大人の関係・弐『私を呼ぶ声』
 
 

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「休暇命令…ですか」
「正しくは有給消化命令だ。20日分もたまっていると人事から苦情が来てな、それにお前このところ残業続きだっただろう?先月の残業、80時間を超えとる。なんとか休ませろと勧告がきた」
 そんなに働いただろうか。巽は苦虫を噛み潰したような課長の顔を見ながら、ぼんやりと考えていた。確かに先月は年度末で鬼のように忙しかった。自宅に帰りつくのも真夜中過ぎで、ろくに家事もできず家の中は荒れ放題。イライラしながら出勤したものだった。おまけに出勤したらしたで、都筑の尻拭いをせねばならないことが数回。いいかげんキレた巽に、タイミング良く邑輝との密会があったのは先週末であった。
「ああ、そうか。だから…」
「何だ?」
「いえ、独り言です」
 ぼそりと心もち頬を赤らめて巽が呟いた言葉に課長が耳ざとく反応した。が、それ以上の追求を拒みうまくはぐらかしてしまう。残りの連絡事項を確認して、巽は課長の前を下がった。
(あまり忙しいと思わなかったのは、やはりあの人のおかげなんでしょうかね)
 廊下の窓から外に視線をめぐらせた巽は、常に満開の桜の木の間をふわふわと飛ぶ蝶に合わせて記憶を辿っていった。
***
(今日もダメか…これで五度目だ)
 邑輝はドアを開ける前の僅かな期待感が急速に萎むのを感じて、深い溜息をついた。彼が今いる部屋は、初めて巽と肌を合わせた例のマンションである。巽と関係を持つようになってから、邑輝は毎週末をこのマンションで過ごすようになっていた。自分の勤務先の病院からも近いし、何より巽が来やすい。巽の職場である閻魔庁の地上の顔である国会議事堂から徒歩でもこれる。邑輝は二度目の逢瀬の時にここの合鍵を巽に渡し、都合のつく週末には来てくれるよう望んだ。そうしてここは邑輝と巽の秘密の情事の場となったが、ここ一ヶ月ほど巽は来ていなかった。年度末の決算に忙殺され、それどころではなかったのである。邑輝は不機嫌そうに唇をへの字に曲げると、リビングのソファに鞄とコートを投げ、上着まで乱暴に投げるとそのままネクタイを外しながら寝室へ入り、きちんとメークされたベッドにあお向けに横たわって二つ目の溜息とともに片手で顔を覆った。
(巽さん…会いたい。会ってあなたを抱きしめて、口付けて、それから…朝まで一晩中啼かせてやりたい。ねぇ、解ってます?私はあなたに骨抜きだ。私がハンターだったはずなのに、いつのまにかより深くとらわれているのは私の方になってしまった。お願いですから…会いに来てください、巽さん…征一郎)
「巽さん…征一郎さん…」
 切なげに呟かれた愛しい人の名前は、思わぬところで効果が現れたのである。
***
「ああもう!どうしてこう計算が合わないんでしょうね…ん?(じっと数字を眺める)ちょっと都筑さん!あんたここ間違ってますよ!何度説明したらわかるんですか!」
「ふぇ〜ん、ごめんなさい〜」
 邑輝が巽を恋しがってその名を呟いたのと同じ頃。年度末の決算に大忙しの召還課から、毎度お馴染みの巽の怒鳴り声&都筑の情けない、怯えた声が聞こえてきた。冬の短い太陽はすっかり西の空に沈み、時計はとうに七時を過ぎている。課内には書類不備で居残りを言い渡された都筑と、見張り兼自分の仕事の為に残っている巽、そして巽の機嫌の悪さに恐れをなした都筑に泣き付かれて残っている亘理の三人しかいなかった。自分の机で来週中に提出予定の書類を書いていた亘理は、軽く顔を上げてガミガミと都筑を叱りとばす巽を上目使いで見やり、内心深〜い溜息をついた。
(あ〜あ、こりゃあかんわ。巽のやつ、恐ろしく機嫌悪いわ。都筑なんか見捨てて帰ればよかった…。ほんま、貧乏籤引いたなぁ)
「何か言いましたか?亘理さん」
 聞こえるはずのない内心を読まれた亘理は、いきなり向けられた針のような視線に飛び上がった。
「何も言うてへんで。空耳ちゃうか?お前、疲れてるんやないか巽。もう帰ったほうが…」
 最後まで言わせず、巽はギロリと亘理を睨みながらまくしたてた。
