MHリプレイ  ネオ=アップル篇#1
  狼たちの記憶

               >>>第一部あらすじ
               >>>章の目次

  0  集合

GM  :なに? 呼ばれて来てみれば今日はプレイヤーふたりなの?
レイファ:そうみたいね。
エンジュ:でもやろうよぉ。
GM  :…って、アビスもアヤコもいないんじゃ、テキサナ篇を
     始めるわけにもいかない*。どうするかな…
     よし、レイファがいるなら、ソロ用に考えておいた
     ストーリーをやってみるか。エンジュはそれでもいい?
エンジュ:適当に茶々いれるからいいよ(笑)

  1  離散

GM  :では、グレンディを葬った後、身辺整理を済ませて
     アヤコとアビスはテキサナに発った。
     ルーレルとセンゴクは見送りがてら、ちょっと
     ネオ=アップルを離れるそうだ。
     「うまい仕事もないしな」と言っている。
エンジュ:あー、仕事ないのってまだ続いてるの?
GM  :その通り。ネオ=アップルは不思議と治安がいい*
     そして武器弾薬の価格は相変わらず高騰している。
エンジュ:なんだろうね? 原因の予測つく? ジョーカー。
GM  :そのジョーカーなんだが、シリウス共々、姿を消した。
     オフィスも閉鎖されている。
エンジュ:えええ〜?!*
レイファ:ふたりして逃避行よ。
エンジュ:カリカリカリ(扉を引っ掻いている)。
     入れないの〜? セキュリティ弄ってみるけど。
GM  :開かない。
エンジュ:そんな〜。僕、どうするの〜
GM  :ちなみに、姿を消す前にジョーカーはこう言っていた。
     「私の方からはしばらく皆さんに仕事を回すことが
      できそうにありません。
      よろしければ、別のブローカーをご紹介しますが」
エンジュ:そんなのヤだよぅ。
GM  :ラルフやホークは自分でみつけてきた仕事をしているぞ。
     レイファは治療*だのなんだのがあるから、まだ仕事して
     ないようだけどね。
エンジュ:ああ…アビスは行っちゃったし、ルーレルとセンゴクも
     いつ帰ってくるかわかんないし…《収容所》*は僕ひとり…
     あ! もしかして《収容所》も閉鎖されてる?
レイファ:あんた、行くトコないならうち来てもいいわよ? 
     アーヤが使ってた部屋、今なら空いてるし*
エンジュ:え。一緒に暮らしていいもんなのかな*
GM  :誰が同棲相手だなんて思うもんか。
     よくて弟…まあ、せいぜい雑用係だろうな。
     もっとも、ジョーカーは《収容所》についてはそのまま
     残してくれたから、追い出されたりはしてないよ。
エンジュ:広い〜広い〜誰もいなくなっちゃったぁ…
GM  :では、そんなある日。
レイファ:待って。暗示の治療は済んだの?
GM  :ああ、治療費$3,000、通院一週間でOKだよ。
レイファ:ちゃんとした医者でしょうね? 
     それと、街の情報屋を捕まえて聞きたいことがあるんだ
     けど*
GM  :そろそろ、この情報屋も性格設定してやるか。
     レイファの馴染みの情報屋は歓楽街での客引きの傍ら、
     情報を売り買いしている男だ。
     金にはセコく、手柄を誇張するクセはあるが、仕事は
     早いし、そこそこ信用できる情報ネットワークを
     持っている。
     接触するならいつもの方法で。
エンジュ:歓楽街の客引きと「いつもの方法」で接触って…
レイファ:「新人が入ってるよ」って言うと「ネタあります」の
     意味なのね。
エンジュ:「源氏名が《ナイトメア》なら$500で買うわ」って? 
     うわー、レイファが女郎屋通いしてる〜(笑)
GM  :女郎屋って…おまえもどこでそんな言葉を覚えてきた
     んだ(笑)* 
     ともあれ、いつものストリートに行けば見つかるよ。
レイファ:じゃあ、彼に《ケルベロス》について調べておくよう
     頼むわ*
GM  :「見繕っておきますぜ、姐さん」
     では、治療を開始した頃にその依頼を取り付けたということ
     にしておこう。
     この一週間、エンジュは何してる?
エンジュ:オールドギースのとこ。お勉強。
GM  :実を言えば、ハッキングのテクニックに関してはオールド
     ギースよりジョーカーの方が上だよ。
エンジュ:でも僕よりはデキるでしょ。
GM  :まあ、オールドギースも君をむげに追い出しはしない。
     彼の邪魔をしなければ好きにしてなさい。
     で、レイファの方だが、治療の最終日にふたたび情報屋に
     会う。
     「なあなあ、姐さん。今度のアレは相当、デカいぜぇ。
      引っ張ってくるのに苦労しそうだ。仲介料、$10,000は
      いただかないとワリに合わないナ」
レイファ:$10,000?! ほとんどわたしの全財産だわ。
     ちょっと、あんた、料金まで大袈裟に言ってんじゃない
     でしょうね。
GM  :「マジマジ。マジにヤバいのよ。
      ちょっぴり古い話でもあるしねえ、放っとくと風化しち
      まうだけだ」
レイファ:古いって、どれくらい?
GM  :「そいつは後のお楽しみ」
レイファ:気を持たせるわね。
     わかった。わたしも金の算段はしておくから、あんたも金が
     欲しかったら命を落とさないようにすんのよ。
     ちゃんと情報持って帰ってらっしゃい。
GM  :「へーい。そいじゃ、また」
レイファ:お金が足りないわ。だけど、仕事もないのよね。
GM  :バウンティハントは可能だが、弾薬自体が値上がりしてる
     からね。
     よほど高額の賞金首を狙わないとたいした儲けにはならない
     だろう。
レイファ:で、暗示の治療は済んだのね?
GM  :問題なしだ。

   2 ダンチュウ(男厨)

