Ancor dura ― la sventura
d'una fiamma incenerita,
la ferita ― abcora aperta
par m'avvrta nuove pene.
Dal rumor delle catene
mai non vedo allontanarmi.
――――聴こえる?
―――――――…
そう、そのまま振り向いて
私を見て…
私だけを
貴方がいて、私がいて…
これ以上望むものなんてないのに
「…?」
――――――――――――――――キタナイくせに
「何ですって!!?(この声…私?)」
――――――――きっとすぐに飽きられるさ、クックック
「黙りなさい!!」
――――――――ホラ、ムキニナッタ!アハハ、オッカシィ!
――――――――もうお帰りかい?性懲りもなくよくやるね。彼、ホントハ憎んでるんじゃない?
「違う!」
――――――――顔で笑って心で泣いてるんだよ、あれは
「…」
――――――――偽者さ、おままごとさ…
「そうじゃない!!あの人は…(イライラする、何だこいつは!)」
――――――――綺麗なオモチャだよねぇ、くすくす
「黙れ!!(胸が痛い…きゅうに、何故?)」
――――――――自分に正直で、真っ直ぐで…世間ずれしたお前なんかと全然違う
「…やかましい!!余計な…お世話だ!…っ…(息…できな…)」
――――――――護りきれるのか?何でもしてあげるとか言いながらほんとは
ホントウハ
――――――――いともたやすく、何でもかんでも思い通りになると思うなよ…
「…(意識が…)」
――――――――私に狩らせるな…肝に銘じておけ、・・・ってもう聞こえないか、くすくす
―――――― ・・・
・・・?
誰かの声が聞こえてる。
おかしい、仕事中毒か?私は・・・幻聴まで・・・
――――・・・だからねうんと愛してあげるのよ、あなたにとっての愛しい人を…
「愛しい人?」
――――あなたにもいつか現れるわよ…大切な人がね…
「護ってあげればいいんだね?」
――――そう、大事にしておあげなさい
「うん!」
――――…いい子ね、お休みなさい
(白昼夢?変な感じだ…おまけにさっきのアレは何なんだ?)
帰宅した巽が仰天するのも無理はない。
寝室の荒れよう、この散らかり様…
「…邑輝が…来たんだ…だから」
綺麗に片付いた部屋をめちゃくちゃにして悪いなぁって思いながら俯いている都筑…
汚くしちゃってごめんね、って言いたかったのだが何だか高価なスタンドまでぶっ壊しててちょっと巽を正視できなくなってた。
びくびくしてる都筑を見て余計に巽が蒼白になった。肌蹴た寝間着、蒼い顔…都筑の思考とは裏腹に「まさか…」と言いかけて…
「あ…俺は何ともなかったんだよ…何もされてなかったし…あいつだって俺の調子悪いの判ってて何も」
「…ここ…血が滲んでますね…」
「え?…それは…あの」
うっかりしててシーツに浮かぶ紅いモノを隠すの忘れてて都筑が慌てた。
「…あの…それはねぇ(俺、何うろたえて…慌てるなって…)」
冷や汗かいて説明にかかろうとする都筑を見かねて巽が行動した。
「これ洗います…。貴方も着替えるか、洗い落とすかどっちかしてください…彼の移り香が凄い」
「う、うん…」
巽がベッドのシーツやカバーを全て洗濯しようと剥し始めた。
ぴょんっとベッドから床に降りて都筑も手伝い始めた。
「…ここはいいから…下でご飯食べてなさい…」
「手伝うよ、凄く散らかってるもん」
ふわっとかかる都筑からの空気が、あの男の香りで噎せ返る。
「結構ですよ…早く下に行きなさい…」
何故か口調が冷たくなってしまう巽…
「じゃぁ…待ってるよ…お風呂のお湯、先にはっとくね」
