kitty on your lap


第十五話

aosen




−1−

マナの作ってくれた食事は、とても美味しいかった。

最初は恐る恐る食べていたアスカも、ぺろりとたいらげる程だ。

「ふぅ・・・ご馳走様、美味しかったよ、マナ。」

「へへ、私の料理の腕も、そんなに捨てたもんじゃないでしょ?」

にこやかに笑うマナ。僕の見間違えじゃないなら、ちょっと頬っぺたも赤い。

室温はそんなに高くないハズだから・・・照れてるのかな?

「良かったら、ちょくちょく作ってあげるけど?」

さすがに、そこまで甘えるワケにはいかない。

「いや、いいよ。材料費だって馬鹿にならないだろうし。」

食費が結構かかるのを、僕はこの数ヶ月の一人暮らしから学んでいた。

何もバイトせず、高校生の平均的な小遣いにはちょっと重荷だろう。

「そう・・?」

残念そうなマナ。

その時、聞き慣れない携帯電話の呼出音が部屋に響いた。

マナは、制服にある内ポケットから電話を取り出して耳にあてた。

「もしもし・・・うん・・・うん、もうちょっとで帰るから。」

そう言って、電話を切る。

時計に目をやると、もう遅い時間だ。

きっと、娘の帰りが遅い事を心配したマナの両親からの電話だろう。

「ごめんね、シンジ君。親が早く帰ってこいってうるさいの・・・後片付け出来ないみたい・・・」

「気にしないで。それより、早く帰った方がいいよ」

日常的にご飯を作っている僕に、後片付けはあまり苦ではない。

壁のハンガーから制服の上着を取ると、マナはいそいそと帰り支度を始めた。

僕も、彼女を家まで送る用意をする。

「家まで送るよ」

「え、あー・・・いいよ。実は、タクシーで帰って来いって言われてるから。」

「じゃあ、タクシー乗り場まで・・・」

「うぅん、シンジ君の家に遊びに行って言ってあるの。だから、タクシーもこの家の前までもう親が呼んじゃったみたい・・・」

タクシー、しかも迎車。

マナは、よっぽど両親に大事にされているんだろう。

もしくは、お金持ち。

・・・いや、ひょっとしたらその両方かも。

僕がそんな事を考えている間に、マナはすっかり準備が出来たみたいだ。

「じゃね!」

手をひらひらと振るマナ。

「うん、また学校でね!」

そして、彼女は玄関の外へと消えた。

その背中を見送るアスカ。

「にゃあ!」

マナが帰った後の鳴き声は、とても嬉しそうだった・・・


−2−

後片付けを終え、僕はアスカとじゃれる。

彼女の目の前で、ハンカチをぱたぱたと振り、彼女にそれを引っかかせる。

ただアスカの反応が面白いからやっていたこの遊びも、よく考えてみると彼女が猫として生きる事になった時の、狩猟の練習になっている。

・・・かもしれない。なっているとイイなぁ・・・

ぱたぱたぱたぱた・・・

がしっっ!

「離して、アスカ。ほら、もう一回!」

ぱたぱたぱたぱた・・・

がしっっ!

「上手だね、アスカ。」

彼女の頭を撫でてやると、とても気持ち良さそうな声をだす。

「にゃぁ・・・」

それは、もっとしてくれと催促しているみたいだった。

「よし、じゃあ、続けるよう。」

こうして、僕とアスカの夜は更けていった・・・





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