MHリプレイ ネオ=アップル篇#1
狼たちの記憶
0 集合
GM :なに? 呼ばれて来てみれば今日はプレイヤーふたりなの?
レイファ:そうみたいね。
エンジュ:でもやろうよぉ。
GM :…って、アビスもアヤコもいないんじゃ、テキサナ篇を
始めるわけにもいかない*。どうするかな…
よし、レイファがいるなら、ソロ用に考えておいた
ストーリーをやってみるか。エンジュはそれでもいい?
エンジュ:適当に茶々いれるからいいよ(笑)
1 離散
GM :では、グレンディを葬った後、身辺整理を済ませて
アヤコとアビスはテキサナに発った。
ルーレルとセンゴクは見送りがてら、ちょっと
ネオ=アップルを離れるそうだ。
「うまい仕事もないしな」と言っている。
エンジュ:あー、仕事ないのってまだ続いてるの?
GM :その通り。ネオ=アップルは不思議と治安がいい*。
そして武器弾薬の価格は相変わらず高騰している。
エンジュ:なんだろうね? 原因の予測つく? ジョーカー。
GM :そのジョーカーなんだが、シリウス共々、姿を消した。
オフィスも閉鎖されている。
エンジュ:えええ〜?!*
レイファ:ふたりして逃避行よ。
エンジュ:カリカリカリ(扉を引っ掻いている)。
入れないの〜? セキュリティ弄ってみるけど。
GM :開かない。
エンジュ:そんな〜。僕、どうするの〜
GM :ちなみに、姿を消す前にジョーカーはこう言っていた。
「私の方からはしばらく皆さんに仕事を回すことが
できそうにありません。
よろしければ、別のブローカーをご紹介しますが」
エンジュ:そんなのヤだよぅ。
GM :ラルフやホークは自分でみつけてきた仕事をしているぞ。
レイファは治療*だのなんだのがあるから、まだ仕事して
ないようだけどね。
エンジュ:ああ…アビスは行っちゃったし、ルーレルとセンゴクも
いつ帰ってくるかわかんないし…《収容所》*は僕ひとり…
あ! もしかして《収容所》も閉鎖されてる?
レイファ:あんた、行くトコないならうち来てもいいわよ?
アーヤが使ってた部屋、今なら空いてるし*。
エンジュ:え。一緒に暮らしていいもんなのかな*。
GM :誰が同棲相手だなんて思うもんか。
よくて弟…まあ、せいぜい雑用係だろうな。
もっとも、ジョーカーは《収容所》についてはそのまま
残してくれたから、追い出されたりはしてないよ。
エンジュ:広い〜広い〜誰もいなくなっちゃったぁ…
GM :では、そんなある日。
レイファ:待って。暗示の治療は済んだの?
GM :ああ、治療費$3,000、通院一週間でOKだよ。
レイファ:ちゃんとした医者でしょうね?
それと、街の情報屋を捕まえて聞きたいことがあるんだ
けど*。
GM :そろそろ、この情報屋も性格設定してやるか。
レイファの馴染みの情報屋は歓楽街での客引きの傍ら、
情報を売り買いしている男だ。
金にはセコく、手柄を誇張するクセはあるが、仕事は
早いし、そこそこ信用できる情報ネットワークを
持っている。
接触するならいつもの方法で。
エンジュ:歓楽街の客引きと「いつもの方法」で接触って…
レイファ:「新人が入ってるよ」って言うと「ネタあります」の
意味なのね。
エンジュ:「源氏名が《ナイトメア》なら$500で買うわ」って?
うわー、レイファが女郎屋通いしてる〜(笑)
GM :女郎屋って…おまえもどこでそんな言葉を覚えてきた
んだ(笑)*
ともあれ、いつものストリートに行けば見つかるよ。
レイファ:じゃあ、彼に《ケルベロス》について調べておくよう
頼むわ*。
GM :「見繕っておきますぜ、姐さん」
では、治療を開始した頃にその依頼を取り付けたということ
にしておこう。
この一週間、エンジュは何してる?
エンジュ:オールドギースのとこ。お勉強。
GM :実を言えば、ハッキングのテクニックに関してはオールド
ギースよりジョーカーの方が上だよ。
エンジュ:でも僕よりはデキるでしょ。
GM :まあ、オールドギースも君をむげに追い出しはしない。
彼の邪魔をしなければ好きにしてなさい。
で、レイファの方だが、治療の最終日にふたたび情報屋に
会う。
「なあなあ、姐さん。今度のアレは相当、デカいぜぇ。
引っ張ってくるのに苦労しそうだ。仲介料、$10,000は
いただかないとワリに合わないナ」
レイファ:$10,000?! ほとんどわたしの全財産だわ。
ちょっと、あんた、料金まで大袈裟に言ってんじゃない
でしょうね。
GM :「マジマジ。マジにヤバいのよ。
ちょっぴり古い話でもあるしねえ、放っとくと風化しち
まうだけだ」
レイファ:古いって、どれくらい?
GM :「そいつは後のお楽しみ」
レイファ:気を持たせるわね。
わかった。わたしも金の算段はしておくから、あんたも金が
欲しかったら命を落とさないようにすんのよ。
ちゃんと情報持って帰ってらっしゃい。
GM :「へーい。そいじゃ、また」
レイファ:お金が足りないわ。だけど、仕事もないのよね。
GM :バウンティハントは可能だが、弾薬自体が値上がりしてる
からね。
よほど高額の賞金首を狙わないとたいした儲けにはならない
だろう。
レイファ:で、暗示の治療は済んだのね?
GM :問題なしだ。
2 ダンチュウ(男厨)
GM :さて、レイファが家に戻ってくると、ホークが息せききって
訪ねてくる。
レイファ:あら、あんたこの街にいたの。
エンジュ:再会の挨拶がいきなりそれだよ(笑)
レイファ:ま、わざわざ訪ねてきたんなら茶くらい出すよ。
あがって行きな。
GM :「では、お邪魔させてもらって…」
レイファ:はい、茶。
GM :「どうも」
レイファ:で、何の用?
GM :よほど喉が渇いていたのか、出された茶を一息に
飲み干してから、ホークは早口に言う。
「ハンター狩りだって」
レイファ:は? あんたね、最初から話しなさい。
GM :「え、えっと…仕事ないでしょう?
だから、手頃な賞金首の情報がないかって、ネットで
探してたんだけどね」
レイファ:マメね。ホークらしいけど。
GM :「そしたら、すごいネタ見つけて…」
レイファ:簡潔に説明してね*。
GM :「え、あ…ああ。$150,000だって」
レイファ:何が?
GM :「賞金がかけられたんだ」
エンジュ:うわ。逆賞金首*?
GM :そういうこと。
犯罪組織が基金を設立して、自分たちを殺しに来そうな
優秀なハスラーに賞金をかけているそうだ。
レイファ:へえ。で、あんたが危ないの?
GM :「いや、俺ら程度にまでは賞金かかってないけど」
レイファ:なら、問題ないじゃない。
GM :「ええと…別に…あああ」
レイファ:何よ?
GM :「どうしてこんなに焦ったんだか、レイファと話してる
うちにわかんなくなっちゃったよ。
別に、俺らはたいして名前も売れてないしね。
殺されたりしないよね」
レイファ:まあね、ハスラーが狩られる側に回ったっていうのは
ナンだけど。
こっちが抹殺リストにあがる前に、そいつら叩き潰して
やるわ。
GM :「じゃ、俺、事務所戻るわ」
レイファ:待ちなさい。茶碗、片付けて行って。
エンジュ:客じゃなかったのか(笑)
レイファ:彼ならやってくれるわよ。
GM :他の食器洗いも?
レイファ:ありがとう。何なら、あんた、夕飯も作ってよ。
GM :「ええ?!」
レイファ:台所に立ったついでよ。いいでしょ。
エンジュも呼んだげるわ。ご飯あるよ、おいで。
エンジュ:行く行く♪ お邪魔しま〜す。
あれ? 今日は中華じゃないんだね。
レイファ:料理人が違うからね。
エンジュ:あ、ホークだ。ホークと一緒に暮らし始めたの?
