大西洋のど真ん中に宇宙船が落ちてきた。彼らはアルファケンタウリからやってきたトソク族と呼ばれる種族で、異形の姿をしておりながらも人類に対して友好的だった。ファーストコンタクトという人類の歴史の一大事に世界中が沸き立つものの、やがて深刻な事件が発生した。トソク族の滞在施設で人間の惨殺死体が発見されたのである。容疑者としてトソク族の一員が逮捕されたことにより、宇宙人を被告とする裁判が行われるという前代未聞の事態となった……という話。
ソウヤーは相変わらず読みやすくていい。メインになるのは法廷におけるやりとりでありSFというよりは法廷ものミステリという色合いが濃い。異星人を人間の法で裁く、という異常なシチュエーションで、アメリカ司法制度の抱える問題をえぐる、というのは非常に面白い。終盤の豪快な展開もソウヤーらしくてよいんじゃないでしょうか。
あと小ネタが相変わらず愉快。陪審員を選ぶにあたり、公平を期すためSFファンは排除する必要がある、ということでSF関連の質問をあらかじめ答えさせるくだりは面白すぎる。「以下のテレビ番組で定期的に見ていた物はありますか?」という問いの中にアルフの名がある、とかミスタースポックの父親の名前を答えられた人は陪審員にいれない、とか。
舞台は、人間並みの知性を持つ恐竜キンタグリオが中世的文明社会を営む世界。少年アフサンは遠見鏡をもって宇宙を覗き、自分たちの住む星は決して平らではなく、宇宙の中央に位置するわけでもない、と看破する。だがそのような考え方は神の教えに背くものであり協会と対決する羽目になる、という話。テーマとなるのは大多数の人間が信ずるところの「常識」とそれに相容れぬ「事実」との対決。なるほど「猫の地球儀」に引き合いとして出される内容である。このような話として提供されるならば、そりゃあ誰だって「事実」を知らしめようとするアフサンの考えを正しいと思うだろうが、しかし人は無意識のうちに「常識」に支配されているとは「キャッチ=22」で証明済みの事実。常識に捉えられた頑迷な僧侶達は哀れむべき存在であるが、絶対に自分はそうはならない、と言い切ることはできない。願わくばあらゆる物に対して先入観のない柔軟な姿勢で臨みたいものだ、と勝手に自戒してみたいと思った。
なんでこのような面白い作品を早川は絶版にするのだろう。
(追記)5月末に復刊……
コンジャー家には忌まわしい伝説があった。百年前、当主が領地の森で愛娘を殺して自らも自殺した、という呪われた言い伝えが。そして今、似たような事件が起こった――ジャックの娘セーラが、森に連れて行かれた後精神に異常をきたしたのだ。森に連れて行ったジャックの方も、記憶が混濁しており森の中で自分の娘に何をしたのか覚えていない。事件はそれだけに留まらず、上の娘エリザベスの通う学校の子供達が、次々と森に姿を消し始めた――という話。
精神科医に診てもらっているのはセーラだが実は悪魔に憑かれているのはエリザベス、という点がエクソシストとは決定的に違う一ひねりである。うまくいってるのかなあ。よく考えてみるとこのお話の主眼はとりつかれたエリザベスによる残虐ファイトながら、読者の感情移入の対象となるコンジャー夫妻の視線はあくまでもセーラを見、セーラを心配し続けている。このずれが、微妙に焦点がぼけていると感じさせる原因かな。この隔靴掻痒感が作者の狙ったところなんだろうが、ワタクシ的にはピンと来なかった。ただエリザベスの残虐ファイトはあまりに残虐だったので、震えた。猫を殺すなー!