Ave Maria! Jungfrau mild,..........


 そよぐ風に、満天の星空が見える真夜中の宮殿にて…
「私は今、とても危険な立場にあります。きっと…貴方を困らせたり、迷惑をかけたりするかもしれません…だから……・」
 目の前で語る薄紅色のドレスの貴婦人…。彼女の唇を、白い男は指でそっと撫でて続きを言わせない様に口付けした。包み込むような優しい瞳に、彼女は涙ぐむ。奉げられた一輪の百合の花で、情熱の伝った唇を隠した。俯き、こみあがる想いと裏腹に呟く。
「…重荷になるかもしれないわ」
「いいえ」
「難しい生き方を強いられるかもしれないのよ」
「そんなことはありません」
「私は、何の役にもたてないし、逃げ続けて、貴方と共に辛い道を歩む可能性だってあるのに…それでも愛してくださるの?」
「はい」

 白い男は彼女を抱きしめ、
「愛しております。貴女を、全身全霊をかけてお護りします」
 一途な声で囁いた。紅の衣装の貴婦人は微笑み返した。暖かい胸を少し離して…
「ひとつだけ、約束して下さる?」
「はい…」
「もし、もしも……私に…いえ、お互いに何かあった時は、決して振り向かずに歩いて行って欲ししいのです。たとえ振り向いても、何を見ても絶望しないで…貴方を愛して、幸せな時間を過ごせた私がいたことだけを受け止めて欲しいのです」
――とても勝手な願いなの。でも、貴方の全てなんて私は望めない。大きな傷になって残るなんて嫌だから…
「お願い…。私は今の、この幸せだけで十分幸福なのです。今、戦場で死線と隣り合わせの人達や、私に仕え、支えてくれる全ての人達を残して自分だけが幸せにはなれません」
「貴女…」
「貴方を愛しているし、この身に背負う数々の命も愛しています。多くの人達に生き延びて欲しいので、何かが起こってもすぐに身動きができない時が来るかもしれません。…だから、お願いです…誓ってくださる……?」
――愛してるわ
 貴婦人は、眼前で屈み自分の手に熱い接吻を落とした男の声を、泣きながら聞いた。白い男は零れ落ちる泪の痕が残るドレスの全てにも唇を重ね、こう囁いた。
「ええ、私達の未来と、貴女の全てに誓いましょう」
「…愛してるわ。大好きよ」
「その強さと優しさに私は惹かれたのです。誓わずにいられましょうか」
「―――ありがとう……」
―――貴方に会えて、私はとても幸せだったのだから…

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