| 2003/10/21 一人で謎の儀式を成功させるためセコセコと働いている千影さん。一人だけ水月の世界から迷い出てきたかのようであり、何を考えているのかまったくわからない。妹紹介の文章も「それでもお兄ちゃんのことは好きみたい(?)」と書いてあるしな。なぜ疑問形なんだ千影。あと口調が赤碕翔風味。おそらく何度も何度も「冗談じゃねえ……」と口走る羽目になるだろう。
夏休み初日、千影がやってきた。驚くべきことに、玄関でチャイムを鳴らして入ってきた。春先は音もなく室内に現れ音もなく去っていくというまるで幽霊のような出入りをしておったからな。親しき仲にも礼儀あり、という言葉をわきまえたみたいで兄としては幸せだ。
千影は「夏休み、会える機会は少ないだろう」と通告してきた。なんか、謎の儀式に夏休みを費やすつもりらしい。というか千影さん学校に通っているのか? 一応通っているらしいが、誠に残念ながら実際に通学しているところを見た試しがない。ともかく、千影からは目を離さないよう気をつけよう。いったい何をやり出すかわかったものではない。
その晩、「心配するな」とのメールが舞い込んできた。どうでもいいけど千影、メールでダッシュを多用するのは単に読みにくいだけですよ。
公園をぶらついていると、千影に出くわした。このクソタレ暑い日差しの下で、千影はさして高い気温を苦にしていないようだった。聞いてみると、「月の力が私を守っている」などと電波めいたことを言い出した。慌てて話題転換を図ったところ、今度は千影が薬を差しだしてきた。汗が止まる薬であるという。一口飲もうとした瞬間、急激に汗が引いていった。なんじゃこりゃーッ。生魚絞りジュース?
薬はとりあえずもらっておくことにした。千影曰く、「飲むときは私を呼んでほしい」だそうで。なんか、ただ飲むのは危険らしい。千影、どうして兄にそんな危険なものを渡すのかなあ? 冗談じゃねえ……
その日の晩、すぐにメールが来た。
「今日渡した薬は…………もう飲んでしまったかな。これを読んでいるということは…………まだのようだね」
どーゆーことだーッ!! 死ぬのか!? ねえ千影この薬飲んだら死ぬの!?
「でも…………心配はいらない…………。それは決して…………毒ではないからね」
千影さんの言うことがだんだんわからなくなってきた。とりあえず、薬は飲まない方がいいらしいということはよくわかった。
最近、千影は図書館に入り浸っているらしい。試しに行ってみると、千影は図書館で宿題をこなし、司書さんと普通の話し込んでいた。千影がごく一般的な会話を交わしている!? てっきり電波めいた話しかできないものかと……いやいや、千影だって一般常識を持ち合わせているのだということが証明されたことを兄としては喜ぶべきである。喜び勇んで千影に話しかけてみたところ、彼女は突然夏の大三角形、そして織姫と彦星の話をし始めた。僕にあった途端これかよ! あと織姫と彦星は十六光年離れているなどと夢のない話を言うんじゃない。十六光年離れた星同士が年に一度出会って手を取り合うとはどういうことか、とか考えてしまうだろうが。
1:織姫と彦星は高速以上の速さで宇宙を駆け抜けることができる
2:実は織姫と彦星の間にワームホールが存在する
3:織姫と彦星はそれぞれ腕の長さが八光年分ある
可能性としてはこんなものか。というか、どうやら僕を煙に巻く目的でこんな話を持ち出した模様。一体僕の目の届かない場所で何をやっているというのだろう。
2003/11/01
またもや図書館にて千影に遭遇。古い地図を眺めているようだったが、僕が声をかけると、千影は慌てて積んでいた本の下に地図を隠した。たまにはかわいいところもあるじゃないか。一体何を隠したのか僕に見せてごらん、というと千影は「そんなものはない」との一点張り。ハハハなにを子供めいたことを、といいつつ本を取りのけてみると、地図はなくなっていた。あれれ。こいつは愉快なパーティー手品だね、とおどけてみても千影は強硬な態度を崩そうとせず、逆に「半端な知識は死の危険を招く」などとやおら物騒なことを言い出した。千影があまりにもマジなので僕はその場から撤退せざるを得なかった。ええい妹にビビらされてどうするんだ。あの古地図は、たしかにこの町のものだった。千影が何をしでかそうとしているのか、なんとしても意図を知らねばなるまい。
