第二回 「馬鹿につける薬はねぇ!(前編)」


 「おはよう、オーフェン。今日も寒いわね」
  赤く燃え上がる暖炉。その側に座っていたスーツ姿の女が、食堂に入ってきた男に声をかけた。
 「確かに雪も降っているしな」
  黒髪、黒目、黒づくめの男が不機嫌そうに答えた後、女の方をにらむ。
 「って、コギー・・・何でお前が暖炉の側にいるんだよ」
 「フッ・・・甘いですな黒魔術士殿」
  銀髪の執事キースが言い、それに背が低く、剣を腰に携えた地人ボルカンが勝ち誇ったように続ける。
 「うむ、起きるのが遅かったのが貴様の敗因だ」
 「おい副ダヌキども、何でお前達がココにいるんだ」
 「みぎゃぁー!」
  ボルカンの頭を手でつかみながらドーチンに聞く。
 「僕たちの家は隙間から雪が入ってきて寒いんですよ」
 「どっちかって言うと、アレは家じゃなくて小屋だろ」
  オーフェンの言葉にドーチンはうなだれて言う。
 「反論できません」
 「オーフェン様、お飲物を持って参りましたわ」
  オーフェンが声に反応して振り向くと、カップを持ったウエイトレス姿の女が立っていた。
 「あぁ、悪いなボギー。・・・ところで何か変わった色をしているが?」
 「はい、オーフェン様。キースから頂いたモノですわ」
  その言葉を聞いて、オーフェンは口に持っていきかけたカップをテーブルへ置いた。
 「あら、オーフェン様?お飲みにならないのですか?」
 「そうですよ、黒魔術士殿・・・まるで私が毒か何かを入れたようじゃないですか」
  天使のような笑顔で言ってくるキースを、あっさりとオーフェンは言い返す。
 「きっぱりとそうだろうが!」
  キースと口論しながら、ふと横を見るとドーチンが疲れた顔をして立っていた。
 「どうしたんだ?ドーチン」
 「い、いえ・・・オーフェンさん、・・・あの・・・兄さんが・・・」
  と、言いながらドーチンがテーブルの方に目線を送る。オーフェンもつられて視線を送った。
  すると、テーブルの上には空になったカップ、そしてテーブルの下にはコンスタンスとボルカンが転がっていた。
 「アホかぁー!」
  毒を飲んで倒れている二人に向かってオーフェンは叫んだ。
  外はまだまだ寒そうだった・・・

後編へ