GM  :さて、レイファが家に戻ってくると、ホークが息せききって
     訪ねてくる。
レイファ:あら、あんたこの街にいたの。
エンジュ:再会の挨拶がいきなりそれだよ(笑)
レイファ:ま、わざわざ訪ねてきたんなら茶くらい出すよ。
     あがって行きな。
GM  :「では、お邪魔させてもらって…」
レイファ:はい、茶。
GM  :「どうも」
レイファ:で、何の用?
GM  :よほど喉が渇いていたのか、出された茶を一息に
     飲み干してから、ホークは早口に言う。
     「ハンター狩りだって」
レイファ:は? あんたね、最初から話しなさい。
GM  :「え、えっと…仕事ないでしょう?
      だから、手頃な賞金首の情報がないかって、ネットで
      探してたんだけどね」
レイファ:マメね。ホークらしいけど。
GM  :「そしたら、すごいネタ見つけて…」
レイファ:簡潔に説明してね*
GM  :「え、あ…ああ。$150,000だって」
レイファ:何が?
GM  :「賞金がかけられたんだ」
エンジュ:うわ。逆賞金首*
GM  :そういうこと。
     犯罪組織が基金を設立して、自分たちを殺しに来そうな
     優秀なハスラーに賞金をかけているそうだ。
レイファ:へえ。で、あんたが危ないの?
GM  :「いや、俺ら程度にまでは賞金かかってないけど」
レイファ:なら、問題ないじゃない。
GM  :「ええと…別に…あああ」
レイファ:何よ?
GM  :「どうしてこんなに焦ったんだか、レイファと話してる
      うちにわかんなくなっちゃったよ。
      別に、俺らはたいして名前も売れてないしね。
      殺されたりしないよね」
レイファ:まあね、ハスラーが狩られる側に回ったっていうのは
     ナンだけど。
     こっちが抹殺リストにあがる前に、そいつら叩き潰して
     やるわ。
GM  :「じゃ、俺、事務所戻るわ」
レイファ:待ちなさい。茶碗、片付けて行って。
エンジュ:客じゃなかったのか(笑)
レイファ:彼ならやってくれるわよ。
GM  :他の食器洗いも?
レイファ:ありがとう。何なら、あんた、夕飯も作ってよ。
GM  :「ええ?!」
レイファ:台所に立ったついでよ。いいでしょ。
     エンジュも呼んだげるわ。ご飯あるよ、おいで。
エンジュ:行く行く♪ お邪魔しま〜す。
     あれ? 今日は中華じゃないんだね。
レイファ:料理人が違うからね。
エンジュ:あ、ホークだ。ホークと一緒に暮らし始めたの?
レイファ:ううん、臨時ハウスキーパーよ。
GM  :なんとでも言って。
     では、食卓を囲みながら、さっきの話をエンジュにも
     するよ。
エンジュ:ふうん。どこの組織が賞金を出すって? 
     まあ、大きい組織なら$150,000くらいポケットマネーで
     出せるだろうけどね。
GM  :あちこちの犯罪組織が連合して賞金を保証するシステム
     だそうだ。
エンジュ:えっ? 犯罪組織が手を組んだ? 
     そっちの方がヤバいネタじゃない?
GM  :全面的に結託したわけではないが、犯罪組織のコング
     ロマリット*化の前兆ともとれる動きだね。
エンジュ:ネオ=アップル限定?
GM  :いや、北米全域だ。かなり大規模な提携だね。
エンジュ:うわー、それって、誰が図面引いてるんだ。
     黒幕がいるよ、きっと。
レイファ:で、$150,000は賞金総額?
GM  :「あ、そうだ、それだ! 思い出した!」
     ホークがふたたび慌てた声を出す。
レイファ:喉詰まらせるよ。ゆっくりしゃべりなさい。
GM  :「んぐ…$150,000はシリウスの賞金額なんだよ」
レイファ:ふうん。彼もあちこちで恨み買ってそうだしね。
     それであんた、シリウスを殺る気なの? 
     $150,000じゃ割にあわないと思うわよ。
GM  :「お金は欲しいけど、さすがにね」
エンジュ:そんな賞金に手を出したらユニオンから除名されちゃう
     よ*
GM  :「あ、そうそう。この賞金額ってさ、シリウスがこれまでに
      獲得した賞金総額と同じらしいよ」
レイファ:わたしたちこれまでいくらくらい稼いできたっけ? 
     $50,000くらい?
GM  :それは運び等の依頼も含めてのことな。
     シリウスの$150,000はあくまでもバウンティハント*
     賞金として得た額だそうだ。
     「しかも、これ、何人の賞金額だと思う?」
レイファ:シリウスならもう何百人も殺してるんじゃない?
GM  :「3人分なんだよ」
レイファ:ええ〜、もっと殺してるって。
GM  :撃破数自体はな。ただ、賞金獲得のために申請されたのは
     3人だけらしい。で、その3人の総額だけで$150,000だ。
     頭割りしても$50,000。これはかなりの大物、場合によると
     組織のトップに懸けられる賞金額だ。
レイファ:ふうん。シリウスは自分の首に懸賞がかかったこと、
     知ってんのかしら?
エンジュ:オールドギースとは連絡取り合ってるはずだから、
     知ってんじゃないかなあ。
レイファ:ま、いいわ。彼なら自力で切り抜けるでしょ。
GM  :で、君たちは食事をしながらニュース番組を見てる。
レイファ:知り合い*が出てる?
GM  :いや、ワイドショーっぽいチャンネルだ。
レイファ:ホークの趣味ね*。まあいいわ。
GM  :では、ちょうどこんなニュースをやっている。
     「ネオ=アップルのSWATに新司令官が着任しました。
      ネオ=アップルのSWATは女性ばかりの実働隊
      《バルキリー・チーム》を擁していることでも有名です」
レイファ:ああ? はい。思い出した。
GM  :「新司令官はGMTの若きプリンス*、レオン・
      ミュラー氏、25歳」
エンジュ:あれれ? 司令官は男なんだ。
GM  :そうだよ。《バルキリー・チーム》が全員女性ってだけで、
     SWAT全体では男性職員もいる。
     で、ニュースは延々とレオンの経歴、レオンの父親の
     地位などを紹介してから、「《バルキリー・チーム》の
     隊員はいずれ劣らぬ才色兼備の乙女たち。
     今回の人事異動は、レオンの花嫁探しのためという噂も
     あります。
     その噂を誰よりも支持しているのが当のバルキリー隊員
     たちで、早くも恋の鞘当てが始まっているとか。
     これによってチームの結束にヒビが入らなければよいの
     ですが」とワイドショーらしくやや無責任にライトな
     感じで締めくくる*
レイファ:ふーん…あ、そ。
GM  :ホークは「いいなあ」とつぶやいている。
エンジュ:どっちが? バルキリーの女の子たち? 
     それともレオンの立場?
GM  :どっちもだろう(笑) 
     では、食事を終えたらこの日は解散。
エンジュ:ごちそうさま。おやすみ。
レイファ:食べたら下げる。
エンジュ:は〜い。