「帰れるものならとっくに帰っていますよ!都筑さんの間違いさえなければ、今日は定時で帰れたはずだったのに。一番迷惑しているのは私なんですよ!」
「ひっ、酷い…俺だって一生懸命やっているのに。だいたい、巽が細かいところまでネチネチ文句つけるから」
「なんですってぇ?私がチェックしなかったら直接会計課から文句が来るんですよ。向こうはいちいちどこが間違いなのか言ってもくれないんですからね!都筑さんのやり方じゃ、出張旅費一回分だって百年かかりますよ!だいたい召還課では一番の古株のくせに、書類一つまともにできないあんたが悪い…」
 巽の小言は突然切られた。課内全体に響いた声の為に。
(巽さん…征一郎さん…)
 ただ一人の半身を呼ぶような、切なく甘い声が三人の耳に聞こえた。
「誰の声です…?あ…っ!(解ったらしい)…もう、あの人はっ!」
 首をかしげていた巽は、声の主に思い当たり、次の瞬間ボッと酒に酔ったように赤くなった。そして舌打ちしながら自分の鞄を掴むと、急いで課を飛び出していった。
「なに?今の声…なんだか聞いたことのある…あっ、巽!どこ行くの?」
 都筑の声にも振り向かず、走りかけた巽は廊下を曲がる手前で密と危うく正面衝突しそうになった。
「うわっ!」
 ぶつかって尻餅をつきそうになった密を思わず抱きしめて防ぐ。慌てていたので、巽は普段は密に接する時はガードしている自分の心をそのまま密に伝えてしまった。さっと顔色を変える密に、しまったという顔をしたが、もう戻せない。困ったように密を見つめながら立たせ、密が取り落とした袋を拾って持たせてやった。
「すみません、黒崎くん。慌てていたものですから。ちょうどよかった、都筑さんの見張りと書類、お願いします。あと何箇所か訂正すれば結構ですから。亘理さん、戸締りと都筑さんたちを送るの、お願いしますよ」
 何か言いたそうな密を残し、巽は足早に去っていった。課から出てきた都筑と亘理が密に近寄ってくる。
「あ〜あ、行ってもうた…血相変えて、らしゅうないな、巽」
「密、どうしたの?定時で帰ったんじゃなかったの?忘れ物?」
「お前が巽さんに残されているから、夕メシ差し入れにきたんじゃねぇか。ほら、食えよ。せっかく買ってきたんだからな。亘理さんもどうぞ。本当は都筑と巽さんの分だったんだけど。亘理さんまで居るとは思わなかったんで」
「そらごちそうさん。いやな、都筑が機嫌悪い巽と二人きりは嫌や言うて泣き付くから。おかげで坊におごってもらえて嬉しいわぁ。ありがとさん」
 亘理は差し出された袋からおにぎりを一つ取ると、パリパリと包装を解いてパクリとかぶりついた。
「あ、ずるい。俺にもちょうだい。密、ありがとうね。ごちそうさま」
「中に入って食えよ。廊下でなんてみっともない。亘理さんも早く、お茶入れますから。さぁ」
 二人は密に促されて課内に戻った。普段はお茶の時間に囲むローテーブルとソファに座った三人は、しばらく無言で密の差し入れを片付けるのに集中した。やがて袋の中身があらかた無くなり、密が再度入れてくれたお茶をすすると、亘理がポツリと呟いた。
「なぁ、都筑」
「う?にゃに?(何?)」
「食い終わってからしゃべれよ、汚ねぇな…。亘理さん、何かあったんですか?俺さっきぶつかった時、巽さんの心読んでしまったんですけど…」
「どうやった?」
「あの薮医者のことでいっぱいでしたよ。都筑、お前またあいつに何かされたのか?正直に言えよ!」
 邑輝のことになると冷静になれない密が都筑にくってかかる。それを制止して亘理が言った。
「坊、誤解や。今回は邑輝のダンナ、何もしてへんで」
「じゃあ何だって巽さん…でも…そう言えば巽さん、怒ってはいなかったような気がする」
「どんな感じやった?」
「こう…なんて言うか、怒ってはいるんだけど、照れてもいるような…憎悪じゃなくて、恥ずかしがっているような…そんな複雑な心境でしたよ」
「ねぇ、亘理。追いかけなくていいのかな?巽、大丈夫かな」
 心配そうに聞いてくる都筑と混乱している密を前にして、亘理は自分も頭を抱えたくなった。