「いいからご飯食べてなさい。冷めるでしょう?手際が悪いのは困りますから」
「…(…あれ?なんだか…)」
結婚以来、必ず一緒に食事はしようと約束してた。一人で食べるなんて美味しくないし、寂しいでしょう…って言い始めたのは巽だった。
…今日は何だか様子が違う。突き放すように言い方が冷たい。
「…で、でも…」
「まだ判りませんか?ウロウロしてないでさっさと食べてしまいなさい」
漂う邑輝の匂いにカチンと来てるらしい…
「わかった…」
シュンとなって肯く都筑を見て巽が言葉を足した。
あんな事言うつもりはなかったのに…
失言だと思った自分を省みて…ぺたぺた歩いて出て行く都筑の背中を見ながら緩やかに口を開いたが…
「都筑さん?」
びくっと振り返るかの人…
二人でいるのに名字で呼ばれてしまった。
「裸足でいないで何か履いて…破片が危ないでしょう…」
その言い方すらもフォローにならないほど冷たかった…
…破片とは最後に投げた枕元の電気スタンド…視線を落として暗いトーンで都筑が謝った。
「…スタンド…壊しちゃってごめん」
震える弱々しい返事が返ってきた。
これは一緒に買いに行った記念の品だったのだ。
―――パタン…
彼が出ていった。
―――――どうして?彼は何も悪くないのに…
―――――――嫌な思いしたのはあの人だ…なのに何故、優しく労ってやれない?無事で良かったって言葉のひとつもかけてやれな
い?
―――――――――すぐに下に行って一緒に食事しましょうって言わなければ…こんな部屋の片付けなんてどうだっていいのに…!!
スタンドだって気にする事ないって言わないと…
「……」
―――――――――――――――私は何をイラついている…?
「一人で食べても美味しくないや…」
もそもそと地味な仕種で食べながら都筑が独り言する。全然食が進まない。
―――そぅいや、こんなの前もあったかなぁ…あいつがホテルのレストランでさっさと先に出ていった時に似てるよなぁ…宮崎でさ…
「あ…すみれ?」
テーブルの側に紫の菫の花束があった。
早く花瓶に生けないとって思って都筑が立ち上がった。
花瓶を探してごそごそと棚を開けている時に、巽がちょうど降りて来た。
食事もせずに何をしているのかと思った。それにまだ本調子でもないしあんな薄着で居たら治りも悪いの…と巽が…今度こそは優しく言
おうと思った。慎重になって声をかけた。
「…何…してるんですか?」
「探し物…お花買って来てくれたんだね、きれえだね…サンキュ」
「花?」
「菫だよ…花瓶探してるんだよ…この辺にしまっといたんだけどなぁ…」
「それは邑輝が置いていったものでしょう…私じゃありませんよ」
「…」
都筑の動作がぴたっと止まった。身体が硬直した。
「お菓子の箱詰めと一緒に玄関先に置いてありましたよ…食べますか?なんならあれも持ってきますけど?」
「い、いい…いらない…そんなモノ(うへぇ…てっきり巽が買ってきた花だと勘違いしてた)」
都筑がすくっと立ち上がって菫の束を掴んだ。
「何をするんです?」
「外に…捨てて来る…」
側を通り過ぎるのを巽が遮った。細腕を掴んで立ち止まらせる。
「別に捨てなくてもいいでしょう…わざわざ行く事もないですよ…」
「いい!!捨てる!!こんな花要らない…」
ムキになって都筑が叫ぶ。
「私が作ったご飯も食べずに…?よっぽどそっちのほうにアタマが回るようですね」
―――しまった…
「…つみ…違うよ…」
「彼の贈り物ほど私は良いものを贈れませんでしたしね」
―――――泣かせてしまう…言ったら駄目だ…
「…そんなんじゃ」
「貴方、お花が好きなんでしょう?捨てることないじゃないですか?こんなきれえな菫もったいないですよ?」
――――――また、だ…何でこんなキツイ事を言ってしまう?
