第三回 「馬鹿につける薬はねぇ!(後編)」

「なぁ、なんで俺たちがあの馬鹿どものために、わざわざ薬草を取りに行かなきゃならんのだ」
 トトカンタ市のそばにあるオルセイン山。吹雪ふきつける山道を登りながら、オーフェンは隣りを歩くドーチンにぼやく。
「さぁ、ところでキースさんは?」
「ん、そういえば」
 疲れきったドーチンの言葉に、オーフェンはあたりを見渡した。視界に不自然な光景を見つけ、そこに歩み寄る。
深く掘られた一つの穴。そこにはタキシード姿に身を包んだ男が、せっせと穴を掘りつづけていた。
「おい、キース。そこで何やってんだ?」
「はい、少々お待ちください、黒魔術師殿。今、落とし穴を作っている最中でございます」
 穴の中から答えるキースの声。
 オーフェンたちが十分ほど待っていると、汗一つかいてかいてないのに、なぜか汗をふきながらキースが穴から上がってきた。そしてうやうやしく自分が掘った穴を右手で指す。
「さあ、どうぞ。黒魔術師殿」
「どうぞって、なにがだ」
「いやいや、遠慮なさらずに」
「・・・・・・お前がおちろ」
 いいながら、オーフェンはキースを蹴り落とした。その瞬間穴の中から突風が吹き上げ、そして背中の方へとふいてった。
「おたわむれを黒魔術師殿」
 オーフェンがゆっくりと振り向くと、後ろにキースが笑顔で立っていた。
「今のお前の動きを追求することは不可能なんだろな」
 オーフェンが目をこすりながら言うと、ドーチンがふるえる手で右の方を指しながら
「オーフェンさん向こうにく、く、く、」
「く?」
ドーチンの言葉をきいて右の方を見た。そこには茶色の熊がいた。
「く、くまー」
「おお、あれこそ薬草を守りし獣。さあ黒魔術師殿ゴールはもうすぐですぞ」
 キースが感動にうち震えながらいってくるのを無視しながら叫ぶ
「我は放つ光の白刃」
 オーフェンが放った光の刃が熊に当たり、大きな咆哮をあげて倒れた。
「ふう、あとは薬草を探すだけだな。あれ、キースはどこへいった」
「さあ、ところでオーフェンさん。なにか地響きのような音が聞こえるんですけど」
「ほお奇遇だな、俺にも聞こえるぞ」
「どうします」
「そうだな・・・」
 近づいてくる雪崩を見ながらオーフェンは思った。
(なんで俺がこんな目にあわなきゃなんねえんだ)



「ばかねぇ、雪の中を外出するなんて」
「うむかぜをひくとは軟弱な奴だ」
 後日救出されたオーフェンとドーチンは、宿のベットのそばですっかり全快したコンスタンスとボルカンに好き勝手に言われながら寝込んでいた。

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