レイファ:ううん、臨時ハウスキーパーよ。
GM :なんとでも言って。
では、食卓を囲みながら、さっきの話をエンジュにも
するよ。
エンジュ:ふうん。どこの組織が賞金を出すって?
まあ、大きい組織なら$150,000くらいポケットマネーで
出せるだろうけどね。
GM :あちこちの犯罪組織が連合して賞金を保証するシステム
だそうだ。
エンジュ:えっ? 犯罪組織が手を組んだ?
そっちの方がヤバいネタじゃない?
GM :全面的に結託したわけではないが、犯罪組織のコング
ロマリット*化の前兆ともとれる動きだね。
エンジュ:ネオ=アップル限定?
GM :いや、北米全域だ。かなり大規模な提携だね。
エンジュ:うわー、それって、誰が図面引いてるんだ。
黒幕がいるよ、きっと。
レイファ:で、$150,000は賞金総額?
GM :「あ、そうだ、それだ! 思い出した!」
ホークがふたたび慌てた声を出す。
レイファ:喉詰まらせるよ。ゆっくりしゃべりなさい。
GM :「んぐ…$150,000はシリウスの賞金額なんだよ」
レイファ:ふうん。彼もあちこちで恨み買ってそうだしね。
それであんた、シリウスを殺る気なの?
$150,000じゃ割にあわないと思うわよ。
GM :「お金は欲しいけど、さすがにね」
エンジュ:そんな賞金に手を出したらユニオンから除名されちゃう
よ*。
GM :「あ、そうそう。この賞金額ってさ、シリウスがこれまでに
獲得した賞金総額と同じらしいよ」
レイファ:わたしたちこれまでいくらくらい稼いできたっけ?
$50,000くらい?
GM :それは運び等の依頼も含めてのことな。
シリウスの$150,000はあくまでもバウンティハント*の
賞金として得た額だそうだ。
「しかも、これ、何人の賞金額だと思う?」
レイファ:シリウスならもう何百人も殺してるんじゃない?
GM :「3人分なんだよ」
レイファ:ええ〜、もっと殺してるって。
GM :撃破数自体はな。ただ、賞金獲得のために申請されたのは
3人だけらしい。で、その3人の総額だけで$150,000だ。
頭割りしても$50,000。これはかなりの大物、場合によると
組織のトップに懸けられる賞金額だ。
レイファ:ふうん。シリウスは自分の首に懸賞がかかったこと、
知ってんのかしら?
エンジュ:オールドギースとは連絡取り合ってるはずだから、
知ってんじゃないかなあ。
レイファ:ま、いいわ。彼なら自力で切り抜けるでしょ。
GM :で、君たちは食事をしながらニュース番組を見てる。
レイファ:知り合い*が出てる?
GM :いや、ワイドショーっぽいチャンネルだ。
レイファ:ホークの趣味ね*。まあいいわ。
GM :では、ちょうどこんなニュースをやっている。
「ネオ=アップルのSWATに新司令官が着任しました。
ネオ=アップルのSWATは女性ばかりの実働隊
《バルキリー・チーム》を擁していることでも有名です」
レイファ:ああ? はい。思い出した。
GM :「新司令官はGMTの若きプリンス*、レオン・
ミュラー氏、25歳」
エンジュ:あれれ? 司令官は男なんだ。
GM :そうだよ。《バルキリー・チーム》が全員女性ってだけで、
SWAT全体では男性職員もいる。
で、ニュースは延々とレオンの経歴、レオンの父親の
地位などを紹介してから、「《バルキリー・チーム》の
隊員はいずれ劣らぬ才色兼備の乙女たち。
今回の人事異動は、レオンの花嫁探しのためという噂も
あります。
その噂を誰よりも支持しているのが当のバルキリー隊員
たちで、早くも恋の鞘当てが始まっているとか。
これによってチームの結束にヒビが入らなければよいの
ですが」とワイドショーらしくやや無責任にライトな
感じで締めくくる*。
レイファ:ふーん…あ、そ。
GM :ホークは「いいなあ」とつぶやいている。
エンジュ:どっちが? バルキリーの女の子たち?
それともレオンの立場?
GM :どっちもだろう(笑)
では、食事を終えたらこの日は解散。
エンジュ:ごちそうさま。おやすみ。
レイファ:食べたら下げる。
エンジュ:は〜い。
3 遺産
GM :では、また何日かたって、レイファの携帯にオールド
ギースからメッセージが入る。
「コートの直し終了*。他、渡したきものあり。
《ワイルド・ギース》にて待つ」
レイファ:行くよ。ダウンタウンなんだから*武器は持って行って
いいんだよね? とりあえずSMGを背負ってくわ。
GM :クライスラーズ・ビルの前には門番代わりのストリート
チルドレンがたむろしているんだが、もうレイファの顔は
見知っているし、オールドギースの指示も受けているの
だろう。
因縁つけたりせずに地下のエレベータホールへ通す。
レイファ:上がる。
GM :君が乗り込むのを見張っていたかのように自動でドアは
閉まり、何もしないでもスムーズに屋上に運ばれる。
オールドギースはいつも通りカウンター。客はいない。
エンジュが隅っこで端末を弄っているだけだ。
レイファ:また入り浸っているわね。
エンジュ:今日はお客さん?
レイファ:呼ばれたから来たのよ。じーさん、丈直しできたの。
GM :「袖を通してみるがいい」
非常にずっしりとした重量感のあるロングコートだ。
ちなみに着用時のENC5、携帯時は10。
エンジュ:うわ、そのコート、僕、持てない*(笑)
GM :銃弾・刃物・炎熱・レーザーに対して防御効果を発揮する。
エンジュ:レーザー防ぐの?
GM :特殊繊維が織り込んである。
ちなみに、丈直しと言ってもオールドギースがちくちく
縫ったんじゃないぞ。
なにせ、ハサミなんかじゃ歯が立たないんだ。
ダイヤモンドコートのチェーンソーでチュイィィィン…と
裁断したと思ってくれ。
レイファ:着心地は問題ないわ。
ちなみに、ネオ=アップルって冬が長いんだっけ?
GM :10月〜4月までは冬だ。
シティの中はハイウェイにドーム状の雪除けがあったり、
セントラルヒーティングの設置で比較的寒さが緩和されて
いるが、スラムでは毎日のように凍死者が出る。
夏でも気温が20℃を越えることはめったにない。
レイファ:ほぼ一年中、このコートは着ていられるわけね。
GM :構わない。ちなみにシリウスがいつも着ているのも
レイファとお揃いのコートだ。
エンジュ:すごいペアルック(笑)
GM :足首まで覆うロングコートだが、これでもレイファの身長と
肩幅に合わせてだいぶ詰めた。
レイファ:でしょうね。じいさん、身長2mあったんでしょ。
GM :レイファは165cmだったよね。
エンジュ:へえ。僕とたいして変わんない?
レイファ:華僑にしては高いのよ。
でも、50cmくらいは詰めたのかな。
あんたのジャケットくらい作れそうね。端切れいる?
エンジュ:くれるの? 僕、収集癖あるから喜んでもらってくよ。
レイファ:持ってきな。
それもじいさんの形見なんだから大切にしてよ。
ところで、丈直しにいくらかかった?
GM :「形見の品に手間賃なんぞ要求できるか」
レイファ:じゃ、甘えるわ。
それから、じいさんの好きだった酒、入ってる?
GM :「スコッチ・ウィスキー《バランタイン》の12年もの。
合成じゃがな」
レイファ:それ、いただいてくわ。墓に手向けてくる。
GM :オールドギースはバランタインの瓶と一緒に、カードキー、
それと数字のメモをカウンターに乗せる。
レイファ:なに?
GM :「そのコートの隠しポケットに入っていたものじゃ。
ロニーがおまえさんを指名してそのコートを託したと
いうことは、それもおまえさんへの形見分けじゃろう」
レイファ:何の鍵だかわかる?
GM :「ロニーが使っていたセイフハウスの鍵じゃ。
ワシが手配したから知っておる」
レイファ:行ってみるわ。場所を教えて。
GM :「トレンチ・ストリートB226。
あまり治安のいい場所じゃない。気をつけろよ」
レイファ:遠いの?
