第5話 芝村百翼長、突然真っ白い灰になる

4月24日

 本田が皆を昼食に誘っていたが、皆から断られていた。あまりに哀れなので、私がつきあってやった。教師だというのに実に人望のない……。まあ、自分のギャグを機関銃で脅して笑わせるような奴と一緒に食事するのは、気の進まぬことではあろう。皆の本田に対する人間関係評価は−50が高い方であるようだ。食事後、本田は調理場の窓から外を眺めていた。何を思っていたのであろう……

 出撃阿蘇特別戦区。スキュラ4、ミノいっぱい。だが今の私にはその存在を否定する兵器第七聖典……じゃなくてN・E・Pがあるッ! そォれどか〜ん!
 ……なるほど、喰らった者は皆死を免れ得ぬ必殺兵器であるな。あっという間に撤退戦。だがその直後増援部隊がやってきたので稼げず、戦果18。ヌルったわ。N・E・Pの効果的な撃ち方を覚えねばならぬな。

4月25日

 校門の前にいる連中に話しかけてみるも、誰も教室に連れて行ってくれない。と思ったら、今日は日曜日だった。むむ。曜日を忘れてしまうとは、司令を辞めたというのに、私はまだ忙しい日々を送っているようであるな。

 1発しか撃てないN・E・Pは撃ったら即捨てるのが基本である。捨てても回収されるので問題はないが、毎回装備し直す必要はある。で、朝早くハンガーに行って再装備しようとしたら、N・E・Pがない。私のN・E・Pをどこにやった〜! と探してみたら、加藤機が勝手に装備していた。さすが関西人! エセとはいえ自称関西人! 手が早い! だが人の物を勝手に盗るのは犯罪でありミーティングで懲罰にかけたっろっかいワーレーという程度の殺意を覚えた。

 なんというか、ヒマである。N・E・Pはとったので躍起になって妖精を作る必要もない。機体は万全なので仕事をする必要もない。まるで仕事一筋とばかりバリバリ働いていたサラリーマンが突然リストラされて途方に暮れているようであるな……。
 特に行くあてもなく、公園でぼーっとしていた。先客に森がいて、やがて新井木、坂上、茜が現れた。森は私に弁当をくれ、ちょっとの間一緒に歩いてから去っていった。新井木はその森にくっついて去っていった。だが茜が私にとりついてなかなか離れてくれない。まあ疑似デートと洒落こむのもいいが、しかし坂上が遠くからこっちをじーっと見ているものだからあまり大したこともできぬ。とりあえず「大事なものを持ってきて」と頼んでみた。
 同時に、やってきたブータにも同じく頼んでみた。頼むとブータは去っていった。
 坂上は私にサングラスをよこすと、去っていった。茜と二人きりになる。チャンスと思ったか茜がまた話しかけてきたが、タイミング良くののみがやってきた。ののみは何故か機嫌が悪いようだ。茜が私に話しかけようとすると、間違いなくののみが割り込みをかけてくる。茜が私ばかり見ているのを妬んでいるのか。ええと、こういう人間を一般的には「おませさん」というのであったような気がする。私と茜の間には何もないから、思う存分アタックをかけるが良かろう、ののみよ。妬まれる筋合いはない。
 9時20分頃、田辺と本田がやってきた。意外と人が来るものであるな。うわついてる奴らはこのオレが許さねえ、という感じであるな、本田。だが田辺はというと「一緒に訓練しませんか?」などと持ちかけてきたり、実にまじめだ。日曜くらい休むが良かろう。
 本田が「鉄アレイをやる」と言ってきた。そんなものを持ち歩いているのか教師。だがそこへ今度は中村が割り込みをかけてきた。何か用事かと思ったら、割り込みをかけてきただけですぐ去っていってしまった。何をしに来たのだ。入れ違いで芳野が入ってきた。芳野は少々世間話をすると、去っていった。
 9時40分頃、皆が去るのと入れ違いにまたブータがやってきた。だが「大事なもの」は持ってきてくれなかったようだ。「一緒に歩こう」と言ってきたので(実際に言ったわけではない。猫だから)鬼ごっこをした。
 鬼ごっこに飽きるとブータは去っていき、次にまたののみがやってきた。ののみは私に弁当をくれると、途端に不機嫌になった。よもや……この弁当で私を毒殺しようと言うのではあるまいな。なにやら怖くなったので、その場に居合わせた中村に(またやってきて割り込みをかけてきた)プレゼントした。すると……ののみが去った途端Hな雰囲気になった。なななッッ!? いつの間にやら私と中村は運命の絆になっているッ!? 中村は交換とばかりに弁当をよこしてきた。イヤ今渡したのはののみの毒入り弁当であって決して私の手作り弁当ではない〜ッ! 誤解を解くべく中村にコブラツイストをかけて痛めつけておいた。そしてそうしているところをまたやってきた芳野に見られる。ご、誤解だ芳野! さらに坂上までやってきて事態は泥沼状態に。う、うわああああッ!
 完全に公園から人が居なくなったのは10時半頃だった。誰もいなくなったので別の場所に向かおうとしたら……
森「…ちょっとちょっと、どこまでいくのよ?」
本田「もう、勝手にどこでも行けよ」
 う、うわあああッ! しばらく前に一人で勝手に去っていったのではなかったかおまえら!

