Appointment with Death

Part12 鞠絵 死との約束

2003/09/09

 さて、高原にて療養中の身、ということで前作から出番は少なかった鞠絵嬢であるが、今回その設定による縛りが猛烈に厳しくなり、妹全員集合イベントにすら顔を出せていない。油断すると故人になってるんじゃないかと思えるほど影が薄い。どんな話が待っているやら、想像もつかねえ。他の妹は町をほっつき歩いているからある程度想像がつくのだが。兄上様は心配でごわチュ。

 鞠絵から手紙が届いた。なんか、身長が伸びたと医者に言われて喜んでいるらしい。ム。薬漬けの生活のせいで身長が伸びなかったんじゃないのか鞠絵。医者が嘘をついているか、医者が身長が伸びる薬を投与したか、鞠絵が巨人病にかかったかのいずれかだろう。
 ちょうどその晩、「手紙はお読みになりましたか」というメールが届いた。メールが使える環境ならば最初からメールを使ったほうが手っ取り早いんじゃないのか? 分裂気味な性格もあまり春先から変わっていないようだ。いや、筆跡で「自分は生きているんだ」ということを主張しているのかもな。メールのみだったら、鞠絵が死んでいるのを隠し通すため誰かが偽装工作している可能性だってある。いつか、「右腕は点滴で動かせないので左手で書きますね」という直筆手紙が来たら、その時は覚悟しろということか。

 ずっとメールでのやり取りを続けるのも味気ないので、鞠絵の療養所に行ってみる。電車では二時間かかるのに、タクシーで行くとそれほど料金が高くないという謎めいた場所であるのだが、それでもやっぱり電車のほうが安いので電車で向かう。
 当たり前の話ではあるが、鞠絵の病室は相変わらず天蓋ベッドつき、犬の出入りオッケーという豪奢な病室だった。こんな山奥の涼しい場所で毎日適当に寝たり起きたり、夏休みの宿題に汲々とすることもなく、しかも美人の看護婦さんに世話してもらえるだなんてなんて夢のような生活なんだ鞠絵! 僕もここに入院しようかなあ、と邪な願いを抱かせるほどに立派な療養所だった。「あらゆるものが二度ずつ見える!」と絶叫したくなる衝動を何度抑えたことか。
 そして、鞠絵の病気は今もって謎だった。やはりあらゆるものが二度ずつ見える病気でごわチュかね。

 見舞いに来てくれたので、お礼の印を送ります、と鞠絵からメール。しかし肝心のお礼の物品についていは具体的な描写を避けていた。爆弾でも送ってくるつもりなんじゃろか、と少しドキドキしたのだが、送られてきたのはハンカチ、押し花、そして鞠絵アンドミカエルの写真だった。個人的には、写真送ってくれるんだったらあの美人看護婦さんの写真が良かったなあと思ったが、まあそこまでは言うまい。
 翌日、お返しの品物を探しに町へと出かける。と、可憐と咲耶に出くわした。この二人に目的を悟られるのはまずい。この二人なら「恋愛同盟規約その四」とか言い出して鞠絵に爆弾とか送りつけかねない。適当に誤魔化し、僕は急いで立ち去った。
 さて、鞠絵には何をプレゼントしたものだろう。とくにあてがあるわけでもない。ガンパレ的にはスポーツ車椅子が定石だ。これさえあれば鞠絵も高原を独力で踏破できるだろう。しかし残念ながら車椅子は、一高校生の財力で買うには高すぎる。というわけで無難に帽子にしておいた。来栖の白いキャスケット帽子で攻撃力アップ。高原に幻獣が攻めてきてもきっとこれで大丈夫でごわチュよ。
 なんかネタがめちゃめちゃ混じってきたな……

2003/09/13

 ある日突然可憐がたずねてきた。みんなで海に行こうというメールを出したけど返事が無いので直接訪ねてきた、とのこと。ム。夏の暑さにやられて僕が部屋の中で死体になって腐ってるとでも思われたか。言われてからメールをチェックしてみれば、来てるわ来てるわ、鞠絵以外の妹たち全員から海へ行こうというメールが来ている。こりゃ死んだと思われても不思議じゃないや。鞠絵をマイシスにしてみても、妹全員参加の海旅行へ連れて行くことはできない模様。今作の目玉、水着選択システムの恩恵を受けられないとはなんと憐れな……。鞠絵が何をした。眼鏡で何故悪い!?

