どうして其ノ十

「そして伝説へ・・・」

小マリア 「はぁ・・・・・・」
 マリア 「あら、どうしたのマリア?ため息なんてついて・・・。体の具合でも悪いの?」
小マリア 「なんだ、マリアお母さまか・・・。お呼びじゃないわ、あっちへ行って下さい」
 マリア 「そんな・・・・・・何か悩みがあるなら相談してちょうだい。私たちは家族なのよ・・・」
小マリア 「ふ・・・。じゃあ言わせて頂くわ。ハッキリ言ってマリア先生がお父さまと結婚してからというもの、トラップ家にはロクな事がないわ」
 マリア 「そんな悲しいこと言わないで・・・。確かに破産してお金は無くなってしまったかもしれないけれど、かけがえのない愛を手に入れたじゃないの!」
小マリア 「馬鹿言わないで下さい。お金あってこそ初めて愛が潤うんでしょう!?なのに・・・私たちは・・・かけがえのない“お金”を失ってしまったのよ・・・」
 マリア 「大丈夫よ!お金なんて無くたって生活していけるわよ!」
小マリア 「そりゃあマリアお母さまは平気でしょうけど!!私は生まれながらの貴族っ子ですよ!?アナタみたいな貧乏生まれの貧乏育ちと一緒にしないで下さい!失礼しちゃうわ!プンプン!!」
 マリア 「・・・・・・そんな・・・・・・」
小マリア 「ああ・・・もう貧しい平民どもを札束でビンタすることも叶わないのね・・・一度クラスメイトにやってみたかったのにぃ」
 マリア 「う・・・・・・何てこと言うの・・・!」
小マリア 「高級料理を食べもせずに捨てることも出来ないないのね・・・贅沢な遊びだったのに・・・。たった・・・たった1年前の出来事が今となっては夢のよう・・・」
 マリア 「なんですって!?あなた、あれはワザと捨てていたの!?いい、マリア・・・食べ物を粗末に扱う事は一番いけないことだわ。たとえお金持ちでも許されないことよ」
小マリア 「ああ・・・もうっウッサイわね!もうウチにはお金がないんだからどうだっていいじゃない!もうトラップ家はお終いよぅ!当主のお父さまは20歳も年下の妻に入れ込んでスッカリ骨抜きになってるし、長男は全然頼りない軟弱者だし、次男は馬鹿だし、長女はヒステリーだし、妹はブス揃いだし!・・・どうしてマトモなのが私しかいないのっ!?もぉ〜〜イヤっ!!」
 マリア 「あっ、マリア!どこに行くのっ!?待って・・・・・・待ちなさい〜〜ッ!!」
小マリア 「こないで・・・こないで!今、マリアお母さまに触れられたら・・・今、マリアお母さまに肩を掴まれたら・・・私は二度と、私は二度と・・・!!二度とマリア先生を・・・・・・・・・」

突如、暗闇に包まれるトラップ邸

 マリア 「キ、キャァァァァァァァァ・・・・・・・・・・・・!!な、なに!?ど・・・どうなってるの!?」

刻がきた・・・大いなる夜祭の刻が!!216年に一度の宴の刻・・・蝕が!!!

小マリア 「・・・!?・・・」

大いなる祝福の刻・・・彼なりし亜の刻、亜なりし彼の地へよくぞ集った

人の造りし神ならざる神の子羊達よこの聖なる夜祭、存分に味わうがよい

因果律により選ばれし御子
 マリア 「御子?・・・御子って・・・マリアのこと・・・?」

すべては因果の流れの中に

すべては定められたこと。マリア・クッチャラがトラップ家に家庭教師として派遣されたのも

この聖なる時の接合点“蝕”に向けてつむがれたもの

これより“降魔の儀”を執り行う

御子を祭壇へ!
小マリア 「・・・・・・・・・・・・」

未来に至る前に今一度帰るがいい、お前の原風景に。そして知るのだ、お前自身が何者であるか

小マリア 「・・・私・・・貴族の子供で・・・家はお金持ちで・・・それがずっと続くと思っていて・・・」

そう、それがお前だ。贅沢な食事を流しに捨て続ける、それがお前だ

千の牛の屍の上を、万の羊の屍の上を、そのどちらでも無き動物の屍の上を

お前は踏みしだいてきた、唯一つの渇望がゆえに!

そして今、お前の贅沢な暮らしは途切れた・・・だが、だがそれでも思い果てぬなら

それでも、なお お前の目にあの暮らしが何よりも眩しいのなら

一言心の中で唱えよ“捧げる”と
 マリア 「マリア・・・・・・!!」
小マリア (・・・そう。幾人もの家庭教師の中で。唯一マリア先生だけが・・・唯一マリア先生だけが・・・私に夢を忘れさせた)
「・・・げる」
 マリア 「マリアァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

その後、トラップ一家の姿は全く見られなくなった。アメリカへ行ったのだと言う者もいたが、真実を知る者はいない。


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