――――――――ありがとう、ふたりとも…
 
Kiss Kiss Kiss6
19990413
 
「おかえりぃ〜麻姫♪♪(抱き抱きぎゅぅっ)」 
「ただいまぁ〜(お返しぎゅぅっ♪)」 
小さなほっぺでスリスリした後、麻姫が都筑にキスした。 
「ママ、早かったのね。今日は久しぶりの出勤だったんでしょ?」 
「うん、俺、非常勤でぇ〜やる事少ないから。(…って失敗だらけで課長に帰れってどなられたけどさ…)」 
今ごろ、都筑の尻拭いを巽や密がしていることだろう… 
「ゲームしようぜ!!新しいソフト買って来たんだ!(せこいけど、特訓してたんだ…今度こそは…)」 
「ふん!麻姫に勝てると思ってるのぉ?麻姫やパパに勝ったこと無いクセに(ママってゲームヘタクソよね…ほんと)」 

…結局、都筑の連敗だった。 
「あ゛ぁもぉ!!なんでっ!!(特訓したのに!!)」 
都筑がヒスを起こしている。 
「お疲れ様。罰ゲームよ、ジュースとおやつ持ってきてね(しれっ)」 
「ちくしょぉ…なんでだろ(ブツブツ)」 
都筑がキッチンへ降りていった。 
麻姫がごろんと寝転んだ。 
―――ホントハね知ってるのよ…パパがママに勝ってママが拗ねた時、パパはすっごく優しい顔してるの 

…そしてこう言うのよ…「こんな事で勝負しても、私は結局貴方に負けてるんですけどねぇ…」って… 
くすくす♪ 
 
 

麻斗はまたモノを壊してくれた。 
「クラッシャー都筑」の名声が更に広まる。(溜め息) 

残業のせいですっかり遅くなってしまって… 
お腹を空かせた小犬達がふてくされてるんじゃないだろうか… 
「おかえりなさ〜い!パパ!」 
――――ドスンッ…ゴツッ… 
「あ゛ぁ、ごめんなさい!頭打ったの?今日は麻姫のお出迎えバージョンだったんだけど」 
「た、ただいま…大丈夫ですよ(いつから麻斗や麻姫はこんな飛びついてくるようになったんだろう…)」 
「でもゴツッって音が…」 
「大丈夫ですよ…?…何、何です、この匂いは…」 
「あのねぇ、ママと麻姫で晩ご飯つくったところなのよ!!パパ、今日遅かったから」 
「なっ!…あんた達が作ったんですか!!?(匂いどころじゃない…悪臭…腐乱臭のようなこの強烈な異臭…!!)」 
麻斗だけじゃない…そうだ、この子も恐ろしい味覚の持ち主だったのだ… 
「火は使ったら危ないって言われたから、麻姫は材料の混ぜ合わせをオリジナルで考えたのよ!味見してくれたママが美味しいって言ってくれたわ!」 
――――――…目眩が… 
「私も料理の才能があるのかしら(ウキウキ)」 
才能どころのハナシじゃありませんよ。 
バレンタインのチョコレートを二人から貰った時の悪夢が速攻で蘇るとは… 
ああ…あの時は2日寝込んだっけ…(泣) 
「パパ?どうしたの?早くテーブルについてよ」 
君は数学や物理なら…人も羨むほどの素晴らしい才能に恵まれているというのに、料理に関しての論理は持ってないんですか…?(泣) 
「アレー?二人ともなにしてんのぉ?はやく食べようよ。」 
都筑が巽におかえりなさいのキスしてテーブルに引っ張って行った… 

<●楽しい楽しい晩ご飯●> 

べらべら喋りまくる二人… 
「でね、この前渡したバレンタインチョコね、ラッピングは麻姫がしたのよ!」 
「それでさ〜、あのチョコめちゃくちゃ美味いって弓真ちゃん達に大好評だったんだよ。冥府最高のスーパーシェフとか言われちゃったよ(照れ照れ)」 
「でねっ、今度、おねーちゃん達と一緒に4人でスペシャルケーキを作ろうってさっき電話で決めた所なのよ」 
―――カラン…(フォークの落ちる音)(汗) 
「召喚課と事務の人達と…あとよくお世話になってる他の課の連中とぉ…いっぱい作るんだよ〜!!」 
「期待しててね。パパの分は一番大きなケー……聞いてる?パパ?」 
恐ろしい会話を前に旦那様が凍結… 
「せぇいちろー?どしたの?」 
「…(はぁっ!)え?ええ…聞いてますよ、…楽しみ…ですねぇ…(汗だくだく)」 
(コレ…夕食…?食べ物に見えるのにこの異臭は何なんです?作ってくれる気持ちだけでいいですよ。気持ちだけでね…(泣) 
麻斗、アナタにはさんざん料理の仕方を教えているのにどうして… 
あんた方、そんなぱくぱく食べて…なんともないのか?) 
 