 鞠絵からメール。最近は療養所の図書室から本を借りて読んでます、という他愛の無いメールだった。だが一点気になることが書いてあった。「兄上様が本を読んでいるところを見たことがありません」だって。適当なことをいうなァ――ッ。自分は一杯本を読んでるでごわチュよ! バークリーとかゴダードとか東欧SF傑作選とか! 鞠絵が事実と反することをメールに書き出したとき、それは鞠絵の精神の均衡が崩れかけているときだ。こりゃまずい、ということで僕は一念発起、鞠絵の療養所に泊りがけで行くことにした。四日ほど。あの可愛い看護婦さんともお近づきになりたいしね。

 療養所にて鞠絵の出迎えを受ける。いつもつきまとってるミカエルの姿が無いな、と思ったら、今は母親として生んだ子犬たちを育てているとのこと。なるほど、鞠絵に連れられて行ってみれば、ミカエルは眠る子犬たちを守るようにして寝転がっていた。「この子達を見ていると、なんだかわたくしと兄上様の姿に重なって見えてしまうんです」と鞠絵は言う。同感だ。特に、子どもたちがたくさんいるところがね。僕の親が犬のように見境も無く13人も子どもを作ったという点に関しては、忸怩たるものを覚えずにはいられない。一人の男性として見た場合はちょっとうらやましくもあるが……

 看護婦さんはきれいだし夏休みの宿題はないしでうらやましいなー、と思っていたのだが、実のところ鞠絵にも宿題みたいなものがあるらしい。いわく、この療養所にも学校みたいなところがあるのだとか。…………。なんとなくSence Offを思い出すな。テレキネシス使いとかテレパシストとか、タニシマニアな奴とかいるんじゃろうか。さりげなく千影がここに通っていたりして。
 というわけで、鞠絵の宿題を手伝わされることになった。見れば、なかなか手ごわそうな問題ばかりだ。ポワソン分布とか波動方程式とかマクローリン展開とか。ももんがァァ――ッ! なんじゃこりゃ――ッ。書いてあることがさっぱり理解できねえ!

 三泊四日の日程を終え、僕は下山することにした。が、列車に乗る寸前、目覚まし時計を療養所に忘れてきたことを思い出した。危ない危ない。戻ってみると、鞠絵の部屋のドアが開いている。何事か、と思って中を覗き込んでみると、鞠絵が泣いていた。僕との別れがつらいのだろう。僕は、ただ黙って鞠絵を抱きしめてやることしかできなかった。
 僕は鞠絵のためになにをしてやれるのだろう。悩みながら町を歩いていると、ポニーテールにした可憐に出くわした。「可憐、ポニーテールって初めてだから、とても不安だったの」などと悩んでいたらしい。キサマをストローでしか食物を摂取できない体にして療養所に叩きこんだったろっかい、という殺意がわいたが、すんでのところで止めた。まったく……

2003/09/25

 玄関にポトリと手紙が落ちていた。消印も宛名もない。中身を見ると、僕を夏祭りに誘う千影からの手紙だった。なんでこんな回りくどいことを、と思ったが、直後、昨日メールチェックをしていないことを思い出した。チェックしてみたら、来てるわ来てるわ、鞠絵以外の全員から夏祭りメールが来ていた。きっさまらーッ。とはいえ怒りを誰にぶつけるわけにも行かず、僕は割り切れないものを胸に秘めながら夏祭りに行くことにしたのだった。当然、鞠絵をつれてくるわけには行かない。さぞかし鞠絵もみんなと一緒に来たかったろうに、と僕の心はちょっとした痛みを覚えたのだが、11人の妹たちは僕の気持ちなどつゆ知らず、愉快げに夏祭りを楽しんでいた。祭りごときでいい気になるなよ……祭りで踊れるのは……所詮MONKEY DANCE……。
 帰宅後メールチェックをしたら、鞠絵からメールが来ていた。
「夏祭りはいかがでしたか? 先日、可憐ちゃんやみんなから、今日そちらで夏祭りがあることを教えてもらいました」。
 可憐、なんで鞠絵のこのメールがみんなとは一日遅れで来るのかなあ?(草加君的な問いかけ口調で)おまえ、鞠絵がどんな交通手段を駆使しても来られないタイミングを見計らってメール出しただろ! なんという小ざかしいマネを……。少々頭にきたので、翌日可憐と図書館で出会ったとき、自由工作を手伝ってくれないかと請われたのだが、断った。ロマンチックなものが作りたい、だと? モンブランでも作っとけ。

 川原を歩いていると、ふとミカエルの鳴き声が聞こえたような気がした。まさか、鞠絵がこっちにきているのか? あるいはミカエルが主人の危篤を知らせに電車で二時間かかる距離を駆け抜けてきたのか。いやな予感がした僕は街中を駆け回ってミカエルの姿を探した。が、どこにも見当たらない。鞠絵が一番最初にやってきそうな場所はどこだろう。考えてみれば、僕の自宅に来るのが普通じゃなかろうか? 鞠絵が僕の家の鍵を持っているはずはないが、四葉に掛け合えば家の鍵どころかエロ本コレクションが収まった机の引き出しまで開けかねない。とすると、川原で聞こえた鳴き声もフェイクだろうか。非常にいやな気分になりながら僕は自宅に描け戻った。そんなにボヘミア王のツーショット写真が欲しいのか四葉よ。
 結局のところ、家には誰もいなかった。どうやら、あの声は僕の聞き違いらしい。

