ガムテープ
 
 
 


「黄符ってガムテープみたい」
 そんなことをひめのんが言った。
「…えーと、ウンまぁ布の…テープだね?」
「明神さん、ズボンの破れ目ずっとこれで塞いでるよね」
「あー…陰魄にうけた攻撃ってね、こいつじゃないと塞げないだ」
「ホントに?」
「嘘ですスイマセン」
 信じる気など微塵もないと言わんばかりの視線に素直に謝る。何故だろう、最近とてもひめのんに対して下手に出ている気がする、俺。
「これって明神さんが自分で作ってるの?」
「まさかぁ。案内屋って日本中にたった一人俺だけなワケじゃないんだぜ?当然関係しているちっさい組織…とまではいかなくても、グループみたいなモンは存在するさ。ほとんど互いに関わり合いにはならないけどね」
「…じゃあ、明神さん以外にも案内屋さんって居るんだ」
「会ったことはないけど、居るって明神が言ってたよ」
 俺は明神以外に案内屋なんて存在は知らない。やはり霊に触れることが出来るという特異な体質の人間自体が希である上、基本的に案内屋は自分の縄張りを離れることは無い。この街にはたまたま明神という(本人曰くそれなりに)力のある案内屋が居たから、足の届く範囲は一応明神の縄張りということになっている。霊の間でも『うたかた荘の明神』が噂になっている通り、明神という名を俺が継いだことや、以前の明神―――本当の明神が死んだという事実を知る者はあまり居ない。ハセのように、直接関わったことのある奴を除いては。
「明神さんより強い人って想像つかないなぁ」
「…は?何突然」
「だって、私明神さんほど強い人みたことないよ」
 黄符を両手の間で転がすようにしながら、ひめのんは小首を傾げた。そんな可愛いことを言われても困ってしまう。反応に、困ってしまう。
「ぜ、全然俺なんかまだまだだぜ?そりゃこれから、もっと強くなるつもりだけど…明神はこんなもんじゃなかったし…」
「ふぅん?こんなに強くていい人、滅多に居ないのにね」
 だからさ、そんなかわいいことを、いわれても。
「最初は変な人だなーって思ったけど、今はすごく頼りになるかっこいい人だと思ってるよ」
 だから、さ…っ。
「………明神さん、顔が変」
「ひ、ひめのんが…突然そんなこというから…っ」
 息苦しくなってきて喉元を押さえるようにして呼吸をする。いかん、これじゃあまるで本当に変な人だ。
 ただちょっと住人の女の子が、ほんの少し可愛い仕草で、若干嬉しくなるような事を、すごく好きな笑顔で言うものだから。
 待て、追い込んでどうするんだ自分を。
「明神さん?ホントにおかしな顔してるよ?へいき?」
「だ、だいじょぶ…へいきっ…」
「おかしなものでも食べたの?それとも具合が悪いのかな」
 不審そうな顔をしながらも、心配してくれるひめのん。彼女に全く他意が無いことも、俺の反応が明らかに異常だということも、全部わかっている。わかっていて、思った通りに表情が取り繕えるくらいなら苦労はしていない。努力はしたのだけど。
「ねぇ、こっち向いてよ、喉押さえてるけど痛いの?気持ち悪いの?」
「いや!も、ホント、全然っげんきだからっ」
「ちゃんとこっち向いてったら!」
 ソファに座っていた俺に対して、ひめのんが床から立ち上がって両手で背けていた顔を挟むようにして掴んだ。小さいけど、暖かくてしっとりした手の平が頬の少し上を包む。
 あ、やば、い。
「明…」
 ひめのんが、目を合わせられずにいるままの俺の顔をまじまじと見つめて、きょとんとしてしまった。それはそうだろう、自分でもわかるくらいに顔が熱くて仕方ないんだ。きっと今俺の顔は、いまだかつて見たことがないくらいに紅い。いや、もしかしたら過去に一度や二度くらいあったかもしれないけれど。
「熱があったなら言ってくれればいいのに!!」
 …ひめのんが、天然で助かったと思った瞬間だった。
「もう、寝てないとダメだよ!ホラ早く部屋に戻って」
「あ、う…ええと」
「喉痛い?うがいする?」
「いや、結構です」
 急かされるようにして管理人室に押し込まれ、布団まで強制移動させられてしまった。仕方がないので大人しく言うことを聞いておいて、ひめのんがリビングから居なくなったらまた出て行こうと決めた矢先、何故か彼女が管理人室の入り口に立ったまま動こうとしないことに気付いた。
「…ひ、ひめのサン?」
 俺は布団の上にあぐらをかいたままひめのんを見上げる。ひめのんはじーっとこちらを見つめたまま黙っていたが、やがて表情を和らげると俺の前に膝をついてこう言った。
「早くいつもの元気な明神さんに戻ってね」
「っ…!」
 まるで子どもにそうするように、俺の前髪をイイコイイコと撫でる。
 やば…い、ホントに俺息苦しい。
半ば放心気味になっている俺などお構いなしにひめのんは立ち上がると、部屋を出て行こうとした。
「あ、そうだ。これちょっと借りるね。段ボールの底開いちゃったの。」
「…へ?これってどれ…」
 ぼうっとしながら彼女の指す物が何かを視界に入れて、さすがに俺も目をむいた。
「って黄符!?いや待ってそれガムテープじゃないからさ?!」
「すぐ返すからねー」
「なんっそういうオチ?!ちょ、ひめのん!!それ結構イイ値すんだけど!!ねぇ!!!」
 引き留める声も虚しく、管理人室のドアが閉まる。俺は軽快な鼻歌が聞こえる廊下に向かって頭を垂れて、複雑なため息をついた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

とりとめもなく完


 

陰陽連ならぬ案内連とかあるんでしょーかw
色々捏造しました。
凄く勝手に考えました。
そして短くてとりとめなくてゴメンナサイ(平謝り

何が書きたかったってね?
単にマダオの練習をしようと思って…
っていうかマダオを書きたくて|||orz

冬悟さんは
邪念も他意も無いひめのんに、
振り回されちゃえば い い ん だ … !!

そんなノリ(どんなだ


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