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寝台に横たわり、力尽きた躰は、熱い感覚を未だ手放そうとはしなかった。殊更、今夜は長く感じられた。執拗に扱われたせいでもあったが、それに狂ったように応じ、喘ぎ続けた自身の痴態に呆れ返ってしまう。自分の羞恥心を、巽は思い返すのも忌々しいと感じ、とにかくはやく眠ってしまいたかった。だが、寝苦しい気温と湿度のせいか、しばらくして巽は全身に残る余韻と蒸気を不快に感じ始めた。眠れぬ夜故、夢の精霊達にはなかなか会えそうにない。
――熱い……
暗闇の中、隣で横たわる人物が起き上がるのが見えた。半開きの目でも、それくらいは確認できる。薄暗い人影の主…先刻まで自分を抱いていた男。
白い躰に白い髪…美しい造詣を持つ巽の主である。
いつになく冷涼さを保つ風貌の邑輝も同じようなことを感じたのだろうか、巽に代わって立ち上がり、彼はさっさと窓を開けた。外の空気を入れようとする邑輝を、ぼやけた瞳で巽は見ていた。最早、動くことすらできずに全身を投げ出し、うつ伏せになっている巽は涼しさに救われる。熱を冷ますような心地よい風が来たのだ。
これでようやく眠れると安堵した巽は目を閉じようとした。ところがその時、突然主は声を発してそれを引き止めた。
「…居住地を変えようかと思っているのですがね。征一郎、貴方は何処に行きたいですか?」
――なんだ、起きているのを知っていたのか…
狸寝入りも通じなかった。
「四季のある地、常夏の地…ああ、海辺の近くで波の音を聴きながら眠る夜もいいかもしれませんね…」
「何処に、とは…ここに永住するつもりで城を構えたのではなかったのですか?元々、旦那様は荒れて、不毛であったこの土地を開き、村に開拓資金を与えてまでここを蘇らせた立派な貢献者であるのに」
「ここ数年、麓の村は凶作続きでね…運ばれてくる食材が良くない。質が落ちた。それに、水も不足しているとか…それは資金を出しただけで、人畜無蓋を装い続けた城主たる私の片目が不吉なせいだ、とも噂される始末でね…そんな言い掛かりを付ける出入りの商人が、余計なことを言いふらして皆に不安を撒き散らしたようで、どうも居心地が良くない」
「その商人達にこの地から出ていってもらえばいいんです。貴方様が腰を動かすことなどありません」
「まあ、いろいろ考えているんですよ。結論は急いで出すつもりはありません」
「旦那様……」
「心配はいりませんよ。不要なものはいつでも膿を出し切らないと後味も良くないでしょうし」
眠りつく前に聞えた最後の言葉を、巽は理解できなかった。