−1−
家に帰り着くと、アスカはすぐにぬいぐるみを飾った。
「うふふふ」
とても、嬉しそうだ。
正直言って、たった一回手本を見せただけで、アスカがクレーンゲームで景品を取れるとは思わなかった。
人間ですら、この手のゲームが苦手な人はたくさんいるのだ。
・・・ひょっとしたら、アスカってコツを飲み込むのが早いのかな?
猫の間、ずっとテレビを見ていたおかげか、街に出てもあれこれ質問しなくなったし。
「ねぇねぇ、いっしょにほんよもぉ!!」
この要求の多い仔猫ちゃんに答える為に、僕はアスカの元へと向かった。
−2−
一通り動物図鑑を読むと、もう夕ご飯を作る時間だ。
アスカは少女小説を読み始め、僕はご飯の準備にかかる。
読書に熱中しているのか、僕が料理を始めても何も言わない、物音一つしない。
おかげで、久しぶりに料理に集中出来た。
あまりにも彼女が静かなのが気になって、ふとアスカの方を向くと、顔を真っ赤にしながら少女小説を読む姿がそこにあった。
しばらく彼女を観察していると、完全に自分の世界に入っている事が解った。
「ふぅ・・・」
とため息をついたり、
「うにゃぁ・・・」
と体をもじもじしたり。
見ていて飽きない。
突然彼女が本から目を離し、僕の方を見た。アスカを観察していた僕と、視線が合う。
「こっちむいちゃだめぇっ!」
と、彼女が叫ぶ。顔は、さっきよりも赤い。
「ど、どうしたの?」
何が何だか解らず、聞き返す僕。
「しらない!」
そう叫ぶと、彼女はバスルームへと走っていった。
−3−
夕ご飯が終わっても、アスカの顔はまだ赤かった。
ちらちらと僕を見たかと思うと、恥ずかしそうにうつむく。
二人でテレビを見てようと、僕が彼女の側に寄ると、なぜか微妙に離れて行くアスカ。
さっぱり、解らない。
僕から逃げるアスカを捕まえて、あぐらをかいて座っている僕の膝に乗せる。
最初はじたばたともがいていたけど、ちょっと抱き締めるとすぐに大人しくなってくれた。
「どうしたの、アスカ?」
包み込むように、抱き締めた腕に力を込める。
「・・・なんでもないのぉ・・・」
「僕の事が、キライになった?」
避けられる事に、何も心当たりは無い。
「だとしたら・・・悲しいな」
「ちがうの!・・・ちょっとはずかしいだけ・・・」
僕の体にかかる重さから、彼女が脱力していくのが感じ取れる。
「何で恥ずかしいの?」
「・・・ばか、どんかん・・・」
しかし、その言葉には責める調子が無い。
「・・・安心した。アスカに嫌われたかと思ったよ。」
きっと、娘に『お父さん、キライ』と言われたら、さっきの僕みたいな精神状態になるんだろうなぁ・・・
そんな事を考えながら、僕は彼女を解放しようとする。
「今は恥ずかしいならいいけど・・・いつか、何で恥ずかしいのか教えてね」
「うん・・・いつかはなすから、いまはもうちょっとこのままでいて・・・」
未だ恥ずかしぞうな彼女のリクエストに答えながら、僕の頭に一つの疑問が浮かんでいた。
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