   3 遺産

GM  :では、また何日かたって、レイファの携帯にオールド
     ギースからメッセージが入る。
     「コートの直し終了*。他、渡したきものあり。
      《ワイルド・ギース》にて待つ」
レイファ:行くよ。ダウンタウンなんだから*武器は持って行って
     いいんだよね? とりあえずSMGを背負ってくわ。
GM  :クライスラーズ・ビルの前には門番代わりのストリート
     チルドレンがたむろしているんだが、もうレイファの顔は
     見知っているし、オールドギースの指示も受けているの
     だろう。
     因縁つけたりせずに地下のエレベータホールへ通す。
レイファ:上がる。
GM  :君が乗り込むのを見張っていたかのように自動でドアは
     閉まり、何もしないでもスムーズに屋上に運ばれる。
     オールドギースはいつも通りカウンター。客はいない。
     エンジュが隅っこで端末を弄っているだけだ。
レイファ:また入り浸っているわね。
エンジュ:今日はお客さん?
レイファ:呼ばれたから来たのよ。じーさん、丈直しできたの。
GM  :「袖を通してみるがいい」
     非常にずっしりとした重量感のあるロングコートだ。
     ちなみに着用時のENC5、携帯時は10。
エンジュ:うわ、そのコート、僕、持てない*(笑)
GM  :銃弾・刃物・炎熱・レーザーに対して防御効果を発揮する。
エンジュ:レーザー防ぐの?
GM  :特殊繊維が織り込んである。
     ちなみに、丈直しと言ってもオールドギースがちくちく
     縫ったんじゃないぞ。
     なにせ、ハサミなんかじゃ歯が立たないんだ。
     ダイヤモンドコートのチェーンソーでチュイィィィン…と
     裁断したと思ってくれ。
レイファ:着心地は問題ないわ。
     ちなみに、ネオ=アップルって冬が長いんだっけ?
GM  :10月〜4月までは冬だ。
     シティの中はハイウェイにドーム状の雪除けがあったり、
     セントラルヒーティングの設置で比較的寒さが緩和されて
     いるが、スラムでは毎日のように凍死者が出る。
     夏でも気温が20℃を越えることはめったにない。
レイファ:ほぼ一年中、このコートは着ていられるわけね。
GM  :構わない。ちなみにシリウスがいつも着ているのも
     レイファとお揃いのコートだ。
エンジュ:すごいペアルック(笑)
GM  :足首まで覆うロングコートだが、これでもレイファの身長と
     肩幅に合わせてだいぶ詰めた。
レイファ:でしょうね。じいさん、身長2mあったんでしょ。
GM  :レイファは165cmだったよね。
エンジュ:へえ。僕とたいして変わんない?
レイファ:華僑にしては高いのよ。
     でも、50cmくらいは詰めたのかな。
     あんたのジャケットくらい作れそうね。端切れいる?
エンジュ:くれるの? 僕、収集癖あるから喜んでもらってくよ。
レイファ:持ってきな。
     それもじいさんの形見なんだから大切にしてよ。
     ところで、丈直しにいくらかかった?
GM  :「形見の品に手間賃なんぞ要求できるか」
レイファ:じゃ、甘えるわ。
     それから、じいさんの好きだった酒、入ってる?
GM  :「スコッチ・ウィスキー《バランタイン》の12年もの。
      合成じゃがな」
レイファ:それ、いただいてくわ。墓に手向けてくる。
GM  :オールドギースはバランタインの瓶と一緒に、カードキー、
     それと数字のメモをカウンターに乗せる。
レイファ:なに?
GM  :「そのコートの隠しポケットに入っていたものじゃ。
      ロニーがおまえさんを指名してそのコートを託したと
      いうことは、それもおまえさんへの形見分けじゃろう」
レイファ:何の鍵だかわかる?
GM  :「ロニーが使っていたセイフハウスの鍵じゃ。
      ワシが手配したから知っておる」
レイファ:行ってみるわ。場所を教えて。
GM  :「トレンチ・ストリートB226。
      あまり治安のいい場所じゃない。気をつけろよ」
レイファ:遠いの? 
     そんなに治安が悪いんじゃ、バスも通ってなさそうね。
     いいわ、ホークを呼ぶ。
GM  :留守応答になっている。
     「トレジャーハント*のため、ネオ=アップルを離れます」
     どうやら、シティの外に稼ぎに行ったようだ。
レイファ:仕方ないわね。エンジュじゃ運転できないし…
エンジュ:無人タクシーのシステムジャックとかできないことも
     ないけどね。
GM  :オールドギースが「やれやれ。ついて来い」と奥の
     エレベータに向かいます。
レイファ:行くよ。エンジュも来るでしょ?
エンジュ:行っていいの? ぱたぱたぱた…
GM  :では、いつもとは別のエレベータに乗って、地下の巨大な
     ガレージへ。戦闘車両だのカーゴだのいろんな車がある。
     で、オールドギースが示したのは黒いバギーだ。
     もっとも、滑らかなフォルムを持ち、戦闘バギーには
     見えない。
     「これを使え」
エンジュ:MAX−7だ♪ プレミア付きのすごい車なんだよ〜
レイファ:あんたが車に興味あるなんて知らなかったわ。
エンジュ:あれ? レイファも前に乗っけてもらってたじゃない。
レイファ:そうだっけ?
エンジュ:これ、シリウスの車だよねえ。
GM  :「今はな」
エンジュ:そうだ。オールドギースはシリウスとジョーカーがどこに
     いるか知ってる?
GM  :いや。シリウスはここに車を預けにきて、「今回の作戦に
     車は要らないから、その間にオーバーホールしておいて
     くれ」と言ったんだそうだ。
レイファ:持ち主に断りなく借りていいの?
GM  :「テスト走行じゃ」
レイファ:じゃ、遠慮なく。
GM  :レイファが車に近付こうとすると、声がする。
     「オールドギース。彼らは誰だ?」
レイファ:誰? 振り向くよ。
GM  :いや、声を発したのは車だ。
エンジュ:K.I.T.T*だあ♪
GM  :「わたしは《グレイウルフ》。この車を管理するAIだ」
     オールドギースはグレイウルフに君たちふたりを紹介し、
     今日一日、付き合ってくれるよう頼む。
     「では、限定マスターの権利を付与しよう。
      中に乗り込み、指紋・声紋・網膜パターンの登録を
      行うように」
レイファ:乗るわ。AI搭載の車ってことは運転しなくてもいいのね?
GM  :「目的地を指示せよ」
レイファ:あ、でも、わたし、自分で運転したくなった。
     この車なら、事故回避機能あるでしょ。
GM  :「当然だ」
レイファ:ならハンドル握らせてもらうわ。
     シリウスには内緒にしておいてね♪
GM  :「よかろう」
エンジュ:僕はどうしようかなぁ…MAX−7には乗ってみたいけど、
     レイファはグレンディのとこならひとりで行きたいんじゃ
     ない?
GM  :オールドギースが「ワシはこの後、忙しいんじゃ。行って
     こんか」と押し出す。
レイファ:来ても構わないわよ。
     ただし、自分の身は自分で守りなさいね。
GM  :「車の中にいれば問題はない」
レイファ:あ、そう。行くよ。
     ええと、まずはわたしの家に寄りたいの。
     アンバーゾーン*だっていうからSMGだけじゃ物足りない。
     武器を積み込むわ。
     ええと、サイボーグライフルと手榴弾。
     ATライフルはさすがに凶悪だから置いてくわ。
GM  :どっちもたいして変わらんわ*
レイファ:じゃ、教えられた住所に向かう。
     ちょっと飛ばしてみようかしらね〜♪
GM  :「シリウスもよく無茶をするが、おまえも同じなのか?」
     グレイウルフは『分別ある大人』の声でしゃべる。
     その口調で告げられると、データを分析したに過ぎない
     ものが人生経験に基づいた助言のように聞こえる。
     B級以上のAIには疑似人格を設定することが可能なんだ。
     ホークだったら可愛い女の子に設定するんだろうな。
レイファ:きっとそうね。
     じゃ、グレイウルフに言っとくけど、わたしは操縦に関して
     は素人だから、一応、あなたのアドバイスに従うわよ。
GM  :「その判断を支持する。
      シリウスにも見習ってほしい態度だ」
     グレイウルフは主人のことを結構、こき下ろす。
     「無謀だ」とか「人の話を聞かない」とか。
エンジュ:AIが愚痴言ってる(笑) 
     だけどさ、グレイウルフ、あなたはシリウスが運転している
     とき、自分の意志でブレーキをかけたことはないでしょう。
GM  :「それはないな」
エンジュ:その事実を分析すれば、あなたの底辺にあるものは明白だと
     思うな。
GM  :「…むろん、わたしはシリウスを信頼している」
レイファ:もう少し飛ばしても大丈夫かしらね♪
エンジュ:シートベルトしておきます(笑)
GM  :そんなことを話しているうちに、目的地についたよ。
     ビルの前。
レイファ:この車なら放っといても大丈夫そうね。
GM  :「わたしを盗もうとすれば、その者は教訓を得るだろう」
レイファ:じゃあ行くわ。あまり派手なことしちゃダメよ。
GM  :「同じことを君にも忠告しておこう」
レイファ:はは。ま、聞いておくわ。エンンジュもついておいで。
GM  :寂れた町角のビルだ。
     スクワッター*の姿はあるが、サイボーグライフル抱えた
     君にちょっかいをかけてくる奴はいない(笑)。
     で、ビルの中のエレベータに乗り込み、オールドギースに
     教えられた暗証番号を打ち込むと、エレベータは地下へ
     向かった。
     階層表示はない。
     下層に到着してエレベータを降りると、ドアがある。
     「入室を希望するならば、認識チェックにご協力を
      お願いします」
     扉の横には指紋確認のために指を入れるスリット、
     網膜パターンを確認するための装置がある。
エンジュ:僕らより前に誰か来た形跡はある?
レイファ:そんなの気にしない*。指示通りにするよ。
GM  :「オフィス・ジョーカー専属ハスラー、リー・レイファ
      ですね?」
レイファ:そうよ。
GM  :「声紋一致。入室を許可します」
エンジュ:僕がくっついて入っても大丈夫かな?
GM  :問題ない*
レイファ:じゃあ、中に入るよ。
GM  :そこは質素な部屋だ。
     簡易ベッドやデスクはあるが、ここで日常生活を送って
     いたという感じではない。
     カーペットも壁面を飾るポスターもない。
エンジュ:端末ないかな、端末端末♪
GM  :デスクの上に薄型のモニターがある。
     カードキーを差し込むスリットがついている。
エンジュ:弄りたい。
レイファ:待ちな、と襟首を掴んで引き戻す。
     これがそのキーでしょ。差し込む。
GM  :「パスコード、プリーズ」
レイファ:メモにあった数字を打ち込むよ。
GM  :すると、画面に画像が出る。

