月島亮次は平安の世から生き続ける吸血鬼。その割にはやたら俗塵にまみれており、深夜の工事現場のバイトで働いたり輸血パックを吸って渇きを癒したり、と現代の生活にすっかり順応してしまっていた。そんな彼のもとにいきなり幽霊はやってくるし見習いシスターはやってくるしで大騒ぎ。という話。
なんだかなあ。現代日本の生活に完全に順応し、人並みに近い生活を送る吸血鬼という設定は少々面白かったが、話がかなりどうでもいい。このどうでもよさをシスター萌えで押し切るのは無理だと思われます。むー。
とある米軍駐屯地で、精神科医の少佐が一兵士を尋問した。その兵士、「ジョージ」が出そうとした手紙の文面があまりに異常だと思われたからだ。尋問中その手紙のことに触れると兵士は突然震えだし、コップを握りつぶして少佐に襲いかかろうとした。ところが自分の手から流れ落ちる血を目にした途端、彼は自分の血を舐めまわし始めた……という話。
遠い昔にポケミスで出版された後絶版、バカミス100選に選ばれはしたものの長いこと入手困難になっていた作品が唐突にNVレーベルで復刊。なんでいまさら? 「読者よ欺かるるなかれ」といい唐突な文庫落ちが多いね最近。
セイヤーズ「箱の中の書類」のように、すべて書簡によって話が構成されている。だが雰囲気はエリン「鏡よ、鏡」に似ている。精神分析によって徐々に「ジョージ」という人物像が明かにされていく、という点、物語がどこに着地するのか読みにくい点、等々。幾多もの心理試験によって一枚一枚「ジョージ」の精神の障壁が明かされていく様子は非常に面白く、そして最後に明らかにされるのはかなりおぞましいものだ。1961年という発表年度を考えると、当時はかなりの衝撃をもって受け止められたのではなかろうか。今読んでみてもかなり不気味だし。オヤジをナイフで――とか猫の母乳を飲もうとして――とか。
探偵ネロ・ウルフにのもとに助けを求めに来た男は、「贖罪連盟」という会合の会員だった。かつて学生時代、彼らは一人の新入生、チャピンをいじめて不具にした。何らかの形で償いを行おう、という人間が集まっているのだが、構成員が一人また一人と不審死を遂げていた。事故が起こるたびに送られてくる脅迫状は、チャピン当人が送っているらしいのだが確証がない。彼らから恐怖の要因となるものを取り除く、という契約をかわし、ウルフは捜査を開始する、という話。
古典。だがさほど面白いとも思わず。「推理小説で一番最初に疑われている人間は犯人ではない」という法則を地で行くような内容であって、それ以上のひねりが無いように思われる。1930年代という昔の話だからひねりがなくても仕方が無いのか? でもその法則の裏をついたカーの「死者を起こす」もこの頃だよな。「死者を起こす」の方もどうかと思うがアレはアレでものすごく意表を突かれたからな。探偵小説のお約束をバカにした作品を書きまくったバークリーもこの時期の作家だし、ネロ・ウルフはちょっと期待外れだったと言わざるを得ない。残念。
1994年、ボスニア。普通の主婦だったカーラは、目の前で最愛の夫を、息子を失った。非情な運命にさらされた彼女は、テロリストの道を選ぶ。運命に翻弄されるのではなく、運命を自分の手で切り開くことを彼女は選んだ。わずか十ヶ月で戦士となったカーラは、世界を相手に戦いを挑む。カーラのゲームを、カーラのルールで! ……という話。
全三部構成で、第一部は普通の主婦カーラさんがテロリスト組織にスカウトされるまで、第二部は潜伏期の暗躍、そして第三部ではカーラの起こしたハイジャック事件の顛末が語られる。第三部も十分面白いのだが白眉は第一部で、ボスニア内戦のイヤっぷりがこれでもかとばかり描かれる。「狩りのとき」のベトナムもかなりイヤだったがこっちもかなりイヤ。「夢果つる町」に通じるものがあるか? この頃「東方先生萌え」とかオレが言っていられた日本という国はとても素晴らしい国だなあと思った。戦争反対!
