大切な人からもらった、たった一つの物・・・・・・
道行く者が、足を止め車も止めて彼女を眺めていたが、気に留めることもなく、彼女はまたゆっくりと歩き出した。
どこからか声が聞こえたような気がした。
彼女の家である『大社堂』まであと5分もかからない。あの路地を折れればすぐそこだ。
車が数台、彼女の後を追いかけている。
声をかけようとしているのだろう。
・・・・・・かわいそうに・・・・・・。
1時間半以上車で迷ったあげくに、お土産物屋「大社堂」にたどり着き、彼女に逢えるのだ。そして、そこで買う必要のないおみやげを、車一杯に詰め込んで帰ってくるのが通例なのだ。
でも、彼らは彼女に逢えたのだからそれでいいと言う。また、こんなに美しいお姉さんがいることを、地元に住んでいても知らなかったとも言う。
なぜだ?
店主、真樹麗子は人間を寄せ付けたくないなどと、思っているわけではない。―――「人払いをかけているわけではないのに、お客さんが来ない」それが彼女の悩みの一つである。
もっとも、客がたくさん来ても困るはずなのだが・・・・・・。
なぜか。
それが、「大社堂」だからだ。
店主、真樹麗子とともに人間達にとっては謎の多い土産物屋―――それが、「大社堂」なのだ。
無理も無かろう。ここは妖怪達が自分達の正体を隠すことなく、くつろげる場所―――そう、心のオアシスなのだから。