そんなに治安が悪いんじゃ、バスも通ってなさそうね。
いいわ、ホークを呼ぶ。
GM :留守応答になっている。
「トレジャーハント*のため、ネオ=アップルを離れます」
どうやら、シティの外に稼ぎに行ったようだ。
レイファ:仕方ないわね。エンジュじゃ運転できないし…
エンジュ:無人タクシーのシステムジャックとかできないことも
ないけどね。
GM :オールドギースが「やれやれ。ついて来い」と奥の
エレベータに向かいます。
レイファ:行くよ。エンジュも来るでしょ?
エンジュ:行っていいの? ぱたぱたぱた…
GM :では、いつもとは別のエレベータに乗って、地下の巨大な
ガレージへ。戦闘車両だのカーゴだのいろんな車がある。
で、オールドギースが示したのは黒いバギーだ。
もっとも、滑らかなフォルムを持ち、戦闘バギーには
見えない。
「これを使え」
エンジュ:MAX−7だ♪ プレミア付きのすごい車なんだよ〜
レイファ:あんたが車に興味あるなんて知らなかったわ。
エンジュ:あれ? レイファも前に乗っけてもらってたじゃない。
レイファ:そうだっけ?
エンジュ:これ、シリウスの車だよねえ。
GM :「今はな」
エンジュ:そうだ。オールドギースはシリウスとジョーカーがどこに
いるか知ってる?
GM :いや。シリウスはここに車を預けにきて、「今回の作戦に
車は要らないから、その間にオーバーホールしておいて
くれ」と言ったんだそうだ。
レイファ:持ち主に断りなく借りていいの?
GM :「テスト走行じゃ」
レイファ:じゃ、遠慮なく。
GM :レイファが車に近付こうとすると、声がする。
「オールドギース。彼らは誰だ?」
レイファ:誰? 振り向くよ。
GM :いや、声を発したのは車だ。
エンジュ:K.I.T.T*だあ♪
GM :「わたしは《グレイウルフ》。この車を管理するAIだ」
オールドギースはグレイウルフに君たちふたりを紹介し、
今日一日、付き合ってくれるよう頼む。
「では、限定マスターの権利を付与しよう。
中に乗り込み、指紋・声紋・網膜パターンの登録を
行うように」
レイファ:乗るわ。AI搭載の車ってことは運転しなくてもいいのね?
GM :「目的地を指示せよ」
レイファ:あ、でも、わたし、自分で運転したくなった。
この車なら、事故回避機能あるでしょ。
GM :「当然だ」
レイファ:ならハンドル握らせてもらうわ。
シリウスには内緒にしておいてね♪
GM :「よかろう」
エンジュ:僕はどうしようかなぁ…MAX−7には乗ってみたいけど、
レイファはグレンディのとこならひとりで行きたいんじゃ
ない?
GM :オールドギースが「ワシはこの後、忙しいんじゃ。行って
こんか」と押し出す。
レイファ:来ても構わないわよ。
ただし、自分の身は自分で守りなさいね。
GM :「車の中にいれば問題はない」
レイファ:あ、そう。行くよ。
ええと、まずはわたしの家に寄りたいの。
アンバーゾーン*だっていうからSMGだけじゃ物足りない。
武器を積み込むわ。
ええと、サイボーグライフルと手榴弾。
ATライフルはさすがに凶悪だから置いてくわ。
GM :どっちもたいして変わらんわ*。
レイファ:じゃ、教えられた住所に向かう。
ちょっと飛ばしてみようかしらね〜♪
GM :「シリウスもよく無茶をするが、おまえも同じなのか?」
グレイウルフは『分別ある大人』の声でしゃべる。
その口調で告げられると、データを分析したに過ぎない
ものが人生経験に基づいた助言のように聞こえる。
B級以上のAIには疑似人格を設定することが可能なんだ。
ホークだったら可愛い女の子に設定するんだろうな。
レイファ:きっとそうね。
じゃ、グレイウルフに言っとくけど、わたしは操縦に関して
は素人だから、一応、あなたのアドバイスに従うわよ。
GM :「その判断を支持する。
シリウスにも見習ってほしい態度だ」
グレイウルフは主人のことを結構、こき下ろす。
「無謀だ」とか「人の話を聞かない」とか。
エンジュ:AIが愚痴言ってる(笑)
だけどさ、グレイウルフ、あなたはシリウスが運転している
とき、自分の意志でブレーキをかけたことはないでしょう。
GM :「それはないな」
エンジュ:その事実を分析すれば、あなたの底辺にあるものは明白だと
思うな。
GM :「…むろん、わたしはシリウスを信頼している」
レイファ:もう少し飛ばしても大丈夫かしらね♪
エンジュ:シートベルトしておきます(笑)
GM :そんなことを話しているうちに、目的地についたよ。
ビルの前。
レイファ:この車なら放っといても大丈夫そうね。
GM :「わたしを盗もうとすれば、その者は教訓を得るだろう」
レイファ:じゃあ行くわ。あまり派手なことしちゃダメよ。
GM :「同じことを君にも忠告しておこう」
レイファ:はは。ま、聞いておくわ。エンンジュもついておいで。
GM :寂れた町角のビルだ。
スクワッター*の姿はあるが、サイボーグライフル抱えた
君にちょっかいをかけてくる奴はいない(笑)。
で、ビルの中のエレベータに乗り込み、オールドギースに
教えられた暗証番号を打ち込むと、エレベータは地下へ
向かった。
階層表示はない。
下層に到着してエレベータを降りると、ドアがある。
「入室を希望するならば、認識チェックにご協力を
お願いします」
扉の横には指紋確認のために指を入れるスリット、
網膜パターンを確認するための装置がある。
エンジュ:僕らより前に誰か来た形跡はある?
レイファ:そんなの気にしない*。指示通りにするよ。
GM :「オフィス・ジョーカー専属ハスラー、リー・レイファ
ですね?」
レイファ:そうよ。
GM :「声紋一致。入室を許可します」
エンジュ:僕がくっついて入っても大丈夫かな?