登校日。千影は「どこか遠くの学校に通っている」そうなので、僕の学校のスケジュールには関係ないの。が、学校での用事が済んだ後、帰ろうとしてふと窓の外に視線をやると千影の顔が見えた。こんなところに現れて一体何をするつもりなんだろう。直接聞いてもいつもの電波トークではぐらかされるだけであろうので、僕はこっそりと千影の後をつけていくことにした。
まず千影は、僕の教室に入って、掃除道具を取り出した。モップとバケツを取り出してどうするつもりだろう、と思う間もなく、千影はそれを持って教室を出て、校長室に入っていった。意図の読めぬまま待つこと数分間、校長室から出てきた千影は両手に何も持っていなかった。? それから僕の教室へ戻ると、何故か一発で僕の机を見抜き、突然机にキスをした。う、うああーッ! このまま机の角でオナニーとか始めるんじゃないだろうな! とか思ったものの、千影は一分もしないうちに教室から出て行った。一体何がしたかったんだ千影。謎が謎を呼ぶ。夏休み明けに登校したとき、校長が謎の病気で伏せっているなんてことにならなければいいのだが。
なんとしても、千影のやろうとしていることを突き止めねばならない。とりあえず図書館に行くしかないだろう。しかし、偶然の出会いを装うには、すでに図書館での遭遇を重ねすぎている。いい加減「奇遇だね」などと挨拶するのも白々しいしどうしたものか、と考えつつ道を歩いていたら、向こうの方から千影がやってきた。うああ! なんでも、僕が会いに来るのを察知していたらしい。どうしてわかったの、と聞くと「兄くんのドッペルゲンガーがこちらを伺っていた」からだそうで。イヤ答えになってないよ千影! というかドッペルゲンガーが出てるって僕死期が近いんですか!? そのことを千影も懸念したらしく、僕の手を取ると何か謎の呪文を唱えた。
次の瞬間、気がつくと僕は自室にいた。
…………もはやつっこむ気力も失せてきた。冗談じゃねえ……
通常の手段ではらちがあかない。そう判断した僕は強硬手段に出ることにした。すなわち、「何をするか教えてくれない限り、この夏は千影に徹底的につきまとうぞ」と宣言したのだ。いわば四葉戦法というところかな。さすがにこれには千影も辟易したようで、「しかるべき時が来たら必ず兄くんに教えるから今は待っていてほしい」との言葉を引き出すことに成功した。結局何をやるのかわからずじまいだが、とりあえずは一歩進展したと言える。しかしこの夏、一体何が起きるやら。
2003/11/10
「見せたいものがあるんだ」と千影からのメール。とうとう呼ばれるときがやってきたのか、と勇んで僕は指定された場所、海辺へと向かった。海辺でぼーっとしていると、突然背後で声がした。千影がすぐそこに立っていたのである。どこから来たの、という問いに、「その問いかけに……答える意味が……あるのかい?」と言い返してきた。質問を質問で返すなァァ――ッ!! あるよ! 思い切りあるよ! 千影は「引き潮の魔女」って読んだこと無いの!? ……って、読んだことあるわけ無いよね。僕もない。
千影は、岸壁にあいた洞窟に僕を案内した。初めて見る洞窟だったが、僕は洞窟を見た瞬間に薄ら寒いものを覚えた。真夏だというのに。えーと、ここは昔氷室かなんかだったのかな、と気を紛らわせるために言ってみても上滑りするばかり。ここにはなにかある。常世の門? 冗談じゃねえ……。千影の目的はいまだ杳としてつかめない。
図書館に夜に来い、とのお達し。何をするつもりかと聞いてみたら、「閲覧禁止の書籍が読みたいんだ」と言い出した。押し込みをするんですか! 兄として人としてそれはどうかとおもったが、拒否すれば千影に呪い殺されかねない。大事にならぬよう祈りつつ、僕は強盗の助手をする羽目になったのだった。助けてドートマンダー! もしくは嘘だと言ってよバーニィ・ローデンバー!