   4 子供たちへ

GM  :ハンディカメラで撮ったような映像だ。
     映っているのはこの部屋。
     簡易ベッドに腰掛けたグレンディがこちらを向いている。
     腹に血の滲んだ包帯を巻き、脂汗を浮かべている。
     どうやら、オールドギースに撃たれた直後*の映像のようだ。
レイファ:……
GM  :「娘よ…」
     グレンディは画面越しに君を見つめて言う。
     「…おれはとうとう、面と向かっておまえを娘と呼ぶことが
      できなかったな。
      これが、おまえがおれの姿を見る最後の機会だろう。
      最後にこう呼びかけることを許してほしい」
レイファ:……
GM  :「この映像をおまえが見ているということは、おれはもう
      この世にいないだろう。
      おれの望む形で、息子と呼んだ少年…いや、男の手に
      かかって死ぬことをおれは今、望んでいる。
      …娘よ。おまえには辛い思いをさせたはずだ。
      だが、おまえならそれを乗り越えてくれるな?」
     画面の中のグレンディはゆっくりと息を吐く。
     そしてまた続けた。
     「おれはおまえに遺産を渡そうと思う。ひとつは品物だ」
     プリンターからプラスチックペーパーが吐き出される。
     そこには住所と思われるものが2、3書いてある。
     「ネオ=アップルにおけるおれのセイフハウスをおまえに
      譲る。
      セイフハウスにはいくらか武器・弾薬の備蓄がある。
      おまえがネオ=アップルに居続けるなら、すぐにも
      要り用になるだろう」
     備蓄品のデータは後でメモして渡すから、とりあえず先に
     進めるぞ。
     グレンディはそこで決心を確かめるように少しの間を挟む。
     「もうひとつの遺産は記憶だ。
      それは、おれが息子と呼ぶ男に殺されねばならない理由で
      あり、息子が闇の世界に生きることになった事件について
      の証言だ。
      これは正しくは遺産と呼ばれるべきものではないかも
      しれん。
      《ケルベロス》について知れば、おまえは今までよりも
      なお一層、やつらの領域に近づくことになるだろう。
      それは今とは比較にならないほどの命の危険を意味する。
      今のおまえの自覚では、戦場を生き抜けたとしても
      暗殺者からは逃れられまい」
     そしてグレンディはまた少し考えるような表情をする。
     「もし、おまえが過去を知ることを望まないなら、カード
      キーを抜いて立ち去りなさい。
      この部屋には二度と戻れないが、他のセイフハウスに
      ある品を遺産として譲ることにする。
      おれはおまえの幸せを祈っている」
レイファ:エンジュ、あんたは外へ出ていな。
エンジュ:…車で待ってるね*
GM  :では、しばらくの無音状態の後、ふたたびグレンディが
     しゃべり出す。
     「そこにいるんだな、娘よ。
      おれはこうなることを望んでいたようにも、覚悟していた
      ようにもそして、期待を込めて確信していたようにも
      思う。
      しばらく、昔話につきあってほしい」
     そして、グレンディは居住まいを正し、語りはじめる。
     「7年前の10月19日夜半。
      ネオ=アップルのアンバーゾーン《バンハイマ・
      ストリート》で略奪が起きているという通報があった。
      グローバル・ガード*はスペシャルパンツァーポリス
      (特殊武装機動警察)《ケルベロス》をその鎮圧に
      向かわせた。
      《ケルベロス》はダウンタウンの住民も市民同様に護ろう
      という活動を続けていた有志の警官で結成された部隊で、
      その日が初出動だった。
      都市内政を司るGMTにしてみれば、ダウンタウン保護
      政策など無駄な投資としか思えなかっただろう。
      だが、世論に後押しされる形で、有志で始められた
      パトロール隊はグローバル・ガードの下に組織化され、
      正規に運営されることに決まった。
      その矢先だった。
      作戦名「シリウス」と呼ばれるその出動でバンデット
      《ブラウン・ベレー》*と交戦した《ケルベロス》は
      壊滅した。
      バンデットによる暴動すら鎮圧できないという無残な結果
      を突き付けられて、ダウンタウンの保護政策は白紙に
      戻った。
      公に知られているのはそこまでだ。
      だが、それだけが事実ではない」
レイファ:……
GM  :「《ケルベロス》には生き残りがいた。
      当時19歳だった新人警官デューク・レッドフォード。
      おまえたちがシリウスと呼び、おれが息子と呼ぶ若者だ*
      《ケルベロス》壊滅の後、病院に収容された彼は暗殺者に
      命を狙われた。
      彼らを抹殺しようとした者たちにとって、《ケルベロス》
      はただひとりの生き残りも許してはならないものだった
      のだ」
レイファ:…19歳のシリウス。あまり想像できないわね。
GM  :うるさい(笑) 
     「《ケルベロス》は優秀な部隊だった。
      軍隊並の武装を所持していようと《ブラウン・ベレー》
      ごときがまっとうにぶつかって勝てる相手ではなかった」
レイファ:裏切りがあったのね*
GM  :「実際に《ケルベロス》の壊滅をお膳立てしたのは彼らに
      出動を命じたグロバール・ガードであり、その親会社で
      あるGMT、そしてこの街の政府そのものだったのだ。
      《ケルベロス》抹殺の真の目的はダウンタウン保護政策の
      撤回にあったわけではない。
      《ケルベロス》がメガ=シティ体制の影から掘り起こそう
      としたもの−−そのすべては再び闇に葬り去られねば
      ならないものと判断された。
      それが実際に何なのかまでは、今のおれにも掴めて
      いない。
      だが、「それ」が奴らを心底、焦らせたことだけは
      確かだ。
      シンクレアとGMTはバイラテラルオペレーション
      (共同戦線)を組み、旧GMT軍の反徒からなる
      《ブラウン・ベレー》と《ステイツ・コネクション》の
      戦闘部隊、そして当時、GMTイリーガル*だったおれが
      《ケルベロス》襲撃を実行に移した。
      おれはデュークの大切な仲間を殺し、あの若者たちが
      未来に抱いていた希望を打ち砕いた。
      おれも、彼の仇のひとりだ」
レイファ:じいさん…
GM  :「暗殺者の手を逃れたデュークはオールドギースを頼った。
      家族もなく、仲間を殺され、裏切られたデュークには、
      そこに身を寄せる他はなかったのだろう。
      だが、同様におれとオールドギースは旧知の仲だった
      のだ。
      おれはあの晩、あのビルの一室にいて、監視カメラ越しに
      殺すべき標的を見ていた。
      満身創痍の少年はオールドギースにネオ=アップル脱出の
      手助けを頼んだ。
      逃げようとしたのではない。
      ハンターになるんだと言った。
      力をつけて、この街に戻ってくると。
      強くならなければならないんだと----
      あのときのあいつの眸が…おれの中の何かを変えた。
      おれは自分でもわからない衝動に突き動かされて
      GMTイリーガルを抜け、古巣であるユニオンに戻ると、
      教官としてデュークの指導にあたった。
      おれの持つ技術のすべてを叩き込み、いつの日にか仇と
      しておれ自身を殺させるために*
     グレンディは傷が痛むのか、いくらか顔を歪める。
     「修了訓練として彼をアラスカの荒野に送り込んだ後*
      おれはネオ=アップルに戻り、再びGMTイリーガルと
      して雇われる身となった。
      一介の実働犯だった頃には知らされていなかった
      《ケルベロス》事件の陰謀を突き止めるために」
     それが君と初めて会った頃*のグレンディだ。
レイファ:ああ…
GM  :「GMTイリーガルとして、そしてフェイク・シリウスと
      して奴らと関わり、掴んだことを今、おまえに伝えよう*
      《ケルベロス》壊滅のバイラテラルオペレーションの
      総指揮を取った男は現在、《ステイツ・コネクション》の
      ネオ=アップル支部最高指揮官の地位にいる。
      《ジャックド・エッジ》と呼ばれる男だ」
レイファ:ジャック・ド・エッジ? フランスの貴族?
GM  :いや、コードネームが《ジャックド・エッジ》。
     大型のフォールディングナイフの刃、という意味だ。
     いわば《鋭利な刃物》だよ。
     「アンナ・ステファンなどはその男の下についているに
      過ぎない。
      アンナを倒しても、ジャックド・エッジはすぐに次の
      手を打つだろう。
      奴は今、この都市で大掛かりなオペレーションに着手
      している」
     グレンディはそこで話を区切る。
     「娘よ、おまえに何をしてほしいとは言わん。
      息子を助けてやってくれとも頼めんだろう。
      ただ、息子を…あの男の闘いを見守ってやってくれ。
      もしあの男が志半ばで死ぬなら、その後を継げとは
      言わん。
      ただ、シリウスという名を選んだ男がいたこと、
      その闘いを記憶してやってくれ」
レイファ:……
GM  :「長くなったが娘よ、幸せに命をまっとうしてくれ。
      おれは地獄に落ちるだろう。だが、地獄の番犬に、
      おまえの下へ死神が行かぬよう話をしよう。
      あの世で会うこともあるまい。
      ただ、おまえがおまえの望むように生き、幸せである
      ことを願っている」 
     そして、画面は暗転し、もはや何も映らなくなった。
     カードキーを抜いて、この部屋を出るように。

