昔々、機械が栄華を極めるよりずっと昔、神と呼ばれる存在が人間と共存していたときの話・・・
現人神と呼ばれるものがその当時、悪行のかぎりをつくしていた禍神に反乱を起こした。
禍神は現人神の軍隊の総攻撃を受け、もはや禍神一人となっていた。
しかし、禍神の力は尋常ではなく次第に現人神が不利の状況に追い詰められていった。
しかし、現人神は禁じられし呪法を使い禍神をあと一歩のところまで追い詰めることに成功する・・・。
だが、禍神は最後の最後に現人神に呪いをかけた。
禍神はかすれた声でこう言った
「ソノ、呪イハ末代先マデオ前ノ一族ヲ呪オウ。ソノ、呪蛇紋ガソノ証ダ・・・」
その、不気味な言葉を残し禍神は霧のように消え去った・・・
「や、やった!ついに俺たちも自由だ!」
一人の兵士が歓喜の声を上げた
「これからも平和な時を過ごせますように・・・」
どこからか神に祈りをささげる声が聞こえる
だが、誰も気づいてはいなかった。現人神の呪蛇紋が赤黒い光を放っていることを・・・。

数千年後・・・

ここは、ライカの郊外にある小さな村の森、その中に一人の女性がいた。
彼女は大道芸をして旅をしていたが今、近くを通ったので姉に顔でも見せようかと村へ向かっていた
彼女の名はソニア・エクリプス、年は20歳前後、金髪の髪に青い瞳、整った顔立ち・・・いわゆる美人だ
しかし、彼女にはおかしな点が二つあった
まず、一つは女性が持つには不釣合いな腰にある黒鞘に収められた刀
もう一つは彼女の右腕にある蛇の絡みついたような痣である
ふう、とため息をつき近くの岩に腰を掛ける
「姉さん元気かな?あと、サードも元気かしら?」
そういって顔が自然とほころぶ
「この前会ったときはサードまだこんなに小さかったからなぁ」
そういって手を自分の膝のあたりに持ってくる
「さ、早く行ってサードを抱きまくってやる!さあ、行くぞ私」
自分に喝を入れながら村への道を再び歩き始める

数時間後・・・

村の近くまで行くとソニアは村の異変に気がついた
(何?この感じ・・・嫌な予感がする・・・)
ソニアは村への道を走り出した
やがて村が見え始めた。しかし・・・
村があった場所には何もなく荒野が広がっていた
「どういうこと?なにがあったのよ!」
(そうだ、姉さんとサードは?!) 「姉さん!サード!何処にいるの?!」
ソニアは叫びながら前、姉の家のあった場所へ走り出す
姉の家に着くと一人の人影を見つける
影からすると年は3つぐらいだろうか?

ソニアにはその人影に心あたりがあった 「サード?サードなの?!」
ソニアは人影に話しかける
「・・・ひっく・・・ぐす・・・マ・・マぁ・・・ひっく」
サードと呼ばれた人影は嗚咽を上げながらソニアにふらふらと近づいてくる
「サード?!無事なの?姉さんは?」
「・・・ひっく・・・ぐす・・・マ・・マぁ・・・ひっく」
サードは同じことを繰り返していた
ソニアはサードに異変を感じた
(?この感じは・・・まさか!)
ソニアはサードの両腕をしげしげと見つめる
そして、サードの左腕に自分と同じ痣を見つける
(やっぱり・・・この子にも私と同じ呪蛇紋が・・・)
(この子には私と同じ道を歩ませたくない・・・。でも・・・殺せない。だって、姉さんの子よ?今から精神を鍛えれば・・・暴走しないかもしれない)
ソニアは淡い期待を信じてみることに決めた
「サード?私と一緒に行く?」
ソニアは優しい口調で言った
「う・・・ん、姉ちゃと一緒に・・・行く」
サードはかすれた声でそう答えた
「じゃ、行こうか?」
ソニアはサードの手を繋ぎ元来た道を引き返した

3年の月日が流れサードは6歳になった
ソニアとサードは本当の家族のように他の人からは見えたらしい
ある村でのこと
「おっ、奥さんウチでなにか買っていってよ!」
「奥さん?」
「だって、子供連れてるじゃないか」
心なしか口元ヒクヒクと引きつっている 「私は・・・私はまだピチピチの23だー!!」

ドガッ!