千影は持参した針金で、図書館の鍵を開けた。ちょっと待って千影! 春先、気がついたら千影が僕の部屋の中にいたって事がままあったけど、ひょっとしてそれで鍵開けて入ってきたの!? 四葉から技術を伝授してもらったのか! それとも四葉に侵入術を教えたのは貴様か!? しかし僕の内心の非難を意に介することなく(当たり前だ)、千影は閉架されている書庫に侵入、目的の文献を発見した。魔道書かなんかだろうか。読みふけるうちに見回りの人間がやってくるというピンチもあったが、僕の機転でなんとかやり過ごすことに成功した。やれやれ。しかし妹の強盗の手伝いをする羽目になるとは思わなかったぜ。ひと夏の体験というやつだな。冗談じゃねえ……
次は山寺に呼び出しを受けた。五百羅漢の仏像群のうちからお目当ての一体をみつけだせ、というミッションだった。千影はどうやらこの寺の住職と知り合いであるらしく、彼女の謎の交友関係にまたしても愕然とさせられた。さいわい目的のものは意外とあっさり見つかったのだが、自分は一体何にこの夏休みという時を費やしているのだろう、とだんだんむなしくなってきた。
盆踊りの日。千影ならば「祭りで踊れるのは……所詮MONKEY
DANCE……」とかいって敬遠するかも、と思っていたのだが、意外にも自分の方から行きたいと言い出した。祭りの場にあって、千影は彼女なりにはしゃいでいるようだった。「呪術用品や薬草を売っている店は出ていないのかい」と言ってみたり、色つきヒヨコを見て「魔道士の腕がいい」と言ってみたり、綿菓子を見て「あの回転は黄金曲線」と言ってみたり、型抜きを見て「魂を封じ込めて身代わりの器とするわけか」と言ってみたり。絶対に人には聞かせられないよこんな電波発言! 付き添っておいて本当に良かった。
あと、金魚すくいの金魚を眼力で金縛りにさせるというすごい技を披露してくれた。「さあ、すくいたまえ」と申されましても……
2003/11/12
公園に呼び出しを受けた。行ってみたのだが千影の姿はなく、待ち合わせの時間を少し過ぎた頃にやってきた。本人曰く、「風の精霊の機嫌が悪くてなだめるのに時間がかかった」とのこと。ねえ千影、なんで素直に「遅刻してごめんなさい」と言えないのかなあ? 風の精霊なんているわけねえだろ、と突っ込んでやりたいところだったが、本当に風の精霊がいたらあとでえらい目に遭うであろうことが予想されたので、黙っておくことにした。全く……
で、何をするのかと思ったら、千影は突然靴を脱いで噴水に入った。千影は僕に手を差し伸べ、こう言った――
「兄くん、マイナスイオンを享受したまえ」
僕は怒りにまかせて千影に水を浴びせまくった。それこそ風邪引くのではないかと思えるほど、だ。千影にはあとでマイナスイオン発生スタンガンを買ってプレゼントすることにしよう。
妹との旅行の前には旅行用の物資調達が行われるのだが、千影は必要ないと言った。すべて千影の方で用意するのだという。よもや春歌のように人のふんどしを買い込んでおいて、旅先で「これを着けろ」とか強要してくるのではあるまいな。
呼び出しは図書館、しかも夜遅くだった。列車も終わろうとしている時間に、千影は僕を洞窟へ連れて行った。例の海辺の洞窟だ。洞窟の奥で千影が呪文を唱えると、奥の壁が強烈な光を放ち、僕と千影の姿を包み込んでいった。
気がつくと僕はどこかの湖の畔に立っていた。自分の体を見れば、なにやら西洋風の甲冑を身につけている。はあ!? そして目の前には、外見は千影そのものながら性格が全く異なる少女が立っている。彼女の話から察するに、どうやら僕はどっかの国の王子様かなんかで、これから戦地に赴く羽目になるらしい。しかも戦地で死ぬことが占いでわかっているのだとか。はぁぁ!? ふと遠くに目をやれば、甲冑を着た騎士が馬に乗ってやってきた。僕を連れに来たらしい。なんで戦争いかなあかんねや、と僕は偽千影を抱えて逃げ出した。
逃げ出したその先で、千影は自分の意識をとり戻した。千影は説明した――ここは僕と千影の前世の世界で、本来の歴史であれば僕は千影を置いて戦地に赴き、実際に戦死していたのだという。簡潔に言うと、何がなんだかわからないうちに僕は歴史改変を行ってしまったらしい。と、再びあの光が現れ、僕らを包み込んでいった。
気がついたら、例の洞窟の前に立っていた。あたりはすっかり明るくなっていた。千影もそばにいる。どうやら、ついさっきまでのことは夢ではなかったらしい。そして、千影の話によると、歴史改変の結果として僕らは兄と妹ではなくなったとのこと。僕たち二人の魂に呪いがかかっていたのが、解けたんだって。こうして僕と千影は血を気にすることなく結ばれることが可能になったのでした。めでたしめでたし。
……冗談じゃねえ……
義妹エンド。前作の「実は千影は魔界のプリンセスでした」というオチよりはマシ……なのだろうか……? 話は水月のようであり久遠の絆の様であり、他の妹とは一線を画す伝奇のようなシナリオだ。もうどこから突っ込んだらいいのか……面白かったけどね。前作の様なハチャメチャさが感じられて。
全員クリアー! よくやった自分! しかし明日にはファンディスクが発売だ! ゲェー! しかしここまで来たからにはつきあわねばなるまい。たとえ予期せぬ困難が待っていようとも、一度やり通すと決めたことはやり通さねばならないのだ。
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