GM :問題ない*。
レイファ:じゃあ、中に入るよ。
GM :そこは質素な部屋だ。
簡易ベッドやデスクはあるが、ここで日常生活を送って
いたという感じではない。
カーペットも壁面を飾るポスターもない。
エンジュ:端末ないかな、端末端末♪
GM :デスクの上に薄型のモニターがある。
カードキーを差し込むスリットがついている。
エンジュ:弄りたい。
レイファ:待ちな、と襟首を掴んで引き戻す。
これがそのキーでしょ。差し込む。
GM :「パスコード、プリーズ」
レイファ:メモにあった数字を打ち込むよ。
GM :すると、画面に画像が出る。
4 子供たちへ
GM :ハンディカメラで撮ったような映像だ。
映っているのはこの部屋。
簡易ベッドに腰掛けたグレンディがこちらを向いている。
腹に血の滲んだ包帯を巻き、脂汗を浮かべている。
どうやら、オールドギースに撃たれた直後*の映像のようだ。
レイファ:……
GM :「娘よ…」
グレンディは画面越しに君を見つめて言う。
「…おれはとうとう、面と向かっておまえを娘と呼ぶことが
できなかったな。
これが、おまえがおれの姿を見る最後の機会だろう。
最後にこう呼びかけることを許してほしい」
レイファ:……
GM :「この映像をおまえが見ているということは、おれはもう
この世にいないだろう。
おれの望む形で、息子と呼んだ少年…いや、男の手に
かかって死ぬことをおれは今、望んでいる。
…娘よ。おまえには辛い思いをさせたはずだ。
だが、おまえならそれを乗り越えてくれるな?」
画面の中のグレンディはゆっくりと息を吐く。
そしてまた続けた。
「おれはおまえに遺産を渡そうと思う。ひとつは品物だ」
プリンターからプラスチックペーパーが吐き出される。
そこには住所と思われるものが2、3書いてある。
「ネオ=アップルにおけるおれのセイフハウスをおまえに
譲る。
セイフハウスにはいくらか武器・弾薬の備蓄がある。
おまえがネオ=アップルに居続けるなら、すぐにも
要り用になるだろう」
備蓄品のデータは後でメモして渡すから、とりあえず先に
進めるぞ。
グレンディはそこで決心を確かめるように少しの間を挟む。
「もうひとつの遺産は記憶だ。
それは、おれが息子と呼ぶ男に殺されねばならない理由で
あり、息子が闇の世界に生きることになった事件について
の証言だ。
これは正しくは遺産と呼ばれるべきものではないかも
しれん。
《ケルベロス》について知れば、おまえは今までよりも
なお一層、やつらの領域に近づくことになるだろう。
それは今とは比較にならないほどの命の危険を意味する。
今のおまえの自覚では、戦場を生き抜けたとしても
暗殺者からは逃れられまい」
そしてグレンディはまた少し考えるような表情をする。
「もし、おまえが過去を知ることを望まないなら、カード
キーを抜いて立ち去りなさい。
この部屋には二度と戻れないが、他のセイフハウスに
ある品を遺産として譲ることにする。
おれはおまえの幸せを祈っている」
レイファ:エンジュ、あんたは外へ出ていな。
エンジュ:…車で待ってるね*。
GM :では、しばらくの無音状態の後、ふたたびグレンディが
しゃべり出す。
「そこにいるんだな、娘よ。
おれはこうなることを望んでいたようにも、覚悟していた
ようにもそして、期待を込めて確信していたようにも
思う。
しばらく、昔話につきあってほしい」
そして、グレンディは居住まいを正し、語りはじめる。
「7年前の10月19日夜半。
ネオ=アップルのアンバーゾーン《バンハイマ・
ストリート》で略奪が起きているという通報があった。
グローバル・ガード*はスペシャルパンツァーポリス
(特殊武装機動警察)《ケルベロス》をその鎮圧に
向かわせた。
《ケルベロス》はダウンタウンの住民も市民同様に護ろう
という活動を続けていた有志の警官で結成された部隊で、
その日が初出動だった。
都市内政を司るGMTにしてみれば、ダウンタウン保護
政策など無駄な投資としか思えなかっただろう。
だが、世論に後押しされる形で、有志で始められた
パトロール隊はグローバル・ガードの下に組織化され、
正規に運営されることに決まった。
その矢先だった。
作戦名「シリウス」と呼ばれるその出動でバンデット
《ブラウン・ベレー》*と交戦した《ケルベロス》は
壊滅した。
バンデットによる暴動すら鎮圧できないという無残な結果
を突き付けられて、ダウンタウンの保護政策は白紙に
戻った。
公に知られているのはそこまでだ。
だが、それだけが事実ではない」
レイファ:……
GM :「《ケルベロス》には生き残りがいた。
当時19歳だった新人警官デューク・レッドフォード。
おまえたちがシリウスと呼び、おれが息子と呼ぶ若者だ*。
《ケルベロス》壊滅の後、病院に収容された彼は暗殺者に
命を狙われた。
彼らを抹殺しようとした者たちにとって、《ケルベロス》
はただひとりの生き残りも許してはならないものだった
のだ」
レイファ:…19歳のシリウス。あまり想像できないわね。
GM :うるさい(笑)
「《ケルベロス》は優秀な部隊だった。
軍隊並の武装を所持していようと《ブラウン・ベレー》
ごときがまっとうにぶつかって勝てる相手ではなかった」
レイファ:裏切りがあったのね*。
GM :「実際に《ケルベロス》の壊滅をお膳立てしたのは彼らに
出動を命じたグロバール・ガードであり、その親会社で
あるGMT、そしてこの街の政府そのものだったのだ。
《ケルベロス》抹殺の真の目的はダウンタウン保護政策の
撤回にあったわけではない。
《ケルベロス》がメガ=シティ体制の影から掘り起こそう
としたもの−−そのすべては再び闇に葬り去られねば
ならないものと判断された。
それが実際に何なのかまでは、今のおれにも掴めて
いない。
だが、「それ」が奴らを心底、焦らせたことだけは
確かだ。
シンクレアとGMTはバイラテラルオペレーション
(共同戦線)を組み、旧GMT軍の反徒からなる
《ブラウン・ベレー》と《ステイツ・コネクション》の
戦闘部隊、そして当時、GMTイリーガル*だったおれが
《ケルベロス》襲撃を実行に移した。
おれはデュークの大切な仲間を殺し、あの若者たちが
未来に抱いていた希望を打ち砕いた。
おれも、彼の仇のひとりだ」
レイファ:じいさん…
GM :「暗殺者の手を逃れたデュークはオールドギースを頼った。
家族もなく、仲間を殺され、裏切られたデュークには、
そこに身を寄せる他はなかったのだろう。
だが、同様におれとオールドギースは旧知の仲だった
のだ。
おれはあの晩、あのビルの一室にいて、監視カメラ越しに
殺すべき標的を見ていた。
満身創痍の少年はオールドギースにネオ=アップル脱出の
手助けを頼んだ。
逃げようとしたのではない。
ハンターになるんだと言った。
力をつけて、この街に戻ってくると。
強くならなければならないんだと----
あのときのあいつの眸が…おれの中の何かを変えた。
おれは自分でもわからない衝動に突き動かされて
GMTイリーガルを抜け、古巣であるユニオンに戻ると、
教官としてデュークの指導にあたった。
おれの持つ技術のすべてを叩き込み、いつの日にか仇と
しておれ自身を殺させるために*」
グレンディは傷が痛むのか、いくらか顔を歪める。
「修了訓練として彼をアラスカの荒野に送り込んだ後*、
おれはネオ=アップルに戻り、再びGMTイリーガルと
して雇われる身となった。
一介の実働犯だった頃には知らされていなかった
《ケルベロス》事件の陰謀を突き止めるために」
それが君と初めて会った頃*のグレンディだ。
レイファ:ああ…
GM :「GMTイリーガルとして、そしてフェイク・シリウスと
して奴らと関わり、掴んだことを今、おまえに伝えよう*。
《ケルベロス》壊滅のバイラテラルオペレーションの
総指揮を取った男は現在、《ステイツ・コネクション》の
ネオ=アップル支部最高指揮官の地位にいる。
《ジャックド・エッジ》と呼ばれる男だ」
レイファ:ジャック・ド・エッジ? フランスの貴族?
GM :いや、コードネームが《ジャックド・エッジ》。
大型のフォールディングナイフの刃、という意味だ。
いわば《鋭利な刃物》だよ。
「アンナ・ステファンなどはその男の下についているに
過ぎない。
アンナを倒しても、ジャックド・エッジはすぐに次の
手を打つだろう。
奴は今、この都市で大掛かりなオペレーションに着手
している」
グレンディはそこで話を区切る。
「娘よ、おまえに何をしてほしいとは言わん。
息子を助けてやってくれとも頼めんだろう。
ただ、息子を…あの男の闘いを見守ってやってくれ。
もしあの男が志半ばで死ぬなら、その後を継げとは
言わん。
ただ、シリウスという名を選んだ男がいたこと、
その闘いを記憶してやってくれ」
レイファ:……
GM :「長くなったが娘よ、幸せに命をまっとうしてくれ。
おれは地獄に落ちるだろう。だが、地獄の番犬に、
おまえの下へ死神が行かぬよう話をしよう。
あの世で会うこともあるまい。
ただ、おまえがおまえの望むように生き、幸せである
ことを願っている」
そして、画面は暗転し、もはや何も映らなくなった。
カードキーを抜いて、この部屋を出るように。
5 死者との語らい
レイファ:…とりあえず、地上へ出るわ。
エンジュは無事かしら?
GM :車の中にいる。
グレイウルフにコアストライク*でも仕掛けないかぎり、
無事でいるだろう。
エンジュ:あ、それは思いつかなかったな(笑)*
レイファ:エンジュ。わたし、《ワイルド・ギース》に戻る前に
寄りたいところがあるから、先に戻ってなさい。
エンジュ:ええっ?! こんなところに放り出してかないでよ。
レイファ:ああ、そうか。じゃあいいや、乗りなさい。
GM :「どこへ向かう?」
レイファ:市営墓地。
GM :ではすみやかに移動した。
エンジュ:お墓? 誰のお墓?