 

食後、しばらく書斎で残った仕事を片づけるという“名目”で巽は、3時間程寝込んだ。 
12時前、胃腸の機能がようやく回復したので入浴してに下に降りてきた。 
「麻姫、寝る時間過ぎてますよ…って二人とも…」 
都筑と麻姫がTVの前でぐーすか寝ている。 
周りにはお菓子のクズが散乱している。 
まるでお腹いっぱいの小犬がくっついてすやすや眠っているような光景だった。 
とんとんと叩かれて都筑が起きた。 
「あれ…映画終わっちゃったの?途中まで見てたんだけど…」 
ヨダレ拭きなさい、と言ってハンカチ渡された。 
「麻斗…先に寝室に行ってなさい。私は麻姫を運びますよ。」 
「うん、…1時間くらい寝てたんだな…俺ら、あー変な寝方で肩こった。」 
寝起き…色っぽく髪をかきあげている都筑を見て巽が耳に息をかけた。 
一気に眠気が覚めてビクンと反応する都筑… 
「私のために睡眠取ってたと思えばいいでしょう?」 
「…」 
巽の唇がちょんと触れた。 
「寝かせませんよ…今夜は(こればっかりは負けてやりませんよ)」 
「…ぉぃ…」 
「明日は祭日ですしね。麻姫のショッピングは私が付き添いますから貴方は一日寝てていいですよ。(にっこり)」 
その後は言うまでもない。 
 
 
 

「もう3時ですね。かれこれ5時間くらいはうろうろしてるみたいで…」 
密が時計を見てげっそりしている。 
「この荷物、大漁ですよ。俺、そこの喫茶店ででも入って荷物を見ときますよ。巽さんの分の袋、貸してくださいよ」 
「こんな人込みの中、麻姫が呼び付けたとはいえ、つきあわせてしまって…すいません、黒埼君…」 
「いいんですよ。とことんつきあってあげてください。あいつの買い物にはもう俺ついていけません(汗)」 
巽と密は荷物持ち。 
先に密がリタイアした。 
「二人とも、早く!エレベーター来たわよー」 
「じゃ、あと1時間くらいで戻ってきますから。好きなもの頼んでくつろいでて下さい」 
「はあ…頑張ってくださいね」 

「ま、まだ買うんですか?おこずかいの無駄使いはいけませんよ…」 
「ううん、今度は弓真おねーちゃん達に買ってきてって頼まれた物よ。バーゲン期間中に出張だって嘆いてたの〜…で、代わりに麻姫が買ってきてあげるって約束しちゃった」 
「全くもう、今度は何ですか(げんなり)」 
エレベーター降りて巽がぎょっとした。 
「ちょ、ちょっと…あんた、この階は私、嫌ですよ。ここでいますからさっさと買ってきなさい」 
「はーい♪」 
婦人用品…特に下着専門店のずらぁーっと並んだ所 
エレベーター近くの壁にもたれて一服しながら、巽は娘のちょこちょこ歩いていく後ろ姿を見ていた。 
バーゲンセールにおける女性のパワーは凄い…と苦笑した。 
歩き回ってショッピングに付き添って、足が棒のようだ。 
――――――子供はほんとに元気ですねぇ… 
「さて…今日の夕食は何にしましょうか…」 
そういえば、今朝の麻斗は脚腰に力が入らないくらいよろよろだったな、とか思い出してしまった。 
少しやりすぎたか…と省みて微かに赤面していしまう。 
「もう!お前はこれから1週間、俺の奴隷だぞ!わかったな!」 
とか今朝方、ぶうぶう文句言ってた時の可愛らしい事… 
奴隷の作る食事をうんと食べて喜ばせてやらなければいけない。 
「お待たせ〜♪ねえ、最後にお花買いに行きたいの!」 
「花?うちの庭にも山ほど咲いてるじゃないですか」 
「ママへのおみやげのお花にグラデーションを作って貰うの♪」 
「はいはい…それじゃ下の喫茶店で黒崎君が待ってますからお茶して帰りましょうね(やっと終わりだ…くたくたですよ)」 

