パーシヴァル・ワイルド

Percival Wilde

探偵術教えます(昌文社)

評価:★★★

 モーラン君は通信教育で探偵講座を受ける一青年。あるときは講座の内容を実地訓練し、あるときは身の回りに犯罪の予兆を嗅ぎ取り講座内容を思い出しつつ捜査に乗り出す。だがモーラン君は救いがたいレベルの間抜けなので常に無駄な大騒ぎを引き起こすのでした、という調子の連作短編集。
 全編、講座の教師「主任警部」と生徒モーランの手紙や電報のやり取りで構成されている。おもしろかった。モーラン君頭悪過ぎ。生兵法とはこのことか。しかし常にとんちんかんな論理(推理ではない――彼は常につづりを間違えるのだ)にしたがって行動している割には最終的に事件を解決して丸く収めてしまうので不思議。マヌケさとしたたかさが同居しているという点においてはロジャー・シェリンガムに似ている。
 なんでも作者、原書の作者プロフィールによると、実際に通信探偵講座を受け、考えうる最高の答えをめちゃくちゃな綴り字で書き送って講師をおちょくるというマネをやっていたのだという(事実かどうかは謎だが)。探偵の通信教育というのは少なくとも20世紀初頭には存在し、通信教育探偵という存在は100年前から現代まで連綿と受け継がれているアイデアであるようだ。探偵の通信教育などという果てしなく怪しいものに100年前から市場が存在したというのは驚きでござるな。