方を教えて」とも言われた。なんで僕がそんなことの責任を取らねばならんのだ。しかし雛子に理をわきまえろといってみても無駄であることは明白なので、堺正明孫悟空が金斗雲を呼ぶときのアレを教えてお茶を濁した。だって僕口笛ふけないもの。

2003/05/12

 夏祭りに行った。衛は妹たちの中で一番盆踊りがうまかった。というか他の連中が僕の手を取り社交ダンスみたいに踊るからどうしようもない。盆踊りは創作ダンス発表の場じゃねえんだよ! と力説したいところだが妹たちは聞く耳持たないので仕方がない。その点衛は正しい盆踊りの踊り方を心得ているので助かる。
 あと射的もやったのだが、衛はなぜか全然駄目で一発たりと当たらなかった。花穂なら楽勝で当てちゃうよ、と教えたらショックで寝込むかもな。

 夏休みも残り10日ちょっととなったある日、衛が遊びに来た。バドミントンでもしようかという話になったのだが、ふと気になって宿題の進捗状況を尋ねてみた。するとみるみる衛の顔から血の気が引いていった。夏休み開始直後に問題集を引き出しにしまったまま、これっぽっちも手をつけていないのだという。そいつは深刻だ。衛は今にも世をはかなみ車道にダイブしそうな勢いだったので、僕も手伝ってあげるからと必死になだめた。とりあえず落ち着かせることはできたのだが、直後けろっとして「でもバドミントンはやろう」と強硬に主張してきた。さっさと帰って宿題やれよ。しかし結局のところ押し切られて、バドミントンに付き合わされる羽目になった。衛には計画性というものを叩き込んでやる必要があるようだ。

 8月20日、ついに最後のスタンプをもらってお菓子詰め合わせをゲットすることに成功した。二人で公園のベンチに座り、戦利品を確認する。それは色とりどりの内容だった。
 うまい棒とんかつソース味。
 うまい棒てりやきバーガー味。
 うまい棒サキイカ味。
 うまい棒ギョーTHE味。
 うまい棒カニチャンコ味。
 袋の中身は色とりどりのうまい棒だらけだった。俺は……こんなもののために毎朝早起きさせられたのかァァ――ッ! この悲しみを衛に気取られないためにも、僕はうまい棒をもさもさと狂ったように食べ続けたのだった。うまい棒の袋に描かれたうまいBOYの笑顔が、よりいっそうむなしさを引き立てていた。かなしみのうまい棒。

 動物園に行ってみた。のだが夏の暑さに当てられて、どの動物もぐったりとして動こうとしない。衛は「動けー」とか「がんばれー」とか叫び、煽っていたが、もちろん動物たちが人語を解するはずもない。解していたら解していたで「なにが頑張れだ暑いんじゃボケ」とか反論されそうな気もするが。と、そのとき「これより解放イベントを行います」と場内放送が流れた。いったい何事か、朱の首輪が発見されたのカシラ、とか思っていたらどこからともなくペンギンの群れが一列になって歩いてきた。これが解放イベントか。と、それを見た途端、それまでのストレスを発散するかのごとく衛が突然群れの中に突っ込んで行った。突然のことに逃げ惑うペンギンたち、そして狂ったように後ろを追いかけ捕まえようとする衛。真昼の動物園はちょっとした阿鼻叫喚に包まれたのだった。どうやら、宿題がさっぱり終わっていないというプレッシャーが彼女を奇行に走らせたらしい。あにぃとして一肌脱いでやるときが来たようだ……

2003/05/18

 というわけで、衛の宿題の手伝いに行ってきた。つい最近までこれっぽっちも手をつけていなかった、というからどんだけ残っているのだろうと内心はらはらしていたのだが、ざっと見てみたところ、気合入れれば今日中になんとかケリをつけられそうな分量だった。この程度の量でそこまで絶望的になるか、と思ったが衛は基本的に要領が悪い子だからなあ。とにかく、心を鬼にして衛に宿題をビシビシやらせた。
 幸いにして宿題は目論見どおり片付いたが、結構遅い時間になってしまった。帰るのもめんどくさいので泊まることにし、衛とベッドを並べて寝ることとなった。衛はおそろいのパジャマを着るよう強制することはなかった。当然だが。しかし気になるのは、衛がかぶっているナイトキャップだ。三角帽めいたそのキャップ、なかなかイカすな。ちょっとかぶらせてくれないか、と懇願してみたものの、頭のサイズが違うので入ってくれなんだ。ムググ。あとで自分用のをどっかで買ってこよう、と固く誓った。

 二人で旅行に出かける。前日に買出しに出て花火やらなんやらわんさと買い込んだりしているのだが、一点だけ衛には内緒で買い込んだものがある。いつぞやの白いワンピースの件を覚えているだろうか。買ってあげよう、と言った途端衛が逃げ出した、というアレ。アレをこっそり買って、旅行先でプレゼントすることにした。衛は渡されたときはあまり浮かぬ顔だったが、花火大会を行う際に着てきてくれた。普段のボーイッシュな格好とのギャップで非常に見栄えが良かったのですっごい似合ってるよ衛! とか徹底的に褒めまくったのだが、逆に衛はすっかり照れいたたまれなくなって普段の服に着替えなおしてしまった。なんでよ! オレの選んだ服が着られねえのか! とは思ったが無理やり今着ている服をはいで着せなおすというのは不可能だ。というか半分レイプめいている。衛が自発的に着てくれなけりゃ、意味がないんだ。
 たとえば、間違って服を火で焦がしてしまったので、別の服を着ざるを得なくなる、とか。そして今僕の手には、たくさんの花火と、花火に火をつけるためのライターがある。
 …………
 …………
 …………
 …………いやいやいやいや。衛の服に火をつけようだなんてこれっぽっちも考えてないですよ?

 非血縁エンド。kmc先輩があまりに萌えすぎたので日記が書けなかったと言っていた理由がよくわかった。ワンピースの立ち絵は特に良かったな。なんでたった一シーンでしか使われないのか、まことに嘆かわしい。ホンマにあの謎の背番号34タンクトップを脱がそうと何度思ったことか。
 1のときは日記に書くようなことが無くて本当に困ったのだが、今回はいろいろとあったのでなんとかなった。他の妹に比べると、やっぱり書きにくかったけど。常識的な性格というのは、ネタ的には困るよな。あと個人的な感想だが、時々以前にどっかで見たことのあるような顔をするなあ、とたびたび思ったのだが、なんとなくMilkyWayの七瀬晶に似ている時があるような気がする。
 次、白雪。とうとう最後までブルマをはかずじまいだった衛と違い、彼女は相変わらず料理にいそしんでいる。白雪から料理を取ったら何が残るのか、はなはだ疑問ではあるが。

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