  5  死者との語らい

レイファ
:…とりあえず、地上へ出るわ。
     エンジュは無事かしら?
GM  :車の中にいる。
     グレイウルフにコアストライク*でも仕掛けないかぎり、
     無事でいるだろう。
エンジュ:あ、それは思いつかなかったな(笑)*
レイファ:エンジュ。わたし、《ワイルド・ギース》に戻る前に
     寄りたいところがあるから、先に戻ってなさい。
エンジュ:ええっ?! こんなところに放り出してかないでよ。
レイファ:ああ、そうか。じゃあいいや、乗りなさい。
GM  :「どこへ向かう?」
レイファ:市営墓地。
GM  :ではすみやかに移動した。
エンジュ:お墓? 誰のお墓?
GM  :この前、グレンディを埋葬しに来ただろ?
エンジュ:ううん。ジョーカーがなんか可哀想だったから*
GM  :ああ、じゃあエンジュは初めてか。
     海を見渡す寂れた丘に墓標が並んでいる。
     レイファにくっついてゆくと、先客がいる。
レイファ:シリウス?
GM  :そうだ。
     返り血を浴びたオートプロテクター姿のまま、
     《ケルベロス》の墓標の前に立っている。
エンジュ:《ケルベロス》?
GM  :レイファに聞けばわかる。
     グレンディは《ケルベロス》の隣に埋葬したんだ。
エンジュ:ジョーカーは?
GM  :いないよ。シリウスひとりきりだ。
エンジュ:その辺に今し方埋めたような跡はないよね(笑)?*
GM  :ないわ。
レイファ:オールドギースに用意してもらった酒をじいさんの墓に
     手向ける。
     で、シリウスに言うよ。
     あんたの首に賞金がかかったこと、知ってる?
GM  :「いや。聞いてない」
エンジュ:…ってことは、しばらくオールドギースと会ってないね。
     ジョーカーとも一緒じゃなかったのか。
レイファ:墓参りを済ませたら帰ろう。
GM  :では、パーキングにちらと目をやったシリウスは
     「なぜMAX−7がここに」とつぶやく。
エンジュ:あ、内緒だったのに(笑)
レイファ:ちょっと借りたのよ。ぶつけてないから大丈夫だって。
     これから《ワイルド・ギース》に帰るんだけど、乗ってく?
     わたしが運転してあげる。
GM  :MAX−7は2シーターだぞ? 
     「一端、セイフハウスに戻って身支度を整えるから」と
     シリウスは断る。
     ここには作戦終了の報告に来ただけのようだ*
エンジュ:ねえ、ジョーカー、どこにいるの?
GM  :その名を聞くと、シリウスは押し殺した苛立ちを見せて
     「奴のことなど知るか」と答える。
エンジュ:ええ〜、ジョーカーがシリウス置いてどっか行っちゃう
     なんて変じゃない?*
GM  :「奴がどこで何をしようと俺には関係ない」
レイファ:ジョーカーとシリウスの関係ってのもなんか妙なのよね。
     単なるブローカーとハンターの付きあいじゃないのは
     伝わってくるんだけど。
     まあ、いいわ。帰るよ、エンジュ。
エンジュ:あ、帰りは僕が運転席に座りた〜い♪*
レイファ:なんか不安だけど、ヤバくなったら勝手に自動操縦に
     切り替わるからいいか。
GM  :では、問題なくクライスラーズ・ビルについた。
     MAX−7は自分でシリウスのところに戻ってゆく。
エンジュ:ありがと〜、またね〜

   6 小さな巨人

GM  :では《ワイルド・ギース》へ。
     エレベータの暗証番号はオールドギースから教えて
     もらった*
レイファ:あら、じーさん、いいの?
GM  :「悪用なんぞしたらワシより早くあの世に行くことに
      なるぞ」
レイファ:はいはい。じゃ、カウンターに付いて、と。
     ちょっとじーさんに聞きたいことがあるのよ。
GM  :「なんじゃ」
レイファ:7年前にここで何があったの。
GM  :いきなり聞くかい。
レイファ:前から言ってるでしょ。
     わたしは直球勝負しかできないのよ。
GM  :ううむ。オールドギースはいつでも無愛想なポーカー
     フェイスなんだが、グラスを磨く手が一瞬、止まった。
     「やはり、その話が出たか」
     そしてレイファを見る。
     「お嬢ちゃんが使っていた情報屋は死んだぞ。
      口に石を詰められて路地に転がされとったわ」*
レイファ:余計なことをしゃべるな、ってことかしら。
     儲け損ねたわね、彼。
     でも、じーさんは7年前の事件のことを知ってて、なおかつ
     ずっとここにいて無事なんでしょ? タダ者じゃないわね。
     こんな客の少ないバーが本業とも思えないし。
エンジュ:あれ? レイファはまだ知らないんだ? 
     僕が理由もなく酒場に入り浸るわけないでしょ。
レイファ:ジョーカーに捨てられちゃったから、代わりにまとわり
     ついてるだけじゃないの?
エンジュ:…う。即座に否定できないのも悲しいなぁ(笑) 
     あのね、この店で売ってるのは酒だけじゃないんだよ。
レイファ:ブローカーなの?
GM  :まあ、武器の手配もするが、メインに扱っているのは
     情報だな。
     仕事の斡旋はしてないよ。
レイファ:あんた、なんで知ってんの?
エンジュ:そりゃ、これまでいろいろと(笑)*
     ネットの住人の間じゃ超有名人なんだ。
レイファ:あ、そう。じゃ、じーさん。情報屋としてのあなたに、
     7年前の事件について依頼していい?
GM  :「高くつくぞ」
レイファ:金がない(笑) 
     代わりに仕事を受けるとか、そーいう方法じゃダメ? 
     この店で皿洗いでもいいけどさ(笑)
エンジュ:親に借金したら?
レイファ:絶対イヤ。
GM  :正確には金の問題ではなくてね。
     オールドギースは職人気質の情報屋だから、彼に動いて
     もらうには、彼にやる気を起こさせる必要がある。
     依頼人や仕事を選り好みするんだよ。
     別に、レイファを信頼していないというわけではないん
     だが、《ケルベロス》事件については、すでに別の人間から
     大掛かりな調査依頼を受けているからね。
レイファ:調べ出したことをひとりに渡すのもふたりに渡すのも同じ
     だけど、職人としては納得いかないわけね?
エンジュ:グレンディに「詳しいことはオールドギースから聞け」って
     言われてきたんじゃないの?
レイファ:ううん、それは違うんだけど。
     よし、オールドギースにはこう言いましょう。
     わたしはじいさんの話を聞いたのよ、と。
     これだけで効果的だと思うわ。
GM  :そうだなぁ。
     「おまえさんはそれを聞いて何をしたいんじゃ?」
レイファ:まずは仇討ち。アンナを追うわ。
GM  :「7年前の話を聞いたのなら、シリウスもまた復讐のために
      動いていることは知っておるな? 
      だが、あいつの標的はアンナではない。
      その相手をチェスにおける《キング》に譬えるなら、
      アンナは《ナイト》だ。
      おまえさんがゲームに参加することによって、盤面が
      どう変化するか、ワシにも読み切れん。
      《ナイト》を捕るタイミングを間違えると、チェック
      メイトの機会を逃す恐れがある。
      ワシはそれを懸念しとる」
レイファ:それなら、シリウスに伝えてちょうだい。
     アンナを殺るときはわたしに知らせて、って。
GM  :オールドギースは首を振る。
レイファ:ダメなの?
GM  :いや、君の心情はオールドギースも理解しているんだが、
     戦場でのことだからね、間違いなく君にアンナを譲ると
     確約することはできないそうだ。
     「だがな、逆にお嬢ちゃんが独自のネットワークを使って、
      アンナを追い詰めて倒す分にはワシもシリウスも文句は
      言わん。
      たとえ、それが最悪のタイミングであったとしてもだ」
レイファ:それはこっちも同じね。シリウスの動きがアンナを殺す
     邪魔になったとしても仕方ないわ。
エンジュ:でも、レイファ、危なくない? 
     情報屋、殺されちゃったし。
レイファ:うーん、じーさんに頼むにしろ、自分でやるにしろ金が
     ないのよねえ(笑) 
     稼ごうにもハンターの仕事ないし。
GM  :選り好みしなければ仕事がないわけじゃない。
     ネオ=アップルを拠点にしていたハンターたちも大多数は
     他のシティに移動したり、ホークのように荒野にトレジャー
     ハントに出掛けている。
レイファ:ホークと同じことをするのはイヤ(笑)
GM  :そういや、ホークはつい先ほど帰ってきたらしいよ。
レイファ:あ、じゃあ、彼も呼ぼう。ピッピと電話。
     《ワイルド・ギース》で待ってるからね、とだけ言って
     用件は伝えない(笑) でも彼なら来るはず。
GM  :「な、何事?!」と泡食って駆けつけてくるよ。
レイファ:けっこうあちこち動いたから、そろそろいい時間よね。
     ホークも帰って来たことだし、ここでご飯を食べよう。
     じーさん、夕飯作ってよ。
GM  :三人か。$200だな。
レイファ:ま、いいわ。出すよ。
エンジュ:おごってくれるの♪
GM  :出された食事は合成物とはいえ、質のいい食材を使って
     いる。
     $200では材料費にもならないだろうと見当がつく。
レイファ:いただきます。ちょっとお酒ももらうわ。
     ところでさ、じーさんはジョーカーが今、何やってるか
     知ってる?
エンジュ:ぴく。
GM  :「しばらくネオ=アップルを離れると言っておったな」
レイファ:あ、そう。もうひとつ聞くわ。
     昔、シリウスとジョーカーの間で何があったの?
GM  :ううむ…今度はそこか。要所を突いてくるなあ、君は。
     「ンなことは当人に聞け」と言いたいところだが…
エンジュ:当人、行方不明〜(笑)
レイファ:ゲーム参加人数が多いとなかなか突っ込んだこと
     聞けないんだもん。
     今日はいい機会だから、いろいろと聞いとくわ(笑)