四分冊の第一巻、ということもあり、話が一体どういう方向に行くのかまったく謎である。一方は第二次世界大戦中の連合国と枢軸国の暗号戦争の話、一方は現代、アジアのとある国にデータヘヴンを構築しようという話。現状、二つの話の繋がりは皆無といっていい。そして想像の域に属する科学技術は一切出てこない。今のところどのへんがSFなのか、謎である。ただし読み物として面白いのは間違いないので、おそらく最後まで付き合うことになるだろう。確言はできないが、お奨めしない事もない。
「ローレンス、エニグマを上回るドイツの謎の暗号を発見する」「シャフトー、Uボートのキチガイ艦長に悩まされる」「後藤伝吾、ニューギニア島で人食い人種に追いかけられる」「ランディ、ナゾのメール差出人に戦々恐々する」の四本立てでありいまだに話がどう繋がるのかわからない。これで話の半分まで来てるんだよな。まあ、第二次大戦中の暗号バトルとか後藤さんの大冒険とか読んでて面白いから、いいんだが。しかしこれはSFレーベルよりNVレーベルにふさわしい内容である気がする。今のところ。
四人の主人公からなる四つの物語は、どうやらナチスの埋蔵金というキーワードで一つに収束していきそうな模様になってきた。なるほどなあ。だが残り一冊で話をきっちりまとめきれるのだろうか。その点はやや心配。別にSFじゃねえよなあこの話。十分に面白いから、別にいいが。
予想されたことではあるが、最後まで読んでみても想像の域に属する科学技術は出てこなかった。厳密な意味でSFであるとは呼べない。だが、お話の根幹を成す「暗号」という科学技術の使われ方は、SF小説的文法にのっとった扱いを受けていると思われる。まあ、ワタクシとしては面白かったので、カテゴライズなどどうでもいいが。とはいえ、スティーヴンスンはSF作家という感じではないように思われる。むしろ視点は文明史論とか科学技術が人類の歴史に与える影響とか、そういった方面に据えられていて、それを語る上の道具としてSFというジャンルを利用しているのではないのか、と感じる。スノウクラッシュ内で語られる古代シュメールのコンピューターウィルスの話とか、まあ一筋縄ではいきませんわね。
はじめは「マフィアのピザ屋は30分以内に配達できなかったら即処刑」という話だったのだがやがて「古代シュメール人はコンピューターウィルス(に似たもの)を作っていた」という文明史的な話になって驚いた。
バーチャルリアリティ世界の書き方など、コンピューターのことがよくわかっているとう感じで面白い。単純な人格を与えられたVR世界内での雑用をこなすプログラムをデーモンと呼ぶとか、巨大なデータを持ち込むとVR世界そのものがスローモーションになるとか。
193X年、霧の都を闊歩する殺人鬼「スミス氏」がイギリスを震撼させていた。捜査に捜査を重ねた結果、凶行現場を目撃し、かつ尾行して犯人の住居を突き止めたという通報者が現れるに至り、とうとう犯人逮捕は目前かと思われた。ところが当の住居、21番地は下宿屋で、数人の人間が住んでいた。警察は怪しい人間を片っ端から逮捕していくが、スミス氏の犯行はとどまるところを知らなかった……という話。
オチが微妙。このトリックはフェアかアンフェアか判断がわかれるところだろう。発表されたのは1939年、いかにも黄金時代末期っぽいスクリューボール的作品ではある。
銀河系を正体不明の宇宙海賊が出没していた。これに敢然と立ち向かうのが銀河文明を守るパトロール隊、レンズマンである。新人レンズマンキムボール・キニスンは新兵器Q砲搭載する最新鋭艦ブリタニア号を駆って出撃した!