GM :この前、グレンディを埋葬しに来ただろ?
エンジュ:ううん。ジョーカーがなんか可哀想だったから*。
GM :ああ、じゃあエンジュは初めてか。
海を見渡す寂れた丘に墓標が並んでいる。
レイファにくっついてゆくと、先客がいる。
レイファ:シリウス?
GM :そうだ。
返り血を浴びたオートプロテクター姿のまま、
《ケルベロス》の墓標の前に立っている。
エンジュ:《ケルベロス》?
GM :レイファに聞けばわかる。
グレンディは《ケルベロス》の隣に埋葬したんだ。
エンジュ:ジョーカーは?
GM :いないよ。シリウスひとりきりだ。
エンジュ:その辺に今し方埋めたような跡はないよね(笑)?*
GM :ないわ。
レイファ:オールドギースに用意してもらった酒をじいさんの墓に
手向ける。
で、シリウスに言うよ。
あんたの首に賞金がかかったこと、知ってる?
GM :「いや。聞いてない」
エンジュ:…ってことは、しばらくオールドギースと会ってないね。
ジョーカーとも一緒じゃなかったのか。
レイファ:墓参りを済ませたら帰ろう。
GM :では、パーキングにちらと目をやったシリウスは
「なぜMAX−7がここに」とつぶやく。
エンジュ:あ、内緒だったのに(笑)
レイファ:ちょっと借りたのよ。ぶつけてないから大丈夫だって。
これから《ワイルド・ギース》に帰るんだけど、乗ってく?
わたしが運転してあげる。
GM :MAX−7は2シーターだぞ?
「一端、セイフハウスに戻って身支度を整えるから」と
シリウスは断る。
ここには作戦終了の報告に来ただけのようだ*。
エンジュ:ねえ、ジョーカー、どこにいるの?
GM :その名を聞くと、シリウスは押し殺した苛立ちを見せて
「奴のことなど知るか」と答える。
エンジュ:ええ〜、ジョーカーがシリウス置いてどっか行っちゃう
なんて変じゃない?*
GM :「奴がどこで何をしようと俺には関係ない」
レイファ:ジョーカーとシリウスの関係ってのもなんか妙なのよね。
単なるブローカーとハンターの付きあいじゃないのは
伝わってくるんだけど。
まあ、いいわ。帰るよ、エンジュ。
エンジュ:あ、帰りは僕が運転席に座りた〜い♪*
レイファ:なんか不安だけど、ヤバくなったら勝手に自動操縦に
切り替わるからいいか。
GM :では、問題なくクライスラーズ・ビルについた。
MAX−7は自分でシリウスのところに戻ってゆく。
エンジュ:ありがと〜、またね〜
6 小さな巨人
GM :では《ワイルド・ギース》へ。
エレベータの暗証番号はオールドギースから教えて
もらった*。
レイファ:あら、じーさん、いいの?
GM :「悪用なんぞしたらワシより早くあの世に行くことに
なるぞ」
レイファ:はいはい。じゃ、カウンターに付いて、と。
ちょっとじーさんに聞きたいことがあるのよ。
GM :「なんじゃ」
レイファ:7年前にここで何があったの。
GM :いきなり聞くかい。
レイファ:前から言ってるでしょ。
わたしは直球勝負しかできないのよ。
GM :ううむ。オールドギースはいつでも無愛想なポーカー
フェイスなんだが、グラスを磨く手が一瞬、止まった。
「やはり、その話が出たか」
そしてレイファを見る。
「お嬢ちゃんが使っていた情報屋は死んだぞ。
口に石を詰められて路地に転がされとったわ」*
レイファ:余計なことをしゃべるな、ってことかしら。
儲け損ねたわね、彼。
でも、じーさんは7年前の事件のことを知ってて、なおかつ
ずっとここにいて無事なんでしょ? タダ者じゃないわね。
こんな客の少ないバーが本業とも思えないし。
エンジュ:あれ? レイファはまだ知らないんだ?
僕が理由もなく酒場に入り浸るわけないでしょ。
レイファ:ジョーカーに捨てられちゃったから、代わりにまとわり
ついてるだけじゃないの?
エンジュ:…う。即座に否定できないのも悲しいなぁ(笑)
あのね、この店で売ってるのは酒だけじゃないんだよ。
レイファ:ブローカーなの?
GM :まあ、武器の手配もするが、メインに扱っているのは
情報だな。
仕事の斡旋はしてないよ。
レイファ:あんた、なんで知ってんの?
エンジュ:そりゃ、これまでいろいろと(笑)*
ネットの住人の間じゃ超有名人なんだ。
レイファ:あ、そう。じゃ、じーさん。情報屋としてのあなたに、
7年前の事件について依頼していい?
GM :「高くつくぞ」
レイファ:金がない(笑)
代わりに仕事を受けるとか、そーいう方法じゃダメ?
この店で皿洗いでもいいけどさ(笑)
エンジュ:親に借金したら?
レイファ:絶対イヤ。
GM :正確には金の問題ではなくてね。
オールドギースは職人気質の情報屋だから、彼に動いて
もらうには、彼にやる気を起こさせる必要がある。
依頼人や仕事を選り好みするんだよ。
別に、レイファを信頼していないというわけではないん
だが、《ケルベロス》事件については、すでに別の人間から
大掛かりな調査依頼を受けているからね。
レイファ:調べ出したことをひとりに渡すのもふたりに渡すのも同じ
だけど、職人としては納得いかないわけね?
エンジュ:グレンディに「詳しいことはオールドギースから聞け」って
言われてきたんじゃないの?
レイファ:ううん、それは違うんだけど。
よし、オールドギースにはこう言いましょう。
わたしはじいさんの話を聞いたのよ、と。
これだけで効果的だと思うわ。
GM :そうだなぁ。
「おまえさんはそれを聞いて何をしたいんじゃ?」
レイファ:まずは仇討ち。アンナを追うわ。
GM :「7年前の話を聞いたのなら、シリウスもまた復讐のために
動いていることは知っておるな?
だが、あいつの標的はアンナではない。
その相手をチェスにおける《キング》に譬えるなら、
アンナは《ナイト》だ。
おまえさんがゲームに参加することによって、盤面が
どう変化するか、ワシにも読み切れん。
《ナイト》を捕るタイミングを間違えると、チェック
メイトの機会を逃す恐れがある。
ワシはそれを懸念しとる」
レイファ:それなら、シリウスに伝えてちょうだい。
アンナを殺るときはわたしに知らせて、って。
GM :オールドギースは首を振る。
レイファ:ダメなの?
GM :いや、君の心情はオールドギースも理解しているんだが、
戦場でのことだからね、間違いなく君にアンナを譲ると
確約することはできないそうだ。
「だがな、逆にお嬢ちゃんが独自のネットワークを使って、
アンナを追い詰めて倒す分にはワシもシリウスも文句は
言わん。
たとえ、それが最悪のタイミングであったとしてもだ」
レイファ:それはこっちも同じね。シリウスの動きがアンナを殺す
邪魔になったとしても仕方ないわ。
エンジュ:でも、レイファ、危なくない?
情報屋、殺されちゃったし。
レイファ:うーん、じーさんに頼むにしろ、自分でやるにしろ金が
ないのよねえ(笑)
稼ごうにもハンターの仕事ないし。
GM :選り好みしなければ仕事がないわけじゃない。
ネオ=アップルを拠点にしていたハンターたちも大多数は
他のシティに移動したり、ホークのように荒野にトレジャー
ハントに出掛けている。
レイファ:ホークと同じことをするのはイヤ(笑)
GM :そういや、ホークはつい先ほど帰ってきたらしいよ。
レイファ:あ、じゃあ、彼も呼ぼう。ピッピと電話。
《ワイルド・ギース》で待ってるからね、とだけ言って
用件は伝えない(笑) でも彼なら来るはず。
GM :「な、何事?!」と泡食って駆けつけてくるよ。
レイファ:けっこうあちこち動いたから、そろそろいい時間よね。
ホークも帰って来たことだし、ここでご飯を食べよう。
じーさん、夕飯作ってよ。
GM :三人か。$200だな。
レイファ:ま、いいわ。出すよ。
エンジュ:おごってくれるの♪
GM :出された食事は合成物とはいえ、質のいい食材を使って
いる。
$200では材料費にもならないだろうと見当がつく。
レイファ:いただきます。ちょっとお酒ももらうわ。
ところでさ、じーさんはジョーカーが今、何やってるか
知ってる?