帰り道、巽と密は両手いっぱいの荷物を抱えながら姫のお供をした。 
「わあ、こんなに?ありがとうおじさん。」 
「お嬢ちゃん可愛いからこっちの花はサービスだよ。はい、気を付けてお帰り」 
「またね!」 
その時の花は生きていた。 
「ねえ、麻姫も持つわよ。重いでしょ?二人とも」 
花束とポーチ以外、手ぶらの麻姫が従者達に向かって無邪気に言う。 
この年でもう小さな貴婦人の風格のようだ。 
「食器なんてお前には持てないさ。落として割ったら拙いだろ?」 
「麻姫、この洋服の紙袋持って下さい…これだったら持てますよ」 
巽がよれよれだ。ゼエゼエ息を切らしてる。 
娘に負担かけさせないようにしてきたつもりだったが、さすがに手が痺れてきた。新しい魔法瓶や日用品の補充や帽子や靴のはいった箱など巽が殆ど持っている。車で来ればこんな苦労しないのに…、と何度も思ったけど…先日、都筑が勝手に乗り回してぶつけてくれたのでボッコボコ… 
現在、修理中… 
「あ、この袋にね、藤色のスカーフが入ってるのよ!ほらほら、ママに似合うと思わない?」 
「おい、こんな所で中身広げるなって!」 
信号待ちしている時に麻姫がはしゃいで戦利品を二人にみせびらかしてる。 
「あ、猫だー!かわいいー」 
愛らしい猫が街路の端で昼寝している。 
「麻姫、はぐれるなよ。ちゃんと連いて来いって」 
背伸びしてあくびしてから、その子がゆっくりと麻姫のほうに寄ってきた。 
随分と人懐こそうな猫だった。 
「わあ、あっちで寝てるのはあなたたちのお友達なの?みんな綺麗な毛並みね」 
猫を麻姫がなでた途端、その子はばたっと倒れた。 
「…どうしたの?」 
泡を吹き始めた猫… 
そして痙攣… 
「ねえ…大丈夫?お医者さんいかなきゃ…」 
抱きかかえようとして猫に触った。 
シュッ… 
「…!」 
白い猫が消えてしまった。 
――――――いない…?ここにいたのに…私が触ったら消えたわ… 
「おい!何やってんだよ!はぐれるぞ!」 
密の呼び声で我に返った。信号機が変わったので渡らなければならない。 
「い、今行くわ…」 
立ち上がろうとした瞬間ドクンとした。持ってた花が枯れているのだ。 
「うそ…」 
枯れた茶色になっている。 
―――――――… 
さっきまでは…確かに生きてたのに… 
綺麗な淡い藤色と山吹色ののグラデーションの花束だったのに… 

とてとてと後ろから追いついてきた麻姫に密が訊ねた。 
「花はどうしたんだよ?」 
「あ…お、落としちゃったの…さっきの橋で」 
「落としたぁ…?」 
びくびくしている麻姫の様子に密が訝しむ。 
「ご、ごめんね、パパ…せっかく買ったのに…」 
「いいえ、風が強くなってきましたからしょうがないですよ。…ああ、そこにも花屋さんがありますよ。麻姫、もう一度買っ」 
「買わない!もう帰るわ」 
「でも、ママが喜びますよ。さっきみたいなグラデーション、きっと嬉しがって」 
「い、いらないわ!は、早く帰ろう…麻姫、疲れちゃった。もう眠いの」 
きゅっと巽の袖を握って俯く娘を見て荷物を降ろした巽は頭を撫でてやった。 
花を落とした事で落ち込んでいるのを気に懸けているのだろう、とその時は判断した。 
この時点における巽の認識はまだ甘かった。 
これがはじまりだったのだ。 
「そうですか、じゃあ急ぎましょう。タクシー拾ったほうがいいですね。今日は疲れましたね」 
「う、うん」 
「帰ってゆっくり休みましょう」 
にっこり微笑む父親の顔を見てうおずおずと娘は必死で微笑んだ。 
何かを隠して… 
密が繭をひそめた。 
この時、一番疲労していた巽よりも密のほうが奇妙な感覚を覚えた。 
 
 

背中を射抜かれる感じがしない? 
気を付けないと消えてしまうよ 
 
 

「……どうしたんです?」 
口付けしても愛撫しても上の空って感じの都筑だった。巽が不安気に訊いた。 
「え…あ、なんか変な声聞こえて……ごめん」 
「…すいません。今日はもう休みましょう…」 
「あ、違うよ。お前のせいじゃないって、…最近気になる事あってさ」 
そっと都筑の薄い顎にキスしてから瞳を向けた。 
「麻姫がね、…俺の気のせいかもしれないけど、…聞くんだよ」 
「何を…?」 
「自分は死神になれるのかなって言ってた…」 
「貴方は…あの子に何を願うんですか…?」 
目を伏せた。都筑が答えに詰まった。 
しなやかに伸びる手をとって巽が見つめる。 
「…できれば…悲しい思いはさせたくないよ…」 
「…」 
自分と同じ事言ってくれる麻斗に巽が微笑む。 
「でも、それは自分で決める事だから…俺には何も…ただ、ちゃんと幸せになっていつも笑顔でいられるような所にいて欲しい…」 
「そうですね…」 
幾度も愛した体を静かに重ねた。互いに持ってる不安を打ち消すかのように…・ 
この夜だけは少し恐かった。 
 
 
 
 

6年前、『消せ』と言われた言葉が巽の脳裏に蘇る。 
 
 
 
 
 

 
 

To be continued... 
 
 

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