第一章  「始まりの夜、終わりの夜」

(1)

 「桐葉ぁ〜」

 私を呼ぶ声がする。振り向くと親友の幸だ。

 「何?幸どうしたの?」

 幸は私の元まで来ると息を切らせながら話しかけてきた。肩で息をしている。いったい誰だけ走ったのだろうか?教室で話が出来るというのに・・・

 「はぁはぁ・・・今日も彼氏とデート?」

 開口一番このセリフだ・・・わざわざ走ってきてまで聞く程の事だろうか、と思いながらも私は照れながら

 「うん、まぁ・・・ね」

 「何よ。今更照れる事無いじゃない!」

 幸は笑いながら私の肩を叩く。

 「もう痛いじゃない」

 私も笑いながら幸に言う。すると幸はさらに笑い

 「あーあ、何よ。のろけちゃって。友情よりは所詮男女の愛かぁ・・・」

 「のろけるも何も幸から聞いてきたんじゃない!それに昨日だってあなたの買い物につき合ってあげたでしょ?おかげでデート遅刻しちゃったんだから」

 「あれ?そうだっけ・・・ごめんね!間に合うかと思ったんだけど・・・」

 「間に合う分けないでしょ。幸ったらいくら言っても聞いてくれなかったけど幸と別れた時点でもう約束の時間過ぎてたんだから」

 「えへへ・・・」

 そういって申し訳なさそうに笑う。こうなるとこっちもこれ以上言う気が起きない。

 「で、怒られた?怒られたんなら私が事情を言ってあげるけど。『桐葉は私が買い物につき合わせて遅刻したんだから怒らないで〜』って」

 幸もいくらか悪気を感じているようだ。まるで反省してないような言い方だが根が明るい幸はこういった物言いしかできない。私はそれを知っているから幸の反省は伝わってくる。

 「ううん。怒らなかったわよ」

 「へー、いい彼じゃない。桐葉にはもったいないなぁ」

 「何ですって!!」

 笑いながら追いかける私に幸は

 「わー、冗談だって。お似合いです、桐葉様〜」

 ・・・これが当たり前だった日常・・・これがどれほど幸せなのかもこのときの私は知らなかった・・・

 

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