 ところがその晩、鞠絵から妙なメールが来た。「わたくし、決心しました」というタイトルではあったが、メールには決心の内容について何も書かれていない。雷が鳴って途中でメール送ってしまったんじゃろか、と思ってたら、来客を告げるチャイムが鳴った。出てみると、そこには鞠絵が立っていた。「来ちゃった」だって。療養所には外出許可をもらってきた、と鞠絵言ったが、本当だろうか。鞠絵は僕に会おうと一度決心すると、嘘をつくことを厭わないからな。
 で、翌日療養所に電話してみたところ、やっぱり無断外出だった。おまえなあ。

 事後承諾ではあるが外出許可が出たので、いっそ二人でどっかに旅行に出ようという話になる。すると鞠絵は、昔二人で行った海辺の別荘に再び行こう、と言い出した。海が見たいのだという。一瞬、水葬されたいんだね、と思ったがその考えを口にするほど僕は愚かではない。その線で行こう、ということになり二人で旅行用の物資調達に出かける。しかし鞠絵には旅行に必要なものというのがピンと来ないのか、数軒店を回っただけで準備は終わってしまった。物資の量も圧倒的に少ない。さすが鞠絵、サバイバビリティは著しく劣るみたいだ。この辺は鈴凛を見習って欲しいものだ。

2003/09/26

 鞠絵と一緒に旅行に出かけた。目的地は小さい頃二人で行ったことのある、海辺の別荘だ。到着して海辺を歩いていると、鞠絵が「面白いものがある」と言い出した。彼女の指差す先には離れ小島。「子どもの頃、言ってみたいと思ったことがあるんです」と言ったきり、島に目を向けたまま離そうとしない。これは言外に「島まで連れてけ」と主張しているな……!? 冗談はやめてくれ、あの小島までどれだけ距離があると思っているんだ。とはいえ僕の体には妹に対する隷属遺伝子が組み込まれている以上、ノーということは不可能だ。というわけで僕は別荘から船を担いで海に浮かべ、かつ島まで漕ぐ羽目になったのだった。鈴凛の宝探しツアーとどっちがマシだろう。

 島は海岸のすぐそばまで森が迫っており、鬱蒼として不気味な雰囲気を漂わせていた。一軒だけ丸太小屋があるのみで、どうやら無人島のようだ。風も強くなってきたし、早めに帰ったほうがいいかも、と思いかけたとき、鞠絵の帽子が風に煽られ飛んでいってしまった。どうしてそういうことをするのかなあ、と草加君調に問い詰めたいところではあったが、仕方がない。帽子を追うより他にない。
 森の奥へ奥へ分け入っていくと、急に視界が開けた。そこはなぜか一面のお花畑だった。無人島になんでこんなところがある。マヨイガか!? マヨイガなのか!? でもとてもきれいな風景だったので一休みすることにした。ぐー。

 お花畑で、鞠絵は昔読んだ本の話を始めた。漂流した兄と妹が無人島で自活する話だという。「今ボートが流されたりしたら、本当にお話みたいになりますね」と鞠絵はうれしそうに言う。と、いきなり雨が降り始めた。鞠絵の体を濡らすのはコトなので、鞠絵の手を引きボートへ向かった。ところが戻ってみたらボートが見あたらねえ! こんなところで鞠絵の第二人格が出て潜在的な望みをかなえるべくボートを離してしまったのか、と一瞬あせったが、よく見渡してみればボートは少し離れた場所に打ち上げられていた。
 僕はボートに鞠絵を乗せてボートを漕いだ。のだがすさまじい雨と揺れる波とでまともに前に進まない。それでもなんとか対岸にもう少しでたどりつく、という地点まで来ることができた。もうちょっとだから頑張って、と声をかけようとすると、鞠絵は船上でぐったりしていた。寝ゲロだけはやめてくれ、と鞠絵をたたき起こそうとした瞬間、横波を食らって船が転覆した。カ……カルネアデース! こりゃ鞠絵を救うどころか自分が溺れる、と思って必死にばちゃばちゃやったら、実は足がつく浅瀬であることに気がついた。僕はなんとか鞠絵を担いで別荘にたどり着くことができたのだった。
 幸い、やがて鞠絵はベッドで目を覚ました。少し熱があるだけで命に別状はないようだ。良かった良かった。あと、船が転覆したとき僕が「カルネアデース!」と叫んだことも覚えてないようで良かった良かった。読書家の鞠絵のことだ、「カルネアデスの板」の意味を知らないはずがないものな。

 義妹エンド。水着選択システムもない浴衣もない、というハミ子っぷりは、鞠絵シナリオでもそのままだった。別に鞠絵が好きだというわけじゃないが、チフスのメアリーも真っ青の隔離っぷりはどうかと思うよ。
 ラストは千影。やっとここまで来た。

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