kitty on your lap


第十二話

aosen




−1−

お散歩用品(フンを入れる為のビニールとか、ティッシュとか)をリュックサックに詰めて、アスカと一緒に外に出る。

『これじゃ猫の散歩じゃ無くて、まるで犬の散歩だな』と苦笑いする。

でも、アスカは僕と一緒に散歩したいらしく、

「一人で行っておいで」

と言っても首を横に振るばかり。

まぁ、いいか。

月は綺麗で、夜風は適度に冷たい。

この散歩は彼女の為だから、行き先やルートの全部アスカ任せ。

「どこに行ってもいいけど、人が通れる道を頼むよ。」

そう声をかけると、アスカは任せておきなさい!とばかりに鳴いた。


−2−

十分ほど歩いただろうか。最近では珍しい、とある店の前に通りかかった。

今まで元気一杯にはしゃぎ回っていたアスカが、僕へ走り寄って背中に隠れる。

「どうしたの?」

「・・・にゃぁ」

力無く鳴くだけで、彼女は僕の後ろから出てこない。

抱き上げると、僕の胸に顔を埋めて、震えている。

僕らの目の前にあるお店は・・・三味線屋さん。

そういえば、三味線って、猫の皮を使ってるんだっけ?

アスカの弱点発見!と思ったけど、三味線の事をネタにからかうのはシャレにならないと判断。

僕は、ぷるぷる震える彼女を抱えたまま、足早にそこを立ち去った。


−3−

三味線屋さんから離れると、アスカは段々元気を取り戻した。

でも、僕から降りようとしない。きっと、腕の中が気に入ったんだろう。

彼女の重みを感じながら、川沿いの土手にある遊歩道を歩く。

川から上がってくる水の匂い。

疎らにある街灯からの光。

そんな物に包まれながら、僕は歩いて行く。

前方に、人影が見える。こんな時間に散歩している奇特な人間は僕だけだと思ったら、どうやらそうじゃ無いらしい。

近付くと、その人影はケンスケだった。

「やあ、ケンスケ。」

「シンジか。こんな時間に、珍しいな。」

ケンスケは僕が抱いているアスカに気付いたらしく、びっくりした表情。

「その仔猫、どうしたんだ?」

「土曜日の夜に拾ったんだ。名前はアスカ。」

「へぇ・・・奇遇だな。」

ケンスケは、土手の茂みに

「マユミ!」

と叫んだ。すると、真っ白い仔猫が現れた。

「俺もシンジと同じ日に猫を拾ったんだ。名前はマユミ。」

「にゃあ」

とても大人しそうな猫だ。アスカとは大違い。

突然、僕の腕からアスカが飛び出して、ケンスケの猫に近寄って行った。

「にゃあ」

「にゃあにゃあ」

猫同士にしか解らない言葉でひとしきり会話した後、二匹(一人と一匹?)は草むらに入っていった。

「お前の所のアスカと、ウチのマユミ、知り合いだったのかな?」

ふと、僕はアスカが僕の所に来るまで、どこで何をしていたのか知らない事に気付く。

ケンスケの猫マユミと、アスカが知り合いだとしても、何もおかしく無い。

「そうかもね。」

「シンジ、お前さ・・・」

唐突に話を切り出したケンスケ。

「霧島のヤツ、可愛くなったよな。」

『シンジ、お前さ・・・』と『霧島のヤツ、可愛くなったよな。』じゃ話が全然繋がってないけど、僕は気にせず次の言葉を待った。

「お前、今、誰か好きな女の子はいるのか?」

これまた全然話が繋がっていない。

「何が言いたいのさ、ケンスケ。」

「いいから質問に答えろよ。」

はぁ、とため息をついてから、僕は口を開いた。

「いないよ、誰も。」

「そうか・・・」

遠い所を見つめる目のケンスケ。

小さな声で、

「霧島も苦労するよな」

と呟いた。

「だから、何が言いたいのさ」

話が全然見えないどころか、ケンスケが喋る度に謎が深まるばかり。

「お前がいかに鈍感かって事だよ。」

「何だよ、それ。全然解らないよ。」

「だからお前は鈍感だって言われるのさ。」

呆れたように言い放つケンスケに、僕はちょっとムッとしていた。

「マユミ、帰るぞぉ〜」

さっきと同じように、ケンスケは草むらに声をかける。にゃあと鳴きながら、マユミとアスカが出て来た。

まるで、人間の言葉が解るみたいに。

・・・まさかね。きっと、ケンスケの声が聞こえたアスカが、気を利かせてマユミと一緒に出て来たんだろう。

「じゃ、明日、学校でな。」

そう言うと、ケンスケは真っ白い仔猫を連れて帰っていった。

「アスカ、僕らも散歩の続きしよっか。」

足元でにぃにぃと鳴いている仔猫に声をかけると(端から見ると、 不気味かもしれない)僕達は散歩を再開した。





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