都筑は…巽の予想以上にぐさっときた。
花が手から落ちた。何も言えずにぷいっと振り返ってばたばた浴室のほうへ都筑は走って行った。
(…夕食…一緒に食べましょう…さっきはすいませんでした…寒いからこれを羽織って下さい…って言うつもりだったのに…今日はどうか
してる…全く、拗ねて、皮肉って…私はコドモみたいな事言って…最悪だ)
お風呂で都筑が鼻を何度もすする。泣くのをこらえた。せめてお湯で涙を誤魔化した。
(…さいてぇー…今日はあいつが来たせいでロクな事なかったよ…休みなんかとらないで無理してでも仕事行ってたほうがよっぽどマシ
…)
雫が湯船にポタポタ落ちる。波紋を眺めて都筑がぶくぶく沈む。
(…どうしよう…巽、怒ってる…なんで怒ってるのかなぁ)
こんなのケンカって言うものなのかどうか考え込んでしまった…
11時になった。寝ようと思って都筑は寝室に行こうとしたが入浴してる巽を下で待った。
話がしたかった。いつもの会話が欲しかった。
居間のソファーでTVを見ながら待った。
だが…待つつもりだったのにすやすや眠りこけてしまう…
はっと何度もずり落ちる度に起きようとして、睡魔と格闘したのも束の間…巽が風呂から上がる頃にはぐーぐー寝入ってしまった。
「…全く…湯冷めして風邪ひいてしまうというのに…あんたはもう」
ソファーから抱きかかえて巽が動かそうとした。
あんなに長風呂して温もってた体が冷えている。
…先に上に行って布団に入ったら良いものを…わざわざ待っていたらしい…
動かした拍子に都筑が目覚めた。都筑を抱っこして、階段を登っている巽におずおず話し掛ける…
「あ、お風呂あがったんだ…あのね」
「身体の芯から冷えてるじゃないですか…私のせいとはいえ、療養中の身だという事を自覚してます?」
「あの…さっきのことなんだけど」
「はい?」
(会話だ…お前とちゃんとお話しないと…)
「お、怒ってるよね…やっぱり…」
「…いいえ」
「ごめんね…」
「…何で謝るんですか?」
「…え…だって…(やっぱ機嫌悪そう…蒸し返すんじゃなかったかなぁ…)」
「貴方は何も悪い事してないじゃないですか…なんでもかんでも謝る癖やめてください」
「…」
ドサッとベッドに都筑が落とされた。
巽がじっと見つめる。話はそれだけですか?っていうような瞳で見られた。
深閑する室内…
視線に負けて都筑が俯く。
場にたまりかねて都筑がもう寝ると言った。その表情は明らかに困惑してて不安定…
お休みのキスも何も、今夜は言い出せなかった。
「…やすみ…なさい…」
布団をかぶって深く潜りこんでしまった。
巽が眼鏡を外した。駄々こねて、ねちねちキツイ事言って馬鹿な事してる己が情けなくて溜め息が出てしまった。邑輝の存在なんて判っ
ていた筈なのに、ちょっかいだされたくらいでいちいちムキになる自身の性を嫌悪してしまうのだ。
都筑は何も悪くないのに、一時でも邑輝に触れられ、時間を共有したその事実に嫉妬してしまったのだ…
深い息がまた出た。
電気を消して床についた時に考え込んだ…
(こんなんじゃこの人をぼろぼろにしてしまう…いちいち私の勝手な感情に振り回すなんて…)
隣で横になる都筑を申し訳なさそうにちらっと見た。
背を向けて深くもぐってて顔なんて見えやしない。
明らかに今日は自分のせいで都筑を困らせた。謝罪するのはむしろ自分のほうなのに…なんだか言葉につまってしまった…
――――すいません、ごめんなさいって言わなければ…
愛しい人の背を見入る巽…
「…起きてます?」
声をかけられた都筑が少し動いた。
「…うん」
…小さな返事が返ってきた。
「こっち…向いてくれませんか?」
「……」
しばらくしてから都筑が向きを変えた。
暗闇で表情なんて汲み取れなかったが触れた頬が湿ってるのを知って巽が凄く反省した。
「…すいません…ごめんなさい…今日は馬鹿な事言って…」
「…っ…」
声を殺して泣いてた都筑を巽が抱き寄せた。
「麻斗、許してください…醜態さらしてしまって」
「…もう口きいてくれないかと思った…」
蚊の鳴くような声が空気を震わせる。足から肩まで・・・巽は冷えてる都筑の体を暖めてあげた。形の良い綺麗な手が雪でも掴んだかの
ように冷たい。
しかし、これに一時でも邑輝が残り香を残すほど占めたのを思い出して少し腹が立った。
あの男はきっと自分を煽っているのだろう…思うともっとむかむかしてきた。
しかし冷静に戻った。いちいち、きりきりと馬鹿な反応しているのは大人気ない…と思った。落ち着いてキスしてもう眠ろうと思ったら…都
筑が昼間のことを言い出した…
「…キスされた…」
「え…?」
―――――…あいつの話?…貴方の唇に?