「う〜ん、せやなぁ…なんや追いかけんほうがいいような気ぃするわ。巽のことやし、たぶん大丈夫やろ。追いかけていったら、なんやいらんもの見そうな嫌ぁ〜な気、するわ。放っとこ」
 納得しかねている都筑と密を促し、亘理は仕事の続きをやりだした。都筑もああは言ったものの、自分でも追いかけないほうがいいと思っていたのだろう、素直に書類に取りかかった。やがて都筑の仕事が終わり、元々急ぎの仕事ではなかった亘理も止めてしまって、三人は家路についた。時計を見ると八時を少し過ぎたくらいで、あたりはすっかり闇につつまれていた。地上では盛りの桜、冥府では常に満開の花々が夜空を彩っている。見事な桜並木の間から覗く月を見上げながら、亘理は巽を思った。
(巽…お前のことやから心配なんかせぇへんけど…ちゃんと帰ってこいよ。頼むで)
 亘理の内心に応えるように、月光が辺りをキラキラと照らした。
***
 さてこちらは噂の巽さん。勢いにまかせて地上に出、例のマンションへと駆けつけた。合鍵を取り出し、少々乱暴に鍵を開ける。玄関で靴を脱ぐと、邑輝がいるであろう寝室へとまっすぐに進んでいった。途中、リビングに鞄を置こうとして、ソファに投げられたままのコートと上着を見つけ、顔をしかめた。
(まったく…こういうところはだらしない人ですね。ちゃんと掛けておかないと皺になるでしょうが。また榊さんが困るでしょう)
 世話女房よろしく、巽は邑輝のコートと上着を腕に持つと寝室へ入いるため、ドアのノブに手をかけた。この部屋にウォークインクロゼットがあるのである。ノブを回そうとする寸前、それは寝室の側から開いた。内側に引っ張られて、巽がよろける。空を泳ぐ体を、広い胸が受け止めた。足元にコートと上着がパサリと落ちる。
「巽さん…?来てくれたんですね」
 嬉しそうな声が頭上から降ってきた。その声を聞いたとたん、巽はさっき召還課内で味わった恥ずかしさと照れを思い出し、抱きしめてくる手を振り切って胸から逃れた。
「あんたねぇ、なんだってあんなことをするんです?私とのこと、都筑さん達にバレてしまいますよ?まさか公にしたいわけじゃないでしょう?少し自重してください!」
 邑輝はきょとんとして、まくしたてる巽を見つめた。一ヶ月ぶりに会えたのに、この人は何を怒っているのだろう?
「あんなことって?何かしましたっけ?」
「しらばっくれるのは止めなさい。召還課全体に響くような声で私を呼んだりして!今日は都筑さんと亘理さんの二人しかいなかったからまだ口止めできますけど、これが課長も在室の時に言われた日にはもう…誤魔かしきれませんよ!」
「…つまり、私のあなたを呼ぶ声が閻魔庁のあなたの職場まで聞こえたと。ふぅん、やってみるものですねぇ。そうですか、冥府まで聞こえたんですか」
「白々しい。あんた、何か術を使ったんでしょう?忙しくて約束通りこれない私に当て付けて。私だって、わざと来なかったわけじゃないんですよ!今日だって、都筑さんのミスさえなかったら」
「来てくれるつもりだったんですね。嬉しいですよ、征一郎さん」
 邑輝は怒る巽を引き寄せ、有無をいわせず胸に抱きこんだ。向かい合って抱き合う二人の鼓動が重なる。耳元をくすぐる邑輝の呼吸が、巽の背筋をざわめかせた。
「人の話を聞きなさい。一体何の術を使ったんです?」
「何もしてませんよ。ただ、呟いただけです。あなたの名前をね」
 それを聞いて、巽はまるで茹でたタコのように真っ赤になった。切なく自分の名を呼ぶ声が蘇る。巽は背を反らせて邑輝の顔を見つめ、まだ少し疑わしそうな声で確認した。
「…本当に何の小細工もしなかったんですね?」
「していません。呟いただけですよ、本当に。想いのたけを込めて…」
 左手が巽の背中を抱き、右手が眼鏡を外しにかかる。目を閉じて邑輝の好きにさせた巽を仰向かせ、そのまま唇が重なった。もう何度交わしたか数え切れない邑輝との口付け。最初から、邑輝の唇は巽のそれとひどく馴染んでいた。軽く啄ばむように口付けるときも、激しく喰らうように貪るときも、まるで二つに裂かれた木片がぴったりと合うように、しっくりと重なる。一ヶ月の空白を埋めるように、邑輝は巽の唇を丹念に味わった。舌先で形の良い唇の輪郭をたどる。くすぐったさに僅かに開かれた隙間から侵入し、巽の舌を絡めとって音がするまで貪った。室内に淫靡な音が響く。いつの間にか、巽の上着は床へ落とされ、ネクタイは緩められて申し訳程度に首に絡まっている状態になっていた。深い口付けに巽の膝がガクガクと震え、一人で立っていられなくなる。巽は両手で邑輝の背中に縋り、情欲に潤んだ瞳で邑輝を見上げた。邑輝はその瞼に頬に口付けの雨を降らせ、そのまま首筋へと唇を滑らせた。
