兎走〜兎華乃の決意〜




ここは四尾城より少し離れた所にある魔兎族の集落地。
日差しも暖かくなり陽気な気分の今日この頃。
最近は何事もなく平穏な日々が続いていた。
そして今日も・・・。
「兎華乃様、兎華乃様。いらっしゃらないんですか?」
私が寝るのを邪魔しに来たと言わんばかりに大声を上げてドタドタと走ってくる。
「あぁん、もぅうっさいわね。そんなに叫ばなくても聞こえてるわよ。」
「ここにいらしてたんですか。それならそうと言って・・・。」
私は喋るのを遮って話しはじめた。
「それで何か用なの兎奈美?これで花見でもしましょうよぉ・・・なんて言ってみなさい。
殺すわよ。」
私は眠そうな眼をこすりながら言った。
「もうそんな事言ってる場合じゃないですよ。蛇渇が来たんですよぉ。」
「なぁにぃ、蛇渇ぅ?あぁん、もうめんどくさいわね。適当に追い返せないの?」
「いえ、それがもうそこらへんまで・・・・。」
えへっと笑う兎奈美をゲンコツでどついて私はふぅっと一息だけ溜め息をついた。
そして次の瞬間、巨大な兎の姿へと変身した。普段はあまりこの状態にならないんだけど
誰かと会う時とか、魔兎族の長として話す時はこの格好だ。
「もうしょうがないわね。さっさと呼んできて頂戴。私あいつ嫌いなのよ。」
「もうきとるわ。」
そういう一言いうと気味の悪い男が一人現れた。
人間の髑髏をとってつけたような顔の醜い男だ。たいした力も無いくせに左道士監だかなんだ
かしらないけど偉そうでとにかくむかつくのよね。
「あんたどういう性格してる訳ぇ?どんな風に生きてきたらずかずかとレディの部屋に入っ
てこれんのよ?」
「なぁにがレディだ。ただのでっかい兎ではないか?」
わたしは血管がピクピクいうのを堪えながら
「それで?狗根国の左道士監様が何用で?わざわざお茶でもって訳じゃないでしょ。」
私は絶対したくない事を心を込めて精一杯いやみったらしく言ってやった。
「阿呆か!なんでわしがお前らとお茶を飲まんといかんのだ。」
「誰が阿呆よ。そんなの冗談に決まってるでしょ。どうでもいいからさっさと用件言って
帰ってくれる?私もそんなに暇じゃないのよね。」
「そう言う兎華乃様私が来るまでうとうとと寝てたじゃないないですかぁ・・・。」
あたしの殴ったところをおさえながら兎奈美が口を挟む。私はそれを眼で黙らせると話
に戻った。
「海老乃城まで落とされた。四尾城まで来るのにそう時間はかかるまい。そこでだ・・・
お前らからも兵を出せ。」
「落とされたって耶麻台国軍にぃ?あんたんとこの兵士もたいしたことないわねぇ。」
「そんなことはどうでもいいわ!!とにかく用件はそれだけだ。」
そう言い残すと蛇渇はフッと姿を消した。私はもうあいつが帰ってこないのを確認したうえ
で人間の姿に戻った。
「あ〜あぁもうめんどくさいわねぇ。あの馬鹿、この私をでかい兎ですってぇ馬鹿はどっちだ
ってんのよ。あ〜むかつく。」
「で、どうするんですか?」
「何が?」
「だから兵を出せって話ですよぉ・・・。」
「そんなのしらないわよ!!・・・っていうわけにもいかないし、兎奈美。あんた兎音と二人
で適当にやって頂戴。」
「そんなぁ、酷いですよ兎華乃様ぁ。」
涙眼で訴える兎奈美をポイっと部屋から放り出し再び私は安眠に入った。