 ハンガー周辺を回ってみる。瀬戸口、田代、滝川といった面々が日曜日だというのに仕事をしていた。あまり真面目じゃないと目されている連中ばかりであるな。そんな彼らも、熊本の危機という現実を目の前にして、己の為すべき事を成そうとしている。いいことだ。
 ハンガーを出たら、新井木に昼食に誘われた。森もいたのだが、森は弁当を持っていないので、来なかった。後先考えず人に弁当をくれるからだ!
 その後中村にも昼食に誘われたので、食べた。って中村の弁当は私がもらったはずだが……奴にののみの弁当を与えたのであったな。死ぬなよ、中村……

 校門前でモトコと一緒に歩いていたら善行に割り込みをかけられた。あわ、あわわ。直後モトコに「一緒に仕事しない?」と持ちかけられたので、逃げることができたが。ハンガー内でしばしモトコとサシになった。む……。士魂号のパラメータを大幅アップさせた見返りに体を……と言ってきても不思議ではない雰囲気だったが、ハンガー出口にちらりと岩田の姿が現れた瞬間、モトコは出ていった。岩田のおかげで助かったのだろうか。

 午後4時半頃、再び公園に来てみた。はじめは誰もいなかったのだが、茜、坂上、ののみ、田辺、中村と続けざまにやってくる。公園が好きなのだな貴様ら。特に茜は朝同様、何度も話しかけてくる。うう……そこまで私が気になるのか? だが別段何を提案してくるわけでもない。と、新井木がやってきて「一緒に仕事しない?」と言ってきたのでついてゆく。んん〜。

 7時頃出撃。人吉戦区。増援情報が出たので、増援を待っていたら若宮戦死。あっ。
 しかも増援がスキュラ1匹だけだったというのが報われない……。戦果18。

4月26日

 気がついたら速水が万翼長に昇進していた。奴は恐ろしい上昇志向の持ち主であるな……

 茜が安っぽい指輪を持ってきた。そういえばつい昨日「大事なものを持ってきて」と頼んでおったなあ。で、これがそなたの「大事なもの」か……。ふむ、面白い。正体の面々全員に頼んでみるか。意識調査になるやもしれぬ。

 小隊は、若宮の死に沈んでいた。あの来須が不安な状態になる始末。そもそもはといえば、私が功を焦りN・E・Pの発射をためらったのが原因なのだ。せめて、私が小隊の雰囲気を明るくせねばならぬ。それが私のせめてもの罪滅ぼしだ。と思って校内を巡っていたら、赤く明るく輝いている狩谷を発見した。なッなッなッなんだその赤いオーラはッ!?

 狩谷と中村の2人に「田代はどこだ」と尋ねられた。なんなんだ一体。田代がどうしたというのだ。

 久方ぶりに午後の授業も受ける。善行速水加藤田代壬生屋石津来須と遅刻。平和だ……絶望的な熊本戦線がウソのようである。
 むなしい。パイロットとなって幻獣どもを狩りまくるつもりだったのに、このむなしさはなんなのか。N・E・Pという究極兵器を手にした瞬間から、私の中でなにかがおかしくなったようだ。仕事もせず、だらだらと授業を受け、戦闘に飛び出しては事務的にN・E・Pを撃つという日々。あの日以来、私はすべての意欲を失ってしまった。むしろ学生ウオッチングにうつつを抜かす始末。N・E・Pさえあれば幻獣に勝てる。別段、パイロットが私でなくても、だ。N・E・Pとはその存在を否定し抹消し尽くす兵器であるというが、存在を否定されているという点においては私も同様ではないか。
 …………
 夏の休戦までは戦い抜く。私のせいで命を亡くした2人のためにもな……。だが、その後のことなんて、わからない。
 私は、何がしたいのだろう。

 水俣戦区防衛戦。若宮の敵討ちとばかり田代がものすごい勢いで突っ込み、ものすごい勢いで機体を破壊され撤退戦となった。が、その時私の機体はすでにすべての幻獣をN・E・Pの射程内に収めていた。どうやら、田代の命を救うことができたようだ……。田代は「仲間の死」というものに人一倍敏感であるらしい。自棄的行為に走らぬよう見ておく方がいいかもしれぬ。

4月27日

 善行も安っぽい指輪を持ってきた。
 滝川も安っぽい指輪を持ってきた。
 加藤も安っぽい指輪を持ってきた。
 なんだなんだなんなんだ! この安っぽい指輪に隠された効能でもあるというのか!?

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