「巽さん…」
 耳元で囁かれる声に身体が震える。巽はそのまま、邑輝の腕に身を委ねた。
***
 寝室のドアからベッドまでの短い距離に、点々と二人分の服が散らばっている。広いベッドの上ではそれらの持ち主達が全裸で快楽に溺れていた。全身に隈なく邑輝の愛撫の洗礼を受け、巽の意識は朦朧としていた。巧みに弱いところを攻めてくる邑輝の手管に翻弄されて、理性は疾うに吹き飛び、ただ与えられる快感に身体が溶けていく。皮膚を剥がされ、剥き出しの神経を直に触れられているのではと思うくらい敏感になった肌は、薄く盛りあがった胸の間を伝わる汗にすら身悶えしてしまった。仰向けに横たわった巽に重なるように乗り上げ、その脇腹を撫でていた邑輝の手が股間に伸びる。身体中をさんざん煽られたせいですでに固くなっていた巽の分身は、握られただけで達しそうになった。幹を握った手が素早く根元に動き、ギュッと締めて射精を止める。放出を止められた熱は巽の身体を逆流し、甲高い悲鳴をあげさせた。
「ドクター…一貴さ…ん…」
 その濡れた声に、邑輝は肩口に埋めていた顔を起こし、熱にうかされた巽の顔をのぞきこんだ。開いている手で巽の額に貼り付いた亜麻色の髪をすいてやると、涙に濡れた蒼い瞳が解放を懇願する。邑輝は上体を起こすと、巽の右足をまたいで左足を自分の肩にかつぎあげた。ひどく淫らな姿勢をとらされて、巽の奥は邑輝に丸見えになる。その奥まった秘所に自身をあてがい、邑輝はぐっと腰を進めた。熱く猛々しいものが無慈悲に侵入してくる。だが十分にとろかされた秘部は、無理なく邑輝を飲み込んでいった。身体の奥に異物が入ってくる強烈な刺激。放ちたい欲望が急速に膨らみ、しかし果たせない苦しさに、巽は邑輝の腕をつかんで力任せに握った。
「痛…っ!巽さん…もう少し我慢してください…一緒にイキたいんですよ。だからもう少し、堪えてください」
 邑輝の言葉に、巽はありったけの自制心を使って欲を押さえた。荒れ狂う熱が、巽に絶え間ない声をあげさせる。そんな巽の様子に、邑輝は自身の全部を埋めてしまうと、律動を始めた。互いの柔らかい性器がぶつかり合い擦れ合い、どこまでも欲望が育っていく。やがて邑輝の動きが速くなり、巽の根元の戒めが緩められた。とたんに欲望が破裂する。同時に奥に邑輝の熱を感じ、閉じた目の裏側で白い閃光が爆発した。
***
「…さん、巽さん」
 ペチペチと頬を軽く叩かれて、巽はうっすらと目を開けた。目の前の銀色の瞳が心配そうに自分を見つめている。巽は二、三度瞬きをすると、手を上げて邑輝の頬に触れた。
「気絶していましたか、私は」
「ええ、ほんの五分ほど。無理させてしまったようですね、すみませんでした」
「…水を貰えますか。咽が痛い」
「わかりました。待っていてください」
 邑輝は巽が案外しっかり喋るのにほっとして、キッチンへ水を取りにいった。巽は身を起こそうと肘をついて起きあがったが、腰に力がはいらず、再びシーツの上に突っ伏してしまった。舌打ちしていると、邑輝が手にコップとミネラルウォーターを持って戻ってきた。ローチェストの上に水とコップを置くと、巽に手を貸して起き上がらせる。激しい情事のため、下に落ちてしまった枕を拾い、ヘッドボードとそれに凭れる巽の腰との間に当てがって座らせた。腰が立たないのが恥ずかしいのか、巽は押し黙って座っている。そんな恋人の様子に苦笑して、邑輝はコップに水を注ぎ、巽に差し出した。無言のまま受け取って一息に飲み干す。咽を湿らせて人心地ついたのか、巽はほっと息をつくと邑輝に礼を言った。
「ありがとう。もう一杯いただけますか?」
「はい、どうぞ」
