kitty on your lap


第二十六話

aosen




−1−

アタシが目を覚ますと、窓からは夕日が見えた。

診察室のベッドに寝かされていたハズなのだが、天井が違う。

「あれ、アタシ・・・」

思わず洩れる独り言。

ふと、重要な事に気付く。

今日は日曜日では無いのに、なぜかアタシは人間の言葉を喋っているのだ!!

「え!なんで!?」

慌てて自分の体を確認してみると、人間になっていた。

ひょっとしたら、もう人間見習いを卒業出来たのかな?と思い、頭に手をやってみると、そこには猫耳があった。

「なによ、どういう事なの・・・?」

部屋を見回してみると、こざっぱりとしていて、落ち着いた雰囲気の良い部屋だった。

大き目の鏡台が目に入ったので、そこまで歩いて、自分の姿を確認する。

自分が寝かされていたベッドから鏡まで、そんなに大した距離を歩いたワケではなにのに、アタシはちょっと違和感を感じた。

そして、鏡を覗き込み、その違和感の正体を思い知る。


−2−

夕日を背中に浴びながら、僕は下校していた。

夕飯の材料を、家に続く道の途中にあるスーパーで買い、とぼとぼ歩く。

誰も居ない家に帰る・・・この事が、僕の足取りを重くしていた。

アスカと出会うまでは、そんな事は平気だと思っていたし、それで良いと考えていた。

けれども、ついこの間まで、アスカと一緒に生活していて、猫だろうが猫耳少女だろうが、出迎えてくれる人がいる生活の心地良さを知ってしまうと、なんとなく『誰も居ない家』に帰るのが寂しくなってしまう。

「はぁ」

自然に洩れるため息。

僕の生活は、アスカと共にあったんだなぁ、と改めて感じる。

明日、彼女が帰ってきたら盛大にお祝いしよう。

そう思った。


−3−

アタシが鏡の前で絶句していると、マヤがやって来た。

「あら、起きたのね。」

「マヤ!」

「うふふ、凄く可愛いわよ、アスカ。」

にこにこ笑いながら、マヤはアタシと一緒に鏡を覗く。

黒い髪をショートカットに切り揃えた女性の隣には、赤毛の、16歳くらいの女の子が映っている。

マリンブルーの瞳がきらきらと輝いていて、頭に猫耳さえ無ければ、完璧に人間の美少女だ。

「ねぇ、これって、もしかして・・・」

頭では理解していても、まだ夢の中にいるみたで、実感が無い。

「そうよ、貴方は成長したの。外見だけ、ね。」

「・・・信じられない・・・」

小学生の姿から、一気にここまで。

いくら人外の存在とはいえ、これはやり過ぎなのでは?

「いいじゃない。これで、アスカの好きな人にちゃんと見てもらえるわよ?」

思った事が、口から洩れてたみたい。

「す、好きな人って・・・!」

真っ先にシンジの事が浮かんで来て、アタシは頭を振る。

たしかに、図書館で借りた本はタシみたいな女の子と、シンジみたいな男の子のお話だったけど・・・

意識し過ぎてるな、アタシ。

「ま、いいわ。お姉様が、色々と『人間の、年頃の女の子』について教えてあげる。」

悪戯っぽい瞳で、アタシをみつめるマヤ。

ちょっとイヤな予感もしたけれど、アタシは素直にマヤに教えを乞う事にした。

「・・・お願いします、マヤ先輩。」

「よしよし、女の子の道は厳しいぞ!」

鏡の前で、アタシ達はしばらく笑っていた。





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