リチャード・ホイト

Richard Duane Hoyt

デコイの男(ハヤカワ文庫HM)

評価:★★

 私立探偵デンスンの元にやってきた依頼人は同業者の女性、パメラだった。デンスンの故郷にいるらしい娼婦殺しの犯人捜査に力を貸して欲しい、という依頼を受けてデンスンは故郷に戻る。しかし犯人の正体を突き止めても何故かパメラは無関心。この依頼には何か裏があるらしいのだが……という話。
 話の確信となる謎がよくわからないという根本的な問題があるように思われる。そこんところが作者のならいなのだろうが、試みが成功しているとは言い難い。でもホイト作品だしなあ。どこか脱輪した話なんだろうということは予想済みだったのでそれほどの失望感はない。

エドワード・D・ホック

Edward D. Hoch

怪盗ニック登場(ハヤカワ文庫HM)

評価:☆☆

 傍目には価値のないものしか盗まない怪盗ニック・ヴェルヴェットの犯罪行為を描く連作短編集。ターゲットは会社名を表示する真鍮の文字、回転木馬、大リーグを一チーム、カッコウの時計、陪審員全員等々奇抜なものばかりであり、盗むための手段はもちろんのこと、そのようなものを盗みだす理由まで一ひねりしたオチを持ってくる。こんな奇妙な話ばかりよくもまあ思いつくもんだ、と感心せずにはいられない。どれも面白かったんだが、ベストをあげるなら「くもったフィルム」か。現像ミスによる単なる映画の失敗フィルムが殺人事件の証拠になる話。すげーや。

サム・ホーソーンの事件簿T(創元推理文庫)

評価:☆☆

 アメリカのとある田舎町に診療所を構えた若き医師、ホーソーンが次から次へと舞いこんでくる不可能犯罪を解決していく連作短編&ホッグの代表作「長い墜落」を収録した短編集。出てくる事件のことごとくが不可能犯罪である。不可能犯罪というものは、しかしさほど多くないパターンに分類されてしまうものであるが、この短編集では1920年代アメリカの文化とうまいこと組み合せ、あの手この手といったバリエーションを見せることに成功している。かなり芸が細かいな。連作からは外れるが、ビルの21階の窓から身投げした男が3時間後に地面に激突死するという「長い墜落」もなかなか面白く、この作者かなりの技巧派であるとの印象を受けた。Uも読もう。

マイケル・ボンド

Michael Bond

パンプルムース氏対ハッカー(創元推理文庫)

評価:☆☆

 パ氏のもとにル・ギードの編集長の訃報が届いた。慌てて出社すると、何故か当の編集長が演説をぶっているところだった。実は、何者かが誤った情報を新聞各社に送りつけたらしい。しかも、次回発行のル・ギード誌の内容がめちゃめちゃにデータ改竄され、創刊以来の大ピンチを迎えているという。悪意あるハッカーの正体をあぶり出すべく編集長はパ氏に捜査を依頼する――が、パ氏はコンピューターのコの字も知らないずぶの素人だった……という話。
 1990年作品。フランスにおける出版業界がOA化(この単語も古くさいな)の波を浴びている頃を舞台にしているため、コンピューターの書き方に関しては隔世の感がある。たった十四年前の話とはいえ。最新機種のメモリー容量が千四百バイト、とか普通に書かれているので驚いた。