 かいがいしく世話をやく邑輝。最初の頃は、邑輝に後始末やら世話をしてもらうのを恥ずかしがっていた巽だが、今ではすっかりそれに慣れてしまった。以前一度拒否したことがあったが、拗ねた邑輝からその次の逢瀬の時に『朝まで寝かせない』という報復が返ってきた。以来、巽はよっぽど恥ずかしいことでない限り、邑輝の好きにさせているのである。しかし、今日は恥ずかしいのなんのではなく、本当に動けなくて世話になっているのが悔しかった。
「…ドクター。あんた今日は少しやり過ぎたと思いませんでしたか?」
「まぁ、多少は。すみませんでしたねぇ、一ヶ月も会わないでいると歯止めがきかなくて」
「あんな恥ずかしい格好をさせられたのは初めてですよ。我慢させられたのもね。もう少し手加減していただきたいものです」
「…寂しかったのですよ。あなたに会いたくて仕方なかった。しかし、冥府にまで呼び声が通じるとは思いませんでしたよ。今度からこの手を使いましょうかね」
「やめなさい。どんなに忙しくても、無理してでも時間つくりますから。私も週に一度か半月に一度、あんたと会っていたほうが精神衛生上いいようだ。ねぇ一貴さん。会いたがっていたのはあんただけじゃないんですよ」
「本当ですか?あなたも私に会いたいと思ってくださっていたと?」
「ええ、悔しいことにね。あんたの声を無視することもできたのに、私はここへ来てしまった。仕事の忙しさから一時的に逃れたかっただけかもしれませんが、あんたの声を聞いたら反射的に課を飛び出していましたよ。私もあんたと会ってこうしたかったのですよ…」
 巽はベッドに腰掛けた邑輝を引き倒して、自分の胸に抱き込んだ。銀糸を指で梳りながら、額に唇を落す。邑輝は目を閉じて巽の胸に顔を埋めた。そのままおとなしくしているのかと思えば、赤い胸の飾りに舌で触れたりしていたずらを始める。巽は邑輝の頭を剥がすと行為を中断させた。
「今夜はもう勘弁してください。まだ明日も明後日もあるでしょう?月曜の朝まで一緒にいますから…ね?」
「約束しましたよ。月曜の朝まで、あなたは私のものだ」
 巽はにっこりと笑うと、自分から邑輝に口付けた。
『私を呼ぶ声』終
*** 




コメント
「できてる二人」、第二弾です。これを書いていた頃は、本当に忙しい時期でした。今年はなぜか例年なら暇なはずの月も忙しく、気分転換がうまくできずに爆発した結果、こんなものができました。自分で書いておきながらすごく恥ずかしい二人…とうとう都筑達にはばれてしまったようですし、これからどうすんでしょうね?無敵のカップルとして二人の幸せ目指してくださいませ (須恵) 



(管理人@市東あきら)
須恵様有り難うございましたm(_ _)m
恋しい人に長く会えないと、寂しいですよね・・・。
願いが耳に聞こえて来て慌ててかけつけた巽さん。もうすぐ会えるのだ、と胸がいっぱいになるその瞬間・・・まだ会ってもいないのにどうしてかたまらなく嬉しくて心弾む事ができるという真っ直ぐな感情は人間の宝ですね・・・人のこういった所が好きです。
巽さんにお水を渡してかいがいしくお世話するドクターがとても頼もしいです(^^)


邑輝Ic「巽さん、美しかったですよ」
巽Ic「・・・携帯、教えましょうか?」
邑輝Ic「おや、おしえてくださるんですか?(^^)」
巽Ic「地上からでもつながりますよ。これで呼び出す方がいいかもしれません。(しょっちゅぅ頭に聞こえると仕事に集中できなくなる(////)・・・ただし」
邑輝Ic「はい?」
巽Ic「かけてもいいのは一日一回だけです。勤務時間はかけないで下さい。仕事の邪魔になりますから。自宅のほうにかけても一回と見なします(きっぱり)」
邑輝Ic「わかりました(^^)」
巽Ic「・・・(いやにすんなり了解するな)」
邑輝Ic「かけるのは1回、そして・・・ぼそぼそ(耳元で囁く)」
巽Ic「な、何を言うんですか!!?ちょっと、あんた!(/////)」
邑輝Ic「くす(にーっこり)」

はぁ・・・何を言わせてるのだ、管理人(////)
 
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