第6話 芝村百翼長、戦争神経症に陥る

4月28日

 速水が上級万翼長に……。

 その場にいる人間を誘って、屋上で昼食を食べてみた。広い屋上で小さく輪を作るというのはやや滑稽であるな。

 いまだにののみは不機嫌と見える。いつになったら機嫌を直すのやら。と思っていたら、会話中に田辺からのインタラプトを食らった瞬間機嫌が直った。何故だ。子供の考えることは分からぬな……
 あと整備員詰め所の入り口の暗がりから人をじっと見つめるのは止めた方がよいと思うぞ、田辺。

 作戦会議を開きたくなったのだが、今の私はもはや好き放題に会議を開ける立場ではない。というわけで速水の姿を探した。司令室で一人で仕事をしているところを見つけたのは良かったが、入った途端Hな雰囲気になった。これでは提案できぬ!
 仕方ないので副司令モトコを探した。彼女は二組教室に一人でいた。ひょっとして、三人以上の人間がいる場でないと、「みんな聞いて」ができぬというのか。なんたることだ。世間話をしようとすると「仕事中だからあとにして」と突っぱねられる。教室で一人で突っ立っておいてなにが仕事だ。

 出撃。先発隊の殲滅には成功したが、増援部隊をほとんど無傷で逃してしまった。補給やらなんやらでステップを大幅に無駄にしており反省。戦果19だが、うまくやれば40くらいいったかもしれぬ。

4月29日

 黄金剣翼をもらった。パイロット就任後13日で157機撃墜か……。ひょっとしたら停戦前に絢爛舞踏に到達するやもしれぬ。恐るべきはN・E・Pのでたらめな威力であるが。

 久しく故障しっぱなしであった1号機を修理した後、出撃。久方ぶりの出撃故か、田代は1ターン目からすさまじい勢いで突撃し、ボコられていた。また修理せねばならぬであろうが。
 1ターン目から敵増援の報があったのだが、2ターン目のN・E・Pで誤ってすべての幻獣を巻き込んでしまった。戦果18。

4月30日

 しかし、私は何をすればいいのか、本当に分からなくなってきた。
「分からなければ、聞けばいいじゃん」と新井木はいった。
 ……そうするか。

 テストがあった。瀬戸口がビリだった。493点で。
 …………
 皆が高得点を取るテストに意味はあるのか。理論だけでは戦争には勝てぬ。上の奴らはそのようなことも分からぬのか?

 ヨーコに、今後のことについて相談してみた。
ヨーコ「悪い噂流すの良くないネ。先生に怒られるデス。発言力も下がる、イイコトないネ」
 役に立たぬわ! 次、モトコ!
原「強力な装備を陳情したくても、開発技能がないと発言力がたくさんあっても意味がないのよ」
 たわけ! 私の開発技能はもうレベル3だ! 次、森!
森「そんな悩む暇があったら、みんなのために仕事でもしたらどうなんですか?」
 ぐお……さすが森、笑顔でキッツい事を言ってくれる。まあ、それが妥当だろうか。仕事をしよう。

 で、ハンガーに行ってみる。だが、3番機はすでにパラメータがすべて1300超だ。闘うには十分すぎるパラメータであり、これを整備するよりもっと有意義な時間の使い方があるはずだ。というわけで、生きる指針を求めてもう少しぶらついてみる。すると、消毒液の匂いに包まれた芳野先生に出くわした。
芳野「そうよ、ファイト! バカみたいにファイト!」
 ……そなたも人生に迷いを感じておるのだな……。他人という気がせぬ。とりあえず今後について相談してみる。
芳野「授業はちゃんと出ようね。難しいかも知れないけど、技能が得られることだってあるんだから」
 だから技能はパーフェクトだというに! ええい役にたたん!

田代「何かと気分転換した方が、みんなの士気もあがると思うけど。あーぁ、誰かバカンスを陳情しねえかな」
速水「技能をたくさん取得するってのはどう? 今後、色々役に立つと思うよ」
壬生屋「今後の事って言う前に、授業は出ていますか? 知力は放っておけば下がっていくんですよ」
 きっさまら〜! 特に壬生屋! 上官を捕まえてアルジャーノン呼ばわりとはいい度胸だな! どうしてくれよう、と思っていたら滝川が通りかかった。ロボットアニメマニアのどあほうが何を言えるのか、とは思ったが一応聞いてみた。
滝川「気にくわねー奴がいるの? 提案で殴りかかってやれよ。従属させて色々提案でこき使ってやりな」
 さすがロボットアニメマニア! たまには役に立つことを言うではないか! ではさっそくソナタから血祭りに上げて進ぜよう! せ〜のォ……と思ったら、すぐそばに速水委員長がいて真面目な雰囲気だったので喧嘩を仕掛けられなかった。お、おのれー。命拾いしたな滝川よ。
 仕方ないので、聞き取り調査を続けた。次は田辺。
田辺「要らないアイテムがあっても、捨てずにプレゼントしてみては? もしかしたら喜んでくれるかもしれないし」
 ……それだ。

