チェキ語通訳 篇

2002/02/04

 バレンタインデー。四葉はごく普通にチョコレートを持ってきた。晩飯を食べようとして蓋をあけたら鍋の中にチョコレートが浮いていた(註1)、とかナポレオン像を鞭で粉砕したら中からチョコレートが出てきた(註2)、とかいうのを期待していたのに。ホームズみたいな人を目指すのであれば、常に劇的な効果というものを考えなくちゃならないよ四葉。
 その晩メールが届いた。チェキチェキ度85だって。

 学園前で木の上にいる四葉を発見。僕が来るのをず〜っと待っていたらしい。そんなことをしているとソララトフみたいに人間ヌードル(註3)とか呼ばれちゃうよ? あとただ待つよりは罠をはったほうがいいね。自分そっくりの像を用意して窓際に立て、15分おきに90度ずつ回転させるとか(註4)

 その晩来たメールには「メニメニチェキ」という謎の単語が書かれていた。「チェキようなら」という単語もあったし、色々発展形が多いのかもしれない。

 封筒に入った白紙の手紙が届く。もちろん四葉からのものだが、鉛筆でこすると字が浮き出るという単純なものだった。工夫が足りない。アルファベットに対応した26種類の人形マークを駆使する(註5)とか年鑑を利用する(註6)とか考えてほしいものだ。

 四葉とデートに行く。イギリス帰りの妹は、わたあめは綿の分際で何故おいしいのか、という点を疑問に持った御様子。メールで「昔布団の綿を食べたことがあるけどおいしくなかった」と告白している。ふむ。探偵たらんとする者、あらゆる事象に好奇心を抱き、無謀とも思える実地検証をしてみるのは当然のことだ。ホームズもそれで窒息死しかけたことがあったしな(註7)

 一方、同じ日の亞里亞のメールは「あったかいアイスクリームが食べたいといったらじいやに鼻で笑われた」というものだった。兄として情けない。鼻で笑うメイドさんもどうかと思うが……

 リボンの騎士のコスチュームを全身真っ赤に染め上げたような(三銃士のコスチュームを、でも可)衣装で仮装した四葉と学校で遭遇。本人は変装のつもりでいるらしいが、とりあえず目立ったらあかんやろが! 兄チャマは四葉をそのような間抜けた探偵に育てた覚えはないッ!(註8) 時折、帰国子女ゆえの過ちを犯すケースがあるので、その辺はよく教えておかねばなるまい。「いつかカマクラバクフに連れてってほしいチェキ」とか言ってたし。しかし時折「ワンをヒアしてテンがわかる」「ゴートゥードリーム」といった明らかに日本人にしかわからない胡乱な英語を使ったりするのが謎。まるでルー大柴のような……

 夜中目がさめたら突然四葉がそこにいた。さすがはホームズを目指す娘、不法侵入はお手の物というわけか(註9)

(註1)鍋の中にチョコレートが浮いていた:「シャーロック・ホームズの思い出」内「海軍条約」。ホームズは取り返した海軍条約文書を皿の中に隠して依頼者に返すというマネをしていた。

(註2)ナポレオン像を鞭で粉砕したら中からチョコレートが出てきた:「シャーロック・ホームズの帰還」内「六つのナポレオン」。実際に隠れていたのはボルジアの黒真珠。

(註3)人間ヌードル:「狩りのとき」(スティーブン・ハンター、扶桑社ミステリー文庫)に登場するロシアのスナイパー。待伏せが得意らしい。異様な匍匐前進を行うため人間ヌードルと呼ばれる。

(註4)15分おきに90度ずつ回転させるとか:「シャーロック・ホームズの帰還」内「空家の冒険」。これでホームズはモラン大佐を罠にはめる。

(註5)アルファベットに対応した26種類の人形マークを駆使する:「シャーロック・ホームズの帰還」内「踊る人形」。実は原典では使用されていないアルファベットがいくつかある。

(註6)年鑑を利用する:「恐怖の谷」。暗号が重要な役目を果たす作品としてはほかに「シャーロック・ホームズの思い出」内「グロリア・スコット号」などがある。

(註7)窒息死しかけたことがあったしな:「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」内「悪魔の足」。被害者たちが窒息死した環境を再現しようとしてホームズ自身も死にかける。グラナダTVのドラマ版だとそのシーンにサイケな画像が使用されていてちょっとステキ。

(註8)変装はホームズの得意技である。第一短編「ボヘミアの醜聞」から「最後の挨拶」まで変装した回数は数知れず。初歩の初歩だよ、四葉君。

(註9)不法侵入はお手の物:「シャーロック・ホームズの思い出」内「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン」、「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」内「ブルース・パーティントン設計書」等々しょっちゅうやってる。ホームズは法の正義より己の正義を貫く人だった。無謬だからネ。

