ルージュ小説


(タイトルまだ未定だったりして・・・(^^;;;)

「修士修了式開会!」
大きな声がホールに響き渡る。僕は慣れない空気に戸惑いながらその声を聞いた。
聞きなれた教授の声が、場所が変わっただけ別人のものであるかのようにに聞こえる。
それは僕が緊張しているからだろうか。
それとも、この厳粛な雰囲気がそうさせるのだろうか・・・。
「修了者の発表を主任教授から行います」
僕は今日、この学院を卒業する。僕もついに、一人前の術士と認められるのだ。
今日のこの場に、僕と一緒に術の勉強をしてきた友達は誰もいなかった。僕は双子であるせいで
魔力がうまれつき非常に強かったので、同年代の友達よりずっと早く修了式を迎えることができ
たのだ。
だからといって、修了資格があるのは僕だけではないのに・・・。
僕は疑問に思いながらも、心地よい緊張感になんともいえぬ喜びを感じていた。
視線を上に動かすと、今まで術の修行を手助けしてくれた教授たちが二階のバルコニーから僕を
見下ろしているのが見えた。
・・・教授たちはなぜか修士となる僕を厳しい目で見ていた。
確かに、これから僕が術士となってその責務を果たすのは並大抵の苦労じゃないかもしれない。
でも、教え子の修了式だというのに、もう少しやさしい顔をしてくれても・・・。
彼らの表情の意味するところを知らなかった僕は、のんきにもそんなことを考えていた。
さらに目を上げると、思っていたよりずっと高い天井に、美しい天使が羽を広げている姿が目に
入った。
高いホールの天井を下から見上げているというのに、まるで生きているかのように・・・今にも羽
をはばたかせてこちらに飛んできてもおかしくないと思わせる力を、その絵は持っていた。
(なんて美しいんだろう・・・)
僕は、その天使が僕のこれから進む道を祝福してくれているような気がした。
このホールに入るのは初めてではなかったが、この天使の絵がこんなに美しいと感じたのは初めて
だった。
「教授会の厳正なる成績審査の結果、全会一致により今期の修士修了者を修士ルージュに決定する」
名前を呼ばれて、僕は反射的に姿勢を正した。心臓がその鼓動を早めていく。
「修士ルージュ、前へ」
まばらな拍手とともに、再び僕の名前が読みあげられる。僕はなるべく自然な動作になるようにと
努めながら、一歩前へと歩み出た。
天使の絵のちょうど真下だ。
「ルージュよ、汝をマジックキングダムの術士に列する。術士としての責務を果たし、キングダム
への忠誠を全うせよ」

僕は黙してその言葉を受けた。
ついに僕も、数多くの術士たちの後に続き、その名を連ねることとなったのだ。見習いではなく、
一人の術士として。
「慣例に従い、キングダムを離れリージョン界への外道を許可する。修了者の第一の務めは、リー
ジョン界をめぐり、術の資質を身につけ、より高度な術を鍛練することである。
そのためにはあらゆる手段を用いてよい」

マジックキングダムに生まれた子は、生まれながらにして魔術の資質を持っている。
資質というのは、その術を使うに値する者だけが持つことができるものだ。
ただ術を買って使うだけなら誰にでもできる。
だが、資質を持っていると、その術を使い続けるうちにより高度な術を覚えることが可能になるのだ。
その資質を多く手に入れることが修了者の務めであり、多くの資質を持っているほど、術士としての
力が上だということになる。
生まれてはじめてキングダム以外のリージョンに出ることができる。
それだけで僕の心は躍っていた。『あらゆる手段を用いてよい』という言葉も、僕は特に考えていな
かった。
それが本当の意味でどんなにおそろしいことなのかを、僕はわかっていなかったのだ。
「異例のことだが、出発前に校長からのお言葉がある」
教授たちのさらに上段に、校長が姿をあらわした。この学院の最高責任者である。僕は敬意を 表して
片膝をついた。
「ルージュ、あなたは選ばれし者です。双子ゆえに魔力が強い」
聞きなれない声が、高いところから響いてきた。まるで天井の天使が話しているかのように荘厳で、で
も優しい声だった。教授たちとはちがって声に暖かみが感じられる。
僕は、校長が魔力のことで誉めてくださったので、嬉しくなって失礼にならないように顔を少し上げて
その顔を仰ぎ見た。だが、ここからでは影になって、その表情は見えなかった。
「しかし、双子のままでは術士として完成することはありません。あなたはその運命に従わなければ
なりません。今日、別な場所で、あなたの双子の片割れブルーも同じように修了の日をを迎えています」

双子の片割れ、ブルー。
僕には彼と会った記憶はない。
自分に双子の兄弟がいるのだということは人に聞いて知っていた。双子だから魔力が強いのだ、とも聞
いていた。その片割れがブルーという名だということも。
だが、僕らは別々の学院に入って、別々に術の修行をした。なぜ別々なのかは考えたこともなかったが、
とにかく僕たちはずっと離れ離れだったのだ。
そのブルーが、僕と 同じく、今日リージョン界へと旅立つ。
もしかしたらブルーと会うことができるかもしれない。
僕は嬉しかった。
会ったこともないもう一人の僕と、会えるのかもしれない。
やはり顔は僕に似ているのだろうか?身長も同じくらいなんだろうか?髪は僕より長いかな?
性格はどうだろう?術は?魔力は?
・・・・僕の中で大きくひろがったブルーへの気持ちは、しかしもののみごとに崩されてしまった。
「キングダムは二人の不完全な術士よりも完璧な一人の術士を求めています。それはあなただと信じて
いますよ、ルージュ」

僕は、校長に期待されているのだと思った。同じく双子であるブルーも魔力が強いが、彼よりもすぐれた
術士になるように、と言ってくれているのだと思った。
・・・・・・次の瞬間までは。
「行きなさい。資質を身につけ、術を高め、そして・・・・・・ブルーを殺せ!
やさしかった校長の声が、突如として冷たくなった。
教授たちの表情のかげりはこのせいだったのだ。他の修了者がいなかった理由はこれだったのだ。
僕は背筋が凍るかと思った。
これが双子に生まれた術士の運命なのか。
そしてぼくはその運命に従わなければならないのか。
僕には校長の言っていることが理解できなかった。・・・・・・いや、理解したくなかっだけなのかも
しれない。
その言葉を聞いたとき、僕は一瞬頭が真っ白になった。
だけど、それでも資質を集めようという思いに、ゆるぎなど少しもなかったのだから。


to be continued.....