山本周五郎

Yamamoto Syugoro

樅の木は残った(新潮文庫)

評価:☆☆

 万治三年、仙台藩主伊達綱宗が幕府の命により逼塞を申しつけられる。いわゆる伊達騒動の始まりである。一連の騒動の陰に、幕府による伊達家お取りつぶしの陰謀があることを見抜いた仙台藩の宿老原田甲斐は、政宗の末子にして陰謀の加担者兵部宗勝に取り入り、伊達家を守るため手を打っていく……という話。
 ちょいと諸事情あって伊達騒動について調べたかったので、一番手っ取り早いと思って買ってみた。前から読みたいとは思っていたし。結局伊達騒動ってのは謎の部分が多いようですね。だからこそ後世の人間の想像が入る余地があり、伽羅先代萩とかいろいろな創作が作られた、ということか。この作品は伊達騒動における中心人物、一般的には悪の張本人だとされてきた原田甲斐を主人公に据えている。伊達騒動の成り行きの不明朗さ、原田甲斐の墓の微妙な位置を鑑み、原田は実は伊達家を守ろうとした忠臣だったのではないかという解釈を加えた内容となっている。仙台藩悪政の中心人物と周辺から白い目を向けられつつ、ひたすら幕府からの介入を避けるべく手を打っていく原田の姿はなるほど読者の心を打ち、こういう解釈もありだという気にさせられる。面白かった。
 ネットで調べてみると、原田甲斐の樅の木というのは増上寺に実際に存在したらしい。現在は残ってないそうですが。がっかり。