「くす、奥さんだって」
「何か言ったかな?サード君?」
「なんでもないです。お姉様」
サードは最初は無表情だったがこの3年間の間に次第に笑顔を取り戻すようになっていった
この、3年の間にソニアはサードに自分の知っていること全てを教えた
大道芸、抜刀術、体術、炊事、洗濯、そして生きる術の全てを・・・
抜刀術に関してはすでに達人の域に達していた
魔術は、サードはかなりの魔力があるものの、その魔力を具現化できなかった
しかし、他の物に魔力を込めることはできた。
サードの抜刀術は武器に魔力を込めて扱うものでその、威力にソニアは驚愕した
魔術も決して使えないというわけではなく対象物に触れてなら何とか使えることができた
大陸から大陸を旅しているためかサードは日に日にたくましく成長していった
ある日ソニアは全ての真実をサードに教えようと思った
(もう・・・大丈夫だよね?・・・一人でもこの子は生きていける。私の身体もそろそろ限界ね・・・)
「ふうソニア、今日の稼ぎはまあまあだね?」
「・・・え?何?サード」
「どうした?なんか最近おかしいぞ?」
「サード、今から本当のことを話すわ・・・」
しばらく重い沈黙が部辺りをを包みこむ しかし、ソニアは覚悟を決めたような表情で淡々と続ける
「前に、私が本当の母親じゃないことは言ったよね?そして、サードのお母さんはもういないってことも・・・」
サードは無表情で答えた
「うん・・・」
「実はね・・・ねえさんが死んだのは・・・君のせいなの・・・」
「!?」
サードは流石に驚きを隠せないような困惑した表情をした
「君の左腕に痣があるよね?・・・それは呪蛇紋っていって昔、禍神が現人神にかけた消えることのない呪いなの・・・。君が生まれた時にそれが暴走して村を吹っ飛ばしたのよ・・・」
サードには左腕にある痣を怨めしげに見つめる
その顔には恐れ、恐怖、不安すべての負の感情が見てとれる
今にも壊れてしまいそうなサードをぎゅっと抱きしめる
「その、呪蛇紋って封印とか制御とかできないの?」
「サード、両手を出して?」
サードはなんで?と言いながらまだ幼い両手を差し出す
ソニアはいいからいいから♪と言いながら半ば強引にサードの両手に赤い宝石のついたグローブをはめる
「この、グローブが呪蛇紋の暴走を抑えるわ・・・。でも、完全じゃない」
「この、呪いを解くには術者を殺すしかないの・・・だから、あなたの代で呪いを終わらせて?」
「できるの?俺に・・・」
「できなくてもいい・・・。あなたにはあなたの生きる道がある私の教えた大道芸で静かに暮らすこともできる・・・でも」
ソニアの瞳からは大粒の涙が零れていた。
自分の子のように育てたサードにそんな過酷なことはさせたくない
「でもね、あなたの子もその子も同じ道を歩むのよ?それは嫌でしょう?」
「だから・・・できればあなたの代でこんなことは終わらせて欲しい・・・」
サードは俯いたまましばらく考え込むような表情をする
そして、数分後サードが重い口を開く
「やる・・・俺の代でこんなことは終わりにするんだ!」
「そう・・・ありがとう・・・そして、ごめんね・・・じゃあ、私の役目も終わりだね・・・サード世界中の人を笑わせてあげて・・・」
「大丈夫だよサード。死んだ人は、その人のことを思ってくれる人たちの心に散って行く・・・だから、私はあなたといつも共にある・・・」
そういってサードの頭を2,3度優しく撫でる
(私の役目も終わり?)
サードが顔を上げるともうそこにはソニアの姿は無かった
まるですべてが夢だったかのように・・・
ソニアという女性は最初から存在してなかったかのように思えた

しかし、サードの頭にはソニアの優しい手のぬくもりがしっかりと残っていた
(あれ?おかしいな?もう、泣けないと思ってたのに・・・)
サードは涙を流していた。母が死んでソニアに見つけらて以来である
その、涙は三日三晩止まることはなかった・・・
ここからサードの運命の輪が静かにしかし確実に回り始める・・・