−1−
「おはよ、シンジ!」
一週間ぶりに人間になったアスカの声で、僕は起こされた。
無機質な目覚ましのベルでは無く、人間に優しく起こされると、両親と一緒に暮らしていた時を思い出す。
「おはよう、アスカ。」
僕の事をゆさゆさと揺すって起こしてくれたアスカに、そう答える。
なんとなく『家族っていいな』と思った。
「おなかへったよぉ!」
『手のかからない家族』の方がもっといいな・・・
僕が起きたのが嬉しいのか、アスカはにこにこしている。
「起こしてくれて、ありがとう。」
そう言って頭を撫でてあげる。
彼女の笑顔はまるで天使みたいで、僕もなんだかほんわかした気分。
「じゃ、すぐにご飯作るから、待っててね。」
「うん!」
こうして、僕とアスカの日曜日が始まった。
−2−
いつも通り朝食を済ませ、出かける前に洗濯物を片付ける。
「はやくあそびにいこうよぉ!」
とせがむアスカを待たせて、なんとか家事を手早く終わらせる。
「今日は、公園に遊びに行った後、図書館に行こうか。」
「うん!」
部屋の中をどたばたと駆け回っているアスカを呼び止めて、今日の予定を伝える。
「としょかんって、たくさんほんがあるんでしょ?アタシ、ほんよむ!」
どうやら、本に興味はあるようだ。これなら、心配いらないかな?
僕にとってもアスカにとっても、楽しい一日になるといいな。
−3−
公園へと続く道を、僕達はゆっくり歩く。
爽やかな春の風と、降り注ぐ四月の太陽は、僕とアスカを穏やかに包む。
「いいてんきね!」
「うん、そうだね。」
きっと、こういうのを『幸せな日常』と言うんだろう。
てくてくと歩いていると、前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。
あれは・・・ケンスケ。
その隣には、アスカと同い年くらいの女の子が一緒に歩いている。
「やぁ、ケンスケ。」
「よぉ、シンジ。」
声をかけあうと、僕とケンスケはお互いが連れている少女をじっと見た。
「はじめまして!アスカです!」
「はじめまして・・・マユミともうします・・・」
この前、河原で見かけた仔猫と同じ名前だ・・・きっと、アスカを見るてケンスケもそう思っているんだろう。
「「親戚の子が遊びに来ててさ・・・」」
同じ言い訳を、僕とケンスケが同時に口にした。
お互い、顔がちょっと引きつっている。
そんな僕らを見上げながら、アスカとマユミちゃんがくすくすと笑っていた。
彼女達に釈然としない物を感じたけれど、あまり深くつっこむと僕もケンスケに深くつっこまれそうなので、この会話はこれで打ち切られた。
「・・・あのさ、これからどうするの、ケンスケ。」
並んで歩く僕とケンスケの前を、少女二人は手を繋いで歩いている。
初めて会ったにしては、かなり仲が良い。
ひょっとしたらアスカは、同じ年代の友達が欲しかったのかな?
「公園に行く予定なんだ・・・そういうシンジは?」
「うん、僕達も公園。その後に昼ご飯食べて、図書館かな?」
時折、彼女達の笑い声が響く。
「俺とマユミも一緒でいいか?小さい子ってさ、どういう所に連れて行けばいいのか良く解らなくって・・・」
「構わないよ。」
それに、マユミちゃんとアスカが仲良くなってくれればもっと良い。
そんな事を話しながら、僕ら四人は公園へと向かった。
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