死体を食う男の話
あるところに、大変仲のいい夫婦がいた。
夫は腕のいい猟師で、何日間も家を空けることがあったが、妻は夫が留守の間、しっかりと家を守って暮らしていた。
ある時、夫がいつものように長い猟から帰って来たのだが、いつもならたくさんの獲物を下げてくるはずなのに、このときに限ってなぜか獲物が一匹も捕れなかったと言って、手ぶらで帰ってきた。
そのあとも、今まで見向きもしなかった書物を読みあさったり、珍しいものがあるのだと言って、ちょっとした旅にでてしまったり、どこか夫の行動が変わってしまっていた。
その上、近隣の村で死者が出ると決まって「弔いに行って来る」と出かけて、翌日の朝まで帰ってこなかった。
ある日、夫婦が住んでいる村で人が亡くなり、夫婦そろって葬儀にでたのだが、その夜、夫が起きあがって出て行くのを見かけた妻は、夫の後をついて行くことにした。
夫は真っ直ぐに村の墓地に向かい、なんと埋められたばかりの墓を掘り返しているではないか。
さらに、棺の蓋をあけ、なにやらくちゃくちゃとものを食べる音が聞こえ、妻は怖くなって村に引き返したところ、村の前で旅の僧に出会った。
僧にすべてを打ち明けたところ、僧はすべてを了解したように、妻を伴って夫婦の家へと向かった。
果たして、夫は既に家に戻り、眠っていたが、僧が経文を唱えると、その姿がどろどろと溶け、恐ろしい怪物に変化してしまった。
怪物は僧に襲いかかったが、僧が経文を唱えながら錫杖を突き出すと、怪物もまたどろどろと溶け、水のようになって消えてしまったという。
その後、山の中から夫の骨が見つかったということだ。
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<研究雑記>
これは、<寄生体>が男の振りをして暮らしていたということではないか。
彼らは「マトリクス変換」という業で他の人間や生物に変身することができるという。
しかし、墓を暴いていた理由は特定できない。彼らが死体からも情報を得ることができるのかは未だ不明である。