「昼間、起きたら上に圧し掛かって来て…無理矢理キスされて…めちゃくちゃ嫌だった…」
「…」
――――――――――灯がつく…
「だから噛み付いて抵抗して…」
――――――――駄目だ…聞きたくない…やめてください
「お前…帰ってくるの待ってたのに…起きたらアイツが居て…んっ…ふっ…ぅ」
邑輝の話なんて聞きたくなかった。都筑の口を巽は熱く塞いだ。
「…こんな事されましたか?」
「…そぉだよ…」
「他には?」
「…んぅっ…」
濃厚な口付けしながら合間に巽は質問する。都筑には返事できる隙なんかなかった。
舌で熱く口内を撫で回されて口なんてきけなかっ
た。
「それともこんなコトですか?」
絡む舌を離した後に都筑の服の上から華芯を強く掴んだ。
――――――――――いけない、止めないと…この人を傷つける前に…
「…そ、…そこまでは…」
「されたんですか?」
―――――――――――――おかしくなる前にやめろというのに…!
問い掛けながら、思わず慣れた手つきで擦って指で弄んでしまう…妖艶な反応に引き込まれたせい…
「あ…っ…や…ぁ…」
否定の言葉を小声で言ってる都筑の反応に扇動されて激しい愛撫に変わって行く。
「触られただけ?本当に…?」
「…んっ…そ…だよ」
「嘘…信じられませんね…」
――――――――――――――――求めてどうする?まだ熱もあるのに…労ってやらないと!
「…はぁ…あぁっ…!…ぅ…そじゃないよ…」
「…こんなに感じて…濡れて…昼間にも猛った余韻じゃないんですか?」
「やぁ…ア…!ち、違ぅ…よぉ…」
「嘘…」
鮮やかに感じる都筑の反り返りを見て巽はまた溝にハまる。
「…あぁっ…ちょ…っ…待って…」
都筑がじたばたして退こうとするが巽が離さなかった。
握られて沫してしまって源が濡れてきた。服なんてとっくに脱がされている…
「熱い揺りかごに…中に彼を誘ったんじゃないんですか?ココに…」
巽がそう言いながら都筑の後ろを液と指で巧みに融かしはじめる。
――――――――――だからヤメロというのに!
「…っ…誘ってなんかいないって…ぁ…アッ!」
「嘘…」
抜き差しを何度も悪戯に繰り返して都筑をついばんでいく…
中をまさぐって自身を埋めようと脚を開かせ、都筑の感じる全てを指で刺激した。
「あの…っ…俺…昨日より調子悪…てっ…あぁんっ」
熱もあるし身体も全快してないって言いたい。思い煩ったせいか昨日の夜より元気がないのだ。せめてこの勢いじゃ耐えきれそうにない
って言いかけている。
判ってて巽は無視した…
「…ッ!」
亘理にしばらくは…って言われてるのも忘れて巽が抱き始めた。
いつもと違う。力強くて、激しい動きに都筑がおののく。
「っ…いた…い…やぁ…こんな…優しくして…よ…」
「存外こういう乱暴さが貴方には好感なんじゃないんでしょうかね?」
「…痛っ…ぁんっ」
片手で都筑の装飾を巽が翻弄する。
「…枯れるにはまだ早いですよ…」
「あっぅ…ヒィ…」
――――私だけの中で咲かせたい…花びらのひとつも誰にも見せるものか…
「綺麗ですよ…本当に美しくて、焦がれて焦がれて心が焼き付く…」
――――何を言ってる?このケダモノが…!
