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風の物語
――プロローグ――
「戦場の、勇者の御霊を刈って逝く戦乙女――貴女を見て……まだ生きているわたしは、どうすれば友に報いる事が出来るだろう。
わたしはだた――今という時を過ごしているに過ぎない――」
ボクは佇んでいた。
この城で、一番高い塔のテラスに立ち、吹く風と射す月明かりに身を曝している。
「ケトシ……もう行くのか?」
不意に声がかかった。
「貴族院の老人達はワシが何とかしよう。だから――考え直さんか?」
ボクはゆっくりと、声のして来た方に振り返った。そこに居たのはよく見知った顔の……ボクの親代わり
のじいだった。
ボクは小さく首を横に振り、口を開く。
「あの老人達のせいじゃないんだ、ボクが四精霊の争いに行くのは。知ってる? あの戦いには全世界から……
それこそボク等の住んでるミッドガルドだけじゃない、南方の十字架を信奉する国から人が神族になる国。
そして……海の果てからも、幾多の人々が自分達の信じる精霊に命を架けてやって来るんだ。そう、ソコには
幾多の信仰が、世界の法が集まるんだ。善いか悪いかを抜きにしてね。
ボクの探す法は、このミッドガルドにも十字架の国にも無かった。
よく考えたら――魂が神に攫われる所には無いんだよ、きっと……。ボクはまだ、全ての法を知った訳じゃ
ない。だから諦めない。だから――ゴメンじい、ボクは探しに行くよ」
ボクはそう言って、再び外の方を向いた。木々のざわめきを撒いて、北からの風が部屋の中に吹き込む。
背中の羽が風になびき、幾つかの羽根が、ボクからじいの手へと渡っていく。
少し静かな風がボクとじいを取り巻き、風のざわめきが世界を作っていく。
束の間の静けさの後……ボクは振り返らずに、小さく呪文を唱え……テラスの柵を飛び越える。
「フェザーウィニング――」
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