     7 若き狼たち

GM  :うーん。 レイファがその質問を口にすると、場が静まる。
     「何故、そんなことを知りたがるんじゃ?」
レイファ:だってどう考えたって変よ、あのふたり。
エンジュ:どんな風に?
レイファ:少なくともわたしが見る限り、ジョーカーからシリウスに
     対する感情はどちらかと言えば好意的だと思う。
     仕事を託す相手として信頼しているだろうし、むしろ、
     どこか譲歩しているところがあるような気がする。
     でも、シリウスからすると、ジョーカーの、ブローカーと
     しての腕に対する不満はないんだけど、ジョーカー個人への
     信頼は皆無なんじゃないかと思うのよ。
GM  :皆無…(笑)
レイファ:シリウスは元から愛想のいい男じゃないけど、ジョーカーに
     みせるような態度は、少なくともわたしたちに対しては
     取らないわよ。
GM  :そのとおりだろう。
レイファ:あれは普通のブローカーとハンターの関係とはどうしても
     違うと思うのよ。
     わたしたちとジョーカーの関係も変っていうか、かなり
     馴れ合ってる気はするけどさ(笑)
GM  :君らが遠慮しなさすぎるだけだ。
エンジュ:え? 普通のハンターってブローカーに遠慮するもんなの?
GM  :用もないのにオフィスに押しかけて居座ったりはせん。
レイファ:ま、わたしらのことは置いといて。
     じーさん、どう思う? 
     シリウスは仕事絡みでさえなければジョーカーと関わりたく
     ない−−
     で逆に、ジョーカーの方はシリウスに負い目があって
     気にかけているような感じがするんだけど。
エンジュ:負い目って? 
レイファ:そうね。昔、ジョーカーが仕事の最中にシリウスの大切な
     人、例えば弟−−仮にいたとしてだけど−−を殺しちゃった
     とか。
     状況からして避け難い死であったことは理解できても、
     シリウスにとっては割り切れないものが残るでしょ。
     そんな感じ。
     あとは、ふたりに共通で関係する女の子がいるというのも
     ありかな。
GM  :う…来るなあ。
エンジュ:当ってるみたい。続けて続けて♪
レイファ:立場的にはジョーカーが弱いよね。でも、シリウスがそれを
     逆手に取ってジョーカーを脅してる様子はない。
エンジュ:じゃあ、なんでシリウスはジョーカーのとこに来るの? 
     マホロバ・ストリートにだってブローカーは何人もいる
     んだから、気が合わなかったら別の人と契約すればいい
     じゃない。
レイファ:だから、何かあるんでしょ。
     シリウスはプライベートでは極力ジョーカーと離れていたい
     んだけど、ビジネスではジョーカーと組まざるを得ない
     事情がある−−
     この読みってどう、とオールドギースに聞くよ。
GM  :またこっちに振るかい(笑) 
レイファ:じーさん、昔からシリウスのこと知ってるんでしょ? 
     シリウスって、自分が痛い目にあうより、大切にしている人
     を失う方が堪えると思うのよ。
     それを死なせたのがジョーカーなんじゃないの?
エンジュ:グレンディにどんな話を聞いたの?
GM  :ジョーカーのことは一言も言及しておらん。
エンジュ:内容を教えてもらってもいい? 
     プレイヤー的にでもいいけど*
レイファ:ん、いいよ。
(GMはグレンディからの遺言を再読する)
エンジュ:確かに、ジョーカー出てきてないね。
レイファ:でもさ、常々の態度を見てれば普通じゃないってことくらい
     わかるでしょ? 
     そうね…一番最初におかしいと思ったのは、《ナイトメア》
     から「金払え」って脅しが来て、ジョーカーが皆の分まで
     払ってくれたときよ。
     それに対してシリウスは「余計なことをするな」って
     嫌悪感を露にしてた。
     それでいて、後でなんだかんだと理由をつけてお金を振り
     込んで来たってことは、彼はジョーカーに対していかなる
     借りも作りたくないんじゃないか。
     しかも、「金で返す」というやり方は、普通ならシリウスは
     選ばないと思うのよ。
     レイファがしたように仕事を引き受けるとか、別件で手助け
     するとかして報いるのがシリウス本来のやり方だと思うの
     よね。
     金で返すというのは、ビジネスだけの関係、という主張だと
     思うんだけど?
GM  :いろいろ鋭すぎ(笑) 
     以後、あなたを敵に回さないよう気をつけます。
レイファ:GMの趣向ってわたしと似てんだもん。
     なんかわかるよ(笑)
エンジュ:グレンディから聞いた話で、シリウスとジョーカーが
     接触できる時期ってのは限られてくるよね? 
     7年前の《ケルベロス》壊滅の後すぐにシリウスはネオ=
     アップルを離れてるんだし、帰ってきたのは…いつ?
GM  :ほぼ1年前だ。
エンジュ:で、半年くらい前からは僕らと出会ってるでしょ*? 
     その頃にもうああだったとなると、シリウスとジョーカーが
     仲違いしたのは…
GM  :よし、わかった。レイファの推察に免じて、裏設定を
     暴露してしまおう。
     では、おいしい食事に酒が進んでホークは酔い潰れた。
     エンジュもカウンターに打つ伏して寝ている。
エンジュ:えー。ジョーカーの話なら一生懸命、起きて聞いてる〜
GM  :じゃあ、エンジュが寝たふりしてんのかは知らないが、
     酒席も流れて今、グラスを傾けているのはレイファだけだ。
     後片付けを始めたオールドギースが「あのときあいつが
     座ったのもその席だった」とつぶやく。
エンジュ:「あのとき」と「あいつ」がわからない〜。
     指示語は嫌いだ(笑)
GM  :「あいつはまだ19の小僧だった…」とオールドギースは
     語り出すんだが、すまん、データに関してはロールプレイで
     なくしゃべらせてもらう。
     シリウスの本名はデューク・レッドフォード、現在26歳。
     父親は警察官。9歳のときに母親は病死しており、15歳で
     父親が殉職。
     天涯孤独の身となった彼は、隣家のローランド家および、
     逆隣のイチノセ家に養育されることになった。
     ジュニアハイスクール卒業後、デュークは警察予備課程に
     進み、ハイスクール卒業と同時にポリスアカデミーに
     入学する。
エンジュ:飛び級してなきゃ18歳*?
GM  :18だ。
     ところで、隣家のローランド家・イチノセ家にもそれぞれ
     デュークと同じ年の娘・息子がおり、彼らもポリス
     アカデミーに進学している。
     さて、この姓に聞き覚えは?
エンジュ:僕は思い出した♪ でもレイファはどうかな〜(笑)
レイファ:ローランドとイチノセ? 
GM  :どっちもゲーム中に2回は言及してるぞ。
レイファ:すっかり記憶から抜け落ちてるわ。
エンジュ:洞察力抜群のくせに記憶力はないよね。
GM  :仕方ないな、エンジュ、教えてやりなさい。
エンジュ:はい、僕のデータバンク公開。
     イチノセはCBI長官、リチャード・イチノセ。
     ローランドはSWAT《バルキリー・チーム》の隊長
     ヨーコ・ローランド少尉。
レイファ:ああ、事件をもみ消してくれた人か*! 
     え、そんなに若いの?
GM  :リチャードはロマンス・グレイだと言っただろうが。
     デュークの幼なじみなのはリチャードの息子だ。
     で、この息子はポリスアカデミーに士官候補生として
     入学している。
     卒業後はエリートコースに進むことに−−と、彼の話は
     置いといて、デュークなんだが、このポリスアカデミー
     時代にひとりの若手刑事と出会い、その生き方に影響を
     受ける。
     彼の名はショーン・ケネディ。
     このショーンは、有志の警官によるダウンタウンの
     パトロール運動を展開した人間だ。
     それ以前は、ダウンタウンでいかに凶悪な犯罪が
     起ころうと、支配企業の不利益にならない限り、あるいは
     犯人を逮捕することで支配企業の利益にならない限り、
     警察が動くことはなかった。
     ショーンがこの運動を提唱した当時は誰もが否定的だった。
     「地獄に番犬を置いて何の役に立つ」と。
     何事にもポジティブなショーンは「それはいい。我々は
     以後、《地獄の番犬》=ケルベロスと名乗ろう」と
     笑いながら応えた。
エンジュ:《ケルベロス》だ!
GM  :デュークはショーンの《ケルベロス》運動に賛同し、ポリス
     アカデミーを飛び級扱いで卒業*すると、ショーンの所属する
     CBIに配属希望を出して受理された。
     そこでデュークは《ケルベロス》運動に協力する仲間たちと
     知り合い、また、オールドギースとも面識を得る。
エンジュ:7年前から、この店あったんだ?
GM  :もっと前からあるよ。
     ショーンは警官になる前はハスラーだったんだ。
     それというのも、彼はもともと市民ではなく、ダウンタウン
     の出身だから、警官になろうにも身分保証がない。
     ハンターになってランクを上げればそれが身分保証の代わり
     になるんだ。
     もっとも、彼はそれが目的でハンターになったんではなく、
     当初からダウンタウンの治安を回復しようという意図の下で
     動いていた。
     しかし、一介のハンターとしての活動ではダウンタウン全域
     を護ることはできない。そこで、彼は警察という組織を
     利用してそれを実現させようとした。
     オールドギースとショーンの付き合いはハンター時代から
     で、ショーンが警官になってからも続いていた。
エンジュ:ここで飲み会をやった?
GM  :そういうこともあった。