「あっ…あぁ!」
――――――芸術、絢爛、造形美…どんなモノさえこの人には叶わない。跪いて貴方に永遠の忠誠を誓うでしょうね…
―――――きっと、また泣く…泣かせてしまう…
巽の手に囲まれて涙が装飾から溢れた。ガクガク奮う都筑の中で同時に達した巽も全てを注いで抜いた。
愚行に至らされた都筑の唇
をなぞって耳朶を噛んだ。猛烈な攻めの余韻に都筑の苦痛の顔が少しだけ和らいだ。
…ふと意識の水面下に聞こえた巽の声…
「…馬鹿ですよね…私…貴方に都合の良い事ばかり押し付けて」
「…?」
「愛してるのに…好きなのに…上手く愛してあげられない…っ…」
―――――――言い訳のほうが随分上手いだけのくだらない男ですね…
「…いよ…そんな事ないって…何言ってんの、お前?」
「ふしあなだらけで、不器用で、ヘタクソな愛情しか伝えられない…口では奇麗事ばっかり並べて…本性は唯の我が侭な腐ったイキモノ
なんですよ」
「違う…俺、そんな風に思った事ないって…」
「きっとこれから嫌というほど見えてきますよ。そしてとうとう愛想を尽かして私は飽きられる…当然の末路でしょうね…情けなくて情けな
くて…」
「やめろよ…」
「どうも私は同じ轍を踏むみたいです…貴方を初めて抱いた時みたいに…」
苛められた鈍い躰をこらえて、都筑が形勢逆転させて巽を枕に押し付けた。この旦那様はほっとけば口からどんどん自責が出てくるらし
い…やめさせたくて思わずこういう衝動に駆られたのだ。
「俺、どんなオマエでもいいんだよ…ふしあなだって何だって構わない」
「…こんなに困らせてるのに?さっきの抱き方なんて最低でしょう?」
「完全な愛し方とか、上手い愛し方とか…そんなむつかしい事考えるなよ…目に見えないモノだから困って当たり前じゃんか」
「…」
「拗ねてめちゃくちゃ我が侭でも、鬼みたいなやつでもいいよ…どんな巽だっていいんだ…好きなんだから制限も枠もないんだ…俺、そ
れでもいいんだ…」
上から見える鮮やかなふたつの紫がじっとこちらを包んで見てくれる。さっきまで酷い事されてたっていうのに文句ひとつ言いやしない…
慈しんだこの眼差しにまた巽が救われる…これで何度目だろうか…
「俺らさ、…いろいろ傷ついて、むちゃくちゃし合って来たけど…それでもやっぱり嫌いにはなれなかった。むしろそんな時のほうがよっぽ
ど絆が深くなっていくの感じた事すらあっただろ?」
「…そうですね」
都筑がにこっとして巽にキスする。
「大好きだからだよ…本音だってなんだってぶつけていいよ…俺こう見えてもけっこう頑丈なんだからそうそう簡単に潰れたりしないよ
…」
「本音…」
クスクス笑って都筑が問う。
「巽の本音、教えてよ…愛してるって言ってるだけじゃ見えないモノを聞かせてよ…」
「…そんなのおこがましいですよ…きっと軽蔑されて…」
「言って」
本心は見抜かれてるんだ、後は言葉で形を紡ぐだけだよっていう表情で都筑が見つめる。
こんな時の彼の勘の鋭さ、それと美しさはぞっとするほどだ。
「…貴方を独占して、誰にも触らせたくない…見せたくない…私以外の者なんかに愛する事はさせたくない…」
「それで…?」
「だから貴方の瞳にも私以外のモノなんて映したくない…考えさせたくもないんです…我が侭だけど…」
――――――――…
全部白状させられた…
「言ったらスッキリした?」