エンジュ:ぴく。
GM :「しばらくネオ=アップルを離れると言っておったな」
レイファ:あ、そう。もうひとつ聞くわ。
昔、シリウスとジョーカーの間で何があったの?
GM :ううむ…今度はそこか。要所を突いてくるなあ、君は。
「ンなことは当人に聞け」と言いたいところだが…
エンジュ:当人、行方不明〜(笑)
レイファ:ゲーム参加人数が多いとなかなか突っ込んだこと
聞けないんだもん。
今日はいい機会だから、いろいろと聞いとくわ(笑)
7 若き狼たち
GM :うーん。 レイファがその質問を口にすると、場が静まる。
「何故、そんなことを知りたがるんじゃ?」
レイファ:だってどう考えたって変よ、あのふたり。
エンジュ:どんな風に?
レイファ:少なくともわたしが見る限り、ジョーカーからシリウスに
対する感情はどちらかと言えば好意的だと思う。
仕事を託す相手として信頼しているだろうし、むしろ、
どこか譲歩しているところがあるような気がする。
でも、シリウスからすると、ジョーカーの、ブローカーと
しての腕に対する不満はないんだけど、ジョーカー個人への
信頼は皆無なんじゃないかと思うのよ。
GM :皆無…(笑)
レイファ:シリウスは元から愛想のいい男じゃないけど、ジョーカーに
みせるような態度は、少なくともわたしたちに対しては
取らないわよ。
GM :そのとおりだろう。
レイファ:あれは普通のブローカーとハンターの関係とはどうしても
違うと思うのよ。
わたしたちとジョーカーの関係も変っていうか、かなり
馴れ合ってる気はするけどさ(笑)
GM :君らが遠慮しなさすぎるだけだ。
エンジュ:え? 普通のハンターってブローカーに遠慮するもんなの?
GM :用もないのにオフィスに押しかけて居座ったりはせん。
レイファ:ま、わたしらのことは置いといて。
じーさん、どう思う?
シリウスは仕事絡みでさえなければジョーカーと関わりたく
ない−−
で逆に、ジョーカーの方はシリウスに負い目があって
気にかけているような感じがするんだけど。
エンジュ:負い目って?
レイファ:そうね。昔、ジョーカーが仕事の最中にシリウスの大切な
人、例えば弟−−仮にいたとしてだけど−−を殺しちゃった
とか。
状況からして避け難い死であったことは理解できても、
シリウスにとっては割り切れないものが残るでしょ。
そんな感じ。
あとは、ふたりに共通で関係する女の子がいるというのも
ありかな。
GM :う…来るなあ。
エンジュ:当ってるみたい。続けて続けて♪
レイファ:立場的にはジョーカーが弱いよね。でも、シリウスがそれを
逆手に取ってジョーカーを脅してる様子はない。
エンジュ:じゃあ、なんでシリウスはジョーカーのとこに来るの?
マホロバ・ストリートにだってブローカーは何人もいる
んだから、気が合わなかったら別の人と契約すればいい
じゃない。
レイファ:だから、何かあるんでしょ。
シリウスはプライベートでは極力ジョーカーと離れていたい
んだけど、ビジネスではジョーカーと組まざるを得ない
事情がある−−
この読みってどう、とオールドギースに聞くよ。
GM :またこっちに振るかい(笑)
レイファ:じーさん、昔からシリウスのこと知ってるんでしょ?
シリウスって、自分が痛い目にあうより、大切にしている人
を失う方が堪えると思うのよ。
それを死なせたのがジョーカーなんじゃないの?
エンジュ:グレンディにどんな話を聞いたの?
GM :ジョーカーのことは一言も言及しておらん。
エンジュ:内容を教えてもらってもいい?
プレイヤー的にでもいいけど*。
レイファ:ん、いいよ。
(GMはグレンディからの遺言を再読する)
エンジュ:確かに、ジョーカー出てきてないね。
レイファ:でもさ、常々の態度を見てれば普通じゃないってことくらい
わかるでしょ?
そうね…一番最初におかしいと思ったのは、《ナイトメア》
から「金払え」って脅しが来て、ジョーカーが皆の分まで
払ってくれたときよ。
それに対してシリウスは「余計なことをするな」って
嫌悪感を露にしてた。
それでいて、後でなんだかんだと理由をつけてお金を振り
込んで来たってことは、彼はジョーカーに対していかなる
借りも作りたくないんじゃないか。
しかも、「金で返す」というやり方は、普通ならシリウスは
選ばないと思うのよ。
レイファがしたように仕事を引き受けるとか、別件で手助け
するとかして報いるのがシリウス本来のやり方だと思うの
よね。
金で返すというのは、ビジネスだけの関係、という主張だと
思うんだけど?
GM :いろいろ鋭すぎ(笑)
以後、あなたを敵に回さないよう気をつけます。
レイファ:GMの趣向ってわたしと似てんだもん。
なんかわかるよ(笑)
エンジュ:グレンディから聞いた話で、シリウスとジョーカーが
接触できる時期ってのは限られてくるよね?
7年前の《ケルベロス》壊滅の後すぐにシリウスはネオ=
アップルを離れてるんだし、帰ってきたのは…いつ?
GM :ほぼ1年前だ。
エンジュ:で、半年くらい前からは僕らと出会ってるでしょ*?
その頃にもうああだったとなると、シリウスとジョーカーが
仲違いしたのは…
GM :よし、わかった。レイファの推察に免じて、裏設定を
暴露してしまおう。
では、おいしい食事に酒が進んでホークは酔い潰れた。
エンジュもカウンターに打つ伏して寝ている。
エンジュ:えー。ジョーカーの話なら一生懸命、起きて聞いてる〜
GM :じゃあ、エンジュが寝たふりしてんのかは知らないが、
酒席も流れて今、グラスを傾けているのはレイファだけだ。
後片付けを始めたオールドギースが「あのときあいつが
座ったのもその席だった」とつぶやく。
エンジュ:「あのとき」と「あいつ」がわからない〜。
指示語は嫌いだ(笑)
GM :「あいつはまだ19の小僧だった…」とオールドギースは
語り出すんだが、すまん、データに関してはロールプレイで
なくしゃべらせてもらう。
シリウスの本名はデューク・レッドフォード、現在26歳。
父親は警察官。9歳のときに母親は病死しており、15歳で
父親が殉職。
天涯孤独の身となった彼は、隣家のローランド家および、
逆隣のイチノセ家に養育されることになった。
ジュニアハイスクール卒業後、デュークは警察予備課程に
進み、ハイスクール卒業と同時にポリスアカデミーに
入学する。
エンジュ:飛び級してなきゃ18歳*?
GM :18だ。
ところで、隣家のローランド家・イチノセ家にもそれぞれ
デュークと同じ年の娘・息子がおり、彼らもポリス
アカデミーに進学している。
さて、この姓に聞き覚えは?
エンジュ:僕は思い出した♪ でもレイファはどうかな〜(笑)
レイファ:ローランドとイチノセ?
GM :どっちもゲーム中に2回は言及してるぞ。
レイファ:すっかり記憶から抜け落ちてるわ。
エンジュ:洞察力抜群のくせに記憶力はないよね。
GM :仕方ないな、エンジュ、教えてやりなさい。
エンジュ:はい、僕のデータバンク公開。
イチノセはCBI長官、リチャード・イチノセ。
ローランドはSWAT《バルキリー・チーム》の隊長
ヨーコ・ローランド少尉。
レイファ:ああ、事件をもみ消してくれた人か*!
え、そんなに若いの?