……と巻頭のあおり文句に書いてありながらいきなりブリタニア号が撃沈されて大笑い。デンドロビウム零距離射撃砲しか装備していないというあまりにも漢らしい萌え萌えな船なのに。
えーと、基本的に火星シリーズっぽいです。主人公がとにかく縦横無尽の大活躍をするあたり。「あんたの名前は知っている。だが銀河じゃあ二番目だ」と言いたくなるほどの強さではないが(あくまで作中に置ける相対的な比較での話。多分カーターとキニスンが戦ったらそりゃキニスンが勝つだろう)。しかし火星シリーズが単純に舞台が火星というだけであるのに対し、レンズマンはいかにもSF的なガジェットで世界観が構築されており、SFだなあという感じが猛烈にする。西部劇的スペースオペラから科学的考証の為されたSFへの過渡期における傑作、とサムライ・レンズマンに書いてあったが、なるほどと思った。
とにかくレンズはものすごいらしい。端から見ると単に電波を飛ばしているだけのように見えるのが難点だが。というか相手を自由に操られるあたり「雫」っぽい……
宇宙海賊ボスコーンは滅んでいなかった。キニスン達が潰したのは、ボスコーンの第一銀河系における橋頭堡に過ぎなかったのである。ボスコーンの本拠が第二銀河系にあることをつきとめたキニスンはドーントレス号を駆り勇躍未知の銀河へ乗り出すが……という話。
次から次へと出てくるあやしい科学超兵器やあやしい宇宙人は燃える。レンズの設定とかもすごくいい。のだがあまり感想が出てこないのは何故なのか。本質的に火星シリーズと変わらないからかなあ。キニスンの最強無敵っぷりはどうかなあと思うんですよ。まあ、創作物の登場人物というのは多かれ少なかれ、どこかしら「ンな奴ァいるわけねェだろォォがァ――ッ」的性質を内包しているものである。読者はその辺は「話を面白くするためならいいじゃないか」とか「ひょっとしたら広い世界にはこんな奴もいるかもしれないし」とか解釈をつける。それが読者の度量であり雅量というものであろう。しかしキニスンの完璧超人さはオレの雅量では到底受け入れかねる。強すぎる主人公は作品のスリルを著しく損なうと改めて思った。
銀河パトロール隊はボスコーンの本拠地を撃滅することに成功した。だが凱旋もつかの間、敵は超空間チューブを通りぬけ大艦隊を送り込んできた。独立レンズマンキニスンは、第二銀河系の彼方の敵の文明に潜入し、再び敵の上位組織を探り始めた……という話。
キニスンさん潜入調査が好きですね。今まで戦ってきた敵は所詮一番の小物、という展開はすげーおもしろかったんだが、相変わらずジョン・カーター大尉並に無敵ですわね。最後の最後でやっとキニスンに匹敵する敵が出てくるくらいだし。正義と悪の殲滅戦、つうかアナタ方は異文明の人々と分かり合おうとか少しでも思わんのか? なんかこう微妙に話が平坦でござる。悪のレンズマン部隊が出てくるとか燃える展開はないものか。
髑髏島と呼ばれる島で探偵ゲームを行うツアーには、15人の男女が参加していた。謎を解いた者に与えられる賞金目指して、一同は孤島の館に乗りこむ。ところが待っていたのは次々と襲い来る死の罠だった。実は一行の中に、悪魔崇拝の狂人二名が紛れ込んで、一同を儀式の為に皆殺しにせんものとトラップを仕掛けていたのだ。偶然ツアーに居あわせたチャンドラー警部補は敵の招待を暴き、生き延びることができるのか? という話。
オカルトとスプラッタと密室講義を盛り込んだ「そして誰もいなくなった」という感じの作品。一見サイコスリラー風味な作品なのだが、カーの密室講義をいちいち引き合いに出すのをはじめ本格推理もの出典のネタが要所要所に入れてあって猛烈にごった煮な印象を受ける。バカミスの範疇かなあ。犯人たちが揃いも揃って変態なのは参った。特に二人組に雇われて儀式殺人を繰り返すもと軍人の描写はどうかしている。