〜下諏訪の七不思議の一つ!?〜
  ここは長野県諏訪地方。冷涼な気候のため、夏は避暑地としてにぎわっている。また、古くから温泉街としても知られているので、温泉を目当てに来る観光客も多い。
  そのような観光客が、必ずと言っていいほど見る場所がある。『諏訪大社』だ。この地方を訪れたことのある者なら、誰しもが四社のうち、一社は訪れる。

  上社に前宮、本宮、下社に春宮、秋宮という4つのお社がある『諏訪大社』。その下社秋宮の参道―通称「大社通り」を一人の女が歩いている。
  淡い緑色の着物を着たその女性は、秋宮を背にして緩やかな坂道を下っていた。が、ふと、彼女は立ち止まり、いとおしそうに薄紅色のかんざしに手をやった。

  大切な人からもらった、たった一つの物・・・・・・

  道行く者が、足を止め車も止めて彼女を眺めていたが、気に留めることもなく、彼女はまたゆっくりと歩き出した。
  どこからか声が聞こえたような気がした。

  彼女の家である『大社堂』まであと5分もかからない。あの路地を折れればすぐそこだ。

  車が数台、彼女の後を追いかけている。
  声をかけようとしているのだろう。

  ・・・・・・かわいそうに・・・・・・。

  1時間半以上車で迷ったあげくに、お土産物屋「大社堂」にたどり着き、彼女に逢えるのだ。そして、そこで買う必要のないおみやげを、車一杯に詰め込んで帰ってくるのが通例なのだ。
  でも、彼らは彼女に逢えたのだからそれでいいと言う。また、こんなに美しいお姉さんがいることを、地元に住んでいても知らなかったとも言う。

  なぜだ?

  店主、真樹麗子は人間を寄せ付けたくないなどと、思っているわけではない。―――「人払いをかけているわけではないのに、お客さんが来ない」それが彼女の悩みの一つである。
  もっとも、客がたくさん来ても困るはずなのだが・・・・・・。

  なぜか。

  それが、「大社堂」だからだ。
  店主、真樹麗子とともに人間達にとっては謎の多い土産物屋―――それが、「大社堂」なのだ。
  無理も無かろう。ここは妖怪達が自分達の正体を隠すことなく、くつろげる場所―――そう、心のオアシスなのだから。


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