デイヴィッド・リス

David Liss

紙の迷宮(ハヤカワ文庫HM)

評価:★★

 時は18世紀、ところはロンドン。後の世に言うところの私立探偵のような仕事を生業としているベンジャミン・ウィーヴァーのもとに、父を殺した犯人を探してほしいという依頼がきた。その男は、父を殺した犯人はウィーヴァーの父も殺したのだという衝撃的なことを語った。確かに男の父が死んでいた日と前後して、ウィーヴァーの父も馬車に轢かれて死んでいた。調査を進めるうち、ウィーヴァーは父が南海会社の実態を暴く原稿を書いていたという事実を突き止める。が、ウィーヴァーの行く手にはやがて見えない圧力がかかりだす。ウィーヴァーは幻の株式仲買人マーティン・ロチェスターを見つけ出し父の復讐を果たすことはできるのでしょうか、という話。
 今ふたたびの海の解説で触れられていたので読んでみた。同じく、南海泡沫事件の時代を舞台としたミステリである。こちらは草創期の株取引と、それを取り巻く人々の変化を主眼としている。単なる紙切れであるところの株式が、信頼というものに基づいて価値を持つようになったことが、当時の人々の自己認識そのものを変えていったとする著者の考えは実に興味深い。なるほどなあと納得するところが多々あり面白かった。