GM :リチャードはロマンス・グレイだと言っただろうが。
デュークの幼なじみなのはリチャードの息子だ。
で、この息子はポリスアカデミーに士官候補生として
入学している。
卒業後はエリートコースに進むことに−−と、彼の話は
置いといて、デュークなんだが、このポリスアカデミー
時代にひとりの若手刑事と出会い、その生き方に影響を
受ける。
彼の名はショーン・ケネディ。
このショーンは、有志の警官によるダウンタウンの
パトロール運動を展開した人間だ。
それ以前は、ダウンタウンでいかに凶悪な犯罪が
起ころうと、支配企業の不利益にならない限り、あるいは
犯人を逮捕することで支配企業の利益にならない限り、
警察が動くことはなかった。
ショーンがこの運動を提唱した当時は誰もが否定的だった。
「地獄に番犬を置いて何の役に立つ」と。
何事にもポジティブなショーンは「それはいい。我々は
以後、《地獄の番犬》=ケルベロスと名乗ろう」と
笑いながら応えた。
エンジュ:《ケルベロス》だ!
GM :デュークはショーンの《ケルベロス》運動に賛同し、ポリス
アカデミーを飛び級扱いで卒業*すると、ショーンの所属する
CBIに配属希望を出して受理された。
そこでデュークは《ケルベロス》運動に協力する仲間たちと
知り合い、また、オールドギースとも面識を得る。
エンジュ:7年前から、この店あったんだ?
GM :もっと前からあるよ。
ショーンは警官になる前はハスラーだったんだ。
それというのも、彼はもともと市民ではなく、ダウンタウン
の出身だから、警官になろうにも身分保証がない。
ハンターになってランクを上げればそれが身分保証の代わり
になるんだ。
もっとも、彼はそれが目的でハンターになったんではなく、
当初からダウンタウンの治安を回復しようという意図の下で
動いていた。
しかし、一介のハンターとしての活動ではダウンタウン全域
を護ることはできない。そこで、彼は警察という組織を
利用してそれを実現させようとした。
オールドギースとショーンの付き合いはハンター時代から
で、ショーンが警官になってからも続いていた。
エンジュ:ここで飲み会をやった?
GM :そういうこともあった。
「さすがにあのときは店が手狭に思えたわい。
ショーンの傍らにデューク、サージ、アキラ…
そして、あの頃はまだユーリも彼らの仲間だった」
ユーリ・イチノセ。それがジョーカーの本名だ。
レイファ:長官の息子なの?!
GM :当人はこれまで「個人的な知り合いです」としか言わな
かったけどね*。
デュークとユーリは親友で、たいていツルんで行動していた
から、ここにも出入りしていた。
エンジュ:未成年が飲み会。警官なのに〜
GM :うるさいな(笑)
やがて、この《ケルベロス》運動は、とあるネット
キャスターによってメジャーネットで放映され、一気に
注目を集めることになる。
ちなみに、そのネットキャスターとも君たちは顔見知りの
はずだが?
レイファ:あ! サン=アンジェルスで会った人。
GM :名前は覚えてなかったか(笑)
INNのリック・グリフィンだ*。
《ケルベロス》運動はブラックマーケットを利用する
市民*からも「それで治安がよくなるなら」と好意的に
受け止められた。
やがて、世論に後押しされる形でパトロール部隊が正式に
発足することになる。
この特殊武装機動隊はそれまでの経緯から《ケルベロス》と
名付けられた。
デュークは喜んでその第一期隊員募集に応じる。
ユーリも同じように参加を希望したが、そこで父親から
「やめておきなさい」と勧告された。
「おまえはまだ学生の身だ。アカデミーを卒業し、彼らを
実質面でサポートできる地位についてから、参加すべき
だろう」と。
ユーリは父親の説得を受け入れて入隊希望を取り下げる。
後はグレンディが語った通りだ。
初出動で《ケルベロス》は壊滅し、デュークただひとりが
生き残った*。
レイファ:ショーンも死んじゃったの?
GM :銃撃戦の中、シリウスを護ってね。
レイファ:う〜ん。
GM :で、《ケルベロス》を罠にかけたのはGMTとシンクレア
財団、および《ナイトメア》だ。
当時からすでにCBI長官であったリチャードは陰謀を
察知できる立場にいる。
つまり、陰謀そのものには加担していなかったにせよ、
《ケルベロス》に加わった者は殺されるという雰囲気は
感じていたから、息子を行かせなかったんだ。
ただひとり生き延びてそれを知ったデュークはユーリと
訣別した*。
エンジュ:でもさ、その状況を聞いた限りだと、ジョーカーは何も
知らなかったんでしょ?
GM :確かに、ジョーカー自身は《ケルベロス》が潰されるのを
知ってて抜けたわけじゃない。
ただ、結果的に自分の父親が姑息な手段で自分だけを
助けたのだという負い目を感じている。
かと言って、父親が苦慮の末に下した決断だということも
わかっているから、父親を責めることもしない。
レイファ:うん、まあ、わかるな、その気持ちは。
GM :だが、仲間たちが裏切りにあって殺されるのを目の当たりに
したシリウスとしては、そこで手を引いたジョーカーを
許すことができないでいる。
親友だったからこそ、こいつだけは違うと思っていたのに、
という印象が強いんだろうな。
ふたりの過去はそんなところだ。
で、生き残ったシリウスはアンカレッジ*にあるユニオンの
特殊訓練施設でグレンディに師事し、戦闘技術を身につけて
この街に帰ってきた。
《ケルベロス》が潰されなければならなかった真の理由を
突き止め、14人の仲間の復讐を遂げるために。
シリウスというコードネームは《ケルベロス》に下った
最初で最後の作戦名に由来している。
エンジュ:うわぁ。「俺はまだ《ケルベロス》として作戦続行中だぞ」
って?
レイファ:関係者には一目瞭然なわけね。
GM :その通り。
ちなみにジョーカーというコードネームは、彼がポリス
アカデミーにいた時分のアダ名だそうだ。
どんな難題でも彼が出てくれば解決する《切り札》だって
ね。
エンジュ:…ねえ、レイファ。ジョーカーは帰ってきたシリウスに
対して、どうしようとしてるんだろう?
それが分かれば居場所がわかるかもしれない。
レイファ:シリウスの復讐の手助けをするとなると、そのうち、自分の
父親を殺させることになるかもしれないのか。複雑だねえ。
でもわたしに聞くよりもさ、技術の方向性ではあんたの方が
ジョーカーに近いんだから、あんたがジョーカーの立場
だったらどうするか考えてみればいいじゃない。
エンジュ:うーん。
GM :まあ、話のついでに語ってしまおう。
《ケルベロス》壊滅後、デュークがハスラーになったことは
ジョーカーも知っていた。
で、彼としては、いつか彼が戻ってきたらその仕事を助け
ようと思ってブローカーという生き方を選んでいる。
エンジュ:警官にはならなかったんだ。
GM :ならなかったということだね。
その点では、ジョーカーは父親の理想の息子ではいられ
なかったわけだ。
エンジュ:で、シリウスと契約して、また一緒にいようと思ってる?
