手作りの村 Y's 作
「おもしろい形の木だね、それ」
張平に声をかけられて、解体現場からやってきた男は足を止めた。
「誰が普請したんだか、やたらめったら釘穴だの臍だの穿っちまって、もう柱としては再利用できやしないよ」
「ああ、柱だったんだ」
いまさらながらに気づいて張平は首を振る。
少し伸びて首筋にかかった後ろ髪が鬣のように撓った。
「それ、どうするの?」
「砕いて焚き付けにするしかあるまい。締まった木なんで割るのも苦労しそうだが」
「あ、それならおれにくれない?」
張平はいそいそと農道に上がった。
「ちょっといいコト思いついたんだ」
村の男は気前よく、余り物の木材を張平に譲ってくれた。
張平は木陰に獲得品を運び込み、小刀を取り出すと歪な幹を削り始める。
同じ枝の下に日差しを避けて休んでいた紅蓮は胡散臭げに一瞥をくれただけで何も言ってはこない。
敷き藁干しの作業から戻ってきた蒿理は素直に興味を示して張平の手元を覗き込んできたが、何を造っているのかとの問いには、張平は「後のお楽しみ♪」と笑って教えなかった。
やがて、張平は出来上がったものを抱えて歩きだし、その頃には噂を聞き付けてきた村人たちが周囲を取り巻いていた。
張平は村外れまで来ると刻んだ柱を道の脇に打ち立てる。
おお、と歓声があがった。
「トーテムか」
紅蓮が各地を巡って得た知識をひけらかし、張平はうなずく。
「魔よけなの?」
木目や釘穴までも巧く利用して刻まれた、というより幹の内部から浮き出してきたようにすら見える人とも獣ともつかぬ面を見上げて蒿理が尋ねる。
「なんかユーモラスな感じに見えるけど」
「ああ、どっちかっていうと見張りかな。悪いことしようとして村に近づくと怖い顔に見えるけど、そうじゃないときには歓迎する顔に見えるって、おれの村では言い伝えられてるよ」
「それならいいね」
蒿理はうなずき、村人たちも笑顔を見せた。
さまざまな者が共存して暮らすこの村に相応しい境界の番人だ。
そして、相生の村には手造りの守護者が加わることになった。
今も、ねじくれた姿で、古柱は喜々として己の居場所に立っているように見える。
<了>
張平の「芸術:造形」技能 習得記念作品
刹のミニチュアを造ってくれたFさんへ 感謝をこめて