 その日、裏マーケットで若宮のビキニパンツを大量購入する女性学徒兵の姿が見られたという。

5月1日

 まず、若宮のパンツ一枚目を祭のハリセンと交換した。いやまあ運動力もアップするし、パイロットたる祭には頑張って欲しいわけだ。そうしたら祭との仲が「運命の友」となった。若宮のビキニパンツで結ばれる運命の2人か……
 そしてハリセンを持つと士気がアップするという事実をはじめて知った。そうなのか。では士気の低いローテンションな輩を捜し出してくれてやるとするか……と思ったのだが、使用してみたら「自分にツッコミを入れた。士気が5上がった!」と出た。使用せねばならぬのか? 自分で自分の頭を叩くというのは果てしなく間抜けな行為であるのだが……

 祭と萌とモトコと森につきまとわれて困惑しきっているところに出撃命令。戦果22。

5月2日

 日曜日。校門前でモトコと善行が並んでいるところに出くわした。何事だ! デートなのかッ!?

 単なる興味本位でビキニパンツを壬生屋の迷刀鬼しばきと交換してみる。というか何故ソナタは平気な顔をして刀を持ち歩いているのだ。この私が没収するッ! しかしこのような呪われたブツ、持っていても仕方がない。このような代物が似合う人間といえば……
 目の前にモトコが居るではないか。これで気に入らない男をばっさばっさとなぎ倒してくれ。
原「わかったわ。本気を出させてもらうわよ」
 頼もしい言葉だ。

 日曜日ではあるがデートの予定もない。ぶらりと新市街に行ってみた。田代新井木森ののみという珍しい取り合わせの4人組がいたのだが……奴ら、一列に並んで私の方を見ているだけで近づいてこようとせぬ。何事か、と思ってじっと観察していたら突然雷鳴が轟いた。どうも、田代とのデートの約束をすっぽかしてしまった模様。って目の前に田代居るではないか!? ヤツも同罪であろ!? 田代は怒りのあまりおかしくなったのか、1個所で延々と歩き続けるという奇行に走り始めた。う、うああーーーッ! 新井木森ののみ、見てないで助けよーッ!
 覚悟を決めて話しかけてみたところ、
田代「今日はオレのダチが死んだ日だ」
 ……さよか?
田代「幻獣め。殺しても飽きたりねえ」
 …………
 ともかく、田代は心を閉ざしてしまったので謝りようがない。逃げた。

 どぶ川べりの道で一人落ち着いてみる。この区画はなんのために存在するのだろう、と考えながら。すると、新井木と森が付いてきた。暇だな2人とも。

 暇なのでクッキーでも作ってみるか、と思ったのだが、材料を調達すべく売店に行ってみたら、いつの間にか売店は閉鎖されていた。むう……
 味のれんまで潰れていた。むう……! すべて私が司令官として無能だったからか……! 所詮私は目の前の敵を倒すことしか脳のない戦術級のバカ、ということか。

 人生という道を照らす灯火を見出すため、今日も今日とて人に今後のことを相談して回る。
ののみ「みんなとお話ししてる? 忙しくても、毎日全員と一回はお話しした方がいいよ」
 ののみのわりにはやたらと漢字が多いな。何故そんな憮然とした表情をしながら言う?
 何故かすさまじく怒っているようだが。
新井木「えー…そんな事聞かれても僕、わかんないもーん」
 殴るぞこのどアホウ! だが結果として提案「悪い噂を流す」をゲットした。そうか新井木、そうしろというのだな……? なのでさっそく狩谷の悪い噂を新井木に話してみたら、新井木は私の背中を力一杯叩いて去っていった。この裏切り者……!
狩谷「上っ面だけでもみんなと仲良くしておけば? 色んな提案を教えてくれるし、先に死なれたら教わることもできないからね」
 荒んでおるな……。

 出撃。歌を歌わない、を選択した直後に田代が大声でガンパレードマーチを歌い始めた。きっさまーッ! 当てつけかッ! ルドヴィコ療法にかけるぞこのアホウ! ま、直後NEPで殲滅したがな。その後友軍に呼ばれ、戦果38、累計撃墜数235。田代よ、自分の命をちぎって投げるが如き戦闘スタイルはどうにかならぬのか? って悪いのは私か? 私なのか?
 ……そうかもな。とにかく、そなただけは死なせない。もう人死にはゴメンだ。

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