2002/02/05

 最近、僕を尾行する四葉の気配を感じ取れるようになってきた。尾行に気づかれるようではまだまだだなあ四葉。
 そのまま四葉の家にお邪魔して昔話を聞く。四葉はイギリスで生まれイギリスで育ったのだそうだ。イギリスという言い方がミソでありひょっとしたらスコットランドやウェールズ出身という可能性も否定できない。やたら口数が多いところを見ると北部アイルランド出身(註1)のような気がするが。

 ひな祭り。四葉は花穂とビーチバレーにうち興じていた。「チェキっと構えてチェキっと動いてチェキっと打ちかえす」のがコツだそうで。この汎用感情表現間投詞、実は結構便利なのではなかろうか。チェキに比べると、オレの編み出した「あぬー」(註2)はもっさりとした感じがする。「あぬーと構えてあぬーと動いてあぬーと打ちかえす」。ダメだ。「兄チャマあぬー!」とか言われた日には死にたくなる。やるなあ四葉。

 花穂は相変わらずダメでいいように打ちこまれていたのだが、アドバイスをしてあげたら闘えるようになった。四葉は「花穂ちゃんにまで打ち返されるなんて自信喪失デス」と言っていた。さもありなん。その後花穂は調子づいて「木の葉落とし」と「エックス攻撃」をマスターしたとか言い出した。エックス攻撃って一人でできるもんだったか?

 チェキと呼ばれてチェキチェキと返す主人公。伝染している……

 また鈴凛にメモリを抜かれた。しかし気づかない主人公。「ひょっとしたらひょっこり直るかもしれないし」とか言ってるし。メモリはキノコみたいには生えてこないんだよ。

 クラスメートの婦女子と偶然街で出会い喫茶店に入った。どうもクラスメートには「妹が複数いるらしい」という程度しか知られていないらしい。主人公、よく情報統制できてるな。高校と中学の別はあれど、同じ学校に妹が四人もいるのに。平和に談笑していたのだがそこに咲耶が乱入、「私のお兄様に二度と近寄らないで!」とかすごい剣幕でがなりたてた。逃げるクラスメート。兄妹愛と呼ぶにはあまりにもねじくれている咲耶の感情の発露に僕はただビビるしかなかった。さすが四葉に「咲耶チャンは怖いし」と言わせただけのことはある。

 今日の春歌さん。僕に近づいた、という理由だけで道を聞きに来た老婆を撲殺しようとした。誰かこいつに鎖をつけろ。

 怪盗クローバーが君のかわいい妹の四葉をさらうぞ、というナゾのメールが立て続けに届く。当然四葉の自作自演なのだが、兄としては付き合ってやるのが礼儀であろう。ということで決意する主人公。「探偵スペードになってクローバーと対決するぞ」。君、ハードボイルド派だったのか。

 謎の三銃士コスチュームを身にまとったクローバーと公園で対峙。スペードの名を名乗るとクローバーは「おおっ……! サムと呼びたいくらいデス……!」と返してきた(註3)。さっすが〜、わかってらっしゃる。

 四葉クリア。またしても「実の妹じゃない」と言われた。すごくイイ。四葉は愛嬢表現がごくストレートなので気持ちイイです。咲耶や可憐みたいに歪んでおらぬ。かなり変な子、とマニュアル等にも書いてあるのだが、他にネットオークションでギロチンを買ったり生け花の最中に剣山で人を殴るとか120キロの長距離をタクシーで往復するとかいった奇行少女が多すぎるので、さほど気にならない。一つ目国においては一つ目人は普通の人間。そこにシャーロキアンという設定が加わってはアンブロッカブルというものだ。ヒロインがシャーロキアンとは、さほど奇を衒った設定とも思えぬが、とりあえずオレは今まで出会ったためしがない。盲点。

 次は雛子で行く。行くぞドニー、ロリの時間だ。

(註1)北部アイルランド出身:アイルランド人というのは饒舌らしい。国民性だとか。ヒギンズもそういっている。ジャード・クイン(「Mrクイン」の主人公)、リーアム・デヴリン(「鷲は舞い降りた」の登場人物)、デヴリン・トレーシー(トレースシリーズ主人公)等の例がある。

(註2)「あぬー」:正確には言い出したのはやながわさんだが。

(註3)サムと呼びたいくらいデス……!:このセリフから察するに、別段ホームズと限らず全般的なミステリファンらしい。