GM :シリウスはノンサイバーに拘っているから、ハスラーと
いってもジャックインだけは絶対に不可能だ。
ジョーカーはそこを自分が補おうと決めた。
償い…というのとはまた違うな。
ジョーカーはシリウスが絶対に自分を許さないことを
知っている。
理屈じゃなく、感情的に無理だってことを。
死んだ人間は返って来ないんだ。
エンジュ:……
GM :ふたりがふたたび対等の関係を築くことができるのは、
自分の協力をシリウスが頼りにするようになったときだ、
ジョーカーはそう考えている。
だから償いじゃない。新しい絆を結ぶための努力だ。
それでジョーカーはネットライナー寄りの技術を習得して、
シリウスを待っていたわけだが、帰ってきたシリウスは
ジョーカーではなくオールドギースの所へ行ってしまった。
レイファ:6年待ってた男に振られちゃったのね(笑)
GM :ジョーカーはすぐにオールドギースに連絡を入れて、結局、
シリウスはジョーカーとハンター契約を結ぶことにはなった
んだが、その当初からジョーカーの予測は狂いっぱなしだ。
シリウスの復讐の手助けはしているが、あくまでも部分的な
実務処理を任されているにすぎない。
シリウスの相談役はもっぱらオールドギースがつとめて
いる。
確かに、オールドギースの方が経験も実績もあるんだが、
シリウスが彼を選んだ理由はそれだけじゃないんだな。
シリウスという男は、結果を出すことも必要だとわかって
いるが、それ以上にそのプロセスを重要だと考える。
復讐のためだからと言って信義を曲げるようなことは絶対に
できない。
逆に自分が納得できる作戦であれば、どれだけ危険であって
も構わない。ある意味、理想を追う男だ。
しかし、ジョーカーは優秀なだけに効率という面で物事を
処理しがちなところがある。
度々「あなたやオールドギースのやり方よりこちらの計画の
方が安全で、かつ成功率が高い」と主張してきたわけだが…
レイファ:シリウスは聞かないと。
GM :いや、採り上げないだけでなく、シリウスはあくまでも
自分の選んだ方法で、ジョーカーが弾き出したものより
優れた結果を出してきた。
その度にジョーカーは「まだ認めてもらえない」と悩む
ことになる。
レイファ:可哀想にねえ。
エンジュ:僕の知ってるジョーカーじゃないみたい…
GM :キャンペーンシナリオの裏で彼らは君たちとはまた別の
機軸で動いていたんだ。
それと知って見直せば意味をなすエピソードがいくつか
あるよ。よかったらリプレイを見直してご覧。
で、ジョーカーとしてはこの状況を打開すべく、現在、
独自に動いているはずだ。
「自分のやり方でシリウスを越えるにはどうすればいいか」
と。
レイファ:なるほどね。
…というようなことをオールドギースから滔々と聞かされた
のね。
んー、なんか新事実がたくさんあって情報整理が大変だぁ。
エンジュ:ねえ、レイファはどうするの?
レイファ:どうするって、シリウスとジョーカーの因縁がわかった
からといって、他人が口出すことじゃないでしょ?
彼らの関係が最終的にどうなろうと、わたしらがどうこう
していいもんじゃない。
それより、これまでの情報の中にちょっと気になる部分も
あったのよねぇ…自分の方にも関係してきそうな情報がさ。
エンジュ:なに? 知ってる名前でもあった?
レイファ:ま、あんたには関係ないことよ。
エンジュ:ふうん。
ねえ、オールドギースはジョーカーの居場所知ってるの?
GM :なんだ、エンジュも本格的に起き出してきたのか。
エンジュ:僕、ジョーカーに会いたいよ。
GM :会いたいからって会える状況じゃないしな。
エンジュ:ジョーカー、ひとりなのはダメだよ。
GM :うーむ。オールドギースにはジョーカーが何をしようとして
いるのか、予想ならついている。
で、その計画の進行段階によってジョーカーの居場所は
変わってくるそうだ。それくらいは教えといてやろう。
レイファ:ま、ジョーカーとはそのときが来たら会えると思うから
いいわ。
8 それぞれの生き方
レイファ:それより、懐も寂しいから、そろそろ何か仕事しよう
かしら?
エンジュ:アンナのことはいいの?
オールドギースは、レイファが独自に動く分には構わない
って言ったよ。
レイファ:うん、でもね、じいさん*にこうも言われたのよ。
「おまえの腕じゃまだダメだ」って。
だから、技能を上げるためにも仕事しないとね。
GM :いや、正確には技能が足りないんじゃない。
まあ、技能も高いに越したことはないが、君に足りないのは
「自覚」だ。
これから先、《ナイトメア》と戦ってゆくなら銃撃戦だけで
カタがつくはずもない。
いつどこで誰が何を仕掛けてくるか限定もできない“日常”
に足を突っ込むことになったとき、君が生き残れるかと
いうことをグレンディは最後まで心配していたわけだ。
エンジュ:レイファはアンナを倒したら《ナイトメア》との戦いから
手を引くつもり?
レイファ:アンナを倒すのはあくまでも当面の目標に過ぎないのよ。
その後、《ナイトメア》とどう関わってゆくかは、
そのときになってみないとわからないわ。
ただ、レイファの人生の目標は、この世界で、自分自身の
力で、生き抜いてゆくこと。
《ナイトメア》がいようといまいと関係なくね。
エンジュ:ハンターを辞めても構わない?
レイファ:そうだね。立身出世は別に望んでない。
それはきっと、レイファが底辺の生活をしたことがない
からね。
底辺で生まれた人間には成り上がることに対する飢えが
あると思うの。
だって、お金持ちになれば食べる物も買えて、暖かいベッド
で眠ることができるわけでしょ?
GM :そうだなぁ。
レイファ:レイファはそういうものを手に入れるために生きているわけ
じゃないのよ。
GM :きっと、レイファは誰の庇護も受けずに自分の力で立って
いたいということなんだろう。
それがわかっていたから、グレンディも「何をしてくれ」と
いう言い方ではなく「おまえの望む幸せを」と告げたわけ
だが。
レイファ:まあ具体的に今、何をするかって言ったら、じいさんの
仇討ちのために自分に足りないものを理解して、それを
克服することかな。
GM :酒を飲みながらする話だなあ(笑)。
オールドギースも片付けを終えた後はショットグラスで
チビチビやりながら君らの会話を聞いている。
レイファ:じゃ、同じ質問をエンジュにするわ。
あんたはここで何をしているの?
エンジュ:…ジョーカーを待ってる。
ここにいれば、ジョーカーは僕を見つけられる。
レイファ:でも、ジョーカーはもう帰ってこないかもしれないよ?
今頃、どこかで死んでるかも。
エンジュ:…僕、さっきレイファが言ってた底辺の生活ってして
きたよ。
でも、立身出世はいらない。
好きな人とずっと一緒にいたいだけなんだ。
レイファ:それはわかったよ。
で、その実現のためにあんたは何をするの?
エンジュ:僕……好きな人に褒めてもらうためなら頑張れるんだ。
僕がちゃんと仕事したら、ずっと僕のこと見ててくれる…
一緒にいられる。そうじゃなかったの?
僕のしてるコトが悪いコトでも一緒にいられるから、
仕事するの楽しいと思ってたよ……
でも、どうして僕のコト、置いてっちゃったの。
助けてあげたいのに、僕じゃダメなの…
って、なんかジョーカーの台詞みたい(笑)
GM :おまえも仕方ない奴だな(笑) 成長がないぞ。
レイファ:で、どうするつもり? あんたも失踪しちゃう?
エンジュ:うーん…
GM :その答えによっては、今後の展開を再考してやっても
いいぞ。
エンジュ:ひゃー。このまま語りますか(笑)?
GM :ま、そんな話をしているうちに随分と時間が過ぎた。
レイファ:リアルタイムの方でも2時間近くたったんじゃない?
GM :なんやかんやで3時間だよ。*
9 覆る日常
GM :この時間まで君たちに付き合っていたオールドギースだが、
突然、顔を上げ、「ちょっと席を外すぞ」と言って奥に
引っ込む。
で、しばらく戻ってこない。
レイファ:何かしら?
エンジュ:カウンターの裏側のモニターに何か知らせが入ったんだよ。
GM :ややたって戻ってきたオールドギースは口で説明するより
早いと思ったのか、テレビジョンをつける。
と、深夜にも関わらず緊急ニュースが流れる。
レイファ:なんだなんだ?
GM :『今夜半、ネオ=アップル市のパーフェクトセキュリティ
エリア/ファーストセキュリティエリア/セカンダリー
セキュリティエリアにおいて、ほぼ同時刻に爆破事件、
毒ガステロ等が多数発生』
エンジュ:パーフェクトまで?!
GM :『これにより、ネオ=アップルの都市機能は35%ダウン。
一部では連絡手段が遮断され、状況が一切不明となって
いるエリアもあります。
都市管理AI《アカデミア》による戒厳令が発動され
ました。
市民の皆さん。許可が出るまで外出は慎んでください』
第8話 END
次回予告
暴力の嵐が吹く。ネオ=アップルの、過酷な冬の訪れと共に。
背徳の街に曲折し、陰謀の闇に穢されても、膝を屈することだけはできはしない。一足先に自由になった、あの男に報いるためにも。
次回、『悪夢、再び』(BURNNING APPLE改題)
まだ、黒子は姿を見せない。
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