     「さすがにあのときは店が手狭に思えたわい。
      ショーンの傍らにデューク、サージ、アキラ…
      そして、あの頃はまだユーリも彼らの仲間だった」
     ユーリ・イチノセ。それがジョーカーの本名だ。
レイファ:長官の息子なの?!
GM  :当人はこれまで「個人的な知り合いです」としか言わな
     かったけどね*
     デュークとユーリは親友で、たいていツルんで行動していた
     から、ここにも出入りしていた。
エンジュ:未成年が飲み会。警官なのに〜
GM  :うるさいな(笑) 
     やがて、この《ケルベロス》運動は、とあるネット
     キャスターによってメジャーネットで放映され、一気に
     注目を集めることになる。
     ちなみに、そのネットキャスターとも君たちは顔見知りの
     はずだが?
レイファ:あ! サン=アンジェルスで会った人。
GM  :名前は覚えてなかったか(笑) 
     INNのリック・グリフィンだ*
     《ケルベロス》運動はブラックマーケットを利用する
     市民*からも「それで治安がよくなるなら」と好意的に
     受け止められた。
     やがて、世論に後押しされる形でパトロール部隊が正式に
     発足することになる。
     この特殊武装機動隊はそれまでの経緯から《ケルベロス》と
     名付けられた。
     デュークは喜んでその第一期隊員募集に応じる。
     ユーリも同じように参加を希望したが、そこで父親から
     「やめておきなさい」と勧告された。
     「おまえはまだ学生の身だ。アカデミーを卒業し、彼らを
      実質面でサポートできる地位についてから、参加すべき
      だろう」と。
     ユーリは父親の説得を受け入れて入隊希望を取り下げる。
     後はグレンディが語った通りだ。
     初出動で《ケルベロス》は壊滅し、デュークただひとりが
     生き残った*
レイファ:ショーンも死んじゃったの?
GM  :銃撃戦の中、シリウスを護ってね。
レイファ:う〜ん。
GM  :で、《ケルベロス》を罠にかけたのはGMTとシンクレア
     財団、および《ナイトメア》だ。
     当時からすでにCBI長官であったリチャードは陰謀を
     察知できる立場にいる。
     つまり、陰謀そのものには加担していなかったにせよ、
     《ケルベロス》に加わった者は殺されるという雰囲気は
     感じていたから、息子を行かせなかったんだ。
     ただひとり生き延びてそれを知ったデュークはユーリと
     訣別した*
エンジュ:でもさ、その状況を聞いた限りだと、ジョーカーは何も
     知らなかったんでしょ?
GM  :確かに、ジョーカー自身は《ケルベロス》が潰されるのを
     知ってて抜けたわけじゃない。
     ただ、結果的に自分の父親が姑息な手段で自分だけを
     助けたのだという負い目を感じている。
     かと言って、父親が苦慮の末に下した決断だということも
     わかっているから、父親を責めることもしない。
レイファ:うん、まあ、わかるな、その気持ちは。
GM  :だが、仲間たちが裏切りにあって殺されるのを目の当たりに
     したシリウスとしては、そこで手を引いたジョーカーを
     許すことができないでいる。
     親友だったからこそ、こいつだけは違うと思っていたのに、
     という印象が強いんだろうな。
     ふたりの過去はそんなところだ。
     で、生き残ったシリウスはアンカレッジ*にあるユニオンの
     特殊訓練施設でグレンディに師事し、戦闘技術を身につけて
     この街に帰ってきた。
     《ケルベロス》が潰されなければならなかった真の理由を
     突き止め、14人の仲間の復讐を遂げるために。
     シリウスというコードネームは《ケルベロス》に下った
     最初で最後の作戦名に由来している。
エンジュ:うわぁ。「俺はまだ《ケルベロス》として作戦続行中だぞ」
     って?
レイファ:関係者には一目瞭然なわけね。
GM  :その通り。
     ちなみにジョーカーというコードネームは、彼がポリス
     アカデミーにいた時分のアダ名だそうだ。
     どんな難題でも彼が出てくれば解決する《切り札》だって
     ね。
エンジュ:…ねえ、レイファ。ジョーカーは帰ってきたシリウスに
     対して、どうしようとしてるんだろう? 
     それが分かれば居場所がわかるかもしれない。
レイファ:シリウスの復讐の手助けをするとなると、そのうち、自分の
     父親を殺させることになるかもしれないのか。複雑だねえ。
     でもわたしに聞くよりもさ、技術の方向性ではあんたの方が
     ジョーカーに近いんだから、あんたがジョーカーの立場
     だったらどうするか考えてみればいいじゃない。
エンジュ:うーん。
GM  :まあ、話のついでに語ってしまおう。
     《ケルベロス》壊滅後、デュークがハスラーになったことは
     ジョーカーも知っていた。
     で、彼としては、いつか彼が戻ってきたらその仕事を助け
     ようと思ってブローカーという生き方を選んでいる。
エンジュ:警官にはならなかったんだ。
GM  :ならなかったということだね。
     その点では、ジョーカーは父親の理想の息子ではいられ
     なかったわけだ。
エンジュ:で、シリウスと契約して、また一緒にいようと思ってる?
GM  :シリウスはノンサイバーに拘っているから、ハスラーと
     いってもジャックインだけは絶対に不可能だ。
     ジョーカーはそこを自分が補おうと決めた。
     償い…というのとはまた違うな。
     ジョーカーはシリウスが絶対に自分を許さないことを
     知っている。
     理屈じゃなく、感情的に無理だってことを。
     死んだ人間は返って来ないんだ。
エンジュ:……
GM  :ふたりがふたたび対等の関係を築くことができるのは、
     自分の協力をシリウスが頼りにするようになったときだ、
     ジョーカーはそう考えている。
     だから償いじゃない。新しい絆を結ぶための努力だ。
     それでジョーカーはネットライナー寄りの技術を習得して、
     シリウスを待っていたわけだが、帰ってきたシリウスは
     ジョーカーではなくオールドギースの所へ行ってしまった。
レイファ:6年待ってた男に振られちゃったのね(笑)
GM  :ジョーカーはすぐにオールドギースに連絡を入れて、結局、
     シリウスはジョーカーとハンター契約を結ぶことにはなった
     んだが、その当初からジョーカーの予測は狂いっぱなしだ。
     シリウスの復讐の手助けはしているが、あくまでも部分的な
     実務処理を任されているにすぎない。
     シリウスの相談役はもっぱらオールドギースがつとめて
     いる。
     確かに、オールドギースの方が経験も実績もあるんだが、
     シリウスが彼を選んだ理由はそれだけじゃないんだな。
     シリウスという男は、結果を出すことも必要だとわかって
     いるが、それ以上にそのプロセスを重要だと考える。
     復讐のためだからと言って信義を曲げるようなことは絶対に
     できない。
     逆に自分が納得できる作戦であれば、どれだけ危険であって
     も構わない。ある意味、理想を追う男だ。
     しかし、ジョーカーは優秀なだけに効率という面で物事を
     処理しがちなところがある。
     度々「あなたやオールドギースのやり方よりこちらの計画の
     方が安全で、かつ成功率が高い」と主張してきたわけだが…
レイファ:シリウスは聞かないと。
GM  :いや、採り上げないだけでなく、シリウスはあくまでも
     自分の選んだ方法で、ジョーカーが弾き出したものより
     優れた結果を出してきた。
     その度にジョーカーは「まだ認めてもらえない」と悩む
     ことになる。
レイファ:可哀想にねえ。
エンジュ:僕の知ってるジョーカーじゃないみたい…
GM  :キャンペーンシナリオの裏で彼らは君たちとはまた別の
     機軸で動いていたんだ。
     それと知って見直せば意味をなすエピソードがいくつか
     あるよ。よかったらリプレイを見直してご覧。
     で、ジョーカーとしてはこの状況を打開すべく、現在、
     独自に動いているはずだ。
     「自分のやり方でシリウスを越えるにはどうすればいいか」
     と。
レイファ:なるほどね。
     …というようなことをオールドギースから滔々と聞かされた
     のね。
     んー、なんか新事実がたくさんあって情報整理が大変だぁ。
エンジュ:ねえ、レイファはどうするの?
レイファ:どうするって、シリウスとジョーカーの因縁がわかった
     からといって、他人が口出すことじゃないでしょ?
     彼らの関係が最終的にどうなろうと、わたしらがどうこう
     していいもんじゃない。
     それより、これまでの情報の中にちょっと気になる部分も
     あったのよねぇ…自分の方にも関係してきそうな情報がさ。
エンジュ:なに? 知ってる名前でもあった?
レイファ:ま、あんたには関係ないことよ。
エンジュ:ふうん。
     ねえ、オールドギースはジョーカーの居場所知ってるの?
GM  :なんだ、エンジュも本格的に起き出してきたのか。
エンジュ:僕、ジョーカーに会いたいよ。
GM  :会いたいからって会える状況じゃないしな。
エンジュ:ジョーカー、ひとりなのはダメだよ。
GM  :うーむ。オールドギースにはジョーカーが何をしようとして
     いるのか、予想ならついている。
     で、その計画の進行段階によってジョーカーの居場所は
     変わってくるそうだ。それくらいは教えといてやろう。
レイファ:ま、ジョーカーとはそのときが来たら会えると思うから
     いいわ。

