――楽しい遊びと、小さな影――
ボクは夢を見ていた。
現実感は無く、場景もどこか薄っぺらだ。そんな、薄くて虚構のような夢の中で、もがくボクをボクは観ている。
大きなホール。そう、ボクの住んでいたお城の一階のホール。
そこに小さなボクが佇んでいる。あの頃は……意味も無く、毎日毎日南の国の十字架の国の使者が作ったステンドグラスを
眺めていた。綺麗な色ガラスで作られた、南の国のお話が綴られたステンドグラス。
(ヤメテッ! ボクハモウミタクナイヨッ!!)
そう叫んでも夢は流れていき、その先に待つ結末へと流れてゆく。
決して目をそらす事はできなくて、目をつぶる事もできない。ただ、夢の中で演じられているボクは結末
を知らなくて、観ているボクは知っている。忘れる事のできない結末へと夢は続いていく。
ガシャァアンッ!!
大きな音を立てて砕け散る色取り取りのステンドグラス。
夢の中のボクは、その大きな音に驚きながらも、砕けて空中を舞う青・赤・黄色・や緑などの破片に見とれていた。
と夢の中の小さなボクの目の前に、黒くて大きな人影が舞い降りてくる。
そいつはボクに何かを言うけれど、ボクには聞き取れない。
夢の中のボクは、首をかしげて舞い降りてきた黒い影の方へと歩み寄っていく。
そして―――――――――
ガスッバキッ
「痛―――――ッ!?
何っ!? 何!? ぎにゃ――ッ!!」
何かに殴られたような痛みで、ボクは悪夢から開放された。
……開放されたってゆーか叩き起こされた?
極度の興奮で、羽と尻尾の魔法が解けて、バササっと天井へ。ボクの頭に『ゴチン』と鈍い音が響く。
「イタタタタタ……いったいなに……? ってイディ兄ぃ?」
「大丈夫か?」
「へ?」
ふらふら〜とベットに落ちて、辺りを見回したらファイ兄ぃがいた。心配そうに(?)ボクを見下ろしている。
「何があった?」
「にゃ?」
「……怖い夢でも観たのか?」
「怖い夢?」
そうだった。怖い夢の途中で、ボクは何かに叩き起こされたんだった……殴られて……?
「イディ兄ぃ……ボクになんかしなかった?」
ジトっと、下からファイ兄ぃを見上げる。
「いや、何もしてないが……何故だ?」
「え? うんん。何もしてないならいいけど……」
一瞬、ファイ兄ぃが目線をずらしたのをボクは見たけどね。
「ふっふっふ、準備はいい? ケト君」
「んっふっふ、当然だよグラ兄ぃ。で、あのハゲ、ヤるんだよね?」
怪しく頷きあって、グラノーラ兄ぃと身を潜めるボク。その先には、白銀色に輝く鎧に、赤い薔薇をあし
らったハゲ頭の筋肉騎士が歩いている。見るからに、間抜けそうな顔で。
あの後、ボクはグラノーラ兄ぃと遊びに来た。砂漠の端、微妙に生える潅木と荒れた大地の所。
太陽が熱く照りつける、乾燥した場所。
そんな所だから、ハゲたおやじ(推定)はきっとクサイはず。
あ、いや、そんな事はどうでもいいけどね。(ホントはよくないけどね)
「んじゃ、行くよっ」
「うん!」
そして、ボクとグラ兄ぃは、持っていた変な臭いのする(もちろん悪臭)果実を投げつけた。
投げられた果実は、放物線を描いてハゲた頭に砕け散る。臭い臭いを撒き散らして。
ハゲ騎士は、一瞬何が起こったのか判らずに、ビクリと体を硬直させて頭に手をやった。
べっとりと手に付くドドメ色のドロドロ。そして臭う悪臭。