それから2、3日が経過したころか。一人の兵士が足早に私の部屋にやってきた。
「兎華乃様大変でございます。」
今日は兎奈美ではなかった。・・・そっか兎奈美は今四尾城に向かわせてるんだった。
「でぇ、何が大変なのよ?」
私はめんどくさそうに対応した。
「はっ、先程の報告ですが、どうやら四尾城が落とされたもようです。」
「だ〜か〜ら〜、それのどこが大変なのよぉ。」
「それが、四尾城の戦いで兎音様と兎奈美様が行方不明になられました。いくつかの情報によ
りますとどうやら耶麻台国軍に協力してるらしいんです。」
私はあきれて物が言えなかった。そりゃ偉そうな蛇渇がいる狗根国も嫌いだけど耶麻台国軍に
協力するのもしゃくだし・・・。
私はしばらく考えた。
「兎華・・乃様?」
「ああ、うっさい少し黙ってくれる。」
そういうと私はまた黙々と考え始めた。
どれくらい思い悩んだ事だろう。私はようやく重い腰を上げることにした。
「ちょっと出かけてくるわ。」
「はっ?どちらへ行かれるのですか?」
「あんたも鈍いわねぇ。耶麻台国軍が四尾城(そこ)まで来てんのよ。ちょこっと挨拶に行ってくる
のよ。っと言うことであとよろしく。」
と言い残し部屋を出ようと思った・・・けど、
「あっ、そうそう言い忘れるとこだったわ。もししばらくして私も帰ってこなかったらあんたら
好きなようにしていいわよ。」
そう言うと今度こそ私は部屋を出て四尾城へと向かった。


「九峪様。九峪様に会いたいと言うものが来ておられますがいかがいたしましょう?」
チョビ髭で眼鏡をかけた男が慌てて入ってくる。内政をやってくれている嵩虎だ。
「嵩虎。その人は美人かい?」
「いえ・・・・それがその・・・・兎なんです。」
「兎ぃ?兎音と兎奈美の親戚か何かかな?まあいいや、会うから通してくれ。」
しばらくして嵩虎は一人いや一匹の兎を連れてきた。
「九峪様、連れてまいりました。」
「あんたが耶麻台国軍の総代将?兵士のしつけがなってないわねぇ。」
「いや、その・・・」
俺が返答に困っていると彼女は、
「もうあんたんとこの兵士といいあんたといい・・・女の子が来てるのよ、椅子の1つや2つ薦め
られないの?まったく・・・。」

「あっ、ああ・・・兎でも椅子に座るんだな・・・・。」 「何よぉ、しっつれ〜しちゃうわねぇ。解ったわよ、この姿じゃなければいいんでしょ?この姿で
なければ。」
一人で文句をブツブツいいながら彼女は息を大きく吸い込み静かに吐き出した。
俺は次の瞬間眼を疑った。
なんと目の前に立っていたはずの大きな兎が可愛い女の子の姿に変わっているではないか。
「これで文句無いでしょ。だったらさっさと椅子くらい薦めたら。」
俺はその声でハッと我に返った。これまで不思議な事がいろいろあったがこれにも驚かされる。
「ああ、すまない。じゃあそのへんの椅子に掛けてくれ。」
そう言って彼女が座るのを待って、俺は彼女の正面の椅子に腰掛けた。
「それで君は兎音と兎華乃の知り・・・・」
「もぉ、お茶の1つも出せないわけ?」
「あっ、ああ・・・嵩虎彼女にお茶を・・・」
俺は嵩虎に頼んでお茶を持ってきてもらう事にした。
しかし彼女はよく喋る・・・そのうえ文句ばかり・・・いったい何者なんだ?
「それにしてもあんた結構いい男なのねぇ。総代将とかいうからどんなにごっつい奴かと思ったけど。」
「それで君はやっぱり兎音や兎奈美の知り合いなのか?」
そう言ったところで嵩虎がお茶を持ってやってきた。
とりあえず二人でそれを飲み一息ついたところで彼女は再び話しはじめた。
「・・・と言うことはやっぱりあの二人はここに居るのね?」 「ああ、そうだけど・・・それがどうかしたのかい?」
「悪いけどその二人ここに呼んでもらえる?」
まぁ、断る理由も無いわけだし俺は嵩虎に兎音と兎奈美を呼んでくるように頼んだ。
「・・・で、君と二人はどういう関係なんだ?」
「二人がくれば解ることよ。」
それからしばらく部屋に沈黙が訪れた・・・。
10分ほど経っただろうか沈黙を破るように誰かが入ってきた。
「おっじゃまっしま〜す♪」
「何か御用ですかぁ?」
もちろん兎音と兎奈美だ。
二人はいつも通り部屋に入ってきたが、俺の正面に座っている人を見るなり声をあげた。
「げっ!」
「げげっ!!」
「とっ、兎華乃様!!!」
最後は二人ハモッてのコーラスだった。
「とぉね〜、と〜な〜み〜。あんたらわ〜。」
兎華乃がギロっと振り替えると二人は脅えるように
「ひっ、ひぃぃぃ〜。」
「おっ、お許しを〜。」
とこんな調子だった。
俺はなんで二人が彼女に脅えるのかと聞くと・・・。
「え〜!!彼女が魔兎族の長だって〜。こんなちっこいのが?」
「ふん、あんたよりも20倍は長く生きてるわよ」
というふうに、どうやら兎音や兎奈美のお頭といったところらしい。
「ところで兎華乃様、なんでこんなところにやってきたんですか?」
「もちろん裏切り者の抹殺・・・・・って言いたいところだけどどうしよっかなぁ・・・。
あんた思ったよりもいい男だしぃ・・・。」
どうやら俺のことらしい。そう言うと彼女はしばらく黙って考えていた。
ようやく結論が出らしい。
「や〜めたっと。どうせ狗根国についててもろくなことないし。それに私蛇渇嫌いだし・・
ここの総代将も男前だしね。よし許しちゃう。
ということで、九峪だっけ?兎音と兎奈美をよろしく頼むわ。」
一部始終みていてどうなることかと思ったけど、こういう風にまとまってくれるんなら良
しとしよう。兎音と兎奈美が戦力として残ってくれるならありがたいからな。
そう思っていると彼女は一言付け加えた。
「ただし、兎音と兎奈美・・・・二人を預けていいものか試させてもらうわ。」
そう言うと兎華乃は不意をついて攻撃してきた。
俺は兎華乃の攻撃を間一髪でかわすと床を転がりおいてあった剣を取りすぐに構えた。
そして一定の間合いをとりいつでも対応できるようにした。
しばらくにらみ合いが続いたがふいに兎華乃の方が戦闘意識を解除した。
「手加減したとはいえ最初の一撃をかわすとはね。わかったわ、あんたになら任せられるわ。」
俺も戦闘隊形を解くと、安心の笑みをこぼした。
「でも、二人じゃないわ。」
俺は一瞬、兎華乃の言ってることが理解できなかった。
「もぉ、ほんとに鈍いわねぇ。私も力を貸してあげるって言ってんのよ。」
「でもぉ、そうしたら残ったものたちはどうするんですかぁ?」
「大丈夫よ兎奈美。私が帰ってこなかったら好きにしていいわよって言ってあるから。」
「そんな無責任なことでいいのか?」
「い〜のい〜の♪。私ら今までそういう風に生きてるから。・・・ということでよろしくね。
総・代・将♪」
そう言うと私は彼(九峪)に投げキッスを送り部屋を後にすることにした。
「しっつれ〜しました。」
「それじゃぁ九峪様失礼しますぅ。」
私と一緒に二人も部屋を後にした。


最初はどんなつもりでここに来るか考えてなかったけど、まぁいっかと思った。
狗根国についてて蛇渇の顔見てるよりはこっちに居た方が楽しそうだしね。それに総代将も
なかなかかっこ良かったし・・・。
私は知らないうちにしばらく見せていなかった笑顔を見せていた。
「兎華乃様ぁ。何かものすごく嬉しそうですねぇ。」
兎奈美がにやにやしながら私の顔を覗いてくる。
その兎奈美の頭をポカっと叩くと、私は赤らめた顔を見られないようにして
「なんでもないわよ。・・・それじゃ部屋に案内して頂戴。」
そう言った。
こうして私は耶麻台国軍に協力することにした。
〜終〜




どうもぉ〜。魔兎族LOVELOVEな虎兎です。
いやぁ、思い付くまま気の向くままにやっちゃったって感じです。
乱文乱筆でものすごく読み手に迷惑をかけたかもしれませんが・・・(^^;;;
もし読んでくれた方がいたら大変嬉しく思います。天に代わってお礼を申し上げます(笑)
皆さんどうもありがとぉございましたぁ。それではまた。
1999・4・6 written by 虎兎

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