   8 それぞれの生き方

レイファ:それより、懐も寂しいから、そろそろ何か仕事しよう
     かしら?
エンジュ:アンナのことはいいの? 
     オールドギースは、レイファが独自に動く分には構わない
     って言ったよ。
レイファ:うん、でもね、じいさん*にこうも言われたのよ。
     「おまえの腕じゃまだダメだ」って。
     だから、技能を上げるためにも仕事しないとね。
GM  :いや、正確には技能が足りないんじゃない。
     まあ、技能も高いに越したことはないが、君に足りないのは
     「自覚」だ。
     これから先、《ナイトメア》と戦ってゆくなら銃撃戦だけで
     カタがつくはずもない。
     いつどこで誰が何を仕掛けてくるか限定もできない“日常”
     に足を突っ込むことになったとき、君が生き残れるかと
     いうことをグレンディは最後まで心配していたわけだ。
エンジュ:レイファはアンナを倒したら《ナイトメア》との戦いから
     手を引くつもり?
レイファ:アンナを倒すのはあくまでも当面の目標に過ぎないのよ。
     その後、《ナイトメア》とどう関わってゆくかは、
     そのときになってみないとわからないわ。
     ただ、レイファの人生の目標は、この世界で、自分自身の
     力で、生き抜いてゆくこと。
     《ナイトメア》がいようといまいと関係なくね。
エンジュ:ハンターを辞めても構わない?
レイファ:そうだね。立身出世は別に望んでない。
     それはきっと、レイファが底辺の生活をしたことがない
     からね。
     底辺で生まれた人間には成り上がることに対する飢えが
     あると思うの。
     だって、お金持ちになれば食べる物も買えて、暖かいベッド
     で眠ることができるわけでしょ?
GM  :そうだなぁ。
レイファ:レイファはそういうものを手に入れるために生きているわけ
     じゃないのよ。
GM  :きっと、レイファは誰の庇護も受けずに自分の力で立って
     いたいということなんだろう。
     それがわかっていたから、グレンディも「何をしてくれ」と
     いう言い方ではなく「おまえの望む幸せを」と告げたわけ
     だが。
レイファ:まあ具体的に今、何をするかって言ったら、じいさんの
     仇討ちのために自分に足りないものを理解して、それを
     克服することかな。
GM  :酒を飲みながらする話だなあ(笑)。
     オールドギースも片付けを終えた後はショットグラスで
     チビチビやりながら君らの会話を聞いている。
レイファ:じゃ、同じ質問をエンジュにするわ。
     あんたはここで何をしているの?
エンジュ:…ジョーカーを待ってる。
     ここにいれば、ジョーカーは僕を見つけられる。
レイファ:でも、ジョーカーはもう帰ってこないかもしれないよ? 
     今頃、どこかで死んでるかも。
エンジュ:…僕、さっきレイファが言ってた底辺の生活ってして
     きたよ。
     でも、立身出世はいらない。
     好きな人とずっと一緒にいたいだけなんだ。
レイファ:それはわかったよ。
     で、その実現のためにあんたは何をするの?
エンジュ:僕……好きな人に褒めてもらうためなら頑張れるんだ。
     僕がちゃんと仕事したら、ずっと僕のこと見ててくれる…
     一緒にいられる。そうじゃなかったの?
     僕のしてるコトが悪いコトでも一緒にいられるから、
     仕事するの楽しいと思ってたよ……
     でも、どうして僕のコト、置いてっちゃったの。
     助けてあげたいのに、僕じゃダメなの…
     って、なんかジョーカーの台詞みたい(笑)
GM  :おまえも仕方ない奴だな(笑) 成長がないぞ。
レイファ:で、どうするつもり? あんたも失踪しちゃう?
エンジュ:うーん…
GM  :その答えによっては、今後の展開を再考してやっても
     いいぞ。
エンジュ:ひゃー。このまま語りますか(笑)?
GM  :ま、そんな話をしているうちに随分と時間が過ぎた。
レイファ:リアルタイムの方でも2時間近くたったんじゃない?
GM  :なんやかんやで3時間だよ。*

   9 覆る日常

GM  :この時間まで君たちに付き合っていたオールドギースだが、
     突然、顔を上げ、「ちょっと席を外すぞ」と言って奥に
     引っ込む。
     で、しばらく戻ってこない。
レイファ:何かしら?
エンジュ:カウンターの裏側のモニターに何か知らせが入ったんだよ。
GM  :ややたって戻ってきたオールドギースは口で説明するより
     早いと思ったのか、テレビジョンをつける。
     と、深夜にも関わらず緊急ニュースが流れる。
レイファ:なんだなんだ?
GM  :『今夜半、ネオ=アップル市のパーフェクトセキュリティ
      エリア/ファーストセキュリティエリア/セカンダリー
      セキュリティエリアにおいて、ほぼ同時刻に爆破事件、
      毒ガステロ等が多数発生』
エンジュ:パーフェクトまで?!
GM  :『これにより、ネオ=アップルの都市機能は35%ダウン。
      一部では連絡手段が遮断され、状況が一切不明となって
      いるエリアもあります。
      都市管理AI《アカデミア》による戒厳令が発動され
      ました。
      市民の皆さん。許可が出るまで外出は慎んでください』

                   第8話 END


 次回予告

 暴力の嵐が吹く。ネオ=アップルの、過酷な冬の訪れと共に。
 背徳の街に曲折し、陰謀の闇に穢されても、膝を屈することだけはできはしない。一足先に自由になった、あの男に報いるためにも。
 次回、『悪夢、再び』(BURNNING APPLE改題)
 まだ、黒子は姿を見せない。

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