「もう恥も外聞もありませんね…」
「そんなことないってバ、もっともっと好きになっっちゃった…大好き…オマエもっと我が侭でもいいくらい…」
巽の胸にぱふんと顔を埋めて都筑が微笑む。そっと都筑を抱きしめて巽が呟く。
「甘やかしてくださるのも嬉しいですけど…あんまりにも度が過ぎるのも考えモノですよ…貴方の身がもたない時は容赦なく指摘してくだ
さいよ…さっきだって歯止めもきかなくて…」
「別に嫌じゃなかったモン…」
「気を付けてても私だって夢中になったら判らなくなって…限界以上にたえられなかったらすぐに嫌だと言ってくださいね」
「…わかったよ…でもブレーキってなかなかかからないんじゃない?」
「…」
恥ずかしい会話に気付いて巽が赤面した。
都筑がコロコロ笑っている。
「で?なんやねん…お前はまた…俺の忠告も聞かんと…?まあ結構なコトやんかぁ…伯爵にまた刃物送られるんとちゃうかぁ?今度は
危ない爆薬とかちゃう?」
2日前に結局、巽は伯爵の嫌がらせに遭ったばかりだった。亘理が極秘にしてたのに何故か知れ渡ってしまったらしい…
「…ええ…ダメダメ人間なんですよ…人間以下です…」
「…都筑は?」
「…無理させてしまったんで…後で一応診ていただけません?明け方からえらく発熱して」
「言っとくけど、今度こそ忠告聞けや?もう俺も黙っとけへんで?」
「判ってます…私、あの人に全部白状させられましたからね…」
「白状って何やねん、それ?」
いろいろいきさつを大まかに話してしまった。意外にも都筑だけではなく巽まで亘理には結婚後にいろいろ話を聞いてもらっている。
「ああ…それ、前にも聞いた事あるわ」
「前にも?」
「都筑がな、『巽はいつも気を配り過ぎてるよ。いっそのこと全部吐き出しちゃえばすっきりするのに…もっと我が侭言えばいいんだ』って
言ってたからな…」
まどろみ…?
牡丹の香りがする…
(いつの会話だったか…)
「俺ねぇ、静かな所行ってみたいなぁ!アウトドアでもいい!」
「静かな?…いっそのことしばらくずっとそこに行って暮らしてみます?」
「ほんと?」
「今度の休暇にでも…いいかもしれませんね。」
「さっそく用意する!」
まだ休みまでずいぶん日があるというのに、ホンとに楽しみにしているらしい…
「早く来ないかな〜、バカンスなんて初めて!」
夏の間中、…ずっと二人きりだった。
言葉にならないくらい幸せで…
何に背いても、世界中を敵に回しても私は彼のものだと胸に刻んだ。
何もかも思い通りになるだなんて思ったことありません。
一緒に時を重ねて、あの人の笑顔にいつも清められて…他愛ない話でさえ嬉しくなって…
未来に…まだまだ話したい事がいっぱいあって…
ほんの僅かな瞬間のひとつひとつがたまらなく愛おしくて…
…神様…私は生きるためにあの人と一緒になることを望んだのです。
生きるために、互いに全てを共有しようと誓ったのです。
「一緒に、ずっといてくださいますか?」
「うん…?どぅしたのきゅうに」
「いいえ、お休みなさい。」
慈しんで、愛して…信頼、労り…言い尽くせないくらい…あの人への誓いはずっと破られる事はありません…
私達らしく、幸せなんです…
二人で約束したんです。悔いがないように生きていこうって…
――――――――そう、狩る必要だけはないみたい…
To be continued...