kitty on your lap


第十一話

aosen




−1−

駅前に出来た新しい喫茶店や、穴場の本屋、コンビニとかの場所を、僕とマナはブラブラと歩いた。

「ここの道ってさ・・・」

「あ、ここを通ると近道なんだよね・・・」

もっぱら解説に回っている僕。マナは、微笑みながら相槌を打つ。

小さい頃、僕とマナとケンスケでよく遊んだ公園の前に通りかかった時、彼女は微笑むのをやめた。

それもそのはず。

思い出の公園のあった場所には、マンションが建っていたから。

「ねぇ、ここって・・・」

「うん、あの公園があった場所だよ。一昨年くらいかな、マンションになっちゃったのは。」

「やっぱり、変わっちゃうのね。」

マンションを見上げるマナ。

でも、きっとその瞳はマンションを映してはいない。記憶にある、懐かしい公園を思い出しているのが、僕にも解った。

そんな彼女を見ているのがなぜか痛ましくて、僕はそっと彼女に声をかけて、ここから退散する事にした。


−2−

腕時計の針は七時を指し、辺りはもう暗い。

この街に不慣れ(前まで住んでいたんだけどね)なマナを自宅まで送る事にした。

歩きながら話をしていると、話題は自然にお互いの近況についてになった。

「へぇ・・・今は一人暮らしなんだ。」

「うん。同居人はいるけどね。」

マナは両親と暮らしているらしい。

僕らの年齢を考えると、一人暮らしの方が珍しいか。

「同居人?」

「うん。雌の猫だよ。名前はアスカ。」

「ふぅん・・・あ、そうだ。一人暮らしなんだよね。食事とかはどうしてるの?」

「自炊してる。外食すると、栄養が片寄るし、お金がかかるし。」

「じゃあさ!」

目を輝かせながら、マナは言った。

「今度、ご飯作りに行ってあげようか?」

ご飯。

お転婆だったマナのイメージからは、想像もつかない。

その思いが表情に出てしまったのだろうか、マナが抗議の声を上げる。

「ひっどぉい!これでも、家庭科の成績は良いのよ!」

「うん。じゃあ、マナが暇な時にでもお願いするよ。」

そんな会話をしているうちに、マナの家の前へと到着した。

「明日ね!」

「うん、じゃあね!」

すっかり遅くなってしまった。

ひょっとしたら、アスカが怒ってるかもしれない。

僕は、ネコ少女が待っている自宅へと急いだ。


−3−

自宅へ帰ると、アスカの熱烈な歓迎が待っていた。

「にゃあ!」

と一声鳴いて、僕の方へと走り寄ってくる。

「ただいま、アスカ。」

彼女を抱き上げる。

返って来たのは、ひっかき攻撃だった。

「いたたたっ!」

存分に僕の顔をひっかくと、アスカは僕の腕から逃げる。

何を怒っているのか、よく解らない。

彼女が喋れないのは、何とも不都合だ。

ふと閃いて、僕はルーズリーフとペンを取り出す。

『あ』から『ん』までの文字を一つ一つ書き並べて、部屋の奥に隠れているアスカの前にもっていった。

「アスカ、これ」

五十音が書かれている数枚のルーズリーフと僕を交互に見る彼女。

意図を察してくれたらしく、僕がアスカの前にそれを差し出すと、器用に文字を一字づつ前足で指していった。

『あ』『た』『し』『も』『そ』『と』『に』『い』『き』『た』『か』『っ』『た』『の』

『アタシも、そとにいきたかったのぉ!』

『さ』『み』『し』『い』『か』『え』『る』『の』『お』『そ』『い』

『さみしかったのぉ!かえってくるのおそいよぉ!』

と言った所だろうか。

「ゴメンね、アスカ。明日からは気を付けるよ。」

『ゆるしてほしい?』

「うん。」

『だったら、おさんぽ!おさんぽいくの!』

マナの案内をしていたおかげで歩き疲れていたけど、せめてもの罪滅ぼしとして彼女と散歩に行く事にした。





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