魔術士オーフェンはぐれ旅
 外伝DE行こう!

第壱話 

 街の一角にある、とある外食店。
 カラン、カランとドアの鈴がなると、二人の男が店に入ってくた。
 一人は全身漆黒の服を纏った20歳前後の男で、もう一人は普通の少年だった。
 そして辺りを見渡して、空いている席を見つけると、そこに座った。
 席についた少年が口を開く。
「お師様、今回の依頼はすんなりと終えることが出来てよかったですよね」
 そしてもう一人の男がそれに答える。
「あぁ、いつもの馬鹿ダヌキどもがいなかったお陰だな。数ヶ月ぶりの報酬だって、こうして手に入ったしな!」
 そういって、金の入った布の袋を机にドサッと置く。
 そんなことを話していると、ウエイトレスがやって来た。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」
 その瞬間、二人の男は慌てて窓の方に顔を向け、ひそひそと何やら話し始めた。
 先に口を開いたのはお師様と呼ばれる男のほうだ。
「マジク、見たか!?」
「はい、この目でしっかりと!」
「声はやけに可愛らしかったが、アレはどう見ても、ドーチンだった!」
「はい、お師様!」
「ここで、騒いだらコトだぞ・・・」
「そうですね、暴れて店を破壊してしまったら、折角の報酬もパァになりかねません」
「ここは一つ、単なる客としてやり過ごすぞ、マジク!」
「はい、お師様!」
 二人は意思を一致させると、苦笑いをしながらウエイトレス・ドーチンの方へ向き直った。
「俺はミートのパスタと珈琲をくれ」
「僕も、同じのを・・・あっ、飲み物は紅茶にしてください」
 そう云うと、二人は直ぐに窓の方を向いた。
 ウエイトレス・ドーチンは、そのまま気にもせず注文を繰り返した。
「ミートのパスタが二つに珈琲と紅茶ですね?」
「はい、そうです」
 マジクが答える。
「お飲み物はいつお持ちしましょうか?」
「一緒でいい」
 漆黒の男は、即答した。
 その声にはかなりの迫力があった。
 ウエイトレス・ドーチンは慌てて、その場を後にした。
「少々、お待ちください!」
 ウエイトレス・ドーチンは、厨房へと入っていった。
 厨房の中では数人のコックの中に、子供のように小さな男がいた。
 その男にウエイトレス・ドーチンが駆け寄る。
「兄さん!やっぱり来ましたよ!オーフェンさん達が!」
 そう告げると、兄さんと呼ばれる男が不敵な笑みを浮かべた。
「ふははははっ! やはりココにやって来たか、馬鹿魔術士ども! このボルカノ・ボルカン様の素晴らしい陽動作戦に、まんまとかかりやがったな!」
 そう云うと、ボルカンという男は奥から、怪しげな瓶を持ってきた。
「今日こそ、奴らを、これで火吹き殺す!!」
 だんっ!と机に瓶をのせる。
 それをウエイトレス・ドーチンが瓶に張ってあるラベルを見る。
「・・・東国の幻の唐辛子使用、激辛タバスコ・・・」
「そうだ、ドーチンよ! これを奴らの注文した料理に全部入れるのだ!!」
 ボルカンは何とも嬉しそうな顔をしながら、タバスコの瓶の蓋を開ける。
 辛い匂いが辺りに立ち込める。
「・・・すごい匂いだね、兄さん」
「そうだろ、そうだろ・・・」
「これで、一泡吹かせるんですね」
「違う! 火を吹かせるだ!」 
 そう云うと、ボルカンはそのまま出来上がってきたばかりのパスタ二つにタバスコ一本丸々入れた。
 それから直ぐにウエイトレス・ドーチンは、オーフェンとマジクの前に例のパスタを持ってきた。
 そのままウエイトレス・ドーチンは注文した料理と、注文表を置くと、そそくさとその場を後にした。
 オーフェンとマジクの二人は料理を眺める。
「どうやら、普通のようだな・・・」
「そうですね・・・あの人達のコトだから、何かしてくるのかと思いましたけど・・・」
「ああ・・・」
「じゃぁ、頂きましょうか、お師様」
 二人は礼儀正しく挨拶をすると、フォークを使い料理のパスタを口に運ぶ。
 しかし突然、オーフェンが動きを止める。
 そして横目でちらりと厨房の方を見た。
 すると、物陰から、いつもの馬鹿ダヌキどもが、こちらの様子を窺っている。
「待て、マジク! それを口にするな! やはり、あいつらの罠だ!!」
 しかし、時すでに遅し。
 マジクがパクリっとパスタを口に入れた。
 その瞬間、マジクの顔が真っ赤になるのをオーフェンは見た。
 そして、マジクの口から灼熱の炎が吐かれる。
 オーフェンの顔は黒焦げになった。
 それを物陰で見ていたボルカンとドーチンは、ガッツポーズをした。
「くわぁぁぁあああっっ!!! か、か、か、からぁぁぁぁいいいっっっ!!!!」
 マジクの言葉にならないような叫び声が店内に響く。
 オーフェンは、立ち上がるとボルカンとドーチンの方へ駆け出す。
 それを見て、ボルカンとドーチンは店内を逃げ回る。
「なかなか、手の込んだことをしてくれるな! 馬鹿ダヌキども! 待ちやがれ!!」
「ふっ、待てといって待つ奴は誰もおらんぞ! 馬鹿魔術士!」
 ボルカンは走りながら、舌を出して、オーフェンを挑発した。
 しかし、オーフェンは珍しく、それ以上挑発にはのらなかった。
 そのまま苦しがっている、マジクをつれて店を出た。
 どうやら今回は報酬があるため、なんとか理性を保ったらしい。
「ふははははっ! 俺様の恐ろしさの前に尻尾を巻いて逃げよったな! 魔術士め!」
 ボルカンの笑い声が店内に響いている。
 それを外に出たばかりのオーフェンが聞き逃すことはなかった。
「・・・マジク、”立つ鳥、跡を濁さず”という言葉の意味を知っているか?」
 マジクは首をかしげる。
「知らないなら、今教えてやろう!
 我は放つ、光の白刃!!!」
 その瞬間、周りは眩く照らされた。
 そして・・・
 ちゅっ、どぉぉぉぉぉぉぉんんんんっっ!!!!
 目の前の店は木っ端微塵となった。
 瓦礫になった店と、倒れているボルカン・ドーチンを指差して、オーフェンはマジクにいった。
「”立つ鳥、跡を濁さず”、つまり”立ち去るとき、あとが見苦しくないように始末をする”ことだ」

 終劇