時計じかけの妹 篇

2002/03/03

「や、やるんですかい!? 12人ともやるつもりですかい!」
「言っただろうがよォ――。トコトンやるってな! それにたいしたこたァねぇだろォ――ッ。毎年日本中のどっかで何十万の人間が萌え死んでいる……それよりは軽く済むッ!!」

――プロシュート&ペッシ「ジョジョの奇妙な冒険」

 唐突ながら、鞠絵のタクシー旅行の謎が解けた。
 良く考えれば、「電車で二時間かかる」としか言っていないのだ。たとえば高槻から枚方へ電車で行こうとしたら、隣接する市であるに関わらず、それぞれ通っている私鉄が違うために一旦大阪に出なければならず、乗換えやら何やらで二時間かかるではないか。そうであれば、鞠絵としてはむしろタクシーを使うほうが自然であろう。別に鞠絵はタクシーで200キロくらいの旅をしてきたわけではなかったのだ。
 一時間行って一時間戻る(註1)、初歩の初歩だよ四葉君!

 鈴凛をマイシスターに登録する。彼女は機械系方面に異常な才能を持った妹であるらしい。彼女の発明品であるらしいメカ鈴凛は、見た目に人間とまったく遜色なく、言語に関してはまだ未発達であるが(というかしゃべっているのを見たことがない)、運動能力に関しては鈴凛とテニスでダブルスを組んで衛を打ち負かすなど非凡なものがある。衛は球技が苦手とはいえ、たいしたものである。
 これを、常にコーヒー一杯を飲むか飲むまいかで迷っているような財政状況のアニキからの援助で組み立てるというから、恐ろしい。それはそれで常人の為せる技ではない。

1:幼児期から英才教育を施されてきた。小学校に入るときにランドセルの代わりに赤い工具箱をもらったとか。
2:実は五万年前に地球に漂着した思惟体の転生した姿。
3:実はメカ鈴凛は鈴凛の双子の妹。鈴凛がこれをメカと言い張っている。

 可能性として考えられるのはこんなもんか。実はメカ鈴凛のほうが本物の鈴凛でいつもしゃべっているほうが実はメカ、だったら面白いのだが。いわゆる双子トリックという奴だ。

 鈴凛て登下校をともにすることで話す機会が結構あるのだが、彼女、二言目には必ず「援助してくれ」と言ってくる。いつか援助します援助しますとのらりくらりかわしてはいるが。いつか「『援助する』……そんな言葉は使う必要がねーんだ。なぜならオレやオレの仲間たちはその言葉を頭の中に思い浮かべたときには! 実際に金を払っちまってもうすでに終わっているからだッ! だから使ったことがねェ――ッ。『援助した』なら使ってもいい。アニキ、アンタもそうなるよなァ――ッ」とか言い出しかねない。これじゃ僕はアニキというよりマンモーニだ。

 ちょっとだけ鈴凛の昔の話を聞いた。女の子のくせに機械いじりばかりやって、とよく怒られていたらしい。ということは英才教育説は没か?(註2)

 デートに誘われた。のはいいのだが、たどり着いたのはフリーマーケット場。マラカスとソンブレロを渡され、「ここで踊っておひねりもらってワシの研究資金稼いだらんかい」と言われた。や、やるんですかいアニキ!? だが鈴凛自身もジャグリングを開始したので、アニキとしては踊らざるを得なかった。だがどうやら僕の踊りはそれなりに見られるものであったらしく、鈴凛から「才能あるんじゃないの」とまで言われた。どうだろう。次の機会にも僕を駆り出すためお世辞を言っているだけかもしれない。資金調達のためならその程度のことは平気でやるだろう。だがそれでも誉められて悪い気はしないのでよしとする。

(註1)一時間行って一時間戻る:「シャーロック・ホームズの冒険」内「技師の親指」で使用されているトリック。
(註2)その後、発明家の祖父から英才教育を受けたという設定があることが発覚。なるほどね。両親から怒られ、それで祖父のところに入り浸っていたとすれば納得。
2002/03/05

 ひな祭り、プールの日。他の妹たちが水着着用であるのに鈴凛は一人だけスキューバダイビング用の装備を完全着用していた。かつ自らの発明品「ブクブク伝説3号君」とやらを持参し自身満々の模様。
 それはダイビング機材と呼ぶにはあまりにも大きすぎた。デンドロビウムを思わせるごつい物で、かの春歌ですら着用することに二の足を踏むような代物だった。いや、むしろ春歌の内に潜む野獣の勘が危険を察知したのか? 当然のごとく、鈴凛は僕に着用を迫ってきた。き、着るんですかいアニキ!?

 むろん拒否権などないので僕は言われるままにデンドロビウムを着用、プールに飛びこんだ。すると途端にスーツ内に水が入ってきた。大ピンチ! スーツのせいで体が自由に動かず、僕は溺死を覚悟したが、幸いその場に居合わせた春歌がシュヴァルツヴァルト殺人空手でスーツを粉砕、助けてくれた。はふー……。

 しかし直後鈴凛から叱責が飛んだ。
「この腑抜け野郎が! なんだ!? 今のザマは!? ええ!?」
 だ……だって水が入ってくるだなんて思ってもみなかったんだ、と言い訳しても「アニキはマンモーニなんだよ。ビビったんだ」とか言い返されてどうにもならなかった。なんでひな祭りの日に溺死しかけなければならないのだ。屈原(註1)じゃあるまいし。

 メカ鈴凛を大改造したという。何が違うかというと、暗視装置がついたんだって。夜中にこっそり保安官を撃ち殺す予定でもおありで……? で、とりあえず僕にその機能を見せようと、真昼間だというのに鈴凛はスイッチをオンにした。するとメカ鈴凛の目からレーザーが照射され、並木の二三本をなぎ倒した。あまりのことに僕はビビったが、鈴凛は「あっれぇおっかっしぃなあ」などと涼しげな顔をしていた。頼むから、テストくらいしてくれ。しかし目からビームは燃えるな……これなら春歌に勝てるかもしれない。

 メモリ抜き取り事件の真相は、どうやらメカ鈴凛に装着するメモリが足りなかったから、らしい。まっとうにパソコン組み立てのバイトでもしたほうがいいと思うがね。
 とりあえずメモリは貸し出すという形でこの件については決着したのだが、ある日、鈴凛のラボが燃えるという事故があった。駆けつけてみると、鈴凛が傷心の体で立っていた。メカ鈴凛、焼け死んじゃったんだって。

 なッにィィ――――ッ!! オレのメモリはッ!? と反射的に思った僕はアニキ失格でしょうか? その後、メカ鈴凛はラボから移されていて無事だったということが判明してことなきを得たが。はー良かった良かった。しかしまあ、ろくに実験もせんと間違えてレーザーを発射するようなブツを作っておれば、早晩こうなるのはわかりきったことだ。もう少し慎重になってもらわないと、いずれ実験の事故でひどい死にかたをするだろう。

 クリア。血縁か非血縁かよくわからない。兄妹じゃない、とは言われなかったが同棲しようといわれた。兄と妹が一緒に住むのを普通同棲とは言わないが……
 なんか、どうでもよろしい。志保といいこの手のタイプはホンマどうでもいいなあ。人の趣味は千差万別だ。

 次、咲耶。人の恋路を邪魔する者は悪魔に食われろ青尾蝿。な妹。
 残り三人となったところで、改めて完全クリアを兄貴として誓ってみる。

(註1)屈原:屈